電場はベクトル場であり、目には見えません。しかし、ファラデーが考案した電気力線を使うと、電場の様子を直感的に「見る」ことができます。
電気力線の本数と電場の強さの関係、さらにガウスの法則への入り口を学びましょう。
電気力線は、電場の方向を接線方向として描いた曲線です。次の規則に従います。
電気力線は単なる補助線ではなく、電場の情報をすべて含んだ「地図」です。線が密なところは電場が強く、疎なところは弱い。線の向きがそのまま電場の向きです。
点電荷 $Q\,[\text{C}]$ から出る電気力線の総本数は、次のように定義されます。
電荷 $Q$ から出る電気力線の総本数 $N$:
$$N = \frac{Q}{\varepsilon_0}$$
電場の強さ $E$ は、電気力線に垂直な単位面積を貫く本数として解釈できます。
点電荷 $Q$ から半径 $r$ の球面を考える。球面積は $4\pi r^2$。
球面を貫く電気力線の面密度:$E = \dfrac{N}{4\pi r^2} = \dfrac{Q/\varepsilon_0}{4\pi r^2} = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} = k\dfrac{Q}{r^2}$
これは点電荷の電場の公式そのものであり、整合性が確認できる。
× 誤:電気力線は物理的に実在する線である
○ 正:電気力線は電場を可視化するための概念的な道具であり、本数の定義 $N = Q/\varepsilon_0$ は密度と電場の強さを一致させるための約束事
閉曲面を貫く電気力線の正味の本数は、その内部にある電荷の総量で決まります。
任意の閉曲面を貫く電気力線の正味の本数 $=$ 内部の総電荷 $/ \varepsilon_0$
$$\oint \vec{E}\cdot d\vec{S} = \frac{Q_{\text{内部}}}{\varepsilon_0}$$
対称性の高い配置(球対称、円筒対称、平面対称)では、ガウスの法則を使うとクーロンの法則より簡単に電場を求められます。
例えば、一様に帯電した無限平面がつくる電場は、距離によらず一定であることがガウスの法則から即座に導けます。
| 電荷配置 | 電気力線の特徴 |
|---|---|
| $+Q$(正の点電荷) | 放射状に外向き。遠方ほど疎(電場が弱い) |
| $-Q$(負の点電荷) | 放射状に内向き。遠方ほど疎 |
| $+Q$ と $-Q$(電気双極子) | $+Q$ から出て $-Q$ に入る。中間では密(電場が強い) |
| $+Q$ と $+Q$(同符号) | 各電荷から外向き。中間に電気力線が通らない領域(電場ゼロ点)がある |
| 平行板($+$ と $-$) | 板間でほぼ平行な等間隔の直線(一様な電場) |
密→強い電場、疎→弱い電場。等間隔→一様な電場。
電気力線が「避けて通る」場所に電場ゼロの点がある。これらを読み取る力が問われます。
電気力線は電場を視覚的に理解するための強力な道具です。
Q1. 電気力線の4つの規則を挙げてください。
Q2. $+2Q$ と $-Q$ が近くにあるとき、無限遠に出ていく電気力線の本数はいくらか。
Q3. 電気力線の密度が2倍になると、電場の強さはどうなるか。
Q4. ガウスの法則を一言で述べてください。
電気力線に関する入試問題を解きましょう。
$+3.0\,\mu\text{C}$ の点電荷から出る電気力線の総本数を求めよ。$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{C}^2/(\text{N}\cdot\text{m}^2)$ とする。
$N \approx 3.4 \times 10^5$ 本
$N = \dfrac{Q}{\varepsilon_0} = \dfrac{3.0 \times 10^{-6}}{8.85 \times 10^{-12}} \approx 3.39 \times 10^5$ 本
$+Q$ と $+Q$ の2つの同符号電荷が距離 $d$ で置かれているとき、2電荷の中点付近の電気力線はどのようになるか。電場がゼロになる点はどこか。
中点では電気力線が通らない領域ができ、中点で電場がゼロになる。
各正電荷から放射状に出た電気力線は、互いに反発するように曲がる。中点では左右の電場が等しく逆向きで打ち消し合い、電場がゼロになる。電気力線図では中点付近が「空白」になる。
点電荷 $Q = +5.0\,\mu\text{C}$ を中心に半径 $r = 0.10\,\text{m}$ の球面を考える。球面上の電場の大きさをガウスの法則を用いて求めよ。
$E = 4.5 \times 10^6\,\text{N/C}$
ガウスの法則:$E \times 4\pi r^2 = \dfrac{Q}{\varepsilon_0}$
$E = \dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} = k\dfrac{Q}{r^2} = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{5.0 \times 10^{-6}}{0.01} = 4.5 \times 10^6\,\text{N/C}$
$+3Q$ と $-Q$ の点電荷が近くに置かれている。$+3Q$ から出る電気力線のうち、$-Q$ に入る本数と無限遠に出ていく本数の比を求めよ。
$-Q$ に入る:無限遠 $= 1 : 2$
$+3Q$ から出る総本数:$3Q/\varepsilon_0$
$-Q$ に入る本数:$Q/\varepsilon_0$($-Q$ が吸収できる本数は電荷の大きさで決まる)
無限遠に出る本数:$3Q/\varepsilon_0 - Q/\varepsilon_0 = 2Q/\varepsilon_0$
比 $= Q/\varepsilon_0 : 2Q/\varepsilon_0 = 1 : 2$
点電荷 $+Q$ を中心に、導体の球殻(内径 $a$、外径 $b$)を置いた。球殻の内面・外面に誘導される電荷と、$r > b$ における電場の大きさを求めよ。
内面:$-Q$、外面:$+Q$、$r > b$ で $E = k\dfrac{Q}{r^2}$
導体内部では $E = 0$。導体内部にガウス面を取ると、内部の総電荷は $0$ でなければならない。
中心に $+Q$ があるので、内面に $-Q$ が誘導される。球殻全体の電荷保存より、外面に $+Q$ が誘導される。
$r > b$ にガウス面を取ると、内部の総電荷は $+Q + (-Q) + (+Q) = +Q$。よって $E = k\dfrac{Q}{r^2}$。
面電荷密度 $\sigma\,[\text{C/m}^2]$ で一様に帯電した十分に広い平面がつくる電場をガウスの法則から求め、距離によらず一定であることを示せ。
$E = \dfrac{\sigma}{2\varepsilon_0}$(距離によらず一定)
帯電平面に対称な円柱形のガウス面(底面積 $S$)を考える。
対称性から、電場は平面に垂直で、両側に等しい大きさで向く。
ガウスの法則:$E \cdot S + E \cdot S = \dfrac{\sigma S}{\varepsilon_0}$(両底面から電気力線が出る)
$2ES = \dfrac{\sigma S}{\varepsilon_0}$ → $E = \dfrac{\sigma}{2\varepsilon_0}$
$S$ がキャンセルし、ガウス面の高さ(=平面からの距離)も含まれていないため、$E$ は距離によらず一定。