第21章 電場と電位

点電荷がつくる電位
─ 等電位面(V=kQ/r、スカラーの足し算)

電場の重ね合わせはベクトルの足し算で大変でした。しかし電位はスカラーなので、複数の電荷がつくる電位は単純な数値の足し算で求められます。これが電位を使う最大のメリットです。

1点電荷がつくる電位の公式

点電荷がつくる電位

$$V = k\frac{Q}{r}$$

※ $Q$ には符号を含める。正電荷は正の電位、負電荷は負の電位をつくる。電場 $E = kQ/r^2$ と異なり、$r$ の1乗に反比例する。基準は無限遠($V = 0$)。
落とし穴:電場と電位の距離依存性を混同する

× 誤:電位も $1/r^2$ に比例する

○ 正:電場は $1/r^2$、電位は $1/r$。距離が2倍になると電場は $1/4$、電位は $1/2$

ここが本質:電位には符号がある

電場の大きさを求めるときは $|Q|$ を使いましたが、電位では $Q$ の符号をそのまま含めます。正電荷のまわりは電位が正(山)、負電荷のまわりは電位が負(谷)です。

2電位の重ね合わせ ─ スカラーの足し算

複数の点電荷がつくる電位は、各電荷の電位の単純な和(スカラーの足し算)です。

電位の重ね合わせ

$$V = V_1 + V_2 + \cdots = k\frac{Q_1}{r_1} + k\frac{Q_2}{r_2} + \cdots$$

※ ベクトルの成分分解が不要。符号付きの数値をそのまま足すだけ。これが電場の重ね合わせ(ベクトル和)より圧倒的に楽な理由。
深掘り:電場 vs 電位 ─ どちらを使うべきか

「電場がゼロ」と「電位がゼロ」は全く別の条件です。電場がゼロでも電位はゼロとは限らず、電位がゼロでも電場はゼロとは限りません。

電場を求めたいときはベクトル和、電位を求めたいときはスカラー和。問題が何を聞いているかで使い分けましょう。

3等電位面

等電位面は、電位が等しい点を結んだ面です。地図の等高線の3次元版です。

  • 点電荷の等電位面は同心球
  • 等電位面と電気力線は常に垂直
  • 等電位面が密なほど電場が強い
  • 等電位面上の移動では仕事はゼロ
ここが本質:等電位面上では仕事ゼロ

等電位面上の2点間では $\Delta V = 0$ なので $W = q\Delta V = 0$。電荷を等電位面に沿って動かしても仕事は不要です。逆に言えば、仕事をしないで移動できる面が等電位面です。

42電荷系の電位

$+Q$ と $-Q$(電気双極子)の中点

$V = k\dfrac{Q}{d} + k\dfrac{-Q}{d} = 0$。中点の電位はゼロ。しかし電場はゼロではない(E-2-3 で学んだ通り)。

$+Q$ と $+Q$ の中点

$V = k\dfrac{Q}{d} + k\dfrac{Q}{d} = \dfrac{2kQ}{d}$。中点の電位はゼロではない。しかし電場はゼロ。

落とし穴:電位ゼロ=電場ゼロではない

× 誤:ある点の電位がゼロなら電場もゼロ

○ 正:電位ゼロと電場ゼロは独立した条件。$+Q$ と $-Q$ の中点では電位はゼロだが電場は強い

5この章を俯瞰する

つながりマップ

  • ← E-2-5 電位と電位差:電位の一般的定義を点電荷に適用して $V = kQ/r$ を得た。
  • ← E-2-3 点電荷がつくる電場:電場はベクトル和、電位はスカラー和。対比して理解する。
  • → E-2-7 一様な電場と電位:平行板間での $V$ と $E$ の関係。
  • → E-3-2 静電容量:コンデンサーの電位差と電荷の関係 $Q = CV$ の基盤。

📋まとめ

  • 点電荷の電位:$V = kQ/r$(符号付き、$1/r$ に反比例)
  • 電位の重ね合わせ:スカラーの足し算(ベクトル分解不要)
  • 等電位面:電位が等しい面。点電荷なら同心球
  • 等電位面と電気力線は垂直。等電位面上の移動で仕事ゼロ
  • 電位ゼロと電場ゼロは別の条件

確認テスト

Q1. 点電荷がつくる電位の公式を書いてください。

▶ クリックして解答を表示$V = kQ/r$($Q$ は符号付き、基準は無限遠で $V = 0$)

Q2. $+Q$ と $-Q$ が距離 $2d$ で置かれているとき、中点の電位はいくらか。

▶ クリックして解答を表示$V = kQ/d + k(-Q)/d = 0$

Q3. 電位の重ね合わせと電場の重ね合わせの違いは何か。

▶ クリックして解答を表示電位はスカラーの足し算(符号付きの数値を足すだけ)、電場はベクトルの足し算(成分分解が必要)。

Q4. 等電位面と電気力線はどのような角度をなすか。

▶ クリックして解答を表示常に垂直($90°$)。

8入試問題演習

A 基礎レベル

2-6-1A 基礎電位計算

$+2.0\,\mu\text{C}$ の点電荷から $0.30\,\text{m}$ の点の電位を求めよ。$k = 9.0 \times 10^9$ とする。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$V = 6.0 \times 10^4\,\text{V}$

解説

$V = k\dfrac{Q}{r} = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{2.0 \times 10^{-6}}{0.30} = 6.0 \times 10^4\,\text{V}$

2-6-2A 基礎重ね合わせ

$+4.0\,\mu\text{C}$ と $-2.0\,\mu\text{C}$ が $0.60\,\text{m}$ 離れて置かれている。2電荷の中点の電位を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$V = 6.0 \times 10^4\,\text{V}$

解説

中点から各電荷までの距離は $0.30\,\text{m}$。

$V = k\dfrac{4.0 \times 10^{-6}}{0.30} + k\dfrac{-2.0 \times 10^{-6}}{0.30} = k\dfrac{2.0 \times 10^{-6}}{0.30} = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{2.0 \times 10^{-6}}{0.30} = 6.0 \times 10^4\,\text{V}$

B 発展レベル

2-6-3B 発展電位ゼロ計算

$x$ 軸上の原点に $+4Q$、$x = L$ に $-Q$ を置いた。$x$ 軸上で電位がゼロになる点の座標を求めよ(2つある)。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$x = \dfrac{4L}{5}$(2電荷の間)および $x = \dfrac{4L}{3}$($-Q$ の外側)

解説

$k\dfrac{4Q}{x} + k\dfrac{-Q}{|x - L|} = 0$ → $\dfrac{4}{x} = \dfrac{1}{|x - L|}$

$0 < x < L$ の場合:$4(L - x) = x$ → $x = 4L/5$

$x > L$ の場合:$4(x - L) = x$ → $3x = 4L$ → $x = 4L/3$

採点ポイント
  • 2つの領域で場合分けする(3点)
  • 各方程式を正しく解く(各3点)
  • $x < 0$ にはゼロ点がないことを確認(1点)
2-6-4B 発展正三角形電位

正三角形の頂点に $+Q$, $+Q$, $-Q$ を置いた。辺の長さを $a$ とするとき、正三角形の重心の電位を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$V = \dfrac{kQ\sqrt{3}}{a}$

解説

重心から各頂点までの距離は $r = \dfrac{a}{\sqrt{3}}$。

$V = k\dfrac{Q}{r} + k\dfrac{Q}{r} + k\dfrac{-Q}{r} = k\dfrac{Q}{r} = k\dfrac{Q}{a/\sqrt{3}} = \dfrac{kQ\sqrt{3}}{a}$

採点ポイント
  • 重心から頂点の距離を正しく求める(3点)
  • スカラー和を正しく計算する(4点)
  • 答えが正しい(3点)

C 応用レベル

2-6-5C 応用電位エネルギー仕事

$+Q$ と $+Q$ が距離 $d$ で固定されている。無限遠から $+q$ の電荷をこの2電荷の中点に持ってくるのに必要な仕事を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$W = \dfrac{4kQq}{d}$

解説

中点の電位:$V = k\dfrac{Q}{d/2} + k\dfrac{Q}{d/2} = \dfrac{2kQ}{d/2} = \dfrac{4kQ}{d}$

必要な仕事 $= qV = \dfrac{4kQq}{d}$(無限遠での電位は $0$)

採点ポイント
  • 中点の電位を正しく計算する(5点)
  • 仕事を $W = qV$ で求める(5点)
2-6-6C 応用電位と電場比較

$x$ 軸上の原点に $+2Q$、$x = L$ に $-Q$ を置いた。$x$ 軸上で電位がゼロになる点と電場がゼロになる点はそれぞれ異なる位置にあることを示し、その座標をそれぞれ求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

電位ゼロ:$x = 2L/3$ および $x = 2L$。電場ゼロ:$x = (2+\sqrt{2})L \approx 3.41L$

解説

電位ゼロ:$\dfrac{2Q}{x} + \dfrac{-Q}{|x - L|} = 0$ → $\dfrac{2}{x} = \dfrac{1}{|x-L|}$

$0 < x < L$:$2(L-x) = x$ → $x = 2L/3$

$x > L$:$2(x-L) = x$ → $x = 2L$

電場ゼロ:異符号なので $-Q$ の外側にある。$x = L + s$ とおくと

$\dfrac{2Q}{(L+s)^2} = \dfrac{Q}{s^2}$ → $2s^2 = (L+s)^2$ → $s = \dfrac{L}{\sqrt{2}-1} = L(\sqrt{2}+1)$

$x = L + L(\sqrt{2}+1) = (2+\sqrt{2})L \approx 3.41L$

電位ゼロの点と電場ゼロの点は異なる位置にあり、これは電位(スカラー)と電場(ベクトル)の性質の違いを反映している。

採点ポイント
  • 電位ゼロの2点を正しく求める(各2点)
  • 電場ゼロの点を正しく求める(4点)
  • 両者が異なることの理由を述べる(2点)