第23章 直流回路

メートルブリッジ

ホイートストンブリッジの原理を実験で使いやすくしたのがメートルブリッジです。 1メートルの一様な抵抗線の上を接触子(滑り端子)をスライドさせるだけで、 長さの比から未知抵抗を求めることができます。
シンプルな構造ながら高い精度で測定できるため、高校の実験でも頻繁に登場します。

1メートルブリッジの構成

メートルブリッジは、長さ $100\,\text{cm}$ の一様な抵抗線(ニクロム線など)を使用します。 抵抗線の両端に未知抵抗 $R_x$ と既知抵抗 $R_s$ を1つずつ接続し、 抵抗線上の1点に接触子を当てて検流計を接続します。

抵抗線は一様なので、長さに比例した抵抗をもちます。 接触子の位置を左端から $l_1$、右端からの長さを $l_2 = 100 - l_1$ とすると、 抵抗線の左側の抵抗は $\rho l_1$、右側の抵抗は $\rho l_2$ です($\rho$ は単位長さあたりの抵抗)。

💡 ここが本質:「長さの比」で抵抗がわかる

メートルブリッジの最大の利点は、抵抗の比を長さの比に置き換えられることです。

精密な可変抵抗が不要で、定規で長さを測るだけで高精度な測定ができます。 これが学校実験でもよく使われる理由です。

2測定の原理

メートルブリッジはホイートストンブリッジそのものです。 4つの抵抗のうち2つが抵抗線の左右部分に対応します。

📐 メートルブリッジの平衡条件

検流計の電流がゼロになったとき、

$$\frac{R_x}{R_s} = \frac{l_1}{l_2} = \frac{l_1}{100 - l_1}$$

したがって

$$R_x = R_s \cdot \frac{l_1}{100 - l_1}$$

※ $l_1$:$R_x$ 側の抵抗線の長さ [cm]、$l_2 = 100 - l_1$:$R_s$ 側の抵抗線の長さ [cm]
▷ なぜ長さの比になるのか

一様な抵抗線の抵抗は長さに比例するので、

左側の抵抗:$r_1 = \rho l_1$、右側の抵抗:$r_2 = \rho l_2 = \rho(100 - l_1)$

ホイートストンブリッジの平衡条件 $R_x \cdot r_2 = R_s \cdot r_1$ より、

$$R_x \cdot \rho l_2 = R_s \cdot \rho l_1$$

$\rho$ が消えて、

$$\frac{R_x}{R_s} = \frac{l_1}{l_2}$$

⚠️ 落とし穴:$l_1$ と $l_2$ の対応を逆にする

✕ 誤:$R_x$ の側の長さを $l_2$ にしてしまう

○ 正:$R_x$ と同じ側の抵抗線の長さが $l_1$、$R_s$ と同じ側が $l_2$

「$R_x$ の隣の長さが分子」と覚えましょう。

3実験上の注意点

平衡点を中央付近にする

$l_1$ が非常に小さい(端に近い)と、長さの測定誤差が大きく影響します。 $l_1$ が $30\,\text{cm}$ 〜 $70\,\text{cm}$ の範囲に入るように、$R_s$ を適切に選びましょう。

接触抵抗の影響

接触子と抵抗線の接触部分には微小な接触抵抗が生じます。 しかし、平衡状態では検流計に電流が流れないため、接触抵抗による誤差は最小限に抑えられます。

🔬 深掘り:誤差を減らす工夫

$R_x$ と $R_s$ の位置を入れ替えて測定し、2回の結果の平均をとると系統誤差が小さくなります。

また、$R_s$ の値を変えて複数回測定すると、信頼性がさらに向上します。

4つながりマップ

  • ← E-4-5 ホイートストンブリッジ:メートルブリッジの原理そのもの。
  • ← 抵抗率と抵抗:一様な抵抗線の抵抗が長さに比例する理由。$R = \rho l / S$
  • → E-4-7 電位降下法:同じく一様な抵抗線を利用した精密測定法。

📋まとめ

  • メートルブリッジはホイートストンブリッジの実験装置版
  • 平衡条件:$R_x / R_s = l_1 / l_2$(長さの比で抵抗がわかる)
  • 一様な抵抗線を使うので、抵抗率 $\rho$ は消える
  • 平衡点は中央付近になるように $R_s$ を選ぶ
  • $R_x$ と $R_s$ を入れ替えて2回測定すると系統誤差が減る

確認テスト

Q1. メートルブリッジで長さの比から抵抗がわかるのはなぜですか。

▶ クリックして解答を表示一様な抵抗線の抵抗は長さに比例するため、ホイートストンブリッジの平衡条件で抵抗率が消え、長さの比だけが残るからです。

Q2. 既知抵抗 $R_s = 10\,\Omega$ で平衡点が $l_1 = 40\,\text{cm}$ のとき、$R_x$ はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$R_x = 10 \times \dfrac{40}{60} = \dfrac{20}{3} \approx 6.7\,\Omega$

Q3. 平衡点を中央付近にすべき理由は何ですか。

▶ クリックして解答を表示端に近いと長さの測定誤差が比の値に大きく影響するためです。中央付近なら誤差の影響が最小になります。

8入試問題演習

メートルブリッジの問題を解きましょう。

A 基礎レベル

4-6-1 A 基礎 メートルブリッジ計算

メートルブリッジで既知抵抗 $R_s = 20\,\Omega$ を用い、平衡点が左端から $l_1 = 60\,\text{cm}$ の位置であった。未知抵抗 $R_x$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$R_x = 30\,\Omega$

解説

$R_x = R_s \cdot \dfrac{l_1}{100 - l_1} = 20 \times \dfrac{60}{40} = 20 \times 1.5 = 30\,\Omega$

B 発展レベル

4-6-2 B 発展 入れ替え計算

メートルブリッジで $R_s = 15\,\Omega$ を使い、$R_x$ 側の長さが $l_1 = 45\,\text{cm}$ で平衡した。次に $R_x$ と $R_s$ の位置を入れ替えたとき、平衡点の位置を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

入れ替え後の平衡点は左端から $55\,\text{cm}$

解説

まず $R_x$ を求める:$R_x = 15 \times \dfrac{45}{55} = \dfrac{675}{55} = \dfrac{135}{11} \approx 12.3\,\Omega$

入れ替え後:$\dfrac{R_s}{R_x} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$

$\dfrac{15}{135/11} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$ → $\dfrac{11}{9} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$

$11(100 - l_1') = 9 l_1'$ → $1100 = 20 l_1'$ → $l_1' = 55\,\text{cm}$

(入れ替えると平衡点は左右対称の位置に移動する)

採点ポイント
  • $R_x$ を正しく求める(3点)
  • 入れ替え後の式を正しく立てる(3点)
  • 平衡点の位置を正しく求める(2点)

C 応用レベル

4-6-3 C 応用 誤差解析論述

メートルブリッジで $R_s = 10\,\Omega$ を使い、平衡点が $l_1 = 50.0\,\text{cm}$ と測定された。長さの測定誤差が $\pm 0.5\,\text{cm}$ であるとき、$R_x$ の測定値と誤差の範囲を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$R_x = 10.0\,\Omega$、誤差範囲 $9.8\,\Omega \leq R_x \leq 10.2\,\Omega$

解説

$R_x = 10 \times \dfrac{50.0}{50.0} = 10.0\,\Omega$

$l_1 = 50.5$ のとき:$R_x = 10 \times \dfrac{50.5}{49.5} \approx 10.2\,\Omega$

$l_1 = 49.5$ のとき:$R_x = 10 \times \dfrac{49.5}{50.5} \approx 9.8\,\Omega$

よって $R_x = 10.0 \pm 0.2\,\Omega$

中央付近($l_1 \approx 50\,\text{cm}$)での相対誤差は約 $2\%$ と小さいことがわかります。

採点ポイント
  • $R_x$ の中心値を正しく求める(2点)
  • 誤差の伝播を正しく計算する(4点)
  • 中央付近が有利であることを説明する(2点)