ホイートストンブリッジの原理を実験で使いやすくしたのがメートルブリッジです。
1メートルの一様な抵抗線の上を接触子(滑り端子)をスライドさせるだけで、
長さの比から未知抵抗を求めることができます。
シンプルな構造ながら高い精度で測定できるため、高校の実験でも頻繁に登場します。
メートルブリッジは、長さ $100\,\text{cm}$ の一様な抵抗線(ニクロム線など)を使用します。 抵抗線の両端に未知抵抗 $R_x$ と既知抵抗 $R_s$ を1つずつ接続し、 抵抗線上の1点に接触子を当てて検流計を接続します。
抵抗線は一様なので、長さに比例した抵抗をもちます。 接触子の位置を左端から $l_1$、右端からの長さを $l_2 = 100 - l_1$ とすると、 抵抗線の左側の抵抗は $\rho l_1$、右側の抵抗は $\rho l_2$ です($\rho$ は単位長さあたりの抵抗)。
メートルブリッジの最大の利点は、抵抗の比を長さの比に置き換えられることです。
精密な可変抵抗が不要で、定規で長さを測るだけで高精度な測定ができます。 これが学校実験でもよく使われる理由です。
メートルブリッジはホイートストンブリッジそのものです。 4つの抵抗のうち2つが抵抗線の左右部分に対応します。
検流計の電流がゼロになったとき、
$$\frac{R_x}{R_s} = \frac{l_1}{l_2} = \frac{l_1}{100 - l_1}$$
したがって
$$R_x = R_s \cdot \frac{l_1}{100 - l_1}$$
一様な抵抗線の抵抗は長さに比例するので、
左側の抵抗:$r_1 = \rho l_1$、右側の抵抗:$r_2 = \rho l_2 = \rho(100 - l_1)$
ホイートストンブリッジの平衡条件 $R_x \cdot r_2 = R_s \cdot r_1$ より、
$$R_x \cdot \rho l_2 = R_s \cdot \rho l_1$$
$\rho$ が消えて、
$$\frac{R_x}{R_s} = \frac{l_1}{l_2}$$
✕ 誤:$R_x$ の側の長さを $l_2$ にしてしまう
○ 正:$R_x$ と同じ側の抵抗線の長さが $l_1$、$R_s$ と同じ側が $l_2$
「$R_x$ の隣の長さが分子」と覚えましょう。
$l_1$ が非常に小さい(端に近い)と、長さの測定誤差が大きく影響します。 $l_1$ が $30\,\text{cm}$ 〜 $70\,\text{cm}$ の範囲に入るように、$R_s$ を適切に選びましょう。
接触子と抵抗線の接触部分には微小な接触抵抗が生じます。 しかし、平衡状態では検流計に電流が流れないため、接触抵抗による誤差は最小限に抑えられます。
$R_x$ と $R_s$ の位置を入れ替えて測定し、2回の結果の平均をとると系統誤差が小さくなります。
また、$R_s$ の値を変えて複数回測定すると、信頼性がさらに向上します。
Q1. メートルブリッジで長さの比から抵抗がわかるのはなぜですか。
Q2. 既知抵抗 $R_s = 10\,\Omega$ で平衡点が $l_1 = 40\,\text{cm}$ のとき、$R_x$ はいくらですか。
Q3. 平衡点を中央付近にすべき理由は何ですか。
メートルブリッジの問題を解きましょう。
メートルブリッジで既知抵抗 $R_s = 20\,\Omega$ を用い、平衡点が左端から $l_1 = 60\,\text{cm}$ の位置であった。未知抵抗 $R_x$ を求めよ。
$R_x = 30\,\Omega$
$R_x = R_s \cdot \dfrac{l_1}{100 - l_1} = 20 \times \dfrac{60}{40} = 20 \times 1.5 = 30\,\Omega$
メートルブリッジで $R_s = 15\,\Omega$ を使い、$R_x$ 側の長さが $l_1 = 45\,\text{cm}$ で平衡した。次に $R_x$ と $R_s$ の位置を入れ替えたとき、平衡点の位置を求めよ。
入れ替え後の平衡点は左端から $55\,\text{cm}$
まず $R_x$ を求める:$R_x = 15 \times \dfrac{45}{55} = \dfrac{675}{55} = \dfrac{135}{11} \approx 12.3\,\Omega$
入れ替え後:$\dfrac{R_s}{R_x} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$
$\dfrac{15}{135/11} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$ → $\dfrac{11}{9} = \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$
$11(100 - l_1') = 9 l_1'$ → $1100 = 20 l_1'$ → $l_1' = 55\,\text{cm}$
(入れ替えると平衡点は左右対称の位置に移動する)
メートルブリッジで $R_s = 10\,\Omega$ を使い、平衡点が $l_1 = 50.0\,\text{cm}$ と測定された。長さの測定誤差が $\pm 0.5\,\text{cm}$ であるとき、$R_x$ の測定値と誤差の範囲を求めよ。
$R_x = 10.0\,\Omega$、誤差範囲 $9.8\,\Omega \leq R_x \leq 10.2\,\Omega$
$R_x = 10 \times \dfrac{50.0}{50.0} = 10.0\,\Omega$
$l_1 = 50.5$ のとき:$R_x = 10 \times \dfrac{50.5}{49.5} \approx 10.2\,\Omega$
$l_1 = 49.5$ のとき:$R_x = 10 \times \dfrac{49.5}{50.5} \approx 9.8\,\Omega$
よって $R_x = 10.0 \pm 0.2\,\Omega$
中央付近($l_1 \approx 50\,\text{cm}$)での相対誤差は約 $2\%$ と小さいことがわかります。