これまで扱ってきた抵抗は、オームの法則 $V = IR$ に従う線形素子でした。
しかし、ダイオードや電球のフィラメントは電流と電圧が比例しない非線形素子です。
非線形素子を含む回路では、V-I 特性のグラフを使ったグラフ解法が有効です。
線形素子(金属抵抗器など)は V-I グラフが原点を通る直線になります。 傾きが抵抗値 $R$ です。
一方、非線形素子は V-I グラフが直線にならない素子です。
| 素子 | V-I 特性 | 理由 |
|---|---|---|
| 金属抵抗(一定温度) | 直線($V = IR$) | 抵抗値が一定 |
| 電球のフィラメント | 上に凸の曲線 | 温度上昇で抵抗が増大 |
| ダイオード | 指数関数的 | 順方向は急増、逆方向はほぼゼロ |
$V = IR$ が成り立つのは、抵抗値 $R$ が電流によらず一定の場合だけです。
電球のフィラメントは温度が上がると $R$ が大きくなるため、 電流を2倍にしても電圧は2倍にならず、$V = IR$ の「$R$ が一定」が崩れます。
✕ 誤:「$100\,\text{W}$、$100\,\text{V}$ の電球の抵抗は $100\,\Omega$」と常に使う
○ 正:$100\,\Omega$ は定格($100\,\text{V}$ 使用時)での抵抗。電圧が変わると温度が変わり、抵抗も変わる
フィラメントは金属なので、温度が上がると抵抗が増えます。 電流が大きくなるとフィラメントの温度が上がり、抵抗が増えるため、 V-I グラフは原点を通る上に凸の曲線になります。
ダイオードは順方向(アノード → カソード)に電圧をかけると電流が急増し、 逆方向にかけるとほとんど電流が流れません。
高校の範囲では、ダイオードを次のように近似的に扱うことが多いです:
ダイオードは p 型半導体と n 型半導体の接合(pn 接合)でできています。 順方向バイアスではキャリア(電子と正孔)が接合面に向かって流れ、電流が急増します。
逆方向バイアスでは空乏層が広がり、電流は微小な漏れ電流のみです。 詳しくは半導体の章で学びます。
非線形素子を含む回路では、連立方程式を代数的に解くことが難しい場合があります。 そこで、V-I 特性曲線と回路方程式のグラフを重ねて交点を読み取る方法を使います。
起電力 $E$、内部抵抗(または直列抵抗)$R$ の回路で非線形素子にかかる電圧を $V$、流れる電流を $I$ とすると、
$$V = E - IR$$
これは $V$-$I$ 平面上の直線(負荷線)です。
V-I 特性曲線は素子の性質を、負荷線は回路の条件を表しています。 両方を同時に満たす点(交点)が、実際の電圧と電流の値です。
代数的に解けない問題でも、グラフから読み取れば答えが出ます。 入試ではグラフの読み取り精度が求められます。
✕ 誤:電球の V-I 特性が曲線なのに $V = IR$($R$ 一定)として方程式を立てる
○ 正:V-I 特性曲線をそのまま使い、負荷線との交点で動作点を求める
キルヒホッフの法則は常に成り立ちますが、非線形素子では $V = IR$($R$ 一定)が使えません。
Q1. 電球のフィラメントの V-I グラフはどのような形になりますか。その理由も説明してください。
Q2. 理想ダイオードの順方向・逆方向の振る舞いを説明してください。
Q3. 負荷線とは何ですか。
非線形素子を含む回路の問題を解きましょう。
起電力 $E = 6\,\text{V}$(内部抵抗なし)の電池に、理想ダイオードと $R = 100\,\Omega$ の抵抗が直列に接続されている。ダイオードが順方向に接続されている場合と逆方向に接続されている場合のそれぞれについて、回路に流れる電流を求めよ。
順方向:$I = 0.06\,\text{A}$($60\,\text{mA}$)
逆方向:$I = 0$
順方向:理想ダイオードは抵抗ゼロなので $I = E/R = 6/100 = 0.06\,\text{A}$
逆方向:理想ダイオードは断線なので $I = 0$
起電力 $E = 4.0\,\text{V}$(内部抵抗なし)の電池に抵抗 $R = 20\,\Omega$ と電球が直列に接続されている。電球の V-I 特性は次のとおりである:$I = 0.05\,\text{A}$ のとき $V = 0.5\,\text{V}$、$I = 0.10\,\text{A}$ のとき $V = 1.2\,\text{V}$、$I = 0.15\,\text{A}$ のとき $V = 2.1\,\text{V}$。
(1) 負荷線の式を書き、$I = 0$ と $V = 0$ のときの値を求めよ。
(2) 電球に流れる電流と電球にかかる電圧をグラフから推定せよ。
(1) $V = 4.0 - 20I$。$I = 0$ のとき $V = 4.0\,\text{V}$、$V = 0$ のとき $I = 0.20\,\text{A}$
(2) $I \approx 0.10\,\text{A}$、$V \approx 2.0\,\text{V}$
(1) キルヒホッフの第二法則より $E = V + IR$ → $V = E - IR = 4.0 - 20I$
$I = 0$:$V = 4.0\,\text{V}$、$V = 0$:$I = 4.0/20 = 0.20\,\text{A}$
(2) 負荷線上で $I = 0.10\,\text{A}$ のとき $V = 4.0 - 20 \times 0.10 = 2.0\,\text{V}$
電球の特性では $I = 0.10\,\text{A}$ のとき $V = 1.2\,\text{V}$ で、まだ交点ではない。
負荷線上の各点と電球特性を比較すると、$I \approx 0.10\,\text{A}$ 付近で交差するが、正確にはやや大きい $I$ で交わります。特性曲線と負荷線のグラフを描いて交点を読み取ると約 $I \approx 0.12\,\text{A}$、$V \approx 1.6\,\text{V}$ です。
起電力 $E = 10\,\text{V}$(内部抵抗なし)の電池に、$R_1 = 200\,\Omega$ と $R_2 = 300\,\Omega$ が直列に接続されている。$R_2$ に並列に理想ダイオード D を順方向に接続した。
(1) ダイオードに電流が流れるかどうか判断せよ。
(2) $R_1$ に流れる電流と $R_1$ の両端の電圧を求めよ。
(1) ダイオードが順方向に接続されているので電流が流れる(ダイオードが $R_2$ を短絡する)
(2) $I = 0.05\,\text{A}$、$V_{R_1} = 10\,\text{V}$
(1) 理想ダイオードが $R_2$ に並列に順方向に接続されているので、ダイオードは抵抗ゼロの導線として機能します。$R_2$ は短絡されます。
(2) $R_2$ が短絡されるので、回路は $E = 10\,\text{V}$ と $R_1 = 200\,\Omega$ だけの直列回路です。
$I = \dfrac{E}{R_1} = \dfrac{10}{200} = 0.05\,\text{A}$
$V_{R_1} = IR_1 = 0.05 \times 200 = 10\,\text{V}$
$R_2$ の両端の電圧はゼロ(ダイオードで短絡)。全電圧が $R_1$ にかかります。