第24章で学んだ内容を横断的に振り返り、入試で頻出の総合問題に取り組みます。
直線電流・円形電流・ソレノイドがつくる磁場、電流が磁場から受ける力、ローレンツ力、荷電粒子の円運動、速度選別器、ホール効果 ── これらの知識を組み合わせて解く問題を通じて、電磁気学の理解を確固たるものにしましょう。
第24章の主要公式を一覧にまとめます。各公式の意味と使いどころを確認しましょう。
| 場面 | 公式 | ポイント |
|---|---|---|
| 直線電流の磁場 | $B = \dfrac{\mu_0 I}{2\pi r}$ | 距離に反比例、同心円状 |
| 円形電流の中心 | $B = \dfrac{\mu_0 I}{2r}$ | $r$ は円の半径 |
| ソレノイド内部 | $B = \mu_0 n I$ | $n$:単位長さあたりの巻数 |
| 場面 | 公式 | ポイント |
|---|---|---|
| 電流が磁場から受ける力 | $F = BIl\sin\theta$ | フレミング左手の法則で向き決定 |
| 平行電流間の力 | $\dfrac{F}{l} = \dfrac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d}$ | 同方向→引力、逆方向→斥力 |
| ローレンツ力 | $F = qvB\sin\theta$ | 速度と垂直、仕事をしない |
| 場面 | 公式 | ポイント |
|---|---|---|
| 円運動の半径 | $r = \dfrac{mv}{qB}$ | $m, v$ に比例、$q, B$ に反比例 |
| 円運動の周期 | $T = \dfrac{2\pi m}{qB}$ | 速さに依存しない |
| 速度選別器 | $v = \dfrac{E}{B}$ | 電荷・質量に依存しない |
| ホール電圧 | $V_H = \dfrac{IB}{ned}$ | $n$ が小さいほど大きい |
第24章の内容は、大きく3つの柱で整理できます。
(A) 電流 → 磁場をつくる:直線電流、円形電流、ソレノイド
(B) 磁場 → 電流に力を及ぼす:$F = BIl$、平行電流間の力
(C) 磁場 → 荷電粒子に力を及ぼす:ローレンツ力、円運動、速度選別器、ホール効果
入試問題では、これらの柱を組み合わせた出題が多くなります。
まず問題文から、「どの電流(または磁石)が磁場をつくるか」と「何が力を受けるか」を区別します。 同じ電流が磁場をつくりつつ力を受けることもあります(平行電流の問題)。
粒子が等速円運動 → $qvB = \frac{mv^2}{r}$。 定常状態 → ローレンツ力と電場の力がつりあう。 これらをもとに未知数を求めます。
第24章では「右手」と「左手」の法則が両方登場するため、混同しやすくなります。
✕ 誤:電流が磁場から受ける力の向きを右ねじの法則で求める
○ 正:右ねじの法則は「電流がつくる磁場の向き」に使う。「電流が磁場から受ける力」にはフレミング左手の法則を使う
右手 = 磁場の向き、左手 = 力の向き、と明確に区別しましょう。
計算の最後に次元(単位)が合っているかチェックする習慣をつけましょう。
例:$r = \frac{mv}{qB}$ → $\frac{[\text{kg}][\text{m/s}]}{[\text{C}][\text{T}]} = \frac{[\text{kg}][\text{m/s}]}{[\text{C}][\text{kg/(A}\cdot\text{s}^2)]} = [\text{m}]$ → 長さの次元で正しい。
次元が合わなければ、どこかで公式を間違えているサインです。
第24章「電流と磁場」の全体を俯瞰し、各記事のつながりを確認します。
Q1. 直線電流がつくる磁場の向きを決める法則と、電流が磁場から受ける力の向きを決める法則をそれぞれ答えてください。
Q2. 荷電粒子の円運動の周期が速さに依存しない理由を簡潔に説明してください。
Q3. 速度選別器で、通過条件を満たさない粒子はどうなりますか。
Q4. ホール効果で、金属のホール電圧が半導体に比べて極めて小さい理由を述べてください。
Q5. ローレンツ力が仕事をしない理由を述べてください。
第24章全体の知識を使う総合問題に挑戦しましょう。
電子(質量 $m = 9.11 \times 10^{-31}\,\text{kg}$、電荷の大きさ $e = 1.60 \times 10^{-19}\,\text{C}$)が、速さ $v = 4.0 \times 10^{6}\,\text{m/s}$ で磁束密度 $B = 2.0 \times 10^{-3}\,\text{T}$ の一様磁場に垂直に入射した。次の問いに答えよ。
(1) 電子が受けるローレンツ力の大きさを求めよ。
(2) 円運動の半径を求めよ。
(3) 円運動の周期を求めよ。
(1) $F = 1.28 \times 10^{-15}\,\text{N}$
(2) $r \approx 1.14 \times 10^{-2}\,\text{m}$($1.1\,\text{cm}$)
(3) $T \approx 1.79 \times 10^{-8}\,\text{s}$
(1) $F = evB = 1.60 \times 10^{-19} \times 4.0 \times 10^6 \times 2.0 \times 10^{-3} = 1.28 \times 10^{-15}\,\text{N}$
(2) $r = \frac{mv}{eB} = \frac{9.11 \times 10^{-31} \times 4.0 \times 10^6}{1.60 \times 10^{-19} \times 2.0 \times 10^{-3}} = \frac{3.644 \times 10^{-24}}{3.20 \times 10^{-22}} \approx 1.14 \times 10^{-2}\,\text{m}$
(3) $T = \frac{2\pi m}{eB} = \frac{2\pi \times 9.11 \times 10^{-31}}{1.60 \times 10^{-19} \times 2.0 \times 10^{-3}} = \frac{5.73 \times 10^{-30}}{3.20 \times 10^{-22}} \approx 1.79 \times 10^{-8}\,\text{s}$
1価の正イオンを速度選別器に通して速さを揃えた後、一様磁場中に打ち込み半円運動をさせる質量分析の実験を行う。速度選別器の電場は $E = 5.0 \times 10^{4}\,\text{V/m}$、磁場は $B_1 = 0.25\,\text{T}$。質量分析器の磁場は $B_2 = 0.50\,\text{T}$ である。$q = 1.60 \times 10^{-19}\,\text{C}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 速度選別器を通過したイオンの速さ $v$ を求めよ。
(2) 質量 $m_1 = 3.82 \times 10^{-26}\,\text{kg}$ のイオンが描く半円の半径 $r_1$ を求めよ。
(3) 質量 $m_2 = 3.99 \times 10^{-26}\,\text{kg}$ のイオンの半径 $r_2$ を求め、$r_1$ との差 $\Delta r = r_2 - r_1$ を計算せよ。
(1) $v = 2.0 \times 10^{5}\,\text{m/s}$
(2) $r_1 \approx 9.55 \times 10^{-2}\,\text{m}$($9.6\,\text{cm}$)
(3) $r_2 \approx 9.975 \times 10^{-2}\,\text{m}$、$\Delta r \approx 4.3 \times 10^{-3}\,\text{m}$($4.3\,\text{mm}$)
(1) $v = \frac{E}{B_1} = \frac{5.0 \times 10^4}{0.25} = 2.0 \times 10^5\,\text{m/s}$
(2) $r_1 = \frac{m_1 v}{qB_2} = \frac{3.82 \times 10^{-26} \times 2.0 \times 10^5}{1.60 \times 10^{-19} \times 0.50} = \frac{7.64 \times 10^{-21}}{8.0 \times 10^{-20}} = 9.55 \times 10^{-2}\,\text{m}$
(3) $r_2 = \frac{m_2 v}{qB_2} = \frac{3.99 \times 10^{-26} \times 2.0 \times 10^5}{8.0 \times 10^{-20}} = \frac{7.98 \times 10^{-21}}{8.0 \times 10^{-20}} = 9.975 \times 10^{-2}\,\text{m}$
$\Delta r = r_2 - r_1 = 9.975 \times 10^{-2} - 9.55 \times 10^{-2} = 4.25 \times 10^{-3}\,\text{m} \approx 4.3\,\text{mm}$
質量の差が約4.5%($^{23}\text{Na}$ と $^{24}\text{Mg}$ のイメージ)でも、半径の差は約4 mm と十分に分離可能です。
一様磁場 $B$(紙面の奥向き)が存在する領域の左端に、スリット S がある。スリット S から正の荷電粒子(電荷 $q$、質量 $m$)が速さ $v$ で水平右向きに入射する。粒子は磁場領域内で半円運動をして、入射点から距離 $2r$ だけ下方の点 P に到達する。ただし重力は無視する。
(1) 粒子がスリット S から点 P に到達するまでの時間を $m$、$q$、$B$ で表せ。
(2) スリット S から同時に、速さ $2v$ の粒子も入射させた。この粒子が到達する点 P' の位置を P と比較して答えよ。また、P' に到達する時間は P に到達する時間と比べてどうか。
(3) 磁場に加えて、鉛直上向きの一様電場 $E$ を同時にかけた場合(速さ $v$ の粒子を入射)、粒子が直進して通過する条件を求めよ。直進しない場合の運動を定性的に記述せよ。
(1) $t = \frac{\pi m}{qB}$
(2) P' は P から更に $2r$ 下方(スリットから $4r$ 下方)。到達時間は P と同じ $\frac{\pi m}{qB}$。
(3) 直進条件:$qE = qvB$ すなわち $E = vB$
(1) 半円を描くので、時間は周期の半分:$t = \frac{T}{2} = \frac{1}{2} \cdot \frac{2\pi m}{qB} = \frac{\pi m}{qB}$
(2) 速さ $2v$ の粒子の半径は $r' = \frac{m \cdot 2v}{qB} = 2r$。半円の直径は $2r' = 4r$ なので、到達点はスリットから $4r$ 下方の P' です。
到達時間は $\frac{T}{2} = \frac{\pi m}{qB}$。$T$ は速さに依存しないので、到達時間も P の場合と同じです。
(3) 電場による力は $qE$(鉛直上向き)。ローレンツ力は $qvB$(鉛直下向き、右手系で確認)。これらが釣り合う条件は $qE = qvB$ → $E = vB$。
$E > vB$ の場合:電場の力が勝ち、粒子は上向きに曲がりながら進む(ドリフト運動)。
$E < vB$ の場合:ローレンツ力が勝ち、粒子は下向きに曲がりながら進む。
いずれの場合も、粒子は円運動とドリフト運動を合成したサイクロイド的な軌道を描きます。
距離 $d$ だけ離れた2本の平行な十分長い直線導線 A, B に、同じ大きさの電流 $I$ が同じ向きに流れている。導線 A から距離 $\frac{d}{4}$(AB間)の点 P において、正の荷電粒子(電荷 $q$、質量 $m$)を2本の導線に平行に速さ $v$ で打ち出した。
(1) 点 P における合成磁場の大きさと向きを求めよ。
(2) 荷電粒子が点 P で受けるローレンツ力の大きさと向きを求めよ。
(3) この粒子は AB 間で安定に直進できるか。定性的に議論せよ。
(1) $B_P = \frac{2\mu_0 I}{3\pi d}$、向きは A, B を結ぶ線に垂直(右ねじの法則で決定)
(2) $F = qv \cdot \frac{2\mu_0 I}{3\pi d}$、向きは導線 A に向かう方向
(3) 安定に直進できない(下記解説参照)
(1) 点 P は A から $\frac{d}{4}$、B から $\frac{3d}{4}$ の位置。
A による磁場:$B_A = \frac{\mu_0 I}{2\pi \cdot \frac{d}{4}} = \frac{2\mu_0 I}{\pi d}$(右ねじの法則で向きを決定)
B による磁場:$B_B = \frac{\mu_0 I}{2\pi \cdot \frac{3d}{4}} = \frac{2\mu_0 I}{3\pi d}$(右ねじの法則で向きを決定)
同じ向きの電流なので、AB間では $B_A$ と $B_B$ は逆向き。P は A に近いので $B_A > B_B$。
$B_P = B_A - B_B = \frac{2\mu_0 I}{\pi d} - \frac{2\mu_0 I}{3\pi d} = \frac{2\mu_0 I}{\pi d}\left(1 - \frac{1}{3}\right) = \frac{4\mu_0 I}{3\pi d}$
(2) $F = qvB_P = \frac{4\mu_0 Iqv}{3\pi d}$。ローレンツ力の向きは $\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$ で決まり、2本の導線を結ぶ方向(A に向かう向きか B に向かう向き)のいずれかです。
(3) AB の中点では合成磁場がゼロですが、中点からずれると磁場が非ゼロになり、ローレンツ力が働きます。粒子が中点からわずかにずれた場合、ローレンツ力の向きが元に戻す方向であれば安定ですが、実際には磁場の向きの構造から安定平衡にはなりません。粒子はらせん運動をしながら導線に近づいていきます。