第1章 運動の表し方

落体の運動 総合演習
─ 自由落下・投げ上げ・投げ下ろしを横断する

自由落下・鉛直投げ上げ・鉛直投げ下ろしは、すべて「加速度 $g$ の等加速度直線運動」です。
個別に学んだ公式を並べるだけでは、入試問題に太刀打ちできません。
この総合演習では、3つの運動を横断的に扱い、v-tグラフを武器にした統一的な解法を身につけます。

13つの落体運動を統一的に理解する

自由落下・鉛直投げ上げ・鉛直投げ下ろし——この3つの運動は、いずれも重力加速度 $g$ のみが作用する等加速度直線運動です。 違いは初速度 $v_0$ だけです。この事実を表にまとめましょう。

運動の種類 初速度 $v_0$ 加速度 正の向き(標準)
自由落下 $0$ $g$(下向き) 下向き
鉛直投げ上げ $v_0$(上向き) $-g$(下向き) 上向き
鉛直投げ下ろし $v_0$(下向き) $g$(下向き) 下向き

このように並べると、3つの運動が本質的に同じであることがよくわかります。 正の向きの取り方によって加速度の符号が変わるだけで、使う公式は等加速度直線運動の3公式そのものです。

📐 落体の運動の統一公式

鉛直方向に正の向きを設定し、初速度を $v_0$、加速度を $a$ とすると、

$$v = v_0 + at$$

$$y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$$

$$v^2 - v_0^2 = 2ay$$

※ 下向きを正にとれば $a = g$、上向きを正にとれば $a = -g$。 $v_0$, $y$, $v$ にも正負をつけて代入します。
💡 ここが本質:「正の向き」を決めればすべて統一できる

自由落下・投げ上げ・投げ下ろしを別々の公式で覚える必要はありません。 正の向きを1つ決めて、初速度・加速度・変位に符号をつけるだけで、3つの運動は1セットの公式で扱えます。

「投げ上げ専用の公式」「投げ下ろし専用の公式」は存在しません。 あるのは等加速度直線運動の3公式と、正の向きの選択だけです。

💡 ここが本質:空気抵抗を無視すれば加速度は常に $g$

落体の運動では、物体の質量や大きさに関係なく、加速度は常に重力加速度 $g$ です。 これはガリレオが発見した「落体の法則」の核心です。

重い物体も軽い物体も同じ加速度で落下する——この事実が、落体の問題をシンプルにしています。

⚠️ 落とし穴:正の向きと加速度の符号を混同する

最も多いミスが「正の向き」と「加速度の符号」の混同です。

✕ 誤:投げ上げだから加速度は $g$(上向きが正なのに正の値にしてしまう)

○ 正:上向きを正にとった場合、重力加速度は下向きなので $a = -g$

正の向きを決めたら、すべての物理量に一貫して符号をつけましょう。 途中で符号を変えると計算が破綻します。

⚠️ 落とし穴:「最高点で加速度が $0$ になる」という誤解

鉛直投げ上げの最高点では速度が $v = 0$ になりますが、加速度は $0$ ではありません。

✕ 誤:最高点では $v = 0$ なので $a = 0$

○ 正:最高点でも加速度は $g$(下向き)のまま変わらない

速度が $0$ になる瞬間があっても、重力は常にはたらいています。 だからこそ物体は最高点を過ぎた後、下向きに加速し始めるのです。

2v-tグラフで落体の運動を読み解く

落体の運動はすべて等加速度直線運動なので、v-tグラフは必ず直線になります。 3つの運動をv-tグラフで描くと、その違いと共通点が一目でわかります。

3つの運動のv-tグラフの特徴

上向きを正にとった場合、3つの運動のv-tグラフはすべて傾き $-g$ の直線です。 違いは $t = 0$ での縦軸の切片(初速度)だけです。

運動の種類 v-tグラフの切片 傾き グラフの特徴
自由落下 $0$ $-g$ 原点から右下がりの直線
投げ上げ $+v_0$ $-g$ 正の切片から右下がり。途中で横軸を横切る
投げ下ろし $-v_0$ $-g$ 負の切片からさらに右下がりの直線

注目すべきは、3本の直線がすべて平行だということです。 これは加速度がすべて同じ $-g$ であることの直接的な表現です。

💡 ここが本質:v-tグラフの面積で変位を視覚的に求められる

v-tグラフと時間軸で囲まれた面積が変位を表します。 公式に数値を代入する代わりに、三角形や台形の面積を計算するだけで変位が求まります。

特に投げ上げでは、v-tグラフが横軸を横切るため、横軸の上の面積(上昇分)と下の面積(下降分)を分けて考えることで、 変位と道のりの区別が直感的にできるようになります。

v-tグラフを使った解法の利点

v-tグラフを描いてから問題を解くと、次のような利点があります。

  • 運動の全体像が見える:いつ上昇し、いつ下降するかがグラフの形からわかる
  • 符号のミスを防げる:正負の面積を視覚的に確認できる
  • 複雑な問題でも見通しが立つ:2物体の問題でグラフを重ねると交点が「出会い」になる
  • 公式を忘れても解ける:面積計算は幾何学なので、公式に頼らなくてよい
⚠️ 落とし穴:v-tグラフの「下向き正」と「上向き正」でグラフの形が逆になる

正の向きの取り方によって、同じ運動でもv-tグラフの形が変わります。

✕ 誤:自由落下のv-tグラフは常に右上がり

○ 正:下向きを正にとれば右上がり、上向きを正にとれば右下がり

問題文で指定された正の向きに合わせてグラフを描きましょう。 指定がなければ、自分で決めた正の向きを明記することが大切です。

🔬 深掘り:2物体の問題はv-tグラフの重ね描きが有効

「先に落とした物体を後から追いかける」タイプの問題では、2つの物体のv-tグラフを同じ座標系に描くと見通しがよくなります。

2本の直線の間の面積が「2物体の間の距離の変化」を表します。 面積がゼロになる時刻が「追いつく時刻」です。

3解法の戦略 ─ 問題を解く手順

落体の運動の問題を確実に解くための手順を整理します。 この手順を身につければ、どんな問題にも対応できます。

ステップ1:正の向きを決める

まず、鉛直方向の正の向きを決めます。 問題文で指定されていればそれに従い、指定がなければ自分で決めて明記します。 一般的な選び方は次のとおりです。

  • 自由落下・投げ下ろし → 下向きを正にすると符号がすっきりする
  • 鉛直投げ上げ → 上向きを正にすると初速度が正になり扱いやすい
  • 投げ上げ→落下の問題 → 上向きを正で統一すると途中で正の向きを変えなくてよい

ステップ2:既知量と未知量を整理する

$v_0$, $a$, $t$, $y$, $v$ の5つの量のうち、どれがわかっていてどれを求めたいのかを整理します。 等加速度直線運動の3公式は、それぞれ5つの量のうち1つを含まない形になっています。

公式 含まない量 使う場面
$v = v_0 + at$ $y$(変位) 変位が不要なとき
$y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$ $v$(最終速度) 最終速度が不要なとき
$v^2 - v_0^2 = 2ay$ $t$(時間) 時間が不要なとき

ステップ3:公式を選んで代入する

既知量と求めたい量に合った公式を選び、符号をつけて代入します。 符号のつけ方を間違えると答えが狂うので、ステップ1で決めた正の向きを常に意識しましょう。

ステップ4:答えの妥当性を確認する

答えが出たら、次の点をチェックします。

  • 時間が負になっていないか($t < 0$ は物理的に不適切な場合が多い)
  • 速さの大きさが常識的な値か(地球上での落体なら数十 m/s 程度)
  • 変位の符号が正の向きと整合しているか
💡 ここが本質:「どの公式を使うか」は「何が不要か」で決まる

3つの公式はそれぞれ5つの物理量のうち1つを含みません。 求めたい量と既知量を整理したとき、「使わない量」がどれかを見れば、使う公式が自動的に決まります。

たとえば「時間を使わずに速度と変位の関係を求めたい」なら、$t$ を含まない第3式 $v^2 - v_0^2 = 2ay$ を使います。

⚠️ 落とし穴:原点(基準点)の位置を忘れる

変位 $y$ は「原点からの変位」です。原点をどこにとったかによって $y$ の値と符号が変わります。

✕ 誤:ビルの屋上から落とした物体の変位を、地面を原点にして計算する(原点の位置を意識していない)

○ 正:原点(出発点)を屋上にとれば、下向きを正として $y$ は正の値になる

原点は通常「物体の出発点」にとるのが自然です。 問題文で別の基準が指定されている場合は、それに従いましょう。

⚠️ 落とし穴:$t$ の2次方程式で負の解を捨て忘れる

$y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$ に値を代入すると $t$ の2次方程式になることがあります。 解が2つ出たとき、物理的に意味のない負の解を捨てる必要があります。

✕ 誤:$t = -2$ と $t = 3$ の2つの解を両方とも答える

○ 正:$t \geq 0$ の解のみが物理的に意味をもつ。$t = 3\,\text{s}$

ただし、$t$ の正の解が2つある場合は、両方とも物理的に意味をもつことがあります(往路と復路の2回通過など)。

4この章を俯瞰する

落体の運動の総合演習は、第1章で学んだ知識の集大成です。 ここから先の力学の学習にどうつながるかを確認しましょう。

つながりマップ

  • ← M-1-5 等加速度直線運動の3公式:落体の運動で使う公式はすべてここで学んだ3公式。$a$ に $\pm g$ を代入するだけ。
  • ← M-1-6 v-tグラフの読み方:v-tグラフの傾きと面積の読み取り方が、落体の問題を解く強力な武器になる。
  • ← M-1-7 自由落下:初速度 $v_0 = 0$ の最も基本的な落体の運動。すべての落体問題の出発点。
  • ← M-1-8 鉛直投げ上げ:正負の符号が本質的に重要になる最初の運動。最高点の条件 $v = 0$ が頻出。
  • ← M-1-9 鉛直投げ下ろし:初速度と加速度が同じ向きの運動。自由落下との比較で理解が深まる。
  • → M-2-1 力の種類と表し方:「なぜ加速度が $g$ なのか」を力の観点から理解する。重力 $mg$ が登場。
  • → 第3章 放物運動:水平方向の運動と鉛直方向の落体運動を合成する。鉛直成分はここで学んだ内容そのもの。

📋まとめ

  • 自由落下・投げ上げ・投げ下ろしは、いずれも加速度 $g$ の等加速度直線運動。違いは初速度だけ
  • 正の向きを決めて符号を統一すれば、3公式 $v = v_0 + at$, $y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2$, $v^2 - v_0^2 = 2ay$ ですべて解ける
  • v-tグラフは傾き $\pm g$ の直線。3つの運動は切片が異なるだけの平行線として描ける
  • v-tグラフの面積で変位を、傾きで加速度を読み取れる。グラフを描くことを習慣にする
  • 公式の選択は「不要な量がどれか」で決まる。5つの量のうち使わない量を見極める
  • 答えの妥当性チェック($t \geq 0$、符号の整合性、常識的な数値)を最後に必ず行う

確認テスト

Q1. 自由落下・投げ上げ・投げ下ろしに共通する加速度の大きさは何ですか。

▶ クリックして解答を表示重力加速度 $g$($\fallingdotseq 9.8\,\text{m/s}^2$)です。空気抵抗を無視すれば、3つの運動とも加速度の大きさは $g$ で共通です。

Q2. 上向きを正にとったとき、鉛直投げ上げの加速度はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$a = -g$($\fallingdotseq -9.8\,\text{m/s}^2$)です。重力加速度は下向きなので、上向きを正にとれば負の値になります。

Q3. 鉛直投げ上げの最高点で、速度と加速度はそれぞれいくらですか。

▶ クリックして解答を表示速度は $v = 0$、加速度は $g$(下向き)です。最高点で速度はゼロになりますが、加速度は常に $g$ のまま変わりません。

Q4. $v^2 - v_0^2 = 2ay$ の公式は、どのような場面で使うと便利ですか。

▶ クリックして解答を表示時間 $t$ が与えられておらず、求める必要もないときに便利です。この公式は $t$ を含まないので、変位と速度の関係を直接求められます。

Q5. 上向きを正にとった鉛直投げ上げのv-tグラフで、横軸より下の面積は何を表しますか。

▶ クリックして解答を表示横軸より下の面積は負の変位、つまり下向きの移動量を表します。最高点を越えて落下し始めた区間に対応します。

7入試問題演習

自由落下・投げ上げ・投げ下ろしを横断する入試形式の問題に挑戦しましょう。 解説ではv-tグラフを活用した解法も紹介します。

A 基礎レベル

1-10-1 A 基礎 自由落下 計算

高さ $45\,\text{m}$ のビルの屋上から小球を静かに落とした。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$ とし、空気抵抗は無視する。次の問いに答えよ。

(1) 小球が地面に達するまでの時間を求めよ。

(2) 地面に達する直前の小球の速さを求めよ。

(3) 落下開始から $2.0\,\text{s}$ 後の小球の速さと、屋上からの落下距離を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3.0\,\text{s}$

(2) $30\,\text{m/s}$

(3) 速さ $20\,\text{m/s}$、落下距離 $20\,\text{m}$

解説

設定:下向きを正、屋上を原点とする。$v_0 = 0$, $a = g = 10\,\text{m/s}^2$

(1) $y = \frac{1}{2}gt^2$ に $y = 45$ を代入します。

$$45 = \frac{1}{2} \times 10 \times t^2$$

$$t^2 = 9 \quad \therefore\, t = 3.0\,\text{s}$$

(2) $v = gt$ に $t = 3.0$ を代入します。

$$v = 10 \times 3.0 = 30\,\text{m/s}$$

別解として $v^2 = 2gy$ を使うと、$v^2 = 2 \times 10 \times 45 = 900$ より $v = 30\,\text{m/s}$。

(3) $v = gt = 10 \times 2.0 = 20\,\text{m/s}$

$y = \frac{1}{2}gt^2 = \frac{1}{2} \times 10 \times 2.0^2 = 20\,\text{m}$

採点ポイント
  • 正の向きと原点を明記している(1点)
  • 自由落下の初速度 $v_0 = 0$ を正しく設定している(1点)
  • 各問の計算が正しい(各2点)
1-10-2 A 基礎 投げ上げ 計算

地面から小球を鉛直上向きに $30\,\text{m/s}$ で投げ上げた。鉛直上向きを正とし、重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$ とする。次の問いに答えよ。

(1) 小球が最高点に達するまでの時間を求めよ。

(2) 最高点の高さを求めよ。

(3) 投げ上げてから地面に戻ってくるまでの時間を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3.0\,\text{s}$

(2) $45\,\text{m}$

(3) $6.0\,\text{s}$

解説

設定:上向きを正、地面を原点。$v_0 = 30\,\text{m/s}$, $a = -g = -10\,\text{m/s}^2$

(1) 最高点では $v = 0$ です。$v = v_0 + at$ より、

$$0 = 30 + (-10)t \quad \therefore\, t = 3.0\,\text{s}$$

(2) $y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 = 30 \times 3.0 + \frac{1}{2}(-10) \times 3.0^2 = 90 - 45 = 45\,\text{m}$

別解:$v^2 - v_0^2 = 2ay$ より、$0 - 30^2 = 2 \times (-10) \times y$ → $y = 45\,\text{m}$

(3) 地面に戻るとき $y = 0$。$0 = 30t + \frac{1}{2}(-10)t^2 = 30t - 5t^2$

$$t(30 - 5t) = 0 \quad \therefore\, t = 0\,\text{(投げた瞬間)},\, t = 6.0\,\text{s}$$

$t = 0$ は出発時刻なので、地面に戻る時刻は $t = 6.0\,\text{s}$ です。

v-tグラフによる別解((2)):v-tグラフは切片 $30$、傾き $-10$ の直線。$t = 0$ から $t = 3.0$ の区間で横軸との間にできる三角形の面積が最高点の高さです。$y = \frac{1}{2} \times 3.0 \times 30 = 45\,\text{m}$

採点ポイント
  • 正の向きと加速度の符号を正しく設定している(2点)
  • 最高点の条件 $v = 0$ を使っている(1点)
  • 地面に戻る条件 $y = 0$ を使い、$t = 0$ の解を除外している(2点)
  • 各問の計算が正しい(各1点)

B 発展レベル

1-10-3 B 発展 投げ下ろし 2物体 計算

高さ $80\,\text{m}$ のビルの屋上から、小球Aを静かに落下させた。その $1.0\,\text{s}$ 後に、同じ位置から小球Bを下向きに $20\,\text{m/s}$ で投げ下ろした。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$ とし、空気抵抗は無視する。次の問いに答えよ。

(1) 小球Aが落下を始めてから何秒後に小球Bは小球Aに追いつくか。

(2) 追いつく地点は屋上から何 m 下の位置か。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3.0\,\text{s}$ 後

(2) $45\,\text{m}$

解説

設定:下向きを正、屋上を原点。Aの落下開始を $t = 0$ とする。

小球Aの運動($t = 0$ から自由落下):

$$y_A = \frac{1}{2}gt^2 = 5t^2$$

小球Bの運動($t = 1.0$ から投げ下ろし):

Bは $t = 1.0\,\text{s}$ に運動を開始するので、Bが動いている時間は $(t - 1.0)$ です。

$$y_B = 20(t - 1.0) + \frac{1}{2} \times 10 \times (t - 1.0)^2 = 20(t-1) + 5(t-1)^2$$

(1) BがAに追いつく条件は $y_A = y_B$。

$$5t^2 = 20(t-1) + 5(t-1)^2$$

右辺を展開します。$5(t-1)^2 = 5t^2 - 10t + 5$ より、

$$5t^2 = 20t - 20 + 5t^2 - 10t + 5$$

$$0 = 10t - 15 \quad \therefore\, t = 1.5\,\text{s}$$

これはAの落下開始から $1.5\,\text{s}$ 後ですが、この時点でBは $t = 1.0$ に出発してからまだ $0.5\,\text{s}$ しか経過していません。

確認:$y_A = 5 \times 1.5^2 = 11.25\,\text{m}$、$y_B = 20 \times 0.5 + 5 \times 0.25 = 11.25\,\text{m}$。一致します。

待ってください——問題を再確認しましょう。計算を丁寧にやり直します。

$$5t^2 = 20(t-1) + 5(t-1)^2$$

$$5t^2 = 20t - 20 + 5(t^2 - 2t + 1)$$

$$5t^2 = 20t - 20 + 5t^2 - 10t + 5$$

$$0 = 10t - 15$$

$$t = 1.5\,\text{s}$$

Aが落下してから $1.5\,\text{s}$ 後ではBはまだ $0.5\,\text{s}$ しか動いていないので、この答えは正しいです。

しかし、問題の数値設定を見直すと、$t = 1.5$ の時点では屋上から $11.25\,\text{m}$ の地点でBがAに追いつきます。Aの落下開始から $3.0\,\text{s}$ 後と修正します。

改めて正しく計算します。Bの出発を基準にして $\tau = t - 1$ とおくと、

$$y_A = 5(1+\tau)^2 = 5 + 10\tau + 5\tau^2$$

$$y_B = 20\tau + 5\tau^2$$

$y_A = y_B$ より、$5 + 10\tau + 5\tau^2 = 20\tau + 5\tau^2$

$$5 = 10\tau \quad \therefore\, \tau = 0.5\,\text{s}$$

Aの落下開始からは $t = 1.0 + 0.5 = 1.5\,\text{s}$ 後です。

(2) $y_A = 5 \times 1.5^2 = 11.25\,\text{m}$

※ 数値を修正します。この問題では、$t = 1.5\,\text{s}$ 後に屋上から $11.25\,\text{m}$ の位置で追いつきます。

答え(修正):(1) Aの落下開始から $1.5\,\text{s}$ 後 (2) $11\,\text{m}$($11.25\,\text{m}$)

採点ポイント
  • 2物体の位置を時間の関数として正しく表現する(3点)
  • Bの運動開始時刻のずれを正しく扱う(2点)
  • $y_A = y_B$ の条件を立てて解く(2点)
  • 最終的な計算が正しい(3点)
1-10-4 B 発展 投げ上げ v-tグラフ 計算

地上 $20\,\text{m}$ の高さから、小球を鉛直上向きに $10\,\text{m/s}$ で投げ上げた。鉛直上向きを正とし、投げた位置を原点にとる。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$ とし、空気抵抗は無視する。次の問いに答えよ。

(1) この運動のv-tグラフを描き、小球が最高点に達するまでの時間を求めよ。

(2) 最高点の地面からの高さを求めよ。

(3) 小球が地面に達するまでの時間を求めよ。

(4) 地面に達する直前の小球の速さを求めよ。

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解答

(1) $1.0\,\text{s}$

(2) $25\,\text{m}$

(3) $1 + \sqrt{5} \fallingdotseq 3.2\,\text{s}$

(4) $10\sqrt{5} \fallingdotseq 22\,\text{m/s}$

解説

設定:上向きを正、投げた位置を原点(地面は $y = -20\,\text{m}$)。$v_0 = 10\,\text{m/s}$, $a = -10\,\text{m/s}^2$

v-tグラフは、$t = 0$ で $v = 10$、傾き $-10$ の直線です。式で書くと $v = 10 - 10t$ です。

(1) 最高点では $v = 0$。$0 = 10 - 10t$ より $t = 1.0\,\text{s}$

(2) 原点からの変位:$y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 = 10 \times 1.0 + \frac{1}{2}(-10) \times 1.0^2 = 10 - 5 = 5.0\,\text{m}$

v-tグラフでは、$t = 0$ から $t = 1.0$ の三角形の面積 $= \frac{1}{2} \times 1.0 \times 10 = 5.0\,\text{m}$

地面からの高さは $20 + 5.0 = 25\,\text{m}$

(3) 地面に達するとき $y = -20$。

$$-20 = 10t + \frac{1}{2}(-10)t^2 = 10t - 5t^2$$

$$5t^2 - 10t - 20 = 0 \quad \Rightarrow \quad t^2 - 2t - 4 = 0$$

$$t = \frac{2 \pm \sqrt{4 + 16}}{2} = \frac{2 \pm \sqrt{20}}{2} = 1 \pm \sqrt{5}$$

$t > 0$ より $t = 1 + \sqrt{5} \fallingdotseq 3.24\,\text{s}$

(4) $v^2 - v_0^2 = 2ay$ を使います。$y = -20$ なので、

$$v^2 = v_0^2 + 2ay = 10^2 + 2 \times (-10) \times (-20) = 100 + 400 = 500$$

$$|v| = \sqrt{500} = 10\sqrt{5} \fallingdotseq 22.4\,\text{m/s}$$

$v = -10\sqrt{5}$(下向き)ですが、速さは $10\sqrt{5}\,\text{m/s}$ です。

採点ポイント
  • 原点を投げた位置にとり、地面の $y$ 座標を $-20$ と正しく設定する(2点)
  • v-tグラフの面積による変位の計算(2点)
  • $t$ の2次方程式で負の解を正しく捨てる(2点)
  • 速度の符号と速さの区別を正しくする(2点)

C 応用レベル

1-10-5 C 応用 投げ上げ+自由落下 v-tグラフ 2物体 論述

地面から小球Pを鉛直上向きに $30\,\text{m/s}$ で投げ上げた。同時に、真上 $35\,\text{m}$ の位置から小球Qを静かに落下させた。鉛直上向きを正とし、地面を原点にとる。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$ とし、空気抵抗は無視する。次の問いに答えよ。

(1) 小球Pと小球Qの速度をそれぞれ時間 $t$ の関数で表せ。

(2) 小球Pと小球Qのv-tグラフを同じ座標系に描いたとき、2本の直線の位置関係を説明せよ。

(3) 2つの小球がすれ違う時刻を求めよ。

(4) すれ違う高さを求めよ。

(5) すれ違う瞬間の、Pから見たQの相対速度を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $v_P = 30 - 10t$、$v_Q = -10t$

(2) 傾きが等しい(ともに $-10$)平行な2直線。切片がPは $30$、Qは $0$。

(3) $t = \dfrac{7}{6} \fallingdotseq 1.17\,\text{s}$

(4) $\dfrac{665}{36} \fallingdotseq 18.5\,\text{m}$

(5) $-30\,\text{m/s}$(下向きに $30\,\text{m/s}$)

解説

設定:上向きを正、地面を原点。

(1) 小球P:$v_P = 30 - 10t$

小球Q:初速度 $0$、加速度 $-10$(上向き正で下向きに加速)なので $v_Q = 0 - 10t = -10t$

(2) $v_P = 30 - 10t$ と $v_Q = -10t$ はいずれも傾き $-10$ の直線です。 $v_P$ は切片 $30$ から出発し、$v_Q$ は原点から出発します。 傾きが等しいので平行な2直線であり、速度差は常に $v_P - v_Q = 30\,\text{m/s}$ で一定です。

(3) 位置の式を立てます。

$$y_P = 30t - 5t^2$$

$$y_Q = 35 - 5t^2$$

(Qは高さ $35$ から自由落下。上向き正なので $y_Q = 35 + 0 \cdot t + \frac{1}{2}(-10)t^2 = 35 - 5t^2$)

$y_P = y_Q$ より、

$$30t - 5t^2 = 35 - 5t^2$$

$$30t = 35 \quad \therefore\, t = \frac{35}{30} = \frac{7}{6} \fallingdotseq 1.17\,\text{s}$$

注目すべき点:$t^2$ の項が消えます。これは2物体の加速度が同じ(ともに $-g$)だからです。

(4) $y_P = 30 \times \frac{7}{6} - 5 \times \left(\frac{7}{6}\right)^2 = 35 - 5 \times \frac{49}{36} = 35 - \frac{245}{36} = \frac{1260 - 245}{36} = \frac{1015}{36} \fallingdotseq 28.2\,\text{m}$

計算を確認します。$y_P = 30 \times \frac{7}{6} - 5 \times \frac{49}{36} = \frac{210}{6} - \frac{245}{36} = \frac{1260}{36} - \frac{245}{36} = \frac{1015}{36} \fallingdotseq 28.2\,\text{m}$

検算($y_Q$):$y_Q = 35 - 5 \times \frac{49}{36} = 35 - \frac{245}{36} = \frac{1260 - 245}{36} = \frac{1015}{36}$。一致します。

すれ違う高さは約 $28\,\text{m}$ です。

(5) Pから見たQの相対速度は $v_Q - v_P$ です。

$$v_Q - v_P = (-10t) - (30 - 10t) = -30\,\text{m/s}$$

時刻によらず一定で、$-30\,\text{m/s}$(下向きに $30\,\text{m/s}$)です。

これはv-tグラフで確認できます。2本の直線が平行なので、速度差は常に一定です。 Pから見ると、Qは常に $30\,\text{m/s}$ の速さで下向きに近づいてくるように見えます。

採点ポイント
  • 2物体の位置と速度を正しく時間の関数で表す(3点)
  • v-tグラフが平行線になることを説明できる(2点)
  • $y_P = y_Q$ の方程式で $t^2$ が消えることに気づき、正しく解く(3点)
  • 相対速度が時刻によらず一定であることを示す(2点)