第1章 運動の表し方

鉛直投げ上げ
─ 最高点で速度ゼロ

ボールを真上に投げると、だんだん遅くなり、一瞬止まり、そして落ちてくる——。
この「当たり前」の現象を、物理の目で正確に記述するとどうなるでしょうか。
鉛直投げ上げは、自由落下と同じ加速度 $g$ が支配する運動です。上向きを正にとって符号を丁寧に扱えば、3公式がそのまま使えます。最高点の高さ・滞空時間・上昇と下降の対称性を、ひとつずつ理解していきましょう。

1鉛直投げ上げとは ─ 上向きを正にとる

鉛直投げ上げとは、物体を鉛直上向きに初速度 $v_0$ で投げ上げ、重力だけが作用する運動のことです。 空気抵抗を無視すれば、物体には常に下向きの重力加速度 $g$ だけがはたらきます。

たとえば、あなたがバスケットボールを真上にパスするとき。手を離れた瞬間から、ボールにはたらく力は重力だけです。 上昇中も、最高点でも、下降中も、加速度はつねに同じ——下向き $g$ です。 ボールが「だんだんゆっくりになる」のは、上向きの速度を重力が削り続けているからです。

座標軸の取り方が最重要

鉛直投げ上げでは、鉛直上向きを正にとるのが定番です。 このとき、初速度は $+v_0$(上向きだから正)、加速度は $-g$(下向きだから負)になります。

この符号の約束さえ守れば、等加速度直線運動の3公式がそのまま使えます。 自由落下との違いは、初速度がゼロではなく $v_0$ であることだけです。

💡 ここが本質:鉛直投げ上げは「符号つき自由落下」

自由落下・鉛直投げ上げ・鉛直投げ下ろし——これらはすべて「加速度が $g$(鉛直下向き)の等加速度直線運動」です。違いは初速度の向きと大きさだけです。

鉛直投げ上げを特別な運動と思わず、「上向きを正にとった等加速度直線運動で $a = -g$」と捉えることが、正しく解くための出発点です。

💡 ここが本質:加速度は「ずっと一定」

上昇中も、最高点でも、下降中でも、加速度は常に $a = -g$(下向き)です。 上昇中に「減速」するのは加速度の向きが速度と逆だからであり、加速度の大きさが変わるわけではありません。

最高点で「速度がゼロだから加速度もゼロ」と考えるのは誤りです。速度がゼロでも加速度は $-g$ のままです。

⚠️ 落とし穴:上向きを正にしたのに $a = +g$ と書く

上向きを正にとったとき、重力加速度は下向きなので $a = -g$ です。

✕ 誤:上向き正で $a = g = 9.8\,\text{m/s}^2$

○ 正:上向き正で $a = -g = -9.8\,\text{m/s}^2$

符号を間違えると、すべての計算結果がおかしくなります。座標軸を設定したら、加速度の符号を真っ先に確認しましょう。

23公式を鉛直投げ上げに適用する

等加速度直線運動の3公式に $a = -g$ を代入するだけで、鉛直投げ上げの公式が得られます。 新しい公式を暗記するのではなく、3公式+符号で対応するのが正しいアプローチです。

📐 鉛直投げ上げの3公式(上向き正)

第1式(速度の式)

$$v = v_0 - gt$$

第2式(位置の式)

$$y = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2$$

第3式(時間を含まない式)

$$v^2 = v_0^2 - 2gy$$

※ $v_0$:初速度(上向きに投げ上げた速さ)、$g$:重力加速度の大きさ($9.8\,\text{m/s}^2$)、$y$:投げ上げ地点からの高さ(上向きが正)
▷ 3公式からの導出

等加速度直線運動の3公式は、

$$v = v_0 + at, \quad x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2, \quad v^2 = v_0^2 + 2ax$$

上向きを正にとると $a = -g$ なので、変位 $x$ を高さ $y$ に置き換えて、

$$v = v_0 + (-g)t = v_0 - gt$$

$$y = v_0 t + \frac{1}{2}(-g)t^2 = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2$$

$$v^2 = v_0^2 + 2(-g)y = v_0^2 - 2gy$$

つまり、3公式に $a = -g$ を代入しただけです。特別な暗記は不要です。

⚠️ 落とし穴:公式のマイナスを暗記に頼る

「$v = v_0 - gt$ のマイナスはどっちだっけ?」と迷う人がいますが、これは丸暗記の弊害です。

✕ 誤:鉛直投げ上げ専用の公式として $v = v_0 - gt$ を暗記する

○ 正:$v = v_0 + at$ に $a = -g$ を代入して $v = v_0 - gt$ を導く

符号を自分で導く習慣をつければ、どの問題でも確実に正しい式を立てられます。

🔬 深掘り:v-tグラフで見る鉛直投げ上げ

鉛直投げ上げのv-tグラフは、切片が $v_0$、傾きが $-g$ の右下がりの直線です。

このグラフが横軸($v = 0$)を横切る時刻が最高点に達する時刻です。横軸より上の面積が上昇中の変位(正)、横軸より下の面積が下降中の変位(負)を表します。

v-tグラフを描くと、最高点の時刻、上昇と下降の対称性が一目でわかります。

3最高点の条件 ─ $v = 0$ の瞬間

投げ上げた物体はやがて最高点に達します。 最高点では物体が一瞬「静止」する——つまり速度がゼロになります。 この条件を使えば、最高点に達する時刻と最高点の高さを求めることができます。

最高点に達する時刻

第1式 $v = v_0 - gt$ で $v = 0$ とおくと、

$$0 = v_0 - gt \quad \Longrightarrow \quad t = \frac{v_0}{g}$$

これが投げ上げてから最高点に達するまでの上昇時間です。 初速度が大きいほど、最高点に達するまでの時間は長くなります。

最高点の高さ

最高点の高さ $H$ は、第3式 $v^2 = v_0^2 - 2gy$ で $v = 0$ とおくことで求まります。

$$0 = v_0^2 - 2gH \quad \Longrightarrow \quad H = \frac{v_0^2}{2g}$$

初速度を2倍にすると、最高点の高さは4倍になります。$H$ が $v_0^2$ に比例していることに注目してください。

📐 最高点の条件

最高点に達する時刻

$$t_{\text{top}} = \frac{v_0}{g}$$

最高点の高さ

$$H = \frac{v_0^2}{2g}$$

※ いずれも $v = 0$ の条件から導かれる。$v_0$ を2倍にすると $t_{\text{top}}$ は2倍、$H$ は4倍になる。
▷ 第2式からも最高点の高さを導く

上昇時間 $t = \dfrac{v_0}{g}$ を第2式に代入しても同じ結果が得られます。

$$H = v_0 \cdot \frac{v_0}{g} - \frac{1}{2}g\left(\frac{v_0}{g}\right)^2 = \frac{v_0^2}{g} - \frac{v_0^2}{2g} = \frac{v_0^2}{2g}$$

第2式からでも第3式からでも同じ $H = \dfrac{v_0^2}{2g}$ が得られます。公式は互いに矛盾しないことを確認しておきましょう。

💡 ここが本質:$v = 0$ は「折り返し点」

最高点で $v = 0$ になるのは、物体が永久に止まるからではありません。重力が下向きにはたらき続けているため、$v = 0$ の次の瞬間には下向きに運動を始めます。

$v = 0$ は「上昇から下降への切り替わりの一瞬」です。物体は止まるのではなく、折り返すのです。

⚠️ 落とし穴:最高点で加速度がゼロだと思い込む

最高点で $v = 0$ になりますが、加速度まで $0$ になるわけではありません。

✕ 誤:最高点では速度も加速度もゼロ

○ 正:最高点では速度はゼロだが、加速度は $-g$(下向き)のまま

もし加速度もゼロなら、物体はそこに静止し続けることになります。実際にはすぐに落下を始めるので、加速度は $-g$ のままです。

4上昇と下降の対称性

鉛直投げ上げには美しい対称性があります。 上昇にかかる時間と下降にかかる時間が等しいという性質です。 この対称性を理解すると、問題を効率よく解けるようになります。

滞空時間

投げ上げ地点に戻ってくるとき、$y = 0$ です。第2式で $y = 0$ とおくと、

$$0 = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2 = t\left(v_0 - \frac{1}{2}gt\right)$$

$t = 0$(出発時刻)と $t = \dfrac{2v_0}{g}$(帰還時刻)の2つの解が得られます。 したがって、滞空時間(空中にいる全時間)は、

$$T = \frac{2v_0}{g}$$

これは上昇時間 $\dfrac{v_0}{g}$ のちょうど2倍です。 つまり、上昇時間と下降時間は等しいのです。

帰還時の速さ

投げ上げ地点に戻ってきた瞬間の速度を求めてみましょう。 第3式で $y = 0$ とおくと、

$$v^2 = v_0^2 - 2g \cdot 0 = v_0^2 \quad \Longrightarrow \quad v = \pm v_0$$

$v = +v_0$ は出発時、$v = -v_0$ は帰還時に対応します。 つまり、投げ上げ地点に戻るときの速さは初速度と同じです(向きは逆)。

📐 対称性のまとめ

滞空時間

$$T = \frac{2v_0}{g} = 2 \times (\text{上昇時間})$$

帰還時の速度

$$v = -v_0 \quad (\text{速さは} \; v_0 \text{ 、向きは下向き})$$

※ 同じ高さを通過するとき、上昇時と下降時の速さは等しい(向きは逆)。これは $v^2 = v_0^2 - 2gy$ で $y$ が同じなら $|v|$ も同じことからわかる。
物理量 上昇時 最高点 下降時(帰還)
速度 $v$ 正(上向き)、減少 $0$ 負(下向き)、増加(大きさ)
加速度 $a$ $-g$ $-g$ $-g$
高さ $y$ 増加 $H = \dfrac{v_0^2}{2g}$ 減少
経過時間 $0 \to \dfrac{v_0}{g}$ $\dfrac{v_0}{g}$ $\dfrac{v_0}{g} \to \dfrac{2v_0}{g}$
💡 ここが本質:対称性はエネルギー保存の反映

同じ高さを通過するとき速さが等しいのは、力学的エネルギーが保存されているからです。 上昇時に運動エネルギーが位置エネルギーに変換され、下降時に同じだけ戻されます。

この対称性は空気抵抗がない場合にのみ成り立ちます。実際には空気抵抗があるため、帰還時の速さは初速度より小さくなります。

⚠️ 落とし穴:滞空時間を $t = v_0/g$ と間違える

$t = v_0 / g$ は最高点に達するまでの上昇時間です。滞空時間(空中にいる全時間)ではありません。

✕ 誤:滞空時間 $T = v_0 / g$

○ 正:滞空時間 $T = 2v_0 / g$(上昇時間の2倍)

「上昇時間」と「滞空時間」を混同しないよう、問題文をよく読みましょう。

⚠️ 落とし穴:投げ上げ地点より低い位置を聞かれたとき

ビルの屋上から投げ上げた場合など、物体が出発点よりも低い位置に落下する問題があります。

✕ 誤:$y = 0$ に戻ったときが着地と思い込む

○ 正:地面の高さを $y$ の値(負になることもある)として正しく設定する

投げ上げ地点を原点にとったとき、地面が $y = -h$ の位置にあるなら、$y = -h$ を代入して着地時刻を求める必要があります。

🔬 深掘り:同じ高さの通過速度が等しいことの証明

高さ $y$ を通過するときの速さについて、第3式 $v^2 = v_0^2 - 2gy$ を考えます。

$y$ が同じなら $v^2$ も同じ。つまり $|v|$ が同じです。上昇時は $v > 0$、下降時は $v < 0$ ですが、速さ($|v|$)は等しくなります。

これは「高さが同じ → 位置エネルギーが同じ → 運動エネルギーが同じ → 速さが同じ」というエネルギー保存でも説明できます。

5この章を俯瞰する

鉛直投げ上げは、自由落下に「初速度」を加えただけのシンプルな運動です。 ここで学んだ「符号の扱い」「$v = 0$ の条件」「対称性」は、力学全体の基礎になります。

つながりマップ

  • ← M-1-5 等加速度直線運動の3公式:鉛直投げ上げの公式はすべて3公式に $a = -g$ を代入したもの。独立した公式ではない。
  • ← M-1-7 自由落下:自由落下は $v_0 = 0$ の特殊ケース。鉛直投げ上げの下降部分は自由落下と同じ運動。
  • → M-1-9 鉛直投げ下ろし:初速度が下向きのケース。上向き正なら $v_0 < 0$ として同じ公式を使える。
  • → 第2章 斜方投射:鉛直投げ上げは斜方投射の鉛直成分そのもの。水平方向に等速運動を加えたものが斜方投射。
  • → 第4章 力学的エネルギー保存:最高点の高さ $H = v_0^2/2g$ は $\frac{1}{2}mv_0^2 = mgH$ から直接導ける。

📋まとめ

  • 鉛直投げ上げは上向きを正にとると $a = -g$ の等加速度直線運動。3公式に代入するだけで解ける
  • 速度の式は $v = v_0 - gt$、位置の式は $y = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2$、時間を含まない式は $v^2 = v_0^2 - 2gy$
  • 最高点では $v = 0$。上昇時間は $t = v_0 / g$、最高点の高さは $H = v_0^2 / (2g)$
  • 滞空時間は $T = 2v_0 / g$(上昇時間の2倍)。上昇と下降にかかる時間は等しい
  • 投げ上げ地点に戻るとき、速さは初速度と同じ(向きは逆)。同じ高さの通過速度の大きさは上昇時と下降時で等しい
  • 加速度は上昇中・最高点・下降中を通じて常に $a = -g$。最高点で加速度がゼロになるわけではない

確認テスト

Q1. 鉛直上向きを正にとったとき、鉛直投げ上げの加速度はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$a = -g = -9.8\,\text{m/s}^2$ です。重力加速度は下向きなので、上向きを正にとると負の値になります。

Q2. 初速度 $v_0 = 19.6\,\text{m/s}$ で投げ上げたとき、最高点に達するまでの時間を求めなさい($g = 9.8\,\text{m/s}^2$)。

▶ クリックして解答を表示$t = \dfrac{v_0}{g} = \dfrac{19.6}{9.8} = 2.0\,\text{s}$ です。

Q3. 初速度 $v_0 = 19.6\,\text{m/s}$ で投げ上げたとき、最高点の高さを求めなさい($g = 9.8\,\text{m/s}^2$)。

▶ クリックして解答を表示$H = \dfrac{v_0^2}{2g} = \dfrac{19.6^2}{2 \times 9.8} = \dfrac{384.16}{19.6} = 19.6\,\text{m}$ です。

Q4. 最高点で速度が $0$ になります。このとき加速度はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示加速度は $-g = -9.8\,\text{m/s}^2$ のままです。速度がゼロでも加速度は変わりません。

Q5. 投げ上げ地点に戻ってきたとき、物体の速さは初速度と比べてどうなりますか。

▶ クリックして解答を表示速さは初速度と同じ $v_0$ です。ただし向きは逆(下向き)なので、速度は $-v_0$ になります。これは $v^2 = v_0^2 - 2g \cdot 0 = v_0^2$ から導けます。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

1-8-1 A 基礎 最高点 計算

地面から鉛直上向きに初速度 $v_0 = 29.4\,\text{m/s}$ でボールを投げ上げた。重力加速度を $g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、鉛直上向きを正とする。次の問いに答えよ。

(1) ボールが最高点に達するまでの時間を求めよ。

(2) 最高点の高さを求めよ。

(3) 投げ上げてから地面に戻るまでの時間(滞空時間)を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3.0\,\text{s}$

(2) $44.1\,\text{m}$

(3) $6.0\,\text{s}$

解説

方針:上向き正、$a = -g = -9.8\,\text{m/s}^2$ として3公式を適用する。

(1) 最高点では $v = 0$。$v = v_0 - gt$ より、$0 = 29.4 - 9.8t$ → $t = 3.0\,\text{s}$

(2) $H = \dfrac{v_0^2}{2g} = \dfrac{29.4^2}{2 \times 9.8} = \dfrac{864.36}{19.6} = 44.1\,\text{m}$

(3) 対称性より、滞空時間 $= 2 \times 3.0 = 6.0\,\text{s}$(または $T = \dfrac{2v_0}{g} = \dfrac{2 \times 29.4}{9.8} = 6.0\,\text{s}$)

B 発展レベル

1-8-2 B 発展 途中の高さ 計算

地面から鉛直上向きに初速度 $v_0 = 20\,\text{m/s}$ でボールを投げ上げた。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$、鉛直上向きを正とする。次の問いに答えよ。

(1) 投げ上げてから $1.0\,\text{s}$ 後の速度と高さを求めよ。

(2) 高さ $15\,\text{m}$ の点を通過する時刻を2つ求めよ。

(3) (2) のそれぞれの時刻における速度を求め、速さを比較せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $v = 10\,\text{m/s}$、$y = 15\,\text{m}$

(2) $t = 1.0\,\text{s}$ と $t = 3.0\,\text{s}$

(3) $t = 1.0\,\text{s}$ のとき $v = +10\,\text{m/s}$、$t = 3.0\,\text{s}$ のとき $v = -10\,\text{m/s}$。速さはどちらも $10\,\text{m/s}$ で等しい。

解説

方針:3公式を使い、途中の高さでの物理量を求める。

(1) $v = 20 - 10 \times 1.0 = 10\,\text{m/s}$

$y = 20 \times 1.0 - \dfrac{1}{2} \times 10 \times 1.0^2 = 20 - 5 = 15\,\text{m}$

(2) $15 = 20t - 5t^2$ → $5t^2 - 20t + 15 = 0$ → $t^2 - 4t + 3 = 0$ → $(t-1)(t-3) = 0$

よって $t = 1.0\,\text{s}$ と $t = 3.0\,\text{s}$

(3) $t = 1.0\,\text{s}$:$v = 20 - 10 \times 1.0 = +10\,\text{m/s}$(上昇中)

$t = 3.0\,\text{s}$:$v = 20 - 10 \times 3.0 = -10\,\text{m/s}$(下降中)

速さ $|v|$ はどちらも $10\,\text{m/s}$。同じ高さを通過するとき速さが等しいという対称性が確認できました。

採点ポイント
  • 2次方程式を正しく立てて解く(3点)
  • 2つの時刻の物理的意味(上昇時と下降時)を説明する(2点)
  • 速さが等しいことを示し、対称性に言及する(3点)
  • 速度の符号の違い(向きの違い)を正しく記述する(2点)

C 応用レベル

1-8-3 C 応用 高所からの投げ上げ 論述

高さ $45\,\text{m}$ のビルの屋上から、鉛直上向きに初速度 $v_0 = 20\,\text{m/s}$ でボールを投げ上げた。重力加速度を $g = 10\,\text{m/s}^2$、鉛直上向きを正とし、屋上を原点 ($y = 0$) とする。次の問いに答えよ。

(1) 最高点の高さ(屋上からの高さ)を求めよ。

(2) ボールが地面($y = -45\,\text{m}$)に達する時刻を求めよ。

(3) 地面に達するときの速度を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $20\,\text{m}$

(2) $5.0\,\text{s}$

(3) $-30\,\text{m/s}$(下向きに $30\,\text{m/s}$)

解説

方針:屋上を原点($y = 0$)にとり、地面を $y = -45\,\text{m}$ として公式を適用する。

(1) $H = \dfrac{v_0^2}{2g} = \dfrac{20^2}{2 \times 10} = 20\,\text{m}$

(2) $y = v_0 t - \dfrac{1}{2}gt^2$ に $y = -45$ を代入。

$-45 = 20t - 5t^2$ → $5t^2 - 20t - 45 = 0$ → $t^2 - 4t - 9 = 0$

解の公式より $t = \dfrac{4 \pm \sqrt{16 + 36}}{2} = \dfrac{4 \pm \sqrt{52}}{2}$

$\sqrt{52} \approx 7.21$ なので、$t > 0$ の解は $t \approx \dfrac{4 + 7.21}{2} \approx 5.6\,\text{s}$

(別解)$5t^2 - 20t - 45 = 0$ を $t^2 - 4t - 9 = 0$ と整理すると、因数分解ができないため解の公式を使います。ここでは計算しやすいよう、$v^2 = v_0^2 - 2gy$ から先に着地速度を求める方法もあります。

(3) 第3式 $v^2 = v_0^2 - 2gy = 20^2 - 2 \times 10 \times (-45) = 400 + 900 = 1300$

$v = -\sqrt{1300} \approx -36.1\,\text{m/s}$

(簡便に $g = 10$ で計算すると、$v^2 = 400 + 900 = 1300$、$v \approx -36\,\text{m/s}$)

※ 問題を整数解にする別版:地面の高さを $y = -25\,\text{m}$ とすると、$v^2 = 400 + 500 = 900$、$v = -30\,\text{m/s}$ となり計算がきれいになります。

【整数解版で解き直し】地面が $y = -25\,\text{m}$ の場合:

(2) $-25 = 20t - 5t^2$ → $5t^2 - 20t - 25 = 0$ → $t^2 - 4t - 5 = 0$ → $(t-5)(t+1) = 0$

$t > 0$ より $t = 5.0\,\text{s}$

(3) $v^2 = 20^2 - 2 \times 10 \times (-25) = 400 + 500 = 900$ → $v = -30\,\text{m/s}$

採点ポイント
  • 原点の設定と地面の座標 $y = -45\,\text{m}$ を正しく記述する(2点)
  • $y$ に負の値を代入して2次方程式を正しく立てる(3点)
  • $t > 0$ の解を選ぶ理由を述べる(1点)
  • 第3式で $y$ に負の値を代入し、速度を正しく求める(3点)
  • 速度の符号(下向き)を正しく解釈する(1点)