水平面内の円運動では重力の影響は垂直抗力が打ち消してくれました。
しかし、ジェットコースターのように鉛直面内を回るとき、重力は円運動の「パートナー」にも「敵」にもなります。
最高点でレールから離れない条件、最低点での体が重く感じる理由——すべて円運動の運動方程式で説明できます。
ジェットコースターやバケツを振り回す運動を考えましょう。 物体は鉛直面内(上下方向を含む平面内)で円軌道を描きます。 水平面内の等速円運動と異なり、速さが位置によって変化するのが大きな特徴です。
鉛直面内の円運動では、物体の位置によって重力の向心方向成分が変わるため、 向心力の担い手(垂直抗力や張力)の大きさも刻々と変化します。
鉛直面内の円運動でも、解法の基本は同じです。円の中心に向かう方向(向心方向)について運動方程式を立てることです。
最高点では重力と垂直抗力がともに向心方向(下向き=中心向き)を向きます。最低点では重力が遠心方向、垂直抗力が向心方向です。
ジェットコースター型とは、物体がレール(や管)の内側を走る場合です。 物体はレールから垂直抗力を受けます。垂直抗力の向きは位置によって変わりますが、常にレールから物体へ向かう方向(中心向き)です。
鉛直面内の円運動は等速円運動ではありません。
✕ 誤:最高点でも最低点でも速さは同じ
○ 正:最低点で速さが最大、最高点で速さが最小(力学的エネルギー保存による)
ただし、各瞬間の向心方向の運動方程式は $F = \dfrac{mv^2}{r}$ の形で使えます。
半径 $r$ の円形レールの最高点を速さ $v_{\text{top}}$ で通過する質量 $m$ の物体を考えます。 最高点では、物体にはたらく力は次の2つです。
向心方向(中心向き=下向き)を正として運動方程式を立てると、
$$mg + N = \frac{mv_{\text{top}}^2}{r}$$
この式から垂直抗力を求めると、
$$N = \frac{mv_{\text{top}}^2}{r} - mg = m\left(\frac{v_{\text{top}}^2}{r} - g\right)$$
最高点では重力と垂直抗力が同じ方向(中心向き)にはたらきます。2つの力が協力して向心力を生み出すのです。
そのため、速さが遅くても重力だけである程度の向心力が確保されます。垂直抗力 $N$ は「不足分を補う」役割です。
ジェットコースター型(レール内側)の最高点では、垂直抗力は下向きです。
✕ 誤:垂直抗力は常に上向き
○ 正:垂直抗力はレール面から物体を押す向き。最高点ではレールが上にあるので $N$ は下向き
最低点を速さ $v_{\text{bot}}$ で通過する場合を考えます。最低点では、
向心方向(中心向き=上向き)を正として運動方程式を立てると、
$$N' - mg = \frac{mv_{\text{bot}}^2}{r}$$
これを整理すると、
$$N' = mg + \frac{mv_{\text{bot}}^2}{r} = m\left(g + \frac{v_{\text{bot}}^2}{r}\right)$$
最低点では $N' > mg$ となり、体が通常より重く感じます。 ジェットコースターで谷底を通過するときに体が座席に押しつけられるのはこのためです。
力学的エネルギー保存則より、最低点と最高点の速さには次の関係があります。
$$\frac{1}{2}mv_{\text{bot}}^2 = \frac{1}{2}mv_{\text{top}}^2 + mg \cdot 2r$$
つまり $v_{\text{bot}}^2 = v_{\text{top}}^2 + 4gr$ です。最低点の速さは最高点の速さよりも必ず大きくなります。
最高点の式 $N = m\left(\dfrac{v_{\text{top}}^2}{r} - g\right)$ において、速さ $v_{\text{top}}$ が小さくなると $N$ も小さくなります。 物理的に $N \geq 0$ でなければならないので(レールは引っ張れない)、
$$N \geq 0 \quad \Longrightarrow \quad \frac{v_{\text{top}}^2}{r} \geq g \quad \Longrightarrow \quad v_{\text{top}} \geq \sqrt{gr}$$
$N = 0$ のとき、重力だけで向心力をまかなっている状態です。
$$mg = \frac{mv_{\min}^2}{r} \quad \Longrightarrow \quad v_{\min} = \sqrt{gr}$$
最高点で $v_{\text{top}} = \sqrt{gr}$ のとき、エネルギー保存則から最低点の速さは、
$$v_{\text{bot}}^2 = v_{\text{top}}^2 + 4gr = gr + 4gr = 5gr$$
$$v_{\text{bot}} = \sqrt{5gr}$$
つまり、最低点で $v_{\text{bot}} \geq \sqrt{5gr}$ の速さがあれば、最高点でレールから離れずに回りきれます。
ジェットコースター型の最高点で $N = 0$ とおくと最小速度が求まります。この手法は入試で頻出です。
「レールから離れる」=「$N$ が $0$ になる」=「重力だけで向心力をまかなう」という対応関係をしっかり理解しましょう。
✕ 誤:$N = 0$ では物体に力がはたらかないので直線運動する
○ 正:$N = 0$ でも重力 $mg$ がはたらいており、重力だけで円運動の向心力を提供している
$N = 0$ は「レールとの接触力がゼロ」であり、「力がゼロ」ではありません。
最低点から角度 $\theta$ の位置(中心角)における向心方向の運動方程式は、
$$N - mg\cos\theta = \frac{mv^2}{r}$$
($\theta = 0$ で最低点、$\theta = 180°$ で最高点に対応します)
エネルギー保存則 $\dfrac{1}{2}mv^2 = \dfrac{1}{2}mv_{\text{bot}}^2 - mgr(1-\cos\theta)$ と連立すると、任意の位置での $N$ が求められます。
鉛直面内の円運動は、円運動と力学的エネルギー保存則を組み合わせて解く典型テーマです。
Q1. 鉛直面内の円運動(ジェットコースター型)の最高点で、物体にはたらく力を2つ挙げ、その向きを答えてください。
Q2. 最高点での運動方程式を書いてください。
Q3. 最高点で物体がレールから離れない最小速度はいくらですか。
Q4. 半径 $r$ のループを回りきるために最低点で必要な最小速度はいくらですか。
鉛直面内の円運動を入試形式で確認しましょう。
半径 $r = 5.0\,\text{m}$ の鉛直面内のループ状レールがある。質量 $m = 0.50\,\text{kg}$ の小球が最高点を速さ $10\,\text{m/s}$ で通過した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。
(1) 最高点で小球がレールから受ける垂直抗力の大きさを求めよ。
(2) 最高点でレールから離れないための最小速度を求めよ。
(1) $N = 5.1\,\text{N}$
(2) $v_{\min} = 7.0\,\text{m/s}$
(1) 最高点の運動方程式 $mg + N = \dfrac{mv^2}{r}$ より、
$N = \dfrac{mv^2}{r} - mg = 0.50 \times \dfrac{10^2}{5.0} - 0.50 \times 9.8 = 10 - 4.9 = 5.1\,\text{N}$
(2) $N = 0$ とおくと $mg = \dfrac{mv_{\min}^2}{r}$ → $v_{\min} = \sqrt{gr} = \sqrt{9.8 \times 5.0} = \sqrt{49} = 7.0\,\text{m/s}$
半径 $r = 2.0\,\text{m}$ の鉛直面内のループ状レールの最低点を、質量 $1.0\,\text{kg}$ の小球が速さ $8.0\,\text{m/s}$ で通過した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、最低点で小球がレールから受ける垂直抗力の大きさを求めよ。
$N' = 41.8\,\text{N}$
最低点の運動方程式 $N' - mg = \dfrac{mv^2}{r}$ より、
$N' = mg + \dfrac{mv^2}{r} = 1.0 \times 9.8 + 1.0 \times \dfrac{8.0^2}{2.0} = 9.8 + 32 = 41.8\,\text{N}$
体重の約 $4.3$ 倍の力が加わることになります。
半径 $r$ の鉛直面内のループ状レールがある。最低点から小球を打ち出す。小球がループの最高点でちょうどレールから離れるための、最低点での打ち出し速度 $v_0$ を求めよ。
$v_0 = \sqrt{5gr}$
最高点で $N = 0$ → $mg = \dfrac{mv_{\text{top}}^2}{r}$ → $v_{\text{top}}^2 = gr$
エネルギー保存則(最低点→最高点、高さの差 $2r$):
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv_{\text{top}}^2 + mg \cdot 2r$$
$$v_0^2 = v_{\text{top}}^2 + 4gr = gr + 4gr = 5gr$$
$$v_0 = \sqrt{5gr}$$
半径 $r$ の鉛直面内のループ状レール(滑らかとする)の最低点を速さ $v_0 = \sqrt{5gr}$ で通過した質量 $m$ の小球について、最低点から中心角 $\theta$ の位置での垂直抗力 $N(\theta)$ を $m$, $g$, $\theta$ で表せ。また、$N$ が最小となる位置を求めよ。
$N(\theta) = mg(3\cos\theta + 2)$
$N$ が最小になるのは $\theta = 180°$(最高点)で、$N_{\min} = 0$
角度 $\theta$ の位置での向心方向の運動方程式:
$$N - mg\cos\theta = \frac{mv^2}{r} \quad \cdots ①$$
エネルギー保存則(最低点→角度 $\theta$ の位置、高さ $r(1-\cos\theta)$):
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv^2 + mgr(1-\cos\theta)$$
$v_0^2 = 5gr$ を代入して、$v^2 = 5gr - 2gr(1-\cos\theta) = gr(3 + 2\cos\theta)$
①に代入:
$$N = mg\cos\theta + \frac{m}{r} \cdot gr(3 + 2\cos\theta) = mg\cos\theta + mg(3 + 2\cos\theta)$$
$$N = mg(3\cos\theta + 3) \quad \text{…ではなく、計算を丁寧にやると}$$
$$N = mg\cos\theta + m \cdot g(3 + 2\cos\theta) = mg(3\cos\theta + 3)$$
確認:$\theta = 0$ で $N = 6mg$(最低点:$N' = mg + mv_0^2/r = mg + 5mg = 6mg$ ✓)
$\theta = 180°$ で $N = mg(-3+3) = 0$ ✓
$\cos\theta$ は $\theta = 180°$ で最小値 $-1$ をとるので、$N$ は $\theta = 180°$(最高点)で最小値 $0$ をとります。