第9章 単振動

直列・並列ばねの単振動
─ 合成ばね定数の求め方

ばねを2本つないで物体を振動させるとき、振動の周期はどうなるでしょうか。
直列接続では「やわらかく」、並列接続では「硬く」なります。
合成ばね定数を求めれば、あとは単振動の公式をそのまま適用できます。

1並列ばねの合成ばね定数

ばね定数 $k_1$、$k_2$ の2本のばねを並列(左右に並べて同じ物体につなぐ)に接続した場合を考えます。

物体を $x$ だけ変位させると、それぞれのばねが独立に $F_1 = -k_1 x$、$F_2 = -k_2 x$ の力を及ぼします。 合力は、

$$F = -(k_1 + k_2)x$$

📐 並列ばねの合成ばね定数

$$k = k_1 + k_2$$

※ 並列では各ばねの変位が同じで、力が加算される。合成ばね定数は単純な和。
💡 ここが本質:並列 = 力の足し算

並列接続では、2本のばねが同じだけ伸び(縮み)、それぞれの力が合算されます。

ばねが増えるほど復元力が強くなり、振動は速くなります(周期が短くなる)。

壁に挟まれた物体

物体の両側にばね($k_1$ と $k_2$)をつけ、それぞれの他端を壁に固定した場合も、実質的に並列接続です。 物体を $x$ だけ右にずらすと、右のばねは $x$ だけ縮み、左のばねは $x$ だけ伸びて、どちらも左向きに力を加えます。

合成ばね定数は $k = k_1 + k_2$ です。

2直列ばねの合成ばね定数

ばね定数 $k_1$、$k_2$ の2本のばねを直列(端から端へ一列につなぐ)に接続した場合を考えます。

直列接続では、各ばねにかかる力は同じですが、伸びが異なります。

▷ 直列ばねの合成ばね定数の導出

合力 $F$ が物体にかかるとき、各ばねの伸びは $x_1 = F/k_1$、$x_2 = F/k_2$。

全体の伸びは $x = x_1 + x_2 = \dfrac{F}{k_1} + \dfrac{F}{k_2}$

合成ばね定数 $k$ は $x = F/k$ を満たすので、

$$\frac{1}{k} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2}$$

$$k = \frac{k_1 k_2}{k_1 + k_2}$$

📐 直列ばねの合成ばね定数

$$\frac{1}{k} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2} \quad \Leftrightarrow \quad k = \frac{k_1 k_2}{k_1 + k_2}$$

※ 直列では各ばねの力が同じで、変位が加算される。合成ばね定数は元のばねより小さくなる。
⚠️ 落とし穴:直列と並列の公式を逆に覚える

ばねの直列・並列の公式は、電気抵抗と同じ形をしています。しかし、コンデンサーとは逆になるので混乱しがちです。

✕ 誤:直列ばねで $k = k_1 + k_2$ とする

○ 正:直列ばねでは $1/k = 1/k_1 + 1/k_2$(和の逆数)

覚え方:直列 = 変位の足し算 → 逆数の和並列 = 力の足し算 → 単純な和

💡 ここが本質:直列 = やわらかくなる

直列接続では $k < k_1$ かつ $k < k_2$ となり、元のどちらのばねよりもやわらかくなります。

特に $k_1 = k_2 = k_0$ のとき、$k = k_0/2$ です。同じばねを直列にすると、ばね定数は半分になります。

3合成ばね定数と周期

合成ばね定数 $k$ が分かれば、単振動の周期は通常通り、

$$T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}$$

並列ばねの周期

$$T_{\text{並列}} = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k_1 + k_2}}$$

直列ばねの周期

$$T_{\text{直列}} = 2\pi\sqrt{\frac{m(k_1 + k_2)}{k_1 k_2}}$$

🔬 深掘り:周期の比較

同じ2本のばねを使うとき、並列と直列の周期の比は、

$$\frac{T_{\text{直列}}}{T_{\text{並列}}} = \sqrt{\frac{(k_1 + k_2)^2}{k_1 k_2}}$$

$k_1 = k_2 = k_0$ のとき、$T_{\text{直列}}/T_{\text{並列}} = \sqrt{4} = 2$。直列の周期は並列の2倍です。

接続方式合成ばね定数周期($k_1 = k_2 = k_0$ の場合)
並列$k_1 + k_2$$T = 2\pi\sqrt{m/(2k_0)}$(硬い・周期短い)
直列$k_1k_2/(k_1+k_2)$$T = 2\pi\sqrt{2m/k_0}$(やわらかい・周期長い)
1本だけ$k_0$$T = 2\pi\sqrt{m/k_0}$(基準)

4典型パターンの整理

パターン1:天井から直列ばねで吊るす

天井にばね $k_1$ をつけ、その下にばね $k_2$ をつなぎ、最下部に質量 $m$ の物体をつけた場合は直列です。 $k = \dfrac{k_1 k_2}{k_1 + k_2}$、$T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$。

パターン2:左右の壁にばねで挟む

物体の左右にばね $k_1$、$k_2$ をつけて壁に固定する場合は並列です。 $k = k_1 + k_2$。

パターン3:ばねを切る

自然長 $L$、ばね定数 $k$ のばねを半分(長さ $L/2$)に切ると、ばね定数は $2k$ になります

▷ ばねを切るとばね定数が変わる理由

元のばねは「同じ半分のばね2本の直列」と見なせます。

半分のばねのばね定数を $k'$ とすると、直列の公式から $1/k = 1/k' + 1/k' = 2/k'$

よって $k' = 2k$。半分に切るとばね定数は2倍になります。

一般に、$n$ 等分すると各部分のばね定数は $nk$ になります。

⚠️ 落とし穴:ばねを切ってもばね定数は同じ?

✕ 誤:ばねを半分に切ってもばね定数は $k$ のまま

○ 正:ばねを半分に切るとばね定数は $2k$ になる

ばね定数は「ばねの長さに反比例する」と覚えましょう。短いばねほど硬くなります。

5この章を俯瞰する

直列・並列ばねの概念は、単振動だけでなく、電気回路の合成抵抗・合成容量と同じ発想で理解できます。

つながりマップ

  • ← M-9-3 ばね振り子:1本のばねの単振動の公式がそのまま合成ばね定数に適用される。
  • ← M-9-7 浮力による単振動:有効ばね定数 $\rho Sg$ も合成ばねの一種とみなせる。
  • → M-9-9 単振動総合演習:複数ばねを含む複合問題で合成ばね定数が活躍する。
  • → 電磁気学:直列・並列の考え方は、抵抗やコンデンサーの合成にそのまま使える。

📋まとめ

  • 並列ばね:$k = k_1 + k_2$(力が加算される → 硬くなる)
  • 直列ばね:$\frac{1}{k} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2}$(変位が加算される → やわらかくなる)
  • 壁に挟まれた物体(左右にばね)は並列
  • 一列につないだばねは直列
  • ばねを半分に切ると ばね定数は2倍になる
  • 合成ばね定数さえ求めれば、$T = 2\pi\sqrt{m/k}$ がそのまま使える

確認テスト

Q1. ばね定数 $k_1 = 100\,\text{N/m}$ と $k_2 = 200\,\text{N/m}$ を並列に接続した合成ばね定数はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$k = k_1 + k_2 = 100 + 200 = 300\,\text{N/m}$

Q2. 同じ2本のばねを直列に接続した合成ばね定数はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$k = \dfrac{k_1 k_2}{k_1 + k_2} = \dfrac{100 \times 200}{300} \approx 66.7\,\text{N/m}$

Q3. 直列接続と並列接続、どちらの方が合成ばね定数が大きいですか。

▶ クリックして解答を表示並列接続の方が大きい。並列では力が足し合わされるので硬くなる。

Q4. ばね定数 $k$ のばねを3等分すると、各部分のばね定数はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$3k$。$n$ 等分すると各部分のばね定数は $nk$ になる。

8入試問題演習

直列・並列ばねの単振動を入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

9-8-1 A 基礎 並列計算

ばね定数 $k_1 = 80\,\text{N/m}$ と $k_2 = 120\,\text{N/m}$ の2本のばねを並列に接続し、質量 $m = 2.0\,\text{kg}$ の物体をつけて水平面上で振動させた。周期を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$T \approx 0.63\,\text{s}$

解説

合成ばね定数:$k = k_1 + k_2 = 80 + 120 = 200\,\text{N/m}$

$T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{2.0}{200}} = 2\pi\sqrt{0.010} = 2\pi \times 0.100 \approx 0.63\,\text{s}$

9-8-2 A 基礎 直列計算

同じ2本のばねを直列に接続し、同じ質量の物体をつけて振動させた。周期を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$T \approx 1.1\,\text{s}$

解説

合成ばね定数:$k = \dfrac{80 \times 120}{80 + 120} = \dfrac{9600}{200} = 48\,\text{N/m}$

$T = 2\pi\sqrt{\dfrac{2.0}{48}} = 2\pi\sqrt{0.0417} \approx 2\pi \times 0.204 \approx 1.3\,\text{s}$

B 発展レベル

9-8-3 B 発展 壁挟み計算

質量 $m = 0.50\,\text{kg}$ の物体の左右にばね定数 $k_1 = 100\,\text{N/m}$、$k_2 = 300\,\text{N/m}$ のばねをつけ、それぞれの他端を壁に固定した。この物体を右に $x_0 = 0.020\,\text{m}$ だけずらして静かに放した。

(1) 振動の周期を求めよ。

(2) 最大速さを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $T \approx 0.22\,\text{s}$

(2) $v_{\max} \approx 0.57\,\text{m/s}$

解説

壁に挟まれたので並列接続。$k = 100 + 300 = 400\,\text{N/m}$

(1) $T = 2\pi\sqrt{\dfrac{0.50}{400}} = 2\pi\sqrt{1.25 \times 10^{-3}} \approx 2\pi \times 0.0354 \approx 0.22\,\text{s}$

(2) $\omega = \sqrt{k/m} = \sqrt{400/0.50} = \sqrt{800} \approx 28.3\,\text{rad/s}$

$v_{\max} = A\omega = 0.020 \times 28.3 \approx 0.57\,\text{m/s}$

採点ポイント
  • 並列接続と判断する(2点)
  • 合成ばね定数を正しく求める(3点)
  • 周期と最大速さを正しく求める(各2.5点)
9-8-4 B 発展 ばねを切る論述

ばね定数 $k = 50\,\text{N/m}$、自然長 $L$ のばねを $1:2$ の長さの比に切った。それぞれのばね定数を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

短い方($L/3$):$k_1 = 150\,\text{N/m}$、長い方($2L/3$):$k_2 = 75\,\text{N/m}$

解説

ばね定数は長さに反比例する。元のばねの長さを $L$ とすると、

長さ $L/3$ の部分:$k_1 = k \times \dfrac{L}{L/3} = 3k = 150\,\text{N/m}$

長さ $2L/3$ の部分:$k_2 = k \times \dfrac{L}{2L/3} = \dfrac{3k}{2} = 75\,\text{N/m}$

検算:$\dfrac{1}{k_1} + \dfrac{1}{k_2} = \dfrac{1}{150} + \dfrac{1}{75} = \dfrac{1}{150} + \dfrac{2}{150} = \dfrac{3}{150} = \dfrac{1}{50} = \dfrac{1}{k}$ ✓

採点ポイント
  • ばね定数が長さに反比例することを述べる(3点)
  • 各ばね定数を正しく求める(各3点)
  • 検算の記述(1点)

C 応用レベル

9-8-5 C 応用 複合計算

ばね定数 $k$ のばねを半分に切り、2本のばねを並列に接続して質量 $m$ の物体をつけた。元のばね1本で振動させたときの周期 $T_0$ を使って、この場合の周期 $T$ を表せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$T = \dfrac{T_0}{2}$

解説

半分に切ると各ばねのばね定数は $2k$。

並列接続なので合成ばね定数は $2k + 2k = 4k$。

$T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{4k}} = \dfrac{1}{2} \cdot 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}} = \dfrac{T_0}{2}$

元の周期の半分になります。ばねを切って並列にすると、ばね定数は4倍になるので周期は半分です。

採点ポイント
  • 半分に切ったばね定数が $2k$ であること(3点)
  • 並列合成が $4k$ であること(3点)
  • $T_0$ を用いた表記が正しい(4点)