第12章 気体の法則

ボイル・シャルルの法則
─ 3つの変数の関係

ボイルの法則は温度一定のとき、シャルルの法則は圧力一定のときに成り立ちます。
では、温度も圧力もともに変化する場合はどうすればよいのでしょうか。
2つの法則を統合したボイル・シャルルの法則を学びます。
この法則が、次に学ぶ理想気体の状態方程式への橋渡しとなります。

12つの法則を統合する必要性

ボイルの法則は「温度一定で $pV = \text{一定}$」、シャルルの法則は「圧力一定で $\dfrac{V}{T} = \text{一定}$」です。 しかし、現実の問題では温度と圧力が同時に変わることがほとんどです。

たとえば、ピストン付き容器を加熱しながら重りを載せるような状況を考えてみてください。 圧力も温度も変化するので、ボイルの法則だけでもシャルルの法則だけでも対応できません。

このような場合に威力を発揮するのが、ボイル・シャルルの法則です。 2つの法則を1つの式に統合したものです。

⚠️ 落とし穴:条件が変わるのに個別の法則を使う

温度と圧力の両方が変化する過程では、ボイルの法則やシャルルの法則を単独で使うことはできません。

✕ 誤:温度も圧力も変わったのに $p_1 V_1 = p_2 V_2$ だけで計算する

○ 正:$\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$ で3変数を同時に扱う

2ボイル・シャルルの法則の導出

ボイルの法則とシャルルの法則を組み合わせて統合式を導きましょう。 中間状態を経由する方法で考えます。

▷ ボイル・シャルルの法則の導出

状態1($p_1, V_1, T_1$)から状態2($p_2, V_2, T_2$)への変化を考えます。

ステップ1:温度を $T_1$ のまま、圧力を $p_1 \to p_2$ に変える

ボイルの法則より、中間状態の体積 $V'$ は、

$$p_1 V_1 = p_2 V' \quad \Longrightarrow \quad V' = \frac{p_1 V_1}{p_2}$$

ステップ2:圧力を $p_2$ のまま、温度を $T_1 \to T_2$ に変える

シャルルの法則より、

$$\frac{V'}{T_1} = \frac{V_2}{T_2} \quad \Longrightarrow \quad V_2 = V' \cdot \frac{T_2}{T_1}$$

$V'$ を代入すると、

$$V_2 = \frac{p_1 V_1}{p_2} \cdot \frac{T_2}{T_1}$$

整理すると、

$$\frac{p_1 V_1}{T_1} = \frac{p_2 V_2}{T_2}$$

📐 ボイル・シャルルの法則

一定量の気体について、

$$\frac{pV}{T} = \text{一定}$$

すなわち、状態1と状態2の関係として、

$$\frac{p_1 V_1}{T_1} = \frac{p_2 V_2}{T_2}$$

※ $p$:圧力 [Pa]、$V$:体積 [m$^3$ または L]、$T$:絶対温度 [K]。物質量一定が条件。
💡 ここが本質:pV/T が一定という意味

ボイル・シャルルの法則は、気体の3つの状態量($p$, $V$, $T$)のうち、 どの2つが変化しても残りの1つが自動的に決まることを示しています。

$\dfrac{pV}{T}$ という量は、気体の「量」(物質量)だけで決まる定数です。 この定数が何に等しいかを明らかにしたのが、次の記事で学ぶ理想気体の状態方程式です。

💡 ここが本質:中間状態は仮想的なもの

導出では「まず温度一定で圧力を変え、次に圧力一定で温度を変える」という2段階の経路を使いました。 しかし、実際の変化がこの経路を通る必要はありません。

$\dfrac{pV}{T}$ が一定であるという結論は、経路によらず成り立ちます。 中間状態はあくまで導出のための道具です。

⚠️ 落とし穴:温度に℃を使う

ボイル・シャルルの法則で温度は必ず絶対温度 [K] を使います。

✕ 誤:$\dfrac{p_1 V_1}{27} = \dfrac{p_2 V_2}{127}$(セルシウス温度を代入)

○ 正:$\dfrac{p_1 V_1}{300} = \dfrac{p_2 V_2}{400}$(絶対温度を代入)

セルシウス温度で比を取ると、まったく異なる答えが出ます。

3ボイル・シャルルの法則の使い方

ボイル・シャルルの法則を使う問題の解き方を整理します。 基本的には、6つの量($p_1, V_1, T_1, p_2, V_2, T_2$)のうち5つが与えられて、残り1つを求めます。

解法の手順

  1. 状態1と状態2の $p$, $V$, $T$ をそれぞれ整理する
  2. 温度をすべて絶対温度 [K] に換算する
  3. $\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$ に代入する
  4. 未知量について解く

例題:圧力・温度がともに変化する場合

$27\,^\circ\text{C}$、$1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ で体積 $6.0\,\text{L}$ の気体がある。 この気体を $127\,^\circ\text{C}$、$2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ にしたときの体積を求めましょう。

$T_1 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 400\,\text{K}$ です。

$$\frac{1.0 \times 10^5 \times 6.0}{300} = \frac{2.0 \times 10^5 \times V_2}{400}$$

$$V_2 = \frac{1.0 \times 10^5 \times 6.0 \times 400}{300 \times 2.0 \times 10^5} = \frac{6.0 \times 400}{300 \times 2.0} = 4.0\,\text{L}$$

温度上昇で体積は増え、圧力上昇で体積は減ります。 この例では圧力上昇の効果が勝り、体積は減少しています。

⚠️ 落とし穴:分数計算で上下を間違える

$\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$ から $V_2$ を求める際、

✕ 誤:$V_2 = \dfrac{p_1 V_1 T_1}{p_2 T_2}$($T$ の上下が逆)

○ 正:$V_2 = \dfrac{p_1 V_1 T_2}{p_2 T_1}$

式変形は慎重に。分母と分子の配置を間違えるミスは非常に多いです。

🔬 深掘り:比で考える方法

式変形が苦手な人は、「比」で考える方法が有効です。

$V_2 = V_1 \times \dfrac{p_1}{p_2} \times \dfrac{T_2}{T_1}$

「圧力が $n$ 倍になれば体積は $\frac{1}{n}$ 倍」(ボイル)と 「温度が $m$ 倍になれば体積は $m$ 倍」(シャルル)を掛け合わせます。

上の例では、$V_2 = 6.0 \times \frac{1.0}{2.0} \times \frac{400}{300} = 6.0 \times \frac{1}{2} \times \frac{4}{3} = 4.0\,\text{L}$ です。

4特殊ケースとして他の法則を含む

ボイル・シャルルの法則は、ボイルの法則やシャルルの法則を特殊ケースとして含んでいます。 条件を1つ固定すると、それぞれの法則が自然に現れます。

条件 $\frac{pV}{T} = \text{一定}$ から導かれる式 法則名
$T$ 一定 $pV = \text{一定}$ ボイルの法則
$p$ 一定 $\dfrac{V}{T} = \text{一定}$ シャルルの法則
$V$ 一定 $\dfrac{p}{T} = \text{一定}$ ゲイ=リュサックの法則
💡 ここが本質:ボイル・シャルルの法則は万能

ボイル・シャルルの法則 $\dfrac{pV}{T} = \text{一定}$ さえ覚えておけば、 ボイルの法則もシャルルの法則もゲイ=リュサックの法則も導けます。

つまり、この1つの式を理解していれば十分です。 個別の法則を暗記する必要はありません。

⚠️ 落とし穴:「何が一定か」を問題文から読み取れない

問題文に「温度一定」「圧力一定」と明記されていないことがあります。

✕ 誤:条件の記述がないので「何も一定でない」と判断し、解けないと思う

○ 正:物理的状況から判断する。「なめらかなピストン」なら圧力一定、「固い容器」なら体積一定

問題文の物理的設定をよく読み、何が一定かを見抜きましょう。

5この章を俯瞰する

ボイル・シャルルの法則は、気体の法則の集大成です。 次の記事では、この法則に物質量を組み込んだ理想気体の状態方程式を学びます。

つながりマップ

  • ← T-2-1 ボイルの法則:$T$ 一定の特殊ケース。ボイル・シャルルの法則で $T_1 = T_2$ とすると得られる。
  • ← T-2-2 シャルルの法則:$p$ 一定の特殊ケース。ボイル・シャルルの法則で $p_1 = p_2$ とすると得られる。
  • → T-2-4 理想気体の状態方程式:$\dfrac{pV}{T} = nR$ として、定数の正体が明かされる。
  • → T-2-5 気体の法則の典型問題:ボイル・シャルルの法則を使った応用問題を集中的に演習する。

📋まとめ

  • ボイル・シャルルの法則:一定量の気体について $\dfrac{pV}{T} = \text{一定}$
  • 2つの状態の関係:$\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$
  • ボイルの法則($T$ 一定)、シャルルの法則($p$ 一定)、ゲイ=リュサックの法則($V$ 一定)をすべて含む
  • 導出は「中間状態を経由して2段階で変化させる」方法で行う
  • 温度は必ず絶対温度 [K] に換算する。セルシウス温度は使えない
  • 比で考える方法:$V_2 = V_1 \times \dfrac{p_1}{p_2} \times \dfrac{T_2}{T_1}$

確認テスト

Q1. ボイル・シャルルの法則の式を書いてください。

▶ クリックして解答を表示$\dfrac{pV}{T} = \text{一定}$、すなわち $\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$

Q2. ボイル・シャルルの法則で温度一定とすると、どの法則が得られますか。

▶ クリックして解答を表示ボイルの法則($pV = \text{一定}$)

Q3. $27\,^\circ\text{C}$、$1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$、$9.0\,\text{L}$ の気体を $127\,^\circ\text{C}$、$3.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ にしたときの体積を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$V_2 = 9.0 \times \frac{1.0}{3.0} \times \frac{400}{300} = 9.0 \times \frac{1}{3} \times \frac{4}{3} = 4.0\,\text{L}$

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

2-3-1 A 基礎 ボイル・シャルル 計算

$0\,^\circ\text{C}$、$1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ で $5.0\,\text{L}$ の気体がある。この気体を $91\,^\circ\text{C}$、$2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ にしたときの体積を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$\dfrac{5.0 \times 364}{273 \times 2.0} \approx 3.3\,\text{L}$

解説

$T_1 = 273\,\text{K}$、$T_2 = 91 + 273 = 364\,\text{K}$

$\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$ より、

$V_2 = V_1 \times \dfrac{p_1}{p_2} \times \dfrac{T_2}{T_1} = 5.0 \times \dfrac{1.0}{2.0} \times \dfrac{364}{273} \approx 3.3\,\text{L}$

B 発展レベル

2-3-2 B 発展 密閉容器 論述

容積が変わらない密閉容器に気体が $27\,^\circ\text{C}$、$1.5 \times 10^5\,\text{Pa}$ で封入されている。この容器を $227\,^\circ\text{C}$ に加熱した。

(1) 加熱後の気体の圧力を求めよ。

(2) この問題ではボイル・シャルルの法則のどのような特殊ケースを使ったか説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $2.5 \times 10^5\,\text{Pa}$

(2) 体積一定($V_1 = V_2$)の特殊ケース。ゲイ=リュサックの法則。

解説

$T_1 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 500\,\text{K}$、$V_1 = V_2$

$\dfrac{p_1 V_1}{T_1} = \dfrac{p_2 V_2}{T_2}$ で $V_1 = V_2$ なので、

$\dfrac{p_1}{T_1} = \dfrac{p_2}{T_2}$ → $p_2 = 1.5 \times 10^5 \times \dfrac{500}{300} = 2.5 \times 10^5\,\text{Pa}$

採点ポイント
  • 容積が変わらないことから $V_1 = V_2$ を読み取る(2点)
  • 絶対温度に換算して正しく計算する(3点)
  • 体積一定のケース(ゲイ=リュサックの法則)と説明する(3点)

C 応用レベル

2-3-3 C 応用 2段階変化 論述

$27\,^\circ\text{C}$、$1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ で体積 $12\,\text{L}$ の気体がある。この気体に対して次の操作を行った。

操作1:温度を $27\,^\circ\text{C}$ に保ったまま、圧力を $3.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ に変えた。

操作2:次に、圧力を $3.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ に保ったまま、$227\,^\circ\text{C}$ に加熱した。

(1) 操作1後の体積を求めよ。

(2) 操作2後の体積を求めよ。

(3) 最初の状態と最終状態の関係をボイル・シャルルの法則で直接確認せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $4.0\,\text{L}$

(2) $\dfrac{20}{3} \approx 6.7\,\text{L}$

(3) 下記参照

解説

(1) 温度一定(ボイルの法則):$p_1 V_1 = p_2 V_2$ → $1.0 \times 10^5 \times 12 = 3.0 \times 10^5 \times V_2$ → $V_2 = 4.0\,\text{L}$

(2) 圧力一定(シャルルの法則):$\dfrac{4.0}{300} = \dfrac{V_3}{500}$ → $V_3 = \dfrac{4.0 \times 500}{300} = \dfrac{20}{3} \approx 6.7\,\text{L}$

(3) ボイル・シャルルの法則で直接計算すると、

$\dfrac{1.0 \times 10^5 \times 12}{300} = \dfrac{3.0 \times 10^5 \times V_3}{500}$

$V_3 = \dfrac{1.0 \times 10^5 \times 12 \times 500}{300 \times 3.0 \times 10^5} = \dfrac{20}{3} \approx 6.7\,\text{L}$ ✓ 一致する。

採点ポイント
  • 操作1でボイルの法則を正しく適用する(2点)
  • 操作2でシャルルの法則を正しく適用する(2点)
  • ボイル・シャルルの法則で初めと最後を直接結んで確認する(3点)
  • 2つの方法で同じ答えが得られることを示す(1点)