ニュートンは三角プリズムに白色光を通し、虹のような色の帯(スペクトル)が現れることを発見しました。
白色光は実はさまざまな波長の光が混ざったもので、波長によって屈折率が異なるため、プリズムを通ると色ごとに分かれるのです。
この分散という現象は、虹が見える原理でもあり、光の本質に深く関わっています。
ガラスや水の屈折率は、光の波長によってわずかに異なります。一般に、波長が短い光ほど屈折率が大きく、波長が長い光ほど屈折率が小さくなります。
| 色 | 波長(nm) | ガラスの屈折率(例) |
|---|---|---|
| 赤 | 700 | 1.513 |
| 橙 | 620 | 1.517 |
| 黄 | 580 | 1.519 |
| 緑 | 540 | 1.522 |
| 青 | 470 | 1.528 |
| 紫 | 400 | 1.536 |
光が媒質中を進む速さは $v = \dfrac{c}{n}$ です。屈折率 $n$ は媒質中の原子・分子と光の電磁的相互作用によって決まります。
振動数が大きい(波長が短い)光ほど、媒質内の電子の応答が追いつかず、位相のずれが大きくなるため、屈折率が大きくなります。
光が媒質に入ると波長は変化しますが、振動数は不変です。
✕ 誤:ガラス中では光の振動数が変わる
○ 正:振動数は一定で、媒質中では波長が $\lambda' = \dfrac{\lambda}{n}$ に短くなる
$v = f\lambda$ において、$v$ が変わり $f$ が一定なので $\lambda$ が変化します。
三角プリズムに白色光を入射させると、光はプリズムの入射面と出射面の2回の屈折で曲げられます。 波長(色)ごとに屈折率が異なるため、各色の偏角(曲がる角度)が異なり、光が色ごとに分かれます。
頂角 $A$ のプリズムを通過する光の偏角 $\delta$ は、
$$\delta = (\theta_1 - \alpha) + (\theta_2 - \beta)$$
ここで $\alpha + \beta = A$(プリズム内の入射角・出射角の関係)
偏角 $\delta$ が最小になるのは、プリズム内の光路が底面に平行になるとき、すなわち $\theta_1 = \theta_2$($\alpha = \beta$)のときです。
$$n = \frac{\sin\dfrac{A + \delta_{\min}}{2}}{\sin\dfrac{A}{2}}$$
最小偏角のとき $\theta_1 = \theta_2 = \theta$、$\alpha = \beta = A/2$
偏角:$\delta_{\min} = 2\theta - A$ → $\theta = \dfrac{A + \delta_{\min}}{2}$
スネルの法則:$\sin\theta = n\sin\alpha = n\sin\dfrac{A}{2}$
よって $n = \dfrac{\sin\dfrac{A + \delta_{\min}}{2}}{\sin\dfrac{A}{2}}$
赤色光と紫色光の偏角の差を角分散と呼びます。角分散が大きいほど、スペクトルが広がって色が分離しやすくなります。
屈折率の波長変化が大きいガラス(「分散が大きい」ガラス)ほど、プリズムとしての分散能力が高くなります。フリントガラスはクラウンガラスより分散が大きく、分光器に適しています。
プリズムや回折格子で得られる光のスペクトルにはいくつかの種類があります。
白熱電球や太陽光のように、すべての波長の光が連続的に含まれている場合、虹のようにすべての色が途切れなく並ぶ連続スペクトルが得られます。
気体を高温にしたり放電させたりすると、特定の波長の光だけを出します。プリズムで分光すると、特定の位置にだけ明るい線が現れます。 これが線スペクトルです。水素の線スペクトル(バルマー系列)は量子力学の発展に重要な役割を果たしました。
連続スペクトルの光を気体に通すと、その気体が吸収する波長の部分だけが暗くなった吸収スペクトル(暗線スペクトル)が得られます。 太陽光のスペクトルに見られるフラウンホーファー線がこの例です。
「ある温度で特定の波長の光を放出する物質は、同じ波長の光を吸収する」
つまり、輝線スペクトルで光る波長と、吸収スペクトルで暗くなる波長は一致します。これにより、遠くの星の大気の組成を特定できるのです。
虹は空気中の水滴がプリズムの役割を果たし、太陽光を分散させることで生じます。
太陽光が水滴に入射すると、屈折→内部反射→屈折の経路をたどります。 各色の偏角が異なるため、観測者には特定の角度に特定の色が見えます。
プリズムでは紫が最も大きく曲がり(屈折率が大きいため)、赤が最も小さく曲がります。
✕ 誤:赤色光が最も大きく屈折する
○ 正:紫色光が最も大きく屈折する(短波長ほど屈折率が大きい)
カメラや望遠鏡のレンズでは、分散による色収差(色によって焦点がずれる現象)が問題になります。
これを解決するために、分散の異なる2種類のガラス(クラウンガラスとフリントガラス)を組み合わせた色消しレンズ(アクロマートレンズ)が使われます。屈折力は保ちつつ分散を打ち消すのです。
プリズムと分散は、光の波動的性質が目に見える形で現れる重要なテーマです。
Q1. 白色光をプリズムに通すと、赤色光と紫色光のどちらが大きく偏角しますか。
Q2. 光が空気中からガラスに入るとき、変わるのは波長と速さのどちらですか。それとも両方ですか。
Q3. 太陽光のスペクトルに見られる暗線(フラウンホーファー線)は何と呼ばれるスペクトルですか。
Q4. プリズムの偏角が最小になる条件は何ですか。
プリズムと分散に関する入試形式の問題です。
白色光をプリズムに通したときに得られるスペクトルについて、次の問いに答えよ。
(1) 最も屈折角が大きい色は何色か。
(2) 最も屈折角が小さい色は何色か。
(3) このようにプリズムで色が分かれる現象を何というか。
(1) 紫色 (2) 赤色 (3) 分散
波長が短い光ほどガラスの屈折率が大きいため、紫色光が最も大きく曲がり、赤色光が最も小さく曲がります。この現象を光の分散と呼びます。
次のスペクトルの種類を答えよ。
(1) 白熱電球の光をプリズムで分光したとき
(2) 水素放電管の光をプリズムで分光したとき
(3) 白色光を低温の気体に通してからプリズムで分光したとき
(1) 連続スペクトル (2) 線スペクトル(輝線スペクトル) (3) 吸収スペクトル(暗線スペクトル)
(1) 高温の固体や液体からの光はすべての波長を含むため、連続スペクトルが得られます。
(2) 気体の原子は特定の波長の光だけを放出するため、線スペクトルになります。
(3) 気体が特定の波長を吸収するため、連続スペクトルの中に暗線が現れます。
頂角 $60°$ のプリズムにおいて、ある単色光の最小偏角が $30°$ であった。このプリズムの屈折率を求めよ。
$n = \dfrac{\sin 45°}{\sin 30°} = \dfrac{\frac{\sqrt{2}}{2}}{\frac{1}{2}} = \sqrt{2} \approx 1.41$
最小偏角の公式 $n = \dfrac{\sin\frac{A + \delta_{\min}}{2}}{\sin\frac{A}{2}}$ に代入します。
$A = 60°$、$\delta_{\min} = 30°$ より、
$n = \dfrac{\sin\frac{60° + 30°}{2}}{\sin\frac{60°}{2}} = \dfrac{\sin 45°}{\sin 30°} = \dfrac{\sqrt{2}/2}{1/2} = \sqrt{2}$
頂角 $A = 60°$ のプリズム(屈折率 $n = 1.50$)に、空気中から入射角 $\theta_1 = 45°$ で単色光を入射させた。プリズム内での屈折角 $\alpha$ と、出射角 $\theta_2$ を求めよ。$\sin 45° = 0.707$、$\sin^{-1}(0.471) \approx 28.1°$、$\sin^{-1}(0.729) \approx 46.8°$ を用いてよい。
$\alpha \approx 28.1°$、$\theta_2 \approx 46.8°$
入射面でのスネルの法則:$\sin 45° = 1.50 \sin\alpha$
$\sin\alpha = \dfrac{0.707}{1.50} = 0.471$ → $\alpha \approx 28.1°$
プリズム内の角度の関係:$\alpha + \beta = A = 60°$
$\beta = 60° - 28.1° = 31.9°$
出射面でのスネルの法則:$1.50 \sin 31.9° = \sin\theta_2$
$\sin\theta_2 = 1.50 \times 0.529 = 0.793$ → $\theta_2 \approx 52.5°$
(注:$\sin 31.9° \approx 0.529$ として計算。与えられた数値表により近似値は異なる場合があります)
頂角 $60°$ のプリズムに白色光を入射角 $45°$ で入射させた。赤色光($n_r = 1.513$)と紫色光($n_v = 1.536$)の偏角の差(角分散)を求めよ。ただし、各色の屈折角は小さいとして $\delta \approx (n-1)A$ の近似式を使ってよい。
$\Delta\delta = (n_v - n_r) \times A = (1.536 - 1.513) \times 60° = 0.023 \times 60° = 1.38°$
薄いプリズムの近似式 $\delta \approx (n-1)A$ を使います。
赤色光の偏角:$\delta_r \approx (1.513 - 1) \times 60° = 30.78°$
紫色光の偏角:$\delta_v \approx (1.536 - 1) \times 60° = 32.16°$
角分散:$\Delta\delta = \delta_v - \delta_r = 32.16° - 30.78° = 1.38°$
(注:この近似は頂角が小さいプリズムで正確ですが、$60°$ ではやや粗い近似です。問題文の指示に従い近似式を使用しています。)
虹が見える原理について、次の問いに答えよ。
(1) 主虹(1次の虹)で赤色が外側、紫色が内側に見える理由を、水滴中での光の経路と屈折率の波長依存性に基づいて説明せよ。
(2) 副虹(2次の虹)で色の順序が逆になる理由を述べよ。
(1) 水滴に入射した光は屈折→内部反射→屈折の経路をたどる。紫色光は屈折率が大きいため赤色光より強く屈折し、観測者の目に届く角度が小さくなる(約$40°$)。赤色光は屈折が小さいため大きな角度(約$42°$)で届く。よって外側が赤、内側が紫になる。
(2) 副虹は水滴内で2回反射するため、光の出射方向が主虹と反転する。このため、各色の角度関係が逆になり、外側が紫、内側が赤になる。
主虹では、太陽光の反対方向を基準として約$42°$(赤)から約$40°$(紫)の範囲に光が集中します。上方ほど角度が大きいので、上(外側)が赤、下(内側)が紫になります。
副虹では水滴内で2回反射するため、出射方向が反転し、約$51°$の方向に現れます。色の順序は主虹と逆になります。