レンズの公式 $\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f}$ は万能ですが、実際の問題では「作図法」と「公式法」を状況に応じて使い分けることが大切です。
ここでは、凸レンズ・凹レンズの各ケースを系統的に整理し、入試で頻出のパターンを確実に解けるようにしましょう。
レンズの問題では、まず作図で像の位置を大まかに見積もり、次に公式で正確な値を求めるのが効率的です。
この3本のうち2本を描けば像の位置が決まります。3本目は検算に使いましょう。
作図法は像の定性的な性質(実像/虚像、正立/倒立、拡大/縮小)を素早く把握するのに最適です。
公式法は像の位置・大きさの正確な数値を求めるのに使います。
入試では「作図して像を示せ」と「数値を求めよ」の両方が問われるので、両方マスターしましょう。
凹レンズでは平行光線はレンズ通過後に発散します。
✕ 誤:凹レンズでも光が焦点に集まるように描く
○ 正:凹レンズの平行光線は、前側の焦点から発散するように広がる(延長線が前側焦点を通る)
凸レンズ($f > 0$)の各ケースを、物体位置ごとに完全に整理します。
結果:倒立縮小の実像($f < b < 2f$)
例:$f = 10$, $a = 30$ → $b = 15$, $m = 0.50$
応用:カメラ(遠くの物体の縮小像をフィルムに写す)
結果:倒立等倍の実像($b = 2f$)
例:$f = 10$, $a = 20$ → $b = 20$, $m = 1.0$
応用:1:1マクロ撮影
結果:倒立拡大の実像($b > 2f$)
例:$f = 10$, $a = 15$ → $b = 30$, $m = 2.0$
応用:プロジェクター(拡大像をスクリーンに投影)
結果:像はできない(光は平行光になる)
応用:スポットライト、懐中電灯(焦点に光源を置いて平行光を作る)
結果:正立拡大の虚像($b < 0$, $|b| > a$)
例:$f = 10$, $a = 5$ → $b = -10$, $|m| = 2.0$
応用:虫眼鏡(ルーペ)
$b$ を $a$ の関数として表すと、$b = \dfrac{af}{a - f}$ です。
$a = f$ で $b \to \pm\infty$(発散)、$a \to \infty$ で $b \to f$(焦点に収束)という特徴的な双曲線になります。
物体を遠方から焦点に向かって近づけると、実像はレンズからどんどん遠ざかり、焦点上で無限遠に飛びます。
さらに焦点の内側に入ると、像は虚像に切り替わり、レンズの反対側の遠方から物体に近づいてきます。
この連続的な像の移動を理解することが、レンズの問題を解く直感を養います。
凹レンズ($f < 0$)では、物体がどこにあっても常に正立縮小の虚像ができます。
$b = \dfrac{af}{a - f} = \dfrac{a \cdot f}{a - f}$($f < 0$ なので $a - f > 0$、かつ分子 $af < 0$。よって $b < 0$、つまり常に虚像。)
倍率 $|m| = \dfrac{|b|}{a} = \dfrac{|f|}{a + |f|} < 1$(常に縮小)
凹レンズの虚像は、レンズと物体の間にできます($0 < |b| < a$)。
✕ 誤:虚像は物体より遠い位置にできる
○ 正:凹レンズの虚像は常にレンズと物体の間(焦点と物体の間)にできる
凸レンズは物体の位置に応じて5つのケースがありますが、凹レンズは1パターンのみ(正立縮小の虚像)です。
凹レンズの問題は計算自体は簡単ですが、「符号を正しく処理できるか」が試されます。
計算を始める前に、簡単な作図をして「実像か虚像か」「拡大か縮小か」の見当をつけましょう。 計算結果がこれと矛盾すれば、どこかでミスがあるとわかります。
$a \to \infty$ のとき $b \to f$、$a = 2f$ のとき $b = 2f$ など、既知の特殊ケースで検算すると安心です。
像の高さ $h'$ は物体の高さ $h$ に対して $h' = |m| \cdot h = \dfrac{|b|}{a} \cdot h$ です。
① 作図で定性的な結果を予測
② $\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f}$ で $b$ を求める
③ $m = \dfrac{b}{a}$ で倍率を求める
④ $b$ の符号で実像/虚像を判定、$m$ の符号で正立/倒立を判定
レンズの公式は $b = \dfrac{af}{a-f}$ と変形できます。分母が正か負かで像の種類がすぐにわかります。
また、$\dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f} - \dfrac{1}{a} = \dfrac{a-f}{af}$ と変形すると、$a$ と $f$ の大小関係から $b$ の符号を読み取れます。
レンズの典型問題をパターン化して整理することで、入試での時間短縮につながります。
Q1. 凸レンズで $a = 2f$ のとき、像の倍率はいくらですか。
Q2. 凸レンズの焦点上に物体を置くとどうなりますか。
Q3. 凹レンズで物体をどこに置いても同じ種類の像ができます。何像ですか。
Q4. レンズの問題の解答で必ず述べるべき4点は何ですか。
各ケースの問題を実際に解いて、パターンを体に染み込ませましょう。
焦点距離 $f = 12\,\text{cm}$ の凸レンズから $18\,\text{cm}$ の位置に高さ $3.0\,\text{cm}$ の物体がある。像の位置、倍率、像の高さ、像の種類と向きを求めよ。
$b = 36\,\text{cm}$、$m = 2.0$(倒立拡大の実像)、像の高さ $= 6.0\,\text{cm}$
$f < a < 2f$($12 < 18 < 24$)なので倒立拡大の実像が予測されます。
$\dfrac{1}{18} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{12}$ → $\dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{12} - \dfrac{1}{18} = \dfrac{3-2}{36} = \dfrac{1}{36}$ → $b = 36\,\text{cm}$
$m = \dfrac{36}{18} = 2.0$。像の高さ $= 2.0 \times 3.0 = 6.0\,\text{cm}$
$b > 0$ なので実像、$m > 1$ なので拡大、倒立。
焦点距離 $f = 20\,\text{cm}$ の凸レンズから $15\,\text{cm}$ の位置に物体を置いた。像の位置と種類を求め、この配置が何に利用されるか答えよ。
$b = -60\,\text{cm}$(正立拡大の虚像、倍率 $4.0$ 倍)。虫眼鏡(ルーペ)として利用される。
$a = 15 < f = 20$ なので虚像です。
$\dfrac{1}{15} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{20}$ → $\dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{20} - \dfrac{1}{15} = \dfrac{3-4}{60} = -\dfrac{1}{60}$ → $b = -60\,\text{cm}$
$|m| = \dfrac{60}{15} = 4.0$。正立拡大の虚像。これは虫眼鏡の原理です。
焦点距離 $f = 10\,\text{cm}$ の凸レンズに対して、物体を $a = 50\,\text{cm}$ の位置から $a = 15\,\text{cm}$ の位置まで近づけた。像はどのように移動するか。それぞれの位置での像の位置を求め、像の移動距離を答えよ。
$a = 50$:$b = 12.5\,\text{cm}$。$a = 15$:$b = 30\,\text{cm}$。像はレンズから遠ざかる方向に $17.5\,\text{cm}$ 移動する。
$a = 50$:$\dfrac{1}{50} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{10}$ → $b = \dfrac{50}{4} = 12.5\,\text{cm}$
$a = 15$:$\dfrac{1}{15} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{10}$ → $b = 30\,\text{cm}$
像の移動距離:$30 - 12.5 = 17.5\,\text{cm}$(レンズから遠ざかる方向)
物体がレンズに近づくと($a$ が減少すると)、実像はレンズから遠ざかります。これがカメラのピント合わせ(近くの被写体にピントを合わせるとき、レンズを前に繰り出す)の原理です。
焦点距離 $f$ の凸レンズで3倍の倒立実像を作りたい。物体を凸レンズからどの距離に置けばよいか。$f$ を用いて答えよ。
$a = \dfrac{4f}{3}$
倒立実像で3倍 → $m = \dfrac{b}{a} = 3$($b > 0$)→ $b = 3a$
レンズの公式に代入:$\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{3a} = \dfrac{1}{f}$
$\dfrac{3+1}{3a} = \dfrac{1}{f}$ → $\dfrac{4}{3a} = \dfrac{1}{f}$ → $a = \dfrac{4f}{3}$
検算:$\dfrac{4f}{3}$ は $f < a < 2f$ の範囲にあり、拡大実像のケースと一致します。
凸レンズで物体と実像の間の距離が $L$ であるとき、$L \geq 4f$ であることを証明し、$L = 4f$ のとき物体距離 $a$ を求めよ。
$L \geq 4f$ の証明は以下の通り。$L = 4f$ のとき $a = 2f$。
$L = a + b$ とおきます。$b = \dfrac{af}{a-f}$ より
$L = a + \dfrac{af}{a-f} = \dfrac{a(a-f) + af}{a-f} = \dfrac{a^2}{a-f}$
$L(a-f) = a^2$ → $La - Lf = a^2$ → $a^2 - La + Lf = 0$
$a$ が実数解を持つ条件(判別式 $\geq 0$):$L^2 - 4Lf \geq 0$ → $L(L - 4f) \geq 0$
$L > 0$ なので $L \geq 4f$。
$L = 4f$ のとき判別式 $= 0$ より $a = \dfrac{L}{2} = 2f$(重解)。等倍の実像。
光学台の上で凸レンズの焦点距離を測定する実験を行った。物体とスクリーンの間の距離を $L = 80\,\text{cm}$ に固定したとき、レンズの位置を2ヶ所見つけ、それぞれスクリーン上に実像ができた。2ヶ所の間の距離は $d = 40\,\text{cm}$ であった。この凸レンズの焦点距離を求めよ。
$f = 15\,\text{cm}$
共役の関係より、2つの位置での物体距離は $a_1 = \dfrac{L+d}{2}$ と $a_2 = \dfrac{L-d}{2}$ です。
$a_1 = \dfrac{80+40}{2} = 60\,\text{cm}$、$a_2 = \dfrac{80-40}{2} = 20\,\text{cm}$
$b_1 = L - a_1 = 20\,\text{cm}$、$b_2 = L - a_2 = 60\,\text{cm}$
$\dfrac{1}{f} = \dfrac{1}{60} + \dfrac{1}{20} = \dfrac{1+3}{60} = \dfrac{4}{60}$ → $f = 15\,\text{cm}$
一般公式:$f = \dfrac{L^2 - d^2}{4L} = \dfrac{80^2 - 40^2}{4 \times 80} = \dfrac{4800}{320} = 15\,\text{cm}$