第19章 光の干渉と回折

くさび形空気層の干渉
─ 等厚干渉と縞の間隔

2枚のガラス板の一端に薄い物体を挟んで傾けると、間の空気層はくさび形になります。
上方から単色光を照射すると、等間隔の干渉縞が平行に並んで観察されます。
この等厚干渉の縞間隔から、挟んだ物体の厚さを精密に測定できます。

1くさび形空気層の構造

2枚の平面ガラスを重ね、一端に薄い物体(髪の毛、薄紙など)を挟みます。すると、2枚のガラスの間にくさび形の空気層ができます。

接触端(くさびの先端)からの距離を $x$ とすると、空気層の厚さ $d$ は $x$ に比例して増加します。

空気層の厚さと位置の関係

$$d = x \tan\theta \approx x\theta$$

$\theta$:2枚のガラスのなす角(非常に小さい)、$x$:接触端からの距離。$\theta$ が十分小さいので $\tan\theta \approx \theta$(ラジアン)。

挟んだ物体の厚さを $t$、接触端から物体までの距離を $L$ とすると、

$$\tan\theta = \frac{t}{L} \quad \Rightarrow \quad d = \frac{t}{L} \cdot x$$
ここが本質:くさび形干渉のメカニズム

上方から単色光を照射すると、空気層の上面(上のガラス下面)での反射光下面(下のガラス上面)での反射光が干渉します。

空気層の厚さは位置 $x$ によって連続的に変わるため、干渉条件を満たす場所が等間隔の直線状に並びます。

同じ厚さの場所を結ぶと直線になる → 等厚干渉と呼ぶ。

2干渉条件と縞の間隔

位相反転の確認

空気層での反射を考えます。

  • 上面の反射(上のガラス → 空気):屈折率が大から小 → 自由端反射 → 位相変化なし
  • 下面の反射(空気 → 下のガラス):屈折率が小から大 → 固定端反射 → 位相が $\pi$ 反転

したがって、反射による追加の位相差は $\lambda/2$(半波長分)です。これはニュートンリングと同じ状況です。

暗線の条件

実効的な光路差は $\Delta = 2d + \lambda/2$ です。弱め合い(暗線)の条件は

$$2d + \frac{\lambda}{2} = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad \Rightarrow \quad 2d = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)$$

明線の条件

強め合い(明線)の条件は

$$2d + \frac{\lambda}{2} = m\lambda \quad \Rightarrow \quad 2d = \left(m - \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 1, 2, 3, \ldots)$$

干渉縞の間隔

$m$ 番目と $(m+1)$ 番目の暗線の位置をそれぞれ $x_m$、$x_{m+1}$ とすると、

$2d_m = m\lambda$ → $2 \cdot \dfrac{t}{L} \cdot x_m = m\lambda$ → $x_m = \dfrac{m\lambda L}{2t}$

干渉縞の間隔

$$\Delta x = x_{m+1} - x_m = \frac{\lambda L}{2t} = \frac{\lambda}{2\theta}$$

$\lambda$:光の波長、$L$:接触端から挟んだ物体までの距離、$t$:挟んだ物体の厚さ、$\theta$:くさびの角度。縞の間隔は位置 $x$ に依らず一定
落とし穴:ニュートンリングとの違い

誤:ニュートンリングと同じように外側ほど縞が詰まる

正:くさび形空気層では空気層の厚さが $x$ に比例するため、干渉縞の間隔は等間隔

ニュートンリングでは $d \propto r^2$ なので縞は外側ほど狭くなりますが、くさび形では $d \propto x$ なので等間隔になります。

落とし穴:接触端は暗線か明線か

誤:接触端は空気層の厚さが0なので明るい

正:$d = 0$ でも位相反転により光路差 $\lambda/2$ → 弱め合い → 暗線($m = 0$)

反射光の場合、接触端は常に暗線です。ニュートンリングの中心が暗い理由と同じです。

3厚さの測定への応用

挟んだ物体の厚さを求める

干渉縞の間隔 $\Delta x$ を測定すれば、挟んだ物体の厚さ $t$ を求められます。

厚さの測定公式

$$t = \frac{\lambda L}{2 \Delta x}$$

$\Delta x$:干渉縞の間隔、$L$:接触端から物体までの距離、$\lambda$:使用光の波長

総縞数から求める方法

接触端から物体の位置までに暗線が $N$ 本観察される場合、物体の位置での空気層の厚さは

$$2t = N\lambda \quad \Rightarrow \quad t = \frac{N\lambda}{2}$$

これは、$L$ 全体にわたって $N$ 本の暗線があることから、$\Delta x = L/N$ を使って $t = \lambda L/(2\Delta x) = \lambda L \cdot N/(2L) = N\lambda/2$ と確認できます。

入試頻出テクニック:2つの解法

くさび形干渉の問題では、次の2つの方法で厚さを求めることが多いです。

方法1:縞の間隔から求める $t = \lambda L/(2\Delta x)$

方法2:総縞数から求める $t = N\lambda/2$

どちらの情報が与えられているかで使い分けましょう。両方の情報が与えられた場合は検算に利用できます。

4くさび形干渉の発展

くさび角を変えると

くさび角 $\theta$ を大きくする(= 挟む物体を厚くする、または $L$ を短くする)と、縞の間隔 $\Delta x = \lambda/(2\theta)$ は狭くなります。逆に $\theta$ を小さくすると縞は広がります。

波長を変えると

波長 $\lambda$ を大きくすると、縞の間隔 $\Delta x = \lambda/(2\theta)$ は広くなります。赤い光($\lambda$ 大)は青い光($\lambda$ 小)より縞の間隔が広い。

白色光の場合

白色光を使うと、各波長の干渉縞が異なる間隔で重なるため、色づいた縞が観察されます。接触端に近い部分では縞が区別でき、離れると色が混ざって白くなります。

空気層以外の媒質

ガラスの間に屈折率 $n$ の液体を充填した場合、光路差は $2nd$ になるため、

屈折率 $n$ の媒質を挟んだ場合の縞の間隔

$$\Delta x = \frac{\lambda}{2n\theta} = \frac{\lambda L}{2nt}$$

空気層の場合と比べて縞の間隔は $1/n$ 倍に狭くなる。
比較表:くさび形 vs ニュートンリング

どちらも空気層の干渉(等厚干渉)ですが、空気層の形状が異なります。

比較項目くさび形ニュートンリング
空気層の形線形($d \propto x$)放物線状($d \propto r^2$)
干渉縞の形等間隔の直線同心円(外側ほど密)
縞の間隔一定:$\Delta x = \lambda/(2\theta)$$\propto 1/\sqrt{m}$(外側ほど密)
接触端/中心暗線暗点
暗線/暗環の条件$2d = m\lambda$$2d = m\lambda$(同じ)

5この章を俯瞰する

  • ニュートンリング(W-5-5) → 同じ等厚干渉。空気層の形状が放物線状か線形かの違い。干渉条件($2d = m\lambda$)は共通。
  • 薄膜の干渉(W-5-4) → くさび形空気層も「薄膜」の一種。位相反転の考え方は共通。
  • ヤングの干渉実験(W-5-1) → 光路差と干渉条件の基本的な考え方が共通。
  • 回折格子(W-5-3) → 等間隔の干渉縞が現れる点で類似。ただし原理(分割干渉 vs 薄膜干渉)は異なる。
まとめ
  • くさび形空気層では、空気層の厚さ $d$ が位置 $x$ に比例するため、等間隔の干渉縞が生じる。
  • 暗線条件:$2d = m\lambda$、明線条件:$2d = (m - 1/2)\lambda$。接触端は暗線($m = 0$)。
  • 干渉縞の間隔:$\Delta x = \lambda L/(2t) = \lambda/(2\theta)$。
  • 厚さの測定:$t = \lambda L/(2\Delta x)$ または $t = N\lambda/2$。
  • ニュートンリングとの違いは、空気層の形状(線形 vs 放物線状)と縞の間隔(等間隔 vs 不等間隔)。

確認テスト

Q1. くさび形空気層の干渉で、接触端が暗線になる理由を述べよ。

▶ クリックして解答を表示接触端では $d = 0$ だが、下面の反射で位相が $\pi$ 反転するため実効光路差は $\lambda/2$ となり、弱め合い(暗線)になる。

Q2. 干渉縞の間隔を広げるにはどうすればよいか。2つの方法を述べよ。

▶ クリックして解答を表示方法①:波長の長い光を使う($\Delta x = \lambda/(2\theta)$ なので $\lambda$ を大きくする)。方法②:くさび角を小さくする(挟む物体を薄くする、または $L$ を長くする)。

Q3. 接触端から物体までに暗線が $N = 20$ 本、波長 $\lambda = 500\,\text{nm}$ のとき、物体の厚さはいくらか。

▶ クリックして解答を表示$t = N\lambda/2 = 20 \times 500 \times 10^{-9}/2 = 5.0 \times 10^{-6}\,\text{m} = 5.0\,\mu\text{m}$

Q4. くさび形干渉で縞が等間隔になる理由を、ニュートンリングと比較して述べよ。

▶ クリックして解答を表示くさび形では $d \propto x$(厚さが距離に比例)なので、隣り合う暗線の間隔 $\Delta x$ は一定。一方ニュートンリングでは $d \propto r^2$ なので、暗環の間隔は外側ほど狭くなる。

入試問題演習

A 基礎レベル

5-6-1A 基礎縞の間隔計算

2枚の平面ガラスの一端に厚さ $t = 0.010\,\text{mm}$ の薄紙を挟み、くさび形空気層をつくった。接触端から薄紙までの距離は $L = 50\,\text{mm}$ である。波長 $\lambda = 600\,\text{nm}$ の単色光を上方から照射したとき、反射光で観察される干渉縞の間隔 $\Delta x$ を求めよ。

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解答

$\Delta x = 1.5\,\text{mm}$

解説

$\Delta x = \dfrac{\lambda L}{2t} = \dfrac{600 \times 10^{-9} \times 50 \times 10^{-3}}{2 \times 0.010 \times 10^{-3}}$

$= \dfrac{3.0 \times 10^{-8}}{2.0 \times 10^{-5}} = 1.5 \times 10^{-3}\,\text{m} = 1.5\,\text{mm}$

採点ポイント
  • 公式を正しく適用(4点)
  • 単位換算が正確(3点)
  • 計算結果(3点)
5-6-2A 基礎厚さ測定計算

2枚の平面ガラスの一端に細い針金を挟み、波長 $\lambda = 546\,\text{nm}$ の単色光で上方から照射した。接触端から針金までの距離は $L = 80\,\text{mm}$ で、干渉縞の間隔は $\Delta x = 1.82\,\text{mm}$ であった。針金の直径を求めよ。

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解答

$t = 0.012\,\text{mm} = 12\,\mu\text{m}$

解説

$t = \dfrac{\lambda L}{2\Delta x} = \dfrac{546 \times 10^{-9} \times 80 \times 10^{-3}}{2 \times 1.82 \times 10^{-3}}$

$= \dfrac{4.368 \times 10^{-8}}{3.64 \times 10^{-3}} = 1.20 \times 10^{-5}\,\text{m} = 12\,\mu\text{m}$

採点ポイント
  • 公式を変形して $t$ を求める(4点)
  • 単位換算が正確(3点)
  • 計算結果(3点)

B 発展レベル

5-6-3B 発展総縞数計算

2枚の平面ガラスの一端に厚さ $t$ の薄膜を挟んでくさび形空気層をつくり、波長 $\lambda = 500\,\text{nm}$ の単色光で照射した。接触端から薄膜までに暗線が25本観察された。

(1) 薄膜の厚さ $t$ を求めよ。

(2) 波長を $\lambda' = 625\,\text{nm}$ に変えたとき、暗線は何本観察されるか。

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解答

(1) $t = 6.25\,\mu\text{m}$

(2) 20本

解説

(1) $t = \dfrac{N\lambda}{2} = \dfrac{25 \times 500 \times 10^{-9}}{2} = 6.25 \times 10^{-6}\,\text{m} = 6.25\,\mu\text{m}$

(2) 厚さ $t$ は変わらないので $N' = \dfrac{2t}{\lambda'} = \dfrac{2 \times 6.25 \times 10^{-6}}{625 \times 10^{-9}} = \dfrac{12.5 \times 10^{-6}}{625 \times 10^{-9}} = 20$ 本

別解:$N\lambda = N'\lambda'$ → $N' = N \cdot \lambda/\lambda' = 25 \times 500/625 = 20$ 本

採点ポイント
  • (1) 総縞数の公式を使う(3点)
  • (1) 計算結果(2点)
  • (2) 厚さ一定の条件を使う(3点)
  • (2) 計算結果(2点)
5-6-4B 発展液体充填計算

2枚の平面ガラスの一端に厚さ $t$ の物体を挟み、くさび形の隙間をつくった。空気中で波長 $\lambda = 589\,\text{nm}$ の光を照射したとき、干渉縞の間隔は $\Delta x_1 = 2.0\,\text{mm}$ であった。次に、ガラスの間に屈折率 $n = 1.33$ の水を満たしたところ、干渉縞の間隔は $\Delta x_2$ に変化した。$\Delta x_2$ を求めよ。

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解答

$\Delta x_2 = 1.5\,\text{mm}$

解説

空気中:$\Delta x_1 = \dfrac{\lambda}{2\theta}$

水中:$\Delta x_2 = \dfrac{\lambda}{2n\theta}$

比を取ると:$\dfrac{\Delta x_2}{\Delta x_1} = \dfrac{1}{n}$ → $\Delta x_2 = \dfrac{\Delta x_1}{n} = \dfrac{2.0}{1.33} \approx 1.5\,\text{mm}$

屈折率 $n$ の媒質を充填すると、光路差が $n$ 倍になるため、縞の間隔は $1/n$ 倍に狭くなります。

採点ポイント
  • 空気中と水中の式を立てる(3点)
  • 比を取る手法(4点)
  • 計算結果(3点)

C 応用レベル

5-6-5C 応用温度変化論述

2枚のガラス板の一端に金属線を挟み、くさび形空気層をつくり、波長 $\lambda = 550\,\text{nm}$ の光で干渉縞を観察していたところ、温度が上昇して金属線が膨張し、干渉縞の間隔が狭くなった。温度上昇前に暗線が40本であったのが、温度上昇後には44本になった。

(1) 温度上昇前の金属線の直径 $t_1$ を求めよ。

(2) 温度上昇後の金属線の直径 $t_2$ を求めよ。

(3) 直径の変化量 $\Delta t = t_2 - t_1$ を求めよ。

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解答

(1) $t_1 = 11.0\,\mu\text{m}$

(2) $t_2 = 12.1\,\mu\text{m}$

(3) $\Delta t = 1.1\,\mu\text{m}$

解説

(1) $t_1 = \dfrac{N_1 \lambda}{2} = \dfrac{40 \times 550 \times 10^{-9}}{2} = 11.0 \times 10^{-6}\,\text{m} = 11.0\,\mu\text{m}$

(2) $t_2 = \dfrac{N_2 \lambda}{2} = \dfrac{44 \times 550 \times 10^{-9}}{2} = 12.1 \times 10^{-6}\,\text{m} = 12.1\,\mu\text{m}$

(3) $\Delta t = t_2 - t_1 = 12.1 - 11.0 = 1.1\,\mu\text{m}$

(別解)$\Delta t = \dfrac{\Delta N \cdot \lambda}{2} = \dfrac{4 \times 550 \times 10^{-9}}{2} = 1.1\,\mu\text{m}$

金属線が膨張すると $t$ が増加し、$\theta$ が大きくなるため $\Delta x = \lambda/(2\theta)$ は小さくなり、縞が密になります。

採点ポイント
  • (1)(2) 総縞数の公式を正しく使う(各2点)
  • (3) 差を正しく求める(3点)
  • 物理的な説明(縞が密になる理由)(3点)
5-6-6C 応用段差測定計算

下のガラス板の表面に微小な段差がある。上にガラス板を被せてくさび形空気層をつくり、波長 $\lambda = 500\,\text{nm}$ の光で干渉縞を観察した。干渉縞の間隔は $\Delta x = 1.0\,\text{mm}$ であったが、段差の位置で干渉縞が $\Delta x$ の $3/5$ だけずれていた(縞がシフトした)。段差の高さ $h$ を求めよ。

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解答

$h = 150\,\text{nm}$

解説

干渉縞の間隔 $\Delta x$ は空気層の厚さが $\lambda/2$ 変化する距離に対応します。

縞が $\Delta x$ の $3/5$ だけシフト → 空気層の厚さが $\lambda/2 \times 3/5$ だけ変化

$h = \dfrac{\lambda}{2} \times \dfrac{3}{5} = \dfrac{500 \times 10^{-9}}{2} \times \dfrac{3}{5} = 150 \times 10^{-9}\,\text{m} = 150\,\text{nm}$

一般に、縞のずれ量を $\delta$($\Delta x$ を単位として測定)とすると、段差 $h = \delta \cdot \lambda/2$

採点ポイント
  • $\Delta x$ と $\lambda/2$ の対応関係を理解(4点)
  • 段差をシフト量から求める(3点)
  • 計算結果(3点)