第28章 原子の構造

原子の構造 総合演習

第28章で学んだ内容(ラザフォードの原子模型、水素原子のスペクトル、ボーアの原子模型、エネルギー準位)を 総合的に確認する演習問題集です。
基礎レベルから入試レベルまで段階的に取り組みましょう。

1重要公式の確認

📐 第28章の重要公式まとめ

最近接距離(ラザフォード散乱):$d = \dfrac{4k_e Ze^2}{mv_0^2}$

ボーアの量子条件:$mvr = n\hbar = n\dfrac{h}{2\pi}$

振動数条件:$h\nu = E_n - E_m$

水素原子の軌道半径:$r_n = n^2 a_0$ ($a_0 \approx 0.053\,\text{nm}$)

水素原子のエネルギー準位:$E_n = -\dfrac{13.6}{n^2}\,\text{eV}$

リュードベリの公式:$\dfrac{1}{\lambda} = R\left(\dfrac{1}{m^2} - \dfrac{1}{n^2}\right)$

スペクトル線の最大本数:${}_nC_2 = \dfrac{n(n-1)}{2}$

💡 この章の全体像

トムソンモデル(正電荷が均一に分布)→ ラザフォードモデル(原子核の発見)→ ボーアモデル(量子条件で安定性を説明)→ エネルギー準位(線スペクトルの定量的説明)

原子模型の発展を「なぜ前のモデルでは不十分だったか」を軸に整理しておくと、論述問題にも強くなります。

📋まとめ

  • トムソンモデル:正電荷が原子全体に分布。α線散乱実験で否定された
  • ラザフォードモデル:原子核の存在を発見。しかし古典物理では原子の安定性を説明できない
  • ボーアモデル:量子条件($mvr = n\hbar$)と振動数条件($h\nu = E_n - E_m$)で水素原子の線スペクトルを説明
  • 水素原子のエネルギー準位:$E_n = -13.6/n^2\,\text{eV}$。イオン化エネルギーは $13.6\,\text{eV}$
  • 光の吸収はエネルギー差とぴったり一致する光子のみ。電離は $13.6\,\text{eV}$ 以上で起こる
  • スペクトル系列:ライマン($m=1$, 紫外)、バルマー($m=2$, 可視)、パッシェン($m=3$, 赤外)

確認テスト

Q1. ラザフォードの散乱実験で、α粒子が大角度に散乱された理由を述べよ。

▶ クリックして解答を表示原子の中心に正電荷と質量が集中した小さな原子核が存在し、α粒子が原子核の近くを通過したとき強いクーロン斥力を受けたため。

Q2. ボーアの量子条件と振動数条件をそれぞれ式で書け。

▶ クリックして解答を表示量子条件:$mvr = n\hbar$($n = 1, 2, 3, \ldots$)。振動数条件:$h\nu = E_n - E_m$($n > m$ で光子を放出)。

Q3. 水素原子の $n = 4$ から $n = 2$ への遷移で放出される光子のエネルギーを求めよ。

▶ クリックして解答を表示$E_4 - E_2 = -0.850 - (-3.40) = 2.55\,\text{eV}$。バルマー系列の $H_\beta$ 線(青緑色)に対応する。

Q4. ラザフォードモデルが古典物理学で抱える問題点を2つ述べよ。

▶ クリックして解答を表示(1) 円運動する電子は電磁波を放出しエネルギーを失うため、原子核に落ち込み原子が不安定になる。(2) 放出される光が連続スペクトルになるはずだが、実際は線スペクトルである。

Q5. 吸収スペクトル(暗線)が現れる理由をエネルギー準位を用いて説明せよ。

▶ クリックして解答を表示原子はエネルギー準位の差にぴったり一致するエネルギーの光子だけを吸収する。白色光から特定の波長の光が選択的に吸収されるため、その波長の位置に暗線が現れる。

8入試問題演習

第28章全体の内容を入試形式で確認します。

A 基礎レベル

2-5-1 A 基礎 原子模型知識

次の(ア)〜(オ)の記述のうち、ラザフォードの原子模型に関する正しい記述をすべて選べ。

(ア) 正電荷は原子全体に一様に分布している
(イ) 原子の中心に正電荷と質量が集中した原子核がある
(ウ) 原子核の大きさは原子全体の約 $10^{-5}$ 倍である
(エ) 電子は特定の軌道上のみを運動する
(オ) 古典物理学では原子の安定性を説明できない

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(イ)、(ウ)、(オ)

解説

(ア)はトムソンの原子模型。(エ)はボーアの原子模型の量子条件。ラザフォードモデルの特徴は(イ)原子核の存在、(ウ)原子核の小ささ、(オ)古典物理での不安定性です。

B 発展レベル

2-5-2 B 発展 総合計算計算

水素原子のエネルギー準位は $E_n = -13.6/n^2\,\text{eV}$ で与えられる。$h = 6.63 \times 10^{-34}\,\text{J}\cdot\text{s}$、$c = 3.00 \times 10^8\,\text{m/s}$、$1\,\text{eV} = 1.60 \times 10^{-19}\,\text{J}$ として、次の問いに答えよ。

(1) $n = 3$ の励起状態から基底状態へ直接遷移するとき放出される光の波長を求めよ。

(2) $n = 3$ から $n = 2$、さらに $n = 2$ から $n = 1$ へ段階的に遷移した場合、放出される2つの光の波長をそれぞれ求めよ。

(3) (1)と(2)の光子のエネルギーの関係を式で示し、その物理的意味を述べよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\lambda_{31} \approx 103\,\text{nm}$

(2) $\lambda_{32} \approx 656\,\text{nm}$、$\lambda_{21} \approx 122\,\text{nm}$

(3) $h\nu_{31} = h\nu_{32} + h\nu_{21}$(エネルギー保存則)

解説

(1) $h\nu = E_3 - E_1 = -1.51 - (-13.6) = 12.09\,\text{eV} = 1.934 \times 10^{-18}\,\text{J}$

$\lambda = \dfrac{hc}{h\nu} = \dfrac{6.63 \times 10^{-34} \times 3.00 \times 10^8}{1.934 \times 10^{-18}} = 1.03 \times 10^{-7}\,\text{m} = 103\,\text{nm}$

(2) $h\nu_{32} = E_3 - E_2 = 1.89\,\text{eV}$ → $\lambda_{32} = 656\,\text{nm}$

$h\nu_{21} = E_2 - E_1 = 10.2\,\text{eV}$ → $\lambda_{21} = 122\,\text{nm}$

(3) 直接遷移のエネルギーは段階的遷移のエネルギーの合計に等しい。$(E_3 - E_1) = (E_3 - E_2) + (E_2 - E_1)$。ただし、波長については $1/\lambda_{31} = 1/\lambda_{32} + 1/\lambda_{21}$ではなく(これは正しい関係式)、$\lambda_{31} \neq \lambda_{32} + \lambda_{21}$ である点に注意。

採点ポイント
  • (1) エネルギー差を正しく求める(2点)
  • (1) 波長を正しく計算する(2点)
  • (2) 各遷移の波長を正しく求める(各2点)
  • (3) エネルギーの加法性を正しく述べる(2点)

C 応用レベル

2-5-3 C 応用 総合論述論述

次の問いに答えよ。

(1) トムソンの原子模型、ラザフォードの原子模型、ボーアの原子模型について、それぞれの特徴と限界を簡潔に述べよ。

(2) 水素原子の $n = 4$ の励起状態にある多数の原子から放出されうるスペクトル線の最大本数を求め、それぞれの遷移がどのスペクトル系列に属するか答えよ。

(3) 基底状態の水素原子に電子を衝突させて $n = 3$ の励起状態にしたい。電子に最低限必要な運動エネルギーを求めよ。光子の吸収との違いは何か。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) トムソン:正電荷が一様に分布。α線散乱実験の大角度散乱を説明できない。ラザフォード:原子核を発見。古典物理で原子の安定性を説明できない。ボーア:量子条件で安定な軌道を説明。多電子原子に適用できない。

(2) ${}_4C_2 = 6$ 本。ライマン系列:$2\to1$, $3\to1$, $4\to1$(3本)。バルマー系列:$3\to2$, $4\to2$(2本)。パッシェン系列:$4\to3$(1本)。

(3) $E_3 - E_1 = 12.09\,\text{eV}$。光子は「ぴったり」のエネルギーが必要だが、電子の衝突では「以上」のエネルギーがあればよい。

解説

(1) 原子模型の変遷は「何が説明できなかったか」を軸に整理する。各模型の功績と限界を対比して述べることが重要。

(2) 6本の遷移を系統的に列挙する。$4 \to 1, 3, 2$ で3本、$3 \to 1, 2$ で2本、$2 \to 1$ で1本。系列の分類は遷移先で決まる。

(3) 電子の衝突による励起では、余分なエネルギーは衝突後の電子の運動エネルギーとして持ち去られる。光子の吸収とは異なり、エネルギーがぴったり一致する必要はない。ただし $12.09\,\text{eV}$ は最低限必要。

採点ポイント
  • (1) 各模型の特徴と限界を正しく述べる(各2点、計6点)
  • (2) 本数を正しく求め、系列を分類する(4点)
  • (3) 電子の衝突と光子の吸収の違いを述べる(4点)