前の記事でオームの法則 $V = IR$ を学びました。
しかし実際の回路では、抵抗が1つだけということはまれです。複数の抵抗をどう繋ぐかによって、回路全体の性質が大きく変わります。
ここでは直列接続と並列接続の2つの基本パターンを学び、回路を1つの等価な抵抗に置き換える「合成抵抗」の考え方をマスターしましょう。
抵抗を一列に繋ぐ接続方法を直列接続といいます。 直列に繋がれた抵抗には、すべて同じ電流が流れます。
抵抗 $R_1, R_2, \cdots, R_n$ を直列に接続したとき、合成抵抗 $R$ は
$$R = R_1 + R_2 + \cdots + R_n$$
各抵抗にかかる電圧は、オームの法則より $V_1 = IR_1$、$V_2 = IR_2$、…
全体の電圧は $V = V_1 + V_2 + \cdots = I(R_1 + R_2 + \cdots)$
合成抵抗を $R$ とおくと $V = IR$ なので、$R = R_1 + R_2 + \cdots$ が得られる。
直列接続の本質は、電流の通り道が1本しかないことです。電荷の保存則により、途中で電流が増えたり減ったりすることはありません。
直列接続では「電流が共通」→「電圧が分配される」という関係を押さえましょう。
抵抗を枝分かれさせて繋ぐ接続方法を並列接続といいます。 並列に繋がれた抵抗には、すべて同じ電圧がかかります。
抵抗 $R_1, R_2, \cdots, R_n$ を並列に接続したとき、合成抵抗 $R$ は
$$\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \cdots + \frac{1}{R_n}$$
各抵抗に流れる電流は、オームの法則より $I_1 = \dfrac{V}{R_1}$、$I_2 = \dfrac{V}{R_2}$、…
全体の電流は $I = I_1 + I_2 + \cdots = V\!\left(\dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2} + \cdots\right)$
合成抵抗を $R$ とおくと $I = \dfrac{V}{R}$ なので、$\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2} + \cdots$ が得られる。
並列の公式で求まるのは $\dfrac{1}{R}$ であり、$R$ そのものではありません。
× 誤:$R = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}$ と書いてしまう
○ 正:$\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}$ を計算した後、逆数を取って $R$ を求める
2本の並列なら「和分の積」$R = \dfrac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}$ を使うとミスが減ります。
並列接続の本質は、各抵抗の両端が同じ2点に繋がっていることです。同じ2点間の電位差は1つしかないので、すべての抵抗に同じ電圧がかかります。
並列接続では「電圧が共通」→「電流が分配される」という関係を押さえましょう。
並列にすると電流の通り道が増えます。水路に例えると、幅の狭い水路が1本よりも2本並んでいる方が水が流れやすいのと同じです。
「通り道が増える=抵抗が減る」と覚えておけば、並列の合成抵抗が元の抵抗より小さくなることを直感的に理解できます。
直列接続と並列接続は、日常のさまざまな場面で使い分けられています。
| 直列接続 | 並列接続 | |
|---|---|---|
| 共通な量 | 電流 $I$ | 電圧 $V$ |
| 分配される量 | 電圧 $V$ | 電流 $I$ |
| 合成抵抗 | $R = R_1 + R_2$ | $\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}$ |
| 合成抵抗の大きさ | 個々より大きい | 最小のものより小さい |
| 日常例 | クリスマスの電飾(1つ切れると全消灯) | 家庭のコンセント(1つ切れても他は使える) |
回路図が複雑になると、どの抵抗が直列でどの抵抗が並列なのか見分けにくくなります。
× 誤:図の見た目だけで判断する
○ 正:「同じ電流が流れるか」(直列)、「同じ電圧がかかるか」(並列)で判断する
迷ったら、回路を電流の流れに沿ってたどり、分岐があれば並列、一本道なら直列と判断しましょう。
実際の問題では、直列と並列が混ざった混合回路が出題されます。 解法の基本は「内側から外側へ、合成抵抗を求めていく」です。
まず $R_2$ と $R_3$ の並列合成抵抗を求めます。
$$R_{23} = \frac{R_2 R_3}{R_2 + R_3} = \frac{6 \times 3}{6 + 3} = \frac{18}{9} = 2\,\Omega$$
次に $R_1$ と $R_{23}$ の直列合成抵抗を求めます。
$$R = R_1 + R_{23} = 4 + 2 = 6\,\Omega$$
$R$ の抵抗を $n$ 本並列にすると、合成抵抗は $\dfrac{R}{n}$ になります。
例:$10\,\Omega$ を2本並列 → $5\,\Omega$、3本並列 → $\dfrac{10}{3} \approx 3.3\,\Omega$
この結果は「通り道が $n$ 倍に増えるから抵抗は $\dfrac{1}{n}$ 倍になる」と直感的に理解できます。
合成抵抗は回路計算の基礎であり、今後のすべての回路問題で使います。
Q1. $3\,\Omega$ と $6\,\Omega$ の抵抗を直列に接続したとき、合成抵抗はいくらか。
Q2. $3\,\Omega$ と $6\,\Omega$ の抵抗を並列に接続したとき、合成抵抗はいくらか。
Q3. 直列接続で共通なのは電流と電圧のどちらか。
Q4. $10\,\Omega$ の抵抗を5本並列にしたとき、合成抵抗はいくらか。
合成抵抗の計算を入試形式で確認しましょう。
$2\,\Omega$、$3\,\Omega$、$5\,\Omega$ の3つの抵抗を直列に接続し、$20\,\text{V}$ の電源につないだ。
(1) 合成抵抗を求めよ。
(2) 回路に流れる電流を求めよ。
(3) $3\,\Omega$ の抵抗にかかる電圧を求めよ。
(1) $R = 2 + 3 + 5 = 10\,\Omega$
(2) $I = \dfrac{V}{R} = \dfrac{20}{10} = 2.0\,\text{A}$
(3) $V_3 = IR_3 = 2.0 \times 3 = 6.0\,\text{V}$
直列接続なので合成抵抗は各抵抗の和。全体の電流は合成抵抗とオームの法則から求まる。直列では電流が共通なので、各抵抗にかかる電圧は $V_i = IR_i$ で求められる。
$4\,\Omega$ と $12\,\Omega$ の抵抗を並列に接続し、$12\,\text{V}$ の電源につないだ。
(1) 合成抵抗を求めよ。
(2) 各抵抗に流れる電流をそれぞれ求めよ。
(1) $R = \dfrac{4 \times 12}{4 + 12} = \dfrac{48}{16} = 3\,\Omega$
(2) $I_1 = \dfrac{12}{4} = 3.0\,\text{A}$、$I_2 = \dfrac{12}{12} = 1.0\,\text{A}$
並列接続なので和分の積で合成抵抗を求める。並列では電圧が共通なので、各抵抗に流れる電流は $I_i = \dfrac{V}{R_i}$ で求められる。全体の電流は $I = I_1 + I_2 = 4.0\,\text{A}$ で、$I = \dfrac{V}{R} = \dfrac{12}{3} = 4.0\,\text{A}$ と一致する。
$6\,\Omega$ の抵抗 $R_1$ に、$4\,\Omega$ の抵抗 $R_2$ と $12\,\Omega$ の抵抗 $R_3$ の並列回路が直列に接続されている。全体に $18\,\text{V}$ の電源がつながれているとき、次の問いに答えよ。
(1) $R_2$ と $R_3$ の並列部分の合成抵抗を求めよ。
(2) 回路全体の合成抵抗を求めよ。
(3) $R_2$ に流れる電流を求めよ。
(1) $R_{23} = \dfrac{4 \times 12}{4 + 12} = \dfrac{48}{16} = 3\,\Omega$
(2) $R = R_1 + R_{23} = 6 + 3 = 9\,\Omega$
(3) $I_{R_2} = 1.5\,\text{A}$
まず並列部分の合成抵抗を求め、次に直列として全体の合成抵抗を求める。
全体の電流:$I = \dfrac{18}{9} = 2.0\,\text{A}$
並列部分にかかる電圧:$V_{23} = I \times R_{23} = 2.0 \times 3 = 6.0\,\text{V}$
$R_2$ に流れる電流:$I_{R_2} = \dfrac{V_{23}}{R_2} = \dfrac{6.0}{4} = 1.5\,\text{A}$
抵抗 $R_1 = 6\,\Omega$ と未知の抵抗 $R_x$ を並列に接続したところ、合成抵抗が $2\,\Omega$ であった。$R_x$ の値を求めよ。
$R_x = 3\,\Omega$
$\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_x}$ より $\dfrac{1}{R_x} = \dfrac{1}{R} - \dfrac{1}{R_1} = \dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{6} = \dfrac{3-1}{6} = \dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}$
よって $R_x = 3\,\Omega$
$R_1 = 2\,\Omega$、$R_2 = 3\,\Omega$、$R_3 = 6\,\Omega$、$R_4 = 4\,\Omega$ の4つの抵抗がある。$R_2$ と $R_3$ を並列にしたものに $R_1$ を直列に繋ぎ、さらにその全体に $R_4$ を並列に接続する。全体の合成抵抗を求め、$12\,\text{V}$ の電源につないだときの全電流を求めよ。
合成抵抗 $R = 2\,\Omega$、全電流 $I = 6.0\,\text{A}$
手順1:$R_2$ と $R_3$ の並列 → $R_{23} = \dfrac{3 \times 6}{3 + 6} = \dfrac{18}{9} = 2\,\Omega$
手順2:$R_1$ と $R_{23}$ の直列 → $R_{123} = 2 + 2 = 4\,\Omega$
手順3:$R_{123}$ と $R_4$ の並列 → $R = \dfrac{4 \times 4}{4 + 4} = \dfrac{16}{8} = 2\,\Omega$
全電流:$I = \dfrac{V}{R} = \dfrac{12}{2} = 6.0\,\text{A}$
$R_1 = 10\,\Omega$ と $R_2 = 20\,\Omega$ を直列に接続し、$30\,\text{V}$ の電源につないだ。
(1) $R_2$ の両端の電圧を求めよ。
(2) $R_2$ に並列に $R_3 = 20\,\Omega$ を接続した。$R_2$ にかかる電圧はいくらに変化するか。理由とともに答えよ。
(1) $V_2 = 20\,\text{V}$
(2) $V_2 = 15\,\text{V}$ に減少する
(1) 直列回路では電圧は抵抗の比に分配される。$V_2 = 30 \times \dfrac{20}{10 + 20} = 30 \times \dfrac{2}{3} = 20\,\text{V}$
(2) $R_2$ と $R_3$ を並列にすると $R_{23} = \dfrac{20 \times 20}{20 + 20} = 10\,\Omega$。全体の合成抵抗は $R_1 + R_{23} = 10 + 10 = 20\,\Omega$。
$V_{23} = 30 \times \dfrac{10}{20} = 15\,\text{V}$
理由:$R_2$ に $R_3$ を並列にすると並列部分の合成抵抗が $20\,\Omega$ から $10\,\Omega$ に減少する。電圧は抵抗の比で分配されるため、並列部分への分配が減り、$R_2$ にかかる電圧は小さくなる。