前の記事で「電場とは空間の各点に定義されたベクトル量」であることを学びました。
では、具体的に点電荷がつくる電場の大きさと向きはどうなるのでしょうか。
そして、複数の電荷が存在するときは? ここで登場するのが重ね合わせの原理です。
電荷 $Q\,[\text{C}]$ の点電荷から距離 $r\,[\text{m}]$ の位置における電場の大きさは、クーロンの法則から導かれます。
$$E = k\frac{|Q|}{r^2}$$
電場の定義:$\vec{E} = \dfrac{\vec{F}}{q}$(試験電荷 $q > 0$ が受ける力を $q$ で割る)
点電荷 $Q$ から距離 $r$ で試験電荷 $q$ が受けるクーロン力:$F = k\dfrac{|Q|q}{r^2}$
$E = \dfrac{F}{q} = k\dfrac{|Q|}{r^2}$
正電荷 $Q > 0$ のまわりでは、正の試験電荷は反発力(遠ざかる向き)を受けるので、電場は外向き(放射状)。
負電荷 $Q < 0$ のまわりでは、正の試験電荷は引力(近づく向き)を受けるので、電場は内向き(求心状)。
電場の「大きさ」を求めるときは $|Q|$ を使い、結果は必ず正になります。
× 誤:$Q = -3\,\mu\text{C}$ のとき $E = k \times (-3 \times 10^{-6})/r^2$ と符号付きで代入する
○ 正:大きさ $E = k \times 3 \times 10^{-6}/r^2$、向きは別途「電荷に近づく向き」と記述する
複数の電荷が存在するとき、ある点での電場は、各電荷が単独でつくる電場のベクトル和で求められます。
$$\vec{E} = \vec{E}_1 + \vec{E}_2 + \vec{E}_3 + \cdots$$
電場の重ね合わせでは、力の合成と同じようにベクトルの成分分解が必要です。
$x$ 成分と $y$ 成分に分けて足し合わせ、合成電場の大きさと向きを求めます。力のつりあいで学んだ技法がそのまま使えます。
2つの正電荷 $+Q$ が距離 $2d$ だけ離れているとき、中点での電場はゼロになります。 各電荷がつくる電場が等しい大きさで逆向きだからです。
$+Q$ と $-Q$ が距離 $2d$ だけ離れているとき、中点での電場はゼロになりません。 両方の電場が同じ向き($+Q$ から $-Q$ に向かう向き)を向くので、足し合わせると2倍の大きさになります。
中点での電場の大きさ:$E = 2 \times k\dfrac{Q}{d^2}$($+Q$ から $-Q$ に向かう向き)
× 誤:2つの電荷の中点では常に電場がゼロ
○ 正:同符号ならゼロ、異符号ならゼロにならない(むしろ強め合う)
ベクトルの向きを必ず図示して確認しましょう。
1. 各電荷が注目点につくる電場の大きさを $E = kQ/r^2$ で計算する
2. 電場の向きを矢印で図示する(正電荷→外向き、負電荷→内向き)
3. $x$, $y$ 成分に分解して足し合わせる
4. 合成電場の大きさ $E = \sqrt{E_x^2 + E_y^2}$、角度 $\theta = \arctan(E_y/E_x)$ を求める
複数の電荷がつくる電場がちょうどゼロになる点を求める問題は頻出です。
$+Q_1$ と $+Q_2$($Q_1 > Q_2$)が距離 $L$ だけ離れているとき、電場がゼロになる点は2電荷の間にあり、小さい電荷に近い側に位置します。
$Q_1$ からの距離を $x$ とすると、条件は $k\dfrac{Q_1}{x^2} = k\dfrac{Q_2}{(L-x)^2}$
$+Q_1$ と $-Q_2$($|Q_1| > |Q_2|$)の場合、電場がゼロになる点は2電荷の間にはなく、小さい方の電荷の外側にあります。
同符号:2電荷の間で、小さい電荷寄りにゼロ点がある。
異符号:2電荷の間にはゼロ点がない。小さい電荷の外側にある。
まず「向き」を図示して、どの領域で電場が打ち消し合うか見当をつけてから、等式を立てましょう。
点電荷の電場と重ね合わせの原理は、電磁気学の最も基本的な道具です。
Q1. 点電荷がつくる電場の公式を書いてください。
Q2. 正の点電荷のまわりの電場の向きはどちら向きか。
Q3. $+Q$ と $-Q$ の中点での合成電場はゼロになるか。
Q4. 電場の重ね合わせの原理とは何か。
点電荷の電場と重ね合わせを入試形式で確認しましょう。
$+4.0\,\mu\text{C}$ の点電荷から $0.20\,\text{m}$ 離れた点における電場の大きさと向きを求めよ。$k = 9.0 \times 10^9\,\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2$ とする。
$E = 9.0 \times 10^5\,\text{N/C}$、電荷から遠ざかる向き
$E = k\dfrac{|Q|}{r^2} = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{4.0 \times 10^{-6}}{(0.20)^2} = 9.0 \times 10^9 \times \dfrac{4.0 \times 10^{-6}}{0.04} = 9.0 \times 10^5\,\text{N/C}$
正電荷なので、電場の向きは電荷から遠ざかる向き。
一直線上に $+2.0\,\mu\text{C}$ と $+2.0\,\mu\text{C}$ の点電荷が $0.40\,\text{m}$ 離れて置かれている。2つの電荷の中点における電場の大きさを求めよ。
$E = 0$
各電荷から中点までの距離は $0.20\,\text{m}$。
各電荷がつくる電場の大きさ:$E_1 = E_2 = k\dfrac{2.0 \times 10^{-6}}{0.20^2} = 4.5 \times 10^5\,\text{N/C}$
同符号の電荷なので、中点では2つの電場が互いに逆向き。$E = E_1 - E_2 = 0$。
一直線上に $+9.0\,\mu\text{C}$ と $+1.0\,\mu\text{C}$ の点電荷が $0.40\,\text{m}$ 離れて置かれている。電場が $0$ になる点の位置を求めよ。
$+9.0\,\mu\text{C}$ から $0.30\,\text{m}$(2電荷の間)
同符号なので、電場ゼロの点は2電荷の間にある。$+9.0\,\mu\text{C}$ からの距離を $x$ とすると、
$k\dfrac{9.0 \times 10^{-6}}{x^2} = k\dfrac{1.0 \times 10^{-6}}{(0.40 - x)^2}$
$\dfrac{9}{x^2} = \dfrac{1}{(0.40 - x)^2}$ → $\dfrac{3}{x} = \dfrac{1}{0.40 - x}$
$3(0.40 - x) = x$ → $1.2 - 3x = x$ → $4x = 1.2$ → $x = 0.30\,\text{m}$
原点に $+Q$、$x$ 軸上の $(d, 0)$ に $+Q$ の点電荷を置いた。点 $(d/2,\, d/2)$ における合成電場の大きさと向きを求めよ。
大きさ $E = \dfrac{2kQ}{d^2} \times \dfrac{2\sqrt{2}}{1} = \dfrac{4kQ}{d^2}$… 詳細は解説参照
注目点から原点までの距離:$r_1 = \sqrt{(d/2)^2 + (d/2)^2} = \dfrac{d}{\sqrt{2}}$
注目点から $(d,0)$ までの距離:$r_2 = \sqrt{(d/2)^2 + (d/2)^2} = \dfrac{d}{\sqrt{2}}$
各電場の大きさ:$E_1 = E_2 = k\dfrac{Q}{d^2/2} = \dfrac{2kQ}{d^2}$
対称性から、2つの電場の $x$ 成分は打ち消し合い、$y$ 成分が強め合います。
各電場の $y$ 成分:$E_{1y} = E_1 \sin 45° = \dfrac{2kQ}{d^2} \cdot \dfrac{\sqrt{2}}{2}$
合成電場:$E = 2E_{1y} = 2 \cdot \dfrac{2kQ}{d^2} \cdot \dfrac{\sqrt{2}}{2} = \dfrac{2\sqrt{2}\,kQ}{d^2}$($y$ 軸正方向)
正三角形の各頂点に $+Q$ の電荷が置かれている。正三角形の一辺の長さを $a$ とするとき、正三角形の重心における電場の大きさを求めよ。
$E = 0$
重心から各頂点までの距離はすべて等しい($r = \dfrac{a}{\sqrt{3}}$)。
各電荷がつくる電場の大きさはすべて等しく、$120°$ ずつ異なる方向を向く。
$120°$ 間隔の3つの等しいベクトルを足し合わせると $\vec{0}$ になる(対称性による)。
成分で確認:$E_x = E\cos 0° + E\cos 120° + E\cos 240° = E(1 - 1/2 - 1/2) = 0$
$E_y = E\sin 0° + E\sin 120° + E\sin 240° = E(0 + \sqrt{3}/2 - \sqrt{3}/2) = 0$
$x$ 軸上の原点に $+4Q$、$x = L$ の位置に $-Q$ の点電荷を置いた。$x$ 軸上で電場がゼロになる点の座標を求めよ。
$x = 2L$
異符号なので、電場ゼロの点は2電荷の間にはない。$|-Q| < |+4Q|$ なので、小さい方の電荷 $-Q$ の外側($x > L$)にある。
$x = L + s$($s > 0$)とおくと、
$k\dfrac{4Q}{(L+s)^2} = k\dfrac{Q}{s^2}$
$\dfrac{4}{(L+s)^2} = \dfrac{1}{s^2}$ → $\dfrac{2}{L+s} = \dfrac{1}{s}$ → $2s = L + s$ → $s = L$
したがって $x = L + L = 2L$。