電池は化学反応で電荷を生み出しますが、コンデンサーは電荷を「蓄える」装置です。
カメラのフラッシュが一瞬で強い光を放てるのも、コンデンサーにゆっくり蓄えた電荷を一気に放出しているからです。
この記事では、2枚の金属板がなぜ電荷を蓄えられるのか、その仕組みを基礎から理解しましょう。
コンデンサー(キャパシタ)とは、2枚の導体(金属板)を向かい合わせに置いた装置のことです。 2枚の金属板の間には空気や絶縁体が挟まれ、電流は流れません。 それなのに電荷を蓄えることができる ── これがコンデンサーの不思議であり、面白さです。
日常のたとえで考えてみましょう。コンデンサーは「水を蓄えるタンク」に似ています。 水道管(導線)から送られてきた水(電荷)をタンク(コンデンサー)に貯めておき、必要なときに一気に放出する。 カメラのフラッシュやパソコンの電源回路で使われるコンデンサーは、まさにこのような働きをしています。
最も基本的なコンデンサーは、平行板コンデンサーです。 面積 $S$ の2枚の金属板を間隔 $d$ で平行に向かい合わせた構造をしています。
コンデンサーの本質は、電荷を「生み出す」ことではなく、正の電荷と負の電荷を2枚の極板に分離して保持することです。
一方の極板に $+Q$ の電荷が蓄えられると、他方の極板には必ず $-Q$ の電荷が蓄えられます。 コンデンサー全体としての電荷の総量は常にゼロです。この「分離された状態」にエネルギーが蓄えられています。
✕ 誤:「コンデンサーに $Q$ の電荷がある」→ コンデンサー全体に $Q$ の電荷が存在する
○ 正:「コンデンサーに $Q$ の電荷が蓄えられている」→ 一方の極板に $+Q$、他方に $-Q$ が蓄えられている
コンデンサーの電荷 $Q$ とは、一方の極板に蓄えられた電荷の絶対値のことです。 コンデンサー全体の電荷は常にゼロであることを忘れないようにしましょう。
コンデンサーに電池をつなぐと、何が起こるのでしょうか。 その過程を順を追って見てみましょう。
電池の正極とコンデンサーの一方の極板を、負極と他方の極板をそれぞれ導線で結びます。 すると、次のことが起こります。
充電の過程で電流が流れるのは導線の中だけです。 極板間は絶縁されているので、電荷が極板間を移動することはありません。
電子は電池 → 導線 → 一方の極板 → 電池と回路を一周するように移動します。 「コンデンサーの中を電流が流れている」と思ってしまいがちですが、それは誤解です。
正に帯電した極板と負に帯電した極板は、互いに引き合います(クーロン力)。 この引力が電荷を極板上に引き留めているのです。 電池を外しても、この引力は消えないので、電荷は極板上に保持され続けます。
水タンクのたとえに戻れば、水道管を閉じても(電池を外しても)、タンクの中の水(電荷)はそのまま残っているのと同じです。
✕ 誤:電池をつないでいる限り、ずっと電流が流れ続ける
○ 正:極板間の電位差が電池の起電力と等しくなった時点で電流は止まる
コンデンサーは抵抗とは異なります。抵抗は電流を流し続けますが、コンデンサーは充電が完了すれば電流はゼロになります。 定常状態ではコンデンサーは「回路を切断した」のと同じ効果をもちます。
コンデンサーを特徴づける最も重要な関係式は、電荷 $Q$、電圧(極板間の電位差)$V$、そして電気容量 $C$ の間の関係です。
$$Q = CV$$
この式は「電圧 $V$ を加えると、電気容量 $C$ に比例した電荷 $Q$ が蓄えられる」ことを意味します。 $C$ は「どれだけ電荷を蓄えやすいか」を表す量で、コンデンサーの性能を示す指標です。
電気容量の単位はファラド [F]です。 1 F は「1 V の電圧をかけたときに 1 C の電荷を蓄えられる容量」を意味しますが、 1 F は実用上は非常に大きな値です。
実際の回路で使われるコンデンサーの容量は、数 pF 〜 数千 $\mu$F 程度です。
電気容量 $C$ は、コンデンサーの形状と材質だけで決まる固有の量です。 加える電圧 $V$ や蓄える電荷 $Q$ に依存しません。
$Q = CV$ の式を見て「$V$ を大きくすると $C$ が大きくなる」と思ってはいけません。 $V$ を大きくすると大きくなるのは $Q$(蓄えられる電荷)です。 $C$ は一定のまま、$Q$ と $V$ が比例して変化します。
ファラドは、イギリスの物理学者マイケル・ファラデー(1791-1867)に因んだ単位です。 ファラデーは電磁誘導の法則を発見した人物としても知られ、電気の分野に多大な貢献をしました。
ファラデー自身はコンデンサーの研究よりも電磁誘導の研究で有名ですが、 誘電体の概念を導入するなど、コンデンサーの理論にも大きな影響を与えました。
✕ 誤:$V$ は電池の起電力のこと
○ 正:$V$ はコンデンサーの極板間の電位差のこと
電池をつないで十分に時間が経った後は、確かに $V$ = 電池の起電力になります。 しかし、回路構成によっては電池の起電力と極板間の電位差が異なることもあります。 常に「コンデンサーの両端の電位差」として $V$ を捉えましょう。
平行板コンデンサーの極板間には、どのような電場が生じるのでしょうか。 極板の面積が十分大きく、極板間の距離が小さい場合(端の効果を無視できる場合)、 極板間の電場は一様(場所によらず一定)になります。
$$E = \frac{V}{d}$$
この式は、電位差 $V$ と電場 $E$ の一般的な関係 $V = Ed$(一様な電場の場合)から直ちに得られます。 電場の向きは正極板から負極板に向かう方向です。
一様な電場 $E$ の中で、電場の向きに沿って距離 $d$ だけ移動するときの電位差は、
$$V = Ed$$
これを $E$ について解くと、$E = \dfrac{V}{d}$ が得られます。
平行板コンデンサーでは電場が一様であるため、この関係がそのまま成り立ちます。
✕ 誤:電場は電位の低い方から高い方に向かう
○ 正:電場は電位の高い方(正極板)から低い方(負極板)に向かう
電場の向きは「正電荷が力を受ける向き」であり、電位が高い方から低い方に向かいます。 正極板の電位が高く、負極板の電位が低いので、電場は正極板から負極板へ向かいます。
平行板コンデンサーの電場は、ガウスの法則を用いてより厳密に導くことができます。
面電荷密度を $\sigma = Q/S$ とすると、1枚の無限平面が作る電場は $E_1 = \sigma / (2\varepsilon_0)$ です。 2枚の極板が作る電場を重ね合わせると、極板間では電場が強め合い、外側では打ち消し合います。
結果として、極板間の電場は $E = \sigma / \varepsilon_0 = Q / (\varepsilon_0 S)$ となります。 これは次の記事で扱う電気容量の公式 $C = \varepsilon_0 S / d$ を導く基礎になります。
コンデンサーの基本的な仕組みを理解したところで、この先の学習内容との関連を確認しておきましょう。
Q1. コンデンサーに電荷 $Q$ が蓄えられているとき、2枚の極板にはそれぞれどのような電荷が存在しますか。
Q2. 電気容量 $5.0\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $10\,\text{V}$ の電圧をかけたとき、蓄えられる電荷を求めてください。
Q3. 平行板コンデンサーの極板間の距離が $2.0\,\text{mm}$ で、極板間の電位差が $100\,\text{V}$ のとき、極板間の電場の強さを求めてください。
Q4. コンデンサーの充電が完了した後、回路に電流は流れますか。理由とともに答えてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
電気容量 $20\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $50\,\text{V}$ の電圧をかけて十分に充電した。次の問いに答えよ。
(1) コンデンサーに蓄えられた電荷を求めよ。
(2) このコンデンサーの極板間の距離が $1.0\,\text{mm}$ のとき、極板間の電場の強さを求めよ。
(1) $1.0 \times 10^{-3}\,\text{C}$(= $1.0\,\text{mC}$)
(2) $5.0 \times 10^{4}\,\text{V/m}$
方針:$Q = CV$ と $E = V/d$ を直接適用する。単位変換に注意する。
(1) $Q = CV = 20 \times 10^{-6} \times 50 = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{C}$
(2) $E = V/d = 50 / (1.0 \times 10^{-3}) = 5.0 \times 10^{4}\,\text{V/m}$
電気容量 $C$ のコンデンサーに起電力 $V_0$ の電池をつないで十分に時間が経った。次の問いに答えよ。
(1) コンデンサーに蓄えられた電荷 $Q$ を $C$ と $V_0$ を用いて表せ。
(2) 充電が完了した後に電池を外した。極板間の電位差はどうなるか。理由とともに述べよ。
(3) 電池を外した状態で、極板間の距離を $2$ 倍にした。極板間の電位差はどうなるか。$C$ が距離に反比例することを用いて答えよ。
(1) $Q = CV_0$
(2) 電位差は $V_0$ のまま変わらない
(3) 電位差は $2V_0$ になる
(1) 十分に時間が経つと、極板間の電位差が電池の起電力 $V_0$ と等しくなる。$Q = CV_0$
(2) 電池を外しても極板上の電荷は逃げる場所がないので $Q = CV_0$ のまま保持される。$C$ も変わらないので $V = Q/C = V_0$ のまま。
(3) 電池を外した状態では電荷 $Q = CV_0$ が一定に保たれる。極板間の距離を $2$ 倍にすると $C$ は $C/2$ になる。$V = Q/(C/2) = 2Q/C = 2V_0$
極板の面積 $S = 0.020\,\text{m}^2$、極板間の距離 $d = 1.0\,\text{mm}$ の平行板コンデンサーがある。真空の誘電率を $\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とし、極板間は真空とする。このコンデンサーに $200\,\text{V}$ の電圧をかけた。
(1) このコンデンサーの電気容量を求めよ。
(2) 蓄えられた電荷を求めよ。
(3) 極板間の電場の強さを求めよ。
(1) $C = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F} \approx 177\,\text{pF}$
(2) $Q = 3.5 \times 10^{-8}\,\text{C} = 35\,\text{nC}$
(3) $E = 2.0 \times 10^{5}\,\text{V/m}$
方針:$C = \varepsilon_0 S/d$ で電気容量を求め、$Q = CV$ で電荷を求める。電場は $E = V/d$ で計算する。
(1) $C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.020 / (1.0 \times 10^{-3}) = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F}$
(2) $Q = CV = 1.77 \times 10^{-10} \times 200 = 3.54 \times 10^{-8}\,\text{C} \approx 3.5 \times 10^{-8}\,\text{C}$
(3) $E = V / d = 200 / (1.0 \times 10^{-3}) = 2.0 \times 10^{5}\,\text{V/m}$