第22章 コンデンサー

電気容量
─ C = εS/d

コンデンサーの性能を決める「電気容量」は、極板の面積と間隔、そして間に挟む物質だけで決まります。
大きな皿を近づけて並べるほど、たくさんの電荷を蓄えられる ── この直感的なイメージを数式で裏づけましょう。
平行板コンデンサーの容量公式 $C = \varepsilon S/d$ を導出し、各因子の物理的意味を深く理解します。

1電気容量とは何か ─ 器の大きさをはかる

コップに水を注ぐとき、大きなコップほどたくさんの水を入れることができます。 同じように、コンデンサーにも「どれだけ電荷を蓄えられるか」という容量があります。 これを電気容量(capacitance)と呼びます。

前の記事で学んだ基本式 $Q = CV$ を思い出しましょう。 同じ電圧 $V$ をかけたとき、電気容量 $C$ が大きいコンデンサーほど多くの電荷 $Q$ を蓄えることができます。 つまり $C$ は「電荷の蓄えやすさ」を表す物理量です。

💡 ここが本質:電気容量はコンデンサーの「器の大きさ」

電気容量 $C$ は、コンデンサーという「器」の大きさを表す量です。 コップの容積が水の量に依存しないように、$C$ は蓄えた電荷 $Q$ や電圧 $V$ に依存しません

$C$ を決めるのは、極板の面積 $S$、極板間の距離 $d$、極板間の物質(誘電体)の種類だけです。 これらはすべてコンデンサーの「形状と材質」に関する量であり、電圧や電荷とは無関係です。

電気容量の定義

電気容量は、基本式 $Q = CV$ から次のように定義されます。

📐 電気容量の定義

$$C = \frac{Q}{V}$$

※ $C$:電気容量 [F]、$Q$:極板に蓄えられた電荷 [C]、$V$:極板間の電位差 [V]
⚠️ 落とし穴:$C = Q/V$ だから $C$ は $Q$ に比例すると思ってしまう

✕ 誤:電荷 $Q$ を2倍にすると電気容量 $C$ も2倍になる

○ 正:電荷 $Q$ を2倍にすると電位差 $V$ も2倍になり、$C = Q/V$ は変わらない

$C = Q/V$ は「定義式」であり、$C$ が $Q$ に依存するという意味ではありません。 $Q$ と $V$ は常に比例関係にあるため、その比 $C$ は一定に保たれます。

2平行板コンデンサーの容量公式を導く

平行板コンデンサーの電気容量は、極板の面積 $S$、極板間の距離 $d$、そして極板間の誘電率 $\varepsilon$ だけで決まります。 この関係を、電場の基本法則から導いてみましょう。

▷ $C = \varepsilon S / d$ の導出

ステップ1:極板に蓄えられた電荷を $Q$、面電荷密度を $\sigma = Q/S$ とします。

ステップ2:ガウスの法則より、面電荷密度 $\sigma$ の無限平面が作る電場は、片側で $\sigma/(2\varepsilon)$ です。 平行板コンデンサーでは2枚の極板による電場が極板間で強め合うので、

$$E = \frac{\sigma}{\varepsilon} = \frac{Q}{\varepsilon S}$$

ステップ3:極板間の電位差は $V = Ed$ ですから、

$$V = \frac{Q}{\varepsilon S} \cdot d = \frac{Qd}{\varepsilon S}$$

ステップ4:$C = Q/V$ に代入すると、

$$C = \frac{Q}{Qd / (\varepsilon S)} = \frac{\varepsilon S}{d}$$

📐 平行板コンデンサーの電気容量

$$C = \frac{\varepsilon S}{d} = \frac{\varepsilon_0 \varepsilon_r S}{d}$$

※ $\varepsilon$:誘電率 [F/m]、$\varepsilon_0$:真空の誘電率 $= 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$、$\varepsilon_r$:比誘電率(無次元)、$S$:極板の面積 [m²]、$d$:極板間の距離 [m]
💡 ここが本質:容量公式は「面積に比例、距離に反比例」

$C = \varepsilon S / d$ から、電気容量を大きくするには3つの方法があることがわかります。

1. 面積 $S$ を大きくする ── 大きな皿ほど電荷を多く並べられる

2. 距離 $d$ を小さくする ── 皿を近づけるほど電荷が引き留められやすい

3. 誘電率 $\varepsilon$ を大きくする ── 間に適切な物質を挟むと容量が増える(詳しくは E-3-5 で学びます)

3各因子の物理的意味を理解する

面積 $S$ が大きいと容量が増える理由

極板の面積が大きいほど、電荷が広い領域に分布でき、電荷どうしの反発が緩和されます。 その結果、同じ電圧でもより多くの電荷を蓄えることができます。

たとえ話でいえば、幅の広い棚にはたくさんの本を並べられるのと同じです。 狭い棚(小さな面積)では本がすぐにいっぱいになりますが、広い棚(大きな面積)ならたくさん並べられます。

距離 $d$ が小さいと容量が増える理由

2枚の極板が近いほど、正極板上の $+Q$ と負極板上の $-Q$ が強く引き合います。 この強い引力のおかげで、より多くの電荷が極板上に安定して存在できるようになります。

磁石を2つ近づけると引力が強くなるのと似ています。 極板間の距離が近いほど、電荷を「引き留める力」が強くなり、電気容量が大きくなるのです。

誘電率 $\varepsilon$ の役割

誘電率 $\varepsilon$ は、極板間に挟まれた物質が電場にどう応答するかを表す量です。 真空($\varepsilon = \varepsilon_0$)の代わりに誘電体($\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0$、$\varepsilon_r > 1$)を挟むと、 電気容量は $\varepsilon_r$ 倍に増大します。その詳しいメカニズムは E-3-5 で学びます。

物質 比誘電率 $\varepsilon_r$
真空$1$(定義)
空気$\approx 1.0006$
ポリエチレン$\approx 2.3$
ガラス$\approx 5 - 10$
$\approx 80$
チタン酸バリウム$\approx 1000 - 10000$
⚠️ 落とし穴:真空と空気を混同する

✕ 誤:空気中のコンデンサーでは $\varepsilon_r$ を考慮しなければならない

○ 正:空気の比誘電率は $\approx 1.0006$ であり、実用上は真空と同じ $\varepsilon_0$ を使ってよい

高校物理の問題では、特に断りがなければ極板間は真空(空気)として扱います。 誘電体の問題では「極板間に誘電体を挿入する」と明記されています。

⚠️ 落とし穴:$S$ に直径や半径をそのまま代入する

✕ 誤:「直径 $10\,\text{cm}$ の円形極板」→ $S = 0.10\,\text{m}^2$

○ 正:半径 $r = 0.050\,\text{m}$ を求め、$S = \pi r^2 = \pi \times 0.050^2 \approx 7.85 \times 10^{-3}\,\text{m}^2$

$S$ は面積です。円形極板なら $S = \pi r^2$、正方形極板なら $S = a^2$(一辺 $a$)です。 また、単位は必ず $\text{m}^2$ に変換してから代入しましょう。

🔬 深掘り:なぜ 1 F は巨大な容量なのか

$C = \varepsilon_0 S / d$ に具体的な数値を入れてみましょう。 $\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$、$d = 1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}$ として、 $C = 1\,\text{F}$ を実現するには、

$$S = \frac{Cd}{\varepsilon_0} = \frac{1 \times 10^{-3}}{8.85 \times 10^{-12}} \approx 1.1 \times 10^{8}\,\text{m}^2$$

これは約 $10\,\text{km} \times 10\,\text{km}$ の面積に相当します。 東京23区の面積にほぼ匹敵する極板が必要になるのです。 だから実用的なコンデンサーの容量は $\mu\text{F}$ や $\text{pF}$ のオーダーなのです。

4電気容量の計算練習

公式を実際に使ってみましょう。よくある計算パターンを確認します。

パターンA:容量を求める

極板の面積 $S = 0.010\,\text{m}^2$、極板間の距離 $d = 0.50\,\text{mm} = 5.0 \times 10^{-4}\,\text{m}$、 極板間は真空とします。

$C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.010 / (5.0 \times 10^{-4}) = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F} \approx 177\,\text{pF}$

パターンB:距離を変えたときの変化

上のコンデンサーの極板間の距離を $1.0\,\text{mm}$(2倍)にすると、 $C$ は $d$ に反比例するので $C' = C/2 \approx 88.5\,\text{pF}$ に減少します。

パターンC:面積を変えたときの変化

極板の面積を $0.020\,\text{m}^2$(2倍)にすると、 $C$ は $S$ に比例するので $C' = 2C \approx 354\,\text{pF}$ に増加します。

💡 ここが本質:比で考えると速い

$C = \varepsilon S / d$ は比例・反比例の関係です。 「面積を3倍にして距離を半分にすると $C$ はどうなるか」のような問題は、わざわざ数値を代入しなくても、

$$\frac{C'}{C} = \frac{3S}{S} \times \frac{d}{d/2} = 3 \times 2 = 6$$

のように比で計算するのが効率的です。入試ではこの技法を多用します。

⚠️ 落とし穴:単位変換のミス

面積と距離の単位変換は頻出のミスポイントです。

✕ 誤:$d = 2\,\text{mm}$ → $d = 2 \times 10^{-2}\,\text{m}$

○ 正:$d = 2\,\text{mm}$ → $d = 2 \times 10^{-3}\,\text{m}$

$1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}$ です。$\text{cm}^2$ → $\text{m}^2$ の変換にも注意。$1\,\text{cm}^2 = 10^{-4}\,\text{m}^2$ です。

5この章を俯瞰する

電気容量の公式は、コンデンサーに関するあらゆる問題の出発点です。 ここで学んだ知識が今後どのように活用されるか確認しましょう。

つながりマップ

  • ← E-3-1 コンデンサーの仕組み:$Q = CV$ の基本式と、電荷が蓄えられる仕組みを学んだ。今回はその $C$ がどう決まるかを定量化した。
  • → E-3-3 直列・並列接続:複数のコンデンサーを組み合わせたとき、合成容量はどうなるか。$C = \varepsilon S/d$ の理解が土台になる。
  • → E-3-4 静電エネルギー:$C$ が分かれば、蓄えられるエネルギー $U = \frac{1}{2}CV^2$ を定量化できる。
  • → E-3-5 誘電体:$\varepsilon$ を変えるとはどういうことか。誘電体の分極メカニズムと $C$ の増大を詳しく学ぶ。
  • → E-3-6 充放電とスイッチ切替:$C$ が異なるコンデンサーの充放電では、$Q$ と $V$ の配分が重要になる。

📋まとめ

  • 電気容量 $C$ はコンデンサーの「器の大きさ」を表す量で、形状と材質のみで決まる固有の量
  • 平行板コンデンサーの容量公式 $C = \varepsilon S / d$ は、面積 $S$ に比例し、距離 $d$ に反比例する
  • 面積が大きいほど電荷を広く分布でき、距離が近いほど電荷を強く引き留められるため、容量が増大する
  • 誘電率 $\varepsilon = \varepsilon_0 \varepsilon_r$ は、極板間の物質の性質で決まる。真空なら $\varepsilon = \varepsilon_0$
  • $1\,\text{F}$ は非常に大きな容量。実用では $\mu\text{F}$、$\text{pF}$ の単位を使うことが多い
  • 変化の問題では数値を代入せず、比で計算すると効率的

確認テスト

Q1. 平行板コンデンサーの電気容量を大きくするには、面積と距離をそれぞれどうすればよいですか。

▶ クリックして解答を表示面積 $S$ を大きくし、極板間の距離 $d$ を小さくすればよい。$C = \varepsilon S / d$ より、$C$ は $S$ に比例し $d$ に反比例するため。

Q2. 極板面積 $0.040\,\text{m}^2$、極板間距離 $2.0\,\text{mm}$、極板間が真空の平行板コンデンサーの電気容量を求めてください。$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とします。

▶ クリックして解答を表示$C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.040 / (2.0 \times 10^{-3}) = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F} \approx 177\,\text{pF}$

Q3. 電気容量 $C$ のコンデンサーの極板間の距離を $3$ 倍にすると、電気容量はいくらになりますか。

▶ クリックして解答を表示$C' = C/3$。電気容量は距離に反比例するため。

Q4. $C = Q/V$ において、$Q$ を2倍にしたら $C$ は2倍になりますか。理由とともに答えてください。

▶ クリックして解答を表示ならない。$Q$ を2倍にすると $V$ も2倍になるので、$C = Q/V$ は変わらない。$C$ はコンデンサーの形状・材質で決まる固有の量であり、$Q$ や $V$ に依存しない。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-2-1 A 基礎 容量計算 計算

極板の面積 $S = 0.050\,\text{m}^2$、極板間の距離 $d = 0.50\,\text{mm}$ の平行板コンデンサーがある。極板間は真空とし、$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とする。

(1) 電気容量を求めよ。

(2) このコンデンサーに $100\,\text{V}$ の電圧をかけたとき、蓄えられる電荷を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $8.85 \times 10^{-10}\,\text{F}$($= 885\,\text{pF}$)

(2) $8.85 \times 10^{-8}\,\text{C}$($= 88.5\,\text{nC}$)

解説

(1) $C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.050 / (5.0 \times 10^{-4}) = 8.85 \times 10^{-10}\,\text{F}$

(2) $Q = CV = 8.85 \times 10^{-10} \times 100 = 8.85 \times 10^{-8}\,\text{C}$

B 発展レベル

3-2-2 B 発展 条件変化 論述

電気容量 $C_0$、極板間の距離 $d_0$ の平行板コンデンサーに起電力 $V_0$ の電池をつないで十分に充電した後、電池をつないだまま極板間の距離を $2d_0$ に広げた。

(1) 距離を変えた後の電気容量 $C'$ を $C_0$ を用いて表せ。

(2) 距離を変えた後の極板間の電位差を求めよ。

(3) 距離を変えた後に蓄えられている電荷 $Q'$ を $C_0$ と $V_0$ を用いて表せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $C' = C_0 / 2$

(2) $V_0$(電池の起電力と等しい)

(3) $Q' = C_0 V_0 / 2$

解説

方針:電池をつないだままなので、極板間の電位差は電池の起電力 $V_0$ に固定される。

(1) $C = \varepsilon S / d$ より $d$ が2倍になると $C$ は半分になる。$C' = C_0 / 2$

(2) 電池がつながっているので、電位差は常に $V_0$ に等しい。

(3) $Q' = C'V_0 = (C_0/2) \times V_0 = C_0 V_0 / 2$

元の電荷 $Q_0 = C_0 V_0$ と比べて、半分の電荷になっている。 つまり、距離を広げたことで電荷の一部が電池に戻ったことになります。

採点ポイント
  • $C$ が $d$ に反比例することを正しく適用する(2点)
  • 電池接続時は電位差一定であることを明記する(3点)
  • $Q' = C'V_0$ で新しい電荷を求める(3点)

C 応用レベル

3-2-3 C 応用 電池接続 vs 切断 比較・論述

電気容量 $C$ の平行板コンデンサーに起電力 $V$ の電池をつないで十分に充電した。次の2つの操作を比較せよ。

操作A:電池をつないだまま極板間の距離を半分にした。

操作B:電池を外してから極板間の距離を半分にした。

(1) 操作A後の電気容量、電位差、電荷をそれぞれ求めよ。

(2) 操作B後の電気容量、電位差、電荷をそれぞれ求めよ。

(3) 操作Aと操作Bの違いを、保存される物理量に着目して説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 電気容量 $2C$、電位差 $V$、電荷 $2CV$

(2) 電気容量 $2C$、電位差 $V/2$、電荷 $CV$

(3) 操作Aでは電池が接続されているため電位差が $V$ に保存される。操作Bでは電池が切断されているため電荷が $CV$ に保存される。

解説

初期状態:$C_0 = C$、$V_0 = V$、$Q_0 = CV$

両操作とも、$d$ が半分になるので $C' = 2C$。

操作A(電池接続):電位差が $V$ に固定される。$Q' = C'V = 2CV$(電荷が増加 → 電池から供給)

操作B(電池切断):電荷が $Q_0 = CV$ に固定される。$V' = Q_0/C' = CV/(2C) = V/2$(電位差が減少)

まとめ:電池接続 → 電位差一定、電池切断 → 電荷一定。これがコンデンサー問題の最重要判断基準です。

採点ポイント
  • 距離半分 → 容量2倍を正しく求める(2点)
  • 操作A:電位差一定で電荷が変化することを述べる(3点)
  • 操作B:電荷一定で電位差が変化することを述べる(3点)
  • 保存量の違いを明確に対比する(2点)