コンデンサーの性能を決める「電気容量」は、極板の面積と間隔、そして間に挟む物質だけで決まります。
大きな皿を近づけて並べるほど、たくさんの電荷を蓄えられる ── この直感的なイメージを数式で裏づけましょう。
平行板コンデンサーの容量公式 $C = \varepsilon S/d$ を導出し、各因子の物理的意味を深く理解します。
コップに水を注ぐとき、大きなコップほどたくさんの水を入れることができます。 同じように、コンデンサーにも「どれだけ電荷を蓄えられるか」という容量があります。 これを電気容量(capacitance)と呼びます。
前の記事で学んだ基本式 $Q = CV$ を思い出しましょう。 同じ電圧 $V$ をかけたとき、電気容量 $C$ が大きいコンデンサーほど多くの電荷 $Q$ を蓄えることができます。 つまり $C$ は「電荷の蓄えやすさ」を表す物理量です。
電気容量 $C$ は、コンデンサーという「器」の大きさを表す量です。 コップの容積が水の量に依存しないように、$C$ は蓄えた電荷 $Q$ や電圧 $V$ に依存しません。
$C$ を決めるのは、極板の面積 $S$、極板間の距離 $d$、極板間の物質(誘電体)の種類だけです。 これらはすべてコンデンサーの「形状と材質」に関する量であり、電圧や電荷とは無関係です。
電気容量は、基本式 $Q = CV$ から次のように定義されます。
$$C = \frac{Q}{V}$$
✕ 誤:電荷 $Q$ を2倍にすると電気容量 $C$ も2倍になる
○ 正:電荷 $Q$ を2倍にすると電位差 $V$ も2倍になり、$C = Q/V$ は変わらない
$C = Q/V$ は「定義式」であり、$C$ が $Q$ に依存するという意味ではありません。 $Q$ と $V$ は常に比例関係にあるため、その比 $C$ は一定に保たれます。
平行板コンデンサーの電気容量は、極板の面積 $S$、極板間の距離 $d$、そして極板間の誘電率 $\varepsilon$ だけで決まります。 この関係を、電場の基本法則から導いてみましょう。
ステップ1:極板に蓄えられた電荷を $Q$、面電荷密度を $\sigma = Q/S$ とします。
ステップ2:ガウスの法則より、面電荷密度 $\sigma$ の無限平面が作る電場は、片側で $\sigma/(2\varepsilon)$ です。 平行板コンデンサーでは2枚の極板による電場が極板間で強め合うので、
$$E = \frac{\sigma}{\varepsilon} = \frac{Q}{\varepsilon S}$$
ステップ3:極板間の電位差は $V = Ed$ ですから、
$$V = \frac{Q}{\varepsilon S} \cdot d = \frac{Qd}{\varepsilon S}$$
ステップ4:$C = Q/V$ に代入すると、
$$C = \frac{Q}{Qd / (\varepsilon S)} = \frac{\varepsilon S}{d}$$
$$C = \frac{\varepsilon S}{d} = \frac{\varepsilon_0 \varepsilon_r S}{d}$$
$C = \varepsilon S / d$ から、電気容量を大きくするには3つの方法があることがわかります。
1. 面積 $S$ を大きくする ── 大きな皿ほど電荷を多く並べられる
2. 距離 $d$ を小さくする ── 皿を近づけるほど電荷が引き留められやすい
3. 誘電率 $\varepsilon$ を大きくする ── 間に適切な物質を挟むと容量が増える(詳しくは E-3-5 で学びます)
極板の面積が大きいほど、電荷が広い領域に分布でき、電荷どうしの反発が緩和されます。 その結果、同じ電圧でもより多くの電荷を蓄えることができます。
たとえ話でいえば、幅の広い棚にはたくさんの本を並べられるのと同じです。 狭い棚(小さな面積)では本がすぐにいっぱいになりますが、広い棚(大きな面積)ならたくさん並べられます。
2枚の極板が近いほど、正極板上の $+Q$ と負極板上の $-Q$ が強く引き合います。 この強い引力のおかげで、より多くの電荷が極板上に安定して存在できるようになります。
磁石を2つ近づけると引力が強くなるのと似ています。 極板間の距離が近いほど、電荷を「引き留める力」が強くなり、電気容量が大きくなるのです。
誘電率 $\varepsilon$ は、極板間に挟まれた物質が電場にどう応答するかを表す量です。 真空($\varepsilon = \varepsilon_0$)の代わりに誘電体($\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0$、$\varepsilon_r > 1$)を挟むと、 電気容量は $\varepsilon_r$ 倍に増大します。その詳しいメカニズムは E-3-5 で学びます。
| 物質 | 比誘電率 $\varepsilon_r$ |
|---|---|
| 真空 | $1$(定義) |
| 空気 | $\approx 1.0006$ |
| ポリエチレン | $\approx 2.3$ |
| ガラス | $\approx 5 - 10$ |
| 水 | $\approx 80$ |
| チタン酸バリウム | $\approx 1000 - 10000$ |
✕ 誤:空気中のコンデンサーでは $\varepsilon_r$ を考慮しなければならない
○ 正:空気の比誘電率は $\approx 1.0006$ であり、実用上は真空と同じ $\varepsilon_0$ を使ってよい
高校物理の問題では、特に断りがなければ極板間は真空(空気)として扱います。 誘電体の問題では「極板間に誘電体を挿入する」と明記されています。
✕ 誤:「直径 $10\,\text{cm}$ の円形極板」→ $S = 0.10\,\text{m}^2$
○ 正:半径 $r = 0.050\,\text{m}$ を求め、$S = \pi r^2 = \pi \times 0.050^2 \approx 7.85 \times 10^{-3}\,\text{m}^2$
$S$ は面積です。円形極板なら $S = \pi r^2$、正方形極板なら $S = a^2$(一辺 $a$)です。 また、単位は必ず $\text{m}^2$ に変換してから代入しましょう。
$C = \varepsilon_0 S / d$ に具体的な数値を入れてみましょう。 $\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$、$d = 1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}$ として、 $C = 1\,\text{F}$ を実現するには、
$$S = \frac{Cd}{\varepsilon_0} = \frac{1 \times 10^{-3}}{8.85 \times 10^{-12}} \approx 1.1 \times 10^{8}\,\text{m}^2$$
これは約 $10\,\text{km} \times 10\,\text{km}$ の面積に相当します。 東京23区の面積にほぼ匹敵する極板が必要になるのです。 だから実用的なコンデンサーの容量は $\mu\text{F}$ や $\text{pF}$ のオーダーなのです。
公式を実際に使ってみましょう。よくある計算パターンを確認します。
極板の面積 $S = 0.010\,\text{m}^2$、極板間の距離 $d = 0.50\,\text{mm} = 5.0 \times 10^{-4}\,\text{m}$、 極板間は真空とします。
$C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.010 / (5.0 \times 10^{-4}) = 1.77 \times 10^{-10}\,\text{F} \approx 177\,\text{pF}$
上のコンデンサーの極板間の距離を $1.0\,\text{mm}$(2倍)にすると、 $C$ は $d$ に反比例するので $C' = C/2 \approx 88.5\,\text{pF}$ に減少します。
極板の面積を $0.020\,\text{m}^2$(2倍)にすると、 $C$ は $S$ に比例するので $C' = 2C \approx 354\,\text{pF}$ に増加します。
$C = \varepsilon S / d$ は比例・反比例の関係です。 「面積を3倍にして距離を半分にすると $C$ はどうなるか」のような問題は、わざわざ数値を代入しなくても、
$$\frac{C'}{C} = \frac{3S}{S} \times \frac{d}{d/2} = 3 \times 2 = 6$$
のように比で計算するのが効率的です。入試ではこの技法を多用します。
面積と距離の単位変換は頻出のミスポイントです。
✕ 誤:$d = 2\,\text{mm}$ → $d = 2 \times 10^{-2}\,\text{m}$
○ 正:$d = 2\,\text{mm}$ → $d = 2 \times 10^{-3}\,\text{m}$
$1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}$ です。$\text{cm}^2$ → $\text{m}^2$ の変換にも注意。$1\,\text{cm}^2 = 10^{-4}\,\text{m}^2$ です。
電気容量の公式は、コンデンサーに関するあらゆる問題の出発点です。 ここで学んだ知識が今後どのように活用されるか確認しましょう。
Q1. 平行板コンデンサーの電気容量を大きくするには、面積と距離をそれぞれどうすればよいですか。
Q2. 極板面積 $0.040\,\text{m}^2$、極板間距離 $2.0\,\text{mm}$、極板間が真空の平行板コンデンサーの電気容量を求めてください。$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とします。
Q3. 電気容量 $C$ のコンデンサーの極板間の距離を $3$ 倍にすると、電気容量はいくらになりますか。
Q4. $C = Q/V$ において、$Q$ を2倍にしたら $C$ は2倍になりますか。理由とともに答えてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
極板の面積 $S = 0.050\,\text{m}^2$、極板間の距離 $d = 0.50\,\text{mm}$ の平行板コンデンサーがある。極板間は真空とし、$\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\,\text{F/m}$ とする。
(1) 電気容量を求めよ。
(2) このコンデンサーに $100\,\text{V}$ の電圧をかけたとき、蓄えられる電荷を求めよ。
(1) $8.85 \times 10^{-10}\,\text{F}$($= 885\,\text{pF}$)
(2) $8.85 \times 10^{-8}\,\text{C}$($= 88.5\,\text{nC}$)
(1) $C = \varepsilon_0 S / d = 8.85 \times 10^{-12} \times 0.050 / (5.0 \times 10^{-4}) = 8.85 \times 10^{-10}\,\text{F}$
(2) $Q = CV = 8.85 \times 10^{-10} \times 100 = 8.85 \times 10^{-8}\,\text{C}$
電気容量 $C_0$、極板間の距離 $d_0$ の平行板コンデンサーに起電力 $V_0$ の電池をつないで十分に充電した後、電池をつないだまま極板間の距離を $2d_0$ に広げた。
(1) 距離を変えた後の電気容量 $C'$ を $C_0$ を用いて表せ。
(2) 距離を変えた後の極板間の電位差を求めよ。
(3) 距離を変えた後に蓄えられている電荷 $Q'$ を $C_0$ と $V_0$ を用いて表せ。
(1) $C' = C_0 / 2$
(2) $V_0$(電池の起電力と等しい)
(3) $Q' = C_0 V_0 / 2$
方針:電池をつないだままなので、極板間の電位差は電池の起電力 $V_0$ に固定される。
(1) $C = \varepsilon S / d$ より $d$ が2倍になると $C$ は半分になる。$C' = C_0 / 2$
(2) 電池がつながっているので、電位差は常に $V_0$ に等しい。
(3) $Q' = C'V_0 = (C_0/2) \times V_0 = C_0 V_0 / 2$
元の電荷 $Q_0 = C_0 V_0$ と比べて、半分の電荷になっている。 つまり、距離を広げたことで電荷の一部が電池に戻ったことになります。
電気容量 $C$ の平行板コンデンサーに起電力 $V$ の電池をつないで十分に充電した。次の2つの操作を比較せよ。
操作A:電池をつないだまま極板間の距離を半分にした。
操作B:電池を外してから極板間の距離を半分にした。
(1) 操作A後の電気容量、電位差、電荷をそれぞれ求めよ。
(2) 操作B後の電気容量、電位差、電荷をそれぞれ求めよ。
(3) 操作Aと操作Bの違いを、保存される物理量に着目して説明せよ。
(1) 電気容量 $2C$、電位差 $V$、電荷 $2CV$
(2) 電気容量 $2C$、電位差 $V/2$、電荷 $CV$
(3) 操作Aでは電池が接続されているため電位差が $V$ に保存される。操作Bでは電池が切断されているため電荷が $CV$ に保存される。
初期状態:$C_0 = C$、$V_0 = V$、$Q_0 = CV$
両操作とも、$d$ が半分になるので $C' = 2C$。
操作A(電池接続):電位差が $V$ に固定される。$Q' = C'V = 2CV$(電荷が増加 → 電池から供給)
操作B(電池切断):電荷が $Q_0 = CV$ に固定される。$V' = Q_0/C' = CV/(2C) = V/2$(電位差が減少)
まとめ:電池接続 → 電位差一定、電池切断 → 電荷一定。これがコンデンサー問題の最重要判断基準です。