第22章 コンデンサー

コンデンサーの直列・並列接続
─ 合成容量の求め方

抵抗の直列・並列接続を思い出してください。コンデンサーにも同様に「合成容量」の考え方があります。
ただし、抵抗とは公式が逆転します ── 直列では逆数の和、並列ではそのまま和。
なぜ逆になるのかを物理的に理解し、複雑な回路でも迷わず合成容量を求められるようになりましょう。

1並列接続 ─ 電圧が共通

2つのコンデンサー $C_1$、$C_2$ を並列に接続すると、両方のコンデンサーに同じ電圧 $V$ がかかります。 それぞれのコンデンサーに蓄えられる電荷は $Q_1 = C_1 V$、$Q_2 = C_2 V$ です。

全体の電荷は $Q = Q_1 + Q_2 = (C_1 + C_2)V$ ですから、合成容量 $C$ は次のようになります。

📐 並列接続の合成容量

$$C = C_1 + C_2$$

$n$ 個の場合:$C = C_1 + C_2 + \cdots + C_n$

※ 並列接続では、各コンデンサーの電圧が等しく、電荷が分配される。合成容量は各容量の和になる。
▷ 並列接続の合成容量の導出

並列接続では、各コンデンサーの両端の電位差が等しい:$V_1 = V_2 = V$

全体の電荷は各コンデンサーの電荷の和:

$$Q = Q_1 + Q_2 = C_1 V + C_2 V = (C_1 + C_2)V$$

合成容量の定義 $Q = CV$ と比較すると、

$$C = C_1 + C_2$$

💡 ここが本質:並列は「極板の面積を足す」イメージ

$C = \varepsilon S / d$ を思い出してください。2つのコンデンサーを並列に接続することは、極板の面積を足し合わせることに相当します。

大きな皿を2枚並べれば、1枚のときより多くの電荷を蓄えられる ── だから合成容量は単純な和になるのです。

⚠️ 落とし穴:並列と直列の公式を逆に覚える

コンデンサーの合成容量の公式は抵抗と逆です。

✕ 誤:並列接続で $\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$(これは直列の式)

○ 正:並列接続で $C = C_1 + C_2$

「並列は電圧が共通 → 電荷を足す → 容量も足す」と原理から考えれば間違えません。

2直列接続 ─ 電荷が共通

2つのコンデンサー $C_1$、$C_2$ を直列に接続して電圧 $V$ をかけると、 導体でつながれた中間の極板には外部から電荷が供給されないため、 各コンデンサーに蓄えられる電荷は等しく $Q$ になります。

各コンデンサーの電圧は $V_1 = Q/C_1$、$V_2 = Q/C_2$ であり、 全体の電圧は $V = V_1 + V_2$ です。

📐 直列接続の合成容量

$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}$$

$n$ 個の場合:$\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2} + \cdots + \dfrac{1}{C_n}$

※ 直列接続では、各コンデンサーの電荷が等しく、電圧が分配される。合成容量は逆数の和の逆数になる。
▷ 直列接続の合成容量の導出

直列接続では、各コンデンサーの電荷が等しい:$Q_1 = Q_2 = Q$

全体の電位差は各コンデンサーの電位差の和:

$$V = V_1 + V_2 = \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = Q\left(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\right)$$

$V = Q/C$ と比較すると、

$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}$$

💡 ここが本質:直列は「極板間の距離を足す」イメージ

直列接続は、2つのコンデンサーの極板間の距離を足し合わせることに相当します。

$C = \varepsilon S/d$ で $d$ が大きくなると $C$ は小さくなるのと同様に、 直列接続の合成容量は各コンデンサーの容量よりも小さくなります。

直列接続で電荷が等しくなる理由

直列接続された2つのコンデンサーの中間部分($C_1$ の負極板と $C_2$ の正極板をつなぐ導体部分)は、 外部回路から孤立しています。

充電前のこの部分の電荷の総和はゼロです。充電によって $C_1$ の負極板に $-Q$ が蓄えられると、 静電誘導により $C_2$ の正極板に $+Q$ が現れます。 これは電荷保存則の帰結です。

⚠️ 落とし穴:直列の合成容量を求めるとき逆数を取り忘れる

✕ 誤:$C = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$(逆数を取っていない)

○ 正:$\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$ → $C = \dfrac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}$

2つの場合は「積÷和」の形が便利です。最終的に逆数を取ることを忘れないようにしましょう。

🔬 深掘り:2つの直列接続の便利な公式

$C_1$ と $C_2$ の直列接続の場合、合成容量は「和分の積」で計算できます。

$$C = \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}$$

たとえば $C_1 = 3\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6\,\mu\text{F}$ なら、$C = \dfrac{3 \times 6}{3 + 6} = 2\,\mu\text{F}$ です。

3つ以上の直列接続ではこの公式は使えないので、逆数の和の式を使いましょう。

3抵抗との対比で覚える

コンデンサーの合成容量は、抵抗の合成抵抗と公式が逆転しています。 この対比を整理しておきましょう。

接続 抵抗の合成 コンデンサーの合成
直列 $R = R_1 + R_2$ $\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$
並列 $\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}$ $C = C_1 + C_2$
共通量 直列:電流が共通
並列:電圧が共通
直列:電荷が共通
並列:電圧が共通
💡 ここが本質:なぜ抵抗と逆になるのか

抵抗では $V = RI$ の形で $R$ が大きいほど電圧降下が大きくなります。一方、コンデンサーでは $V = Q/C$ の形で $C$ が大きいほど電圧降下が小さくなります。

つまり、抵抗は「流れにくさ」を表し、電気容量は「蓄えやすさ」を表します。 この逆の性質が、公式の逆転の原因です。

🔬 深掘り:暗記のコツ

公式を暗記するより、次の原理を覚えておけば導けます。

並列:電圧共通 → $Q = Q_1 + Q_2$ → $CV = C_1 V + C_2 V$ → $C = C_1 + C_2$

直列:電荷共通 → $V = V_1 + V_2$ → $Q/C = Q/C_1 + Q/C_2$ → $1/C = 1/C_1 + 1/C_2$

「何が共通で何が足されるのか」さえ分かれば、公式はその場で導けます。

4直列・並列の混合回路

実際の入試問題では、直列と並列が組み合わされた回路が出題されます。 解法の基本は、「内側から外側へ」順に合成していくことです。

混合回路の解法手順

  1. 回路図をよく見て、並列部分と直列部分を見分ける
  2. 内側の並列(または直列)部分を先に合成する
  3. 合成した結果を1つのコンデンサーとみなして、さらに外側を合成する
  4. 全体の合成容量が求まったら、$Q = CV$ で全体の電荷を求める
  5. 逆にたどって、各コンデンサーの電荷・電圧を求める

計算例:混合回路

$C_1 = 2\,\mu\text{F}$ と $C_2 = 4\,\mu\text{F}$ が並列に接続され、 その合成容量と $C_3 = 3\,\mu\text{F}$ が直列に接続されている場合を考えましょう。

まず並列部分:$C_{12} = C_1 + C_2 = 2 + 4 = 6\,\mu\text{F}$

次に直列部分:$\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_{12}} + \dfrac{1}{C_3} = \dfrac{1}{6} + \dfrac{1}{3} = \dfrac{1}{6} + \dfrac{2}{6} = \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{2}$

よって $C = 2\,\mu\text{F}$

⚠️ 落とし穴:直列・並列の見分けを間違える

✕ 誤:回路図の見た目だけで判断する

○ 正:「2つのコンデンサーの両端が同じ2点に接続」→ 並列、「一列に順番に接続」→ 直列

複雑な回路では、等電位点を見つけて回路図を書き直すと見やすくなります。

5この章を俯瞰する

合成容量の考え方は、複雑なコンデンサー回路を解くための基礎です。

つながりマップ

  • ← E-3-2 電気容量:$C = \varepsilon S / d$ の理解が、合成容量の物理的意味を把握する土台になった。
  • → E-3-4 静電エネルギー:合成容量が分かれば、回路全体のエネルギーを計算できる。
  • → E-3-5 誘電体:コンデンサーの一部に誘電体を挿入すると、直列・並列の考え方で解ける場合がある。
  • → E-3-6 充放電とスイッチ切替:直列・並列の組み替えによって電荷と電圧がどう再配分されるかを学ぶ。
  • ← 抵抗の直列・並列:公式が逆転する対比を意識すると理解が深まる。

📋まとめ

  • 並列接続:電圧が共通で電荷が分配される。合成容量 $C = C_1 + C_2$(和)
  • 直列接続:電荷が共通で電圧が分配される。合成容量 $\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}$(逆数の和)
  • 直列2つの場合は「和分の積」$C = C_1 C_2 / (C_1 + C_2)$ が便利
  • コンデンサーの公式は抵抗と逆になることに注意
  • 混合回路は「内側から外側へ」順に合成する
  • 公式を暗記するのではなく「何が共通で何が足されるか」を原理から考える

確認テスト

Q1. $3\,\mu\text{F}$ と $6\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを並列に接続したとき、合成容量はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$C = 3 + 6 = 9\,\mu\text{F}$

Q2. $3\,\mu\text{F}$ と $6\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを直列に接続したとき、合成容量はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$C = \dfrac{3 \times 6}{3 + 6} = \dfrac{18}{9} = 2\,\mu\text{F}$

Q3. コンデンサーの直列接続で、各コンデンサーの電荷が等しくなるのはなぜですか。

▶ クリックして解答を表示中間の導体部分は外部回路から孤立しており、電荷保存則により全体の電荷はゼロのまま。一方に $-Q$ が蓄えられると他方に $+Q$ が静電誘導で現れるため。

Q4. コンデンサーの合成容量の公式が抵抗と逆になる理由を簡潔に述べてください。

▶ クリックして解答を表示抵抗は「流れにくさ」($V = RI$)を表すのに対し、電気容量は「蓄えやすさ」($Q = CV$)を表す。性質が逆であるため公式も逆転する。

8入試問題演習

直列・並列接続の理解を入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-3-1 A 基礎 並列計算

$4\,\mu\text{F}$ と $6\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを並列に接続し、$10\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。

(1) 合成容量を求めよ。

(2) 全体の電荷を求めよ。

(3) $4\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに蓄えられた電荷を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $10\,\mu\text{F}$

(2) $100\,\mu\text{C}$

(3) $40\,\mu\text{C}$

解説

(1) 並列接続:$C = 4 + 6 = 10\,\mu\text{F}$

(2) $Q = CV = 10 \times 10^{-6} \times 10 = 100 \times 10^{-6}\,\text{C} = 100\,\mu\text{C}$

(3) 並列では各コンデンサーに同じ電圧 $10\,\text{V}$ がかかるので、$Q_1 = C_1 V = 4 \times 10^{-6} \times 10 = 40\,\mu\text{C}$

B 発展レベル

3-3-2 B 発展 直列計算

$2\,\mu\text{F}$ と $3\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを直列に接続し、$100\,\text{V}$ の電圧をかけた。次の問いに答えよ。

(1) 合成容量を求めよ。

(2) 各コンデンサーに蓄えられる電荷を求めよ。

(3) 各コンデンサーの両端の電圧を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $1.2\,\mu\text{F}$

(2) 各コンデンサーとも $120\,\mu\text{C}$

(3) $2\,\mu\text{F}$ のコンデンサー:$60\,\text{V}$、$3\,\mu\text{F}$ のコンデンサー:$40\,\text{V}$

解説

(1) $C = \dfrac{2 \times 3}{2 + 3} = \dfrac{6}{5} = 1.2\,\mu\text{F}$

(2) 直列接続なので電荷は共通:$Q = CV = 1.2 \times 10^{-6} \times 100 = 120\,\mu\text{C}$

(3) $V_1 = Q/C_1 = 120/2 = 60\,\text{V}$、$V_2 = Q/C_2 = 120/3 = 40\,\text{V}$

検算:$V_1 + V_2 = 60 + 40 = 100\,\text{V}$ ✓

採点ポイント
  • 直列の合成容量を正しく求める(2点)
  • 直列では電荷が共通であることを用いる(3点)
  • 各コンデンサーの電圧を正しく求める(3点)
  • $V_1 + V_2 = V$ の検算(2点)

C 応用レベル

3-3-3 C 応用 混合回路計算

$C_1 = 2\,\mu\text{F}$、$C_2 = 4\,\mu\text{F}$、$C_3 = 6\,\mu\text{F}$ の3つのコンデンサーがある。$C_1$ と $C_2$ を並列に接続し、その合成容量と $C_3$ を直列に接続して、全体に $60\,\text{V}$ の電圧をかけた。

(1) 全体の合成容量を求めよ。

(2) $C_3$ に蓄えられる電荷を求めよ。

(3) $C_1$ の両端の電圧と蓄えられる電荷を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $3\,\mu\text{F}$

(2) $180\,\mu\text{C}$

(3) 電圧 $30\,\text{V}$、電荷 $60\,\mu\text{C}$

解説

方針:まず並列部分を合成し、次に直列部分を合成する。

並列部分:$C_{12} = C_1 + C_2 = 2 + 4 = 6\,\mu\text{F}$

(1) 直列部分:$C = \dfrac{C_{12} \times C_3}{C_{12} + C_3} = \dfrac{6 \times 6}{6 + 6} = 3\,\mu\text{F}$

(2) 全体の電荷:$Q = CV = 3 \times 60 = 180\,\mu\text{C}$(直列なので $C_{12}$ と $C_3$ の電荷は等しく $180\,\mu\text{C}$)

(3) 並列部分の電圧:$V_{12} = Q/C_{12} = 180/6 = 30\,\text{V}$

$C_1$ は並列接続なので電圧は $V_{12} = 30\,\text{V}$。電荷は $Q_1 = C_1 V_{12} = 2 \times 30 = 60\,\mu\text{C}$

採点ポイント
  • 並列部分を正しく合成する(2点)
  • 直列の合成容量を正しく求める(2点)
  • 直列部分の電荷が共通であることを利用する(2点)
  • 並列部分の電圧を求め、各コンデンサーの電荷を正しく算出する(4点)