コンデンサーは電荷を蓄えるだけでなく、エネルギーも蓄えます。
カメラのフラッシュが一瞬で発光できるのは、コンデンサーに蓄えられたエネルギーが一気に解放されるからです。
この記事では、静電エネルギーの公式 $U = \frac{1}{2}CV^2$ を導出し、その物理的意味を深く理解します。
コンデンサーを充電する過程で、電池は電荷を極板まで運ぶ「仕事」をします。 この仕事がコンデンサーに静電エネルギー(electrostatic energy)として蓄えられます。
しかし、この仕事は単純に「$QV$」ではありません。 なぜなら、充電中にコンデンサーの電圧は $0$ から $V$ まで徐々に増加するからです。
充電の途中で、既に電荷 $q$ が蓄えられているとき、コンデンサーの電圧は $v = q/C$ です。
ここにさらに微小電荷 $dq$ を運ぶのに必要な仕事は、
$$dW = v\,dq = \frac{q}{C}\,dq$$
電荷を $0$ から $Q$ まで蓄えるのに必要な全仕事(=蓄えられるエネルギー)は、
$$U = \int_0^Q \frac{q}{C}\,dq = \frac{1}{C}\left[\frac{q^2}{2}\right]_0^Q = \frac{Q^2}{2C}$$
$Q = CV$ を代入すると、
$$U = \frac{(CV)^2}{2C} = \frac{1}{2}CV^2$$
$$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV$$
$U = \frac{1}{2}QV$ の $\frac{1}{2}$ は、充電中の電圧が $0$ から $V$ まで一様に増加することに由来します。
平均電圧は $\bar{V} = V/2$ ですから、$U = Q \times \bar{V} = Q \times V/2 = \frac{1}{2}QV$ となります。
これは力学でバネの弾性エネルギー $U = \frac{1}{2}kx^2$ に $\frac{1}{2}$ がつくのと同じ理由です。力(電圧)が変位(電荷)に比例して増加するとき、エネルギーには $\frac{1}{2}$ がつきます。
✕ 誤:$U = QV$(½ を忘れる)
○ 正:$U = \frac{1}{2}QV$
$QV$ は電池がした仕事の総量(=電池が供給したエネルギー)です。 そのうち半分 $\frac{1}{2}QV$ がコンデンサーに蓄えられ、残りの半分は充電過程で回路の抵抗で熱として散逸します。
静電エネルギーは $Q = CV$ を用いて3通りに表すことができます。 状況に応じて最も計算しやすい形を選びましょう。
| 表現 | 公式 | 使いどころ |
|---|---|---|
| $C$ と $V$ が分かっているとき | $U = \dfrac{1}{2}CV^2$ | 電池接続中($V$ 一定)の問題 |
| $Q$ と $C$ が分かっているとき | $U = \dfrac{Q^2}{2C}$ | 電池切断後($Q$ 一定)の問題 |
| $Q$ と $V$ が分かっているとき | $U = \dfrac{1}{2}QV$ | $Q$ と $V$ の両方が既知の場合 |
入試で最もよく問われるのは、「条件を変えたときにエネルギーがどう変化するか」です。
電池接続中($V$ 一定)→ $U = \frac{1}{2}CV^2$ を使い、$C$ の変化から $U$ の変化を求める
電池切断後($Q$ 一定)→ $U = Q^2/(2C)$ を使い、$C$ の変化から $U$ の変化を求める
この判断が瞬時にできれば、コンデンサーの問題の大半は解けます。
✕ 誤:電池接続中に $C$ を2倍にしたとき、$U = Q^2/(2C)$ で「$U$ は半分になる」と誤答する
○ 正:電池接続中は $V$ 一定。$U = \frac{1}{2}CV^2$ より、$C$ が2倍なら $U$ も2倍になる
$Q^2/(2C)$ の式を使うと、$Q$ も変化していることを見落としがちです。一定の量を含む式を選びましょう。
具体的な問題で「電池接続」と「電池切断」でエネルギーがどう変わるかを比較しましょう。
電気容量 $C$ のコンデンサーを電圧 $V$ で充電した後に操作を行う場合を考えます。 距離を2倍にすると $C' = C/2$ になります。
場合A:電池接続中($V$ 一定)
場合B:電池切断後($Q$ 一定)
同じ「距離を2倍にする」操作でも、電池の接続状態によってエネルギーの変化が正反対です。
✕ 誤:距離を2倍にすればいつでもエネルギーは半分になる
○ 正:電池接続中はエネルギー半分、電池切断後はエネルギー2倍
問題文の「電池をつないだまま」「電池を外してから」を見落とさないようにしましょう。
電池切断後に極板間の距離を広げるとエネルギーが増加します。このエネルギーはどこから来たのでしょうか。
正極板と負極板は互いに引き合っています。極板間の距離を広げるには、この引力に逆らって外力で仕事をする必要があります。 この外力がした仕事がエネルギーの増加分に対応しています。
逆に、電池接続中に距離を広げると、電荷が電池に戻っていく(放電する)ことでエネルギーが減少します。
コンデンサーの充放電では、エネルギー保存則が非常に重要です。 特に、2つのコンデンサーの間で電荷を移動させる問題は入試頻出です。
電池の起電力 $V$ で容量 $C$ のコンデンサーを充電するとき、
つまり、電池のエネルギーの半分はコンデンサーに蓄えられ、半分は熱として失われます。 これは回路の抵抗値によりません(抵抗が大きいと充電に時間がかかりますが、散逸するエネルギーの総量は同じです)。
充電済みのコンデンサー $C_1$(電圧 $V_0$)と、充電されていないコンデンサー $C_2$ を接続すると、 電荷が $C_1$ から $C_2$ へ移動します。 電荷保存則より $Q_1' + Q_2' = C_1 V_0$ であり、電圧が等しくなったとき平衡に達します。
このとき、接続前のエネルギーの合計と接続後のエネルギーの合計を比較すると、 エネルギーが必ず減少します。減少分は導線の抵抗で熱として散逸します。
2つのコンデンサーの間で電荷を移動させると、電荷は保存されるがエネルギーは保存されない。
散逸するエネルギーは導線の抵抗値によらず、初期状態と最終状態だけで決まります。 抵抗がゼロの理想導線であっても、電磁波の放出などでエネルギーが失われます。
静電エネルギーは、コンデンサー回路のエネルギー収支を考える上で欠かせない概念です。
Q1. 電気容量 $10\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $20\,\text{V}$ の電圧をかけたとき、蓄えられる静電エネルギーを求めてください。
Q2. 静電エネルギーの公式に $\frac{1}{2}$ がつく理由を簡潔に説明してください。
Q3. 電池を外した後に $C$ を2倍にすると、静電エネルギーはどう変化しますか。
Q4. 電池(起電力 $V$)でコンデンサー(容量 $C$)を充電したとき、電池がした仕事と蓄えられたエネルギーの関係を述べてください。
静電エネルギーに関する理解を入試形式で確認しましょう。
$5.0\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $200\,\text{V}$ の電圧をかけて十分に充電した。次の問いに答えよ。
(1) 蓄えられた電荷を求めよ。
(2) 蓄えられた静電エネルギーを求めよ。
(1) $Q = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{C} = 1.0\,\text{mC}$
(2) $U = 0.10\,\text{J} = 100\,\text{mJ}$
(1) $Q = CV = 5.0 \times 10^{-6} \times 200 = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{C}$
(2) $U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 5.0 \times 10^{-6} \times 200^2 = 0.10\,\text{J}$
電気容量 $C$ のコンデンサーに起電力 $V$ の電池をつないで十分に充電した後、電池を外し、極板間の距離を半分にした。
(1) 距離を半分にした後の電気容量を $C$ を用いて表せ。
(2) 距離を半分にした後の極板間の電位差を求めよ。
(3) 距離を半分にする前後の静電エネルギーの比を求めよ。
(4) エネルギーの減少分はどこへ行ったか説明せよ。
(1) $C' = 2C$
(2) $V' = V/2$
(3) $U'/U = 1/2$(エネルギーは半分に減少)
(4) 極板を近づける際に、正負の極板が引き合う力(クーロン力)が仕事をし、その運動エネルギーが最終的に熱として散逸した。
(1) $C = \varepsilon S/d$ で $d$ が半分 → $C' = 2C$
(2) 電池切断後なので $Q$ 一定:$V' = Q/C' = CV/(2C) = V/2$
(3) $U = Q^2/(2C)$、$U' = Q^2/(2 \cdot 2C) = Q^2/(4C) = U/2$
(4) 正負の極板は引き合っているので、距離を縮めると引力が正の仕事をする。この仕事が極板の運動エネルギーに変換され、最終的には衝突や抵抗で熱に変わる。
電気容量 $C$ のコンデンサーを起電力 $V$ の電池で充電した後、電池を外し、充電されていない同じ容量 $C$ のコンデンサーに接続した。十分に時間が経った後について答えよ。
(1) 各コンデンサーの電荷と電位差を求めよ。
(2) 接続前後の静電エネルギーの合計をそれぞれ求め、減少したエネルギーの割合を求めよ。
(3) 失われたエネルギーの行方を説明せよ。
(1) 各コンデンサー:電荷 $CV/2$、電位差 $V/2$
(2) 接続前 $\frac{1}{2}CV^2$、接続後 $\frac{1}{4}CV^2$。減少割合は $50\%$
(3) 導線の抵抗(有限の場合はジュール熱、理想的な場合は電磁波放射)として散逸した。
電荷保存:$Q_1 + Q_2 = CV$(初期電荷)
平衡状態では電位差が等しい:$V_1 = V_2$。同じ容量 $C$ なので $Q_1 = Q_2 = CV/2$
(1) 各コンデンサー:$Q = CV/2$、$V' = Q/C = V/2$
(2) 接続前:$U_i = \frac{1}{2}CV^2$
接続後:$U_f = 2 \times \frac{1}{2}C(V/2)^2 = 2 \times \frac{1}{2}C \times \frac{V^2}{4} = \frac{1}{4}CV^2$
減少分:$\Delta U = \frac{1}{2}CV^2 - \frac{1}{4}CV^2 = \frac{1}{4}CV^2$。割合は $50\%$。