第22章 コンデンサー

静電エネルギー
─ U = ½CV²

コンデンサーは電荷を蓄えるだけでなく、エネルギーも蓄えます。
カメラのフラッシュが一瞬で発光できるのは、コンデンサーに蓄えられたエネルギーが一気に解放されるからです。
この記事では、静電エネルギーの公式 $U = \frac{1}{2}CV^2$ を導出し、その物理的意味を深く理解します。

1静電エネルギーとは ─ なぜ ½ がつくのか

コンデンサーを充電する過程で、電池は電荷を極板まで運ぶ「仕事」をします。 この仕事がコンデンサーに静電エネルギー(electrostatic energy)として蓄えられます。

しかし、この仕事は単純に「$QV$」ではありません。 なぜなら、充電中にコンデンサーの電圧は $0$ から $V$ まで徐々に増加するからです。

▷ $U = \frac{1}{2}CV^2$ の導出

充電の途中で、既に電荷 $q$ が蓄えられているとき、コンデンサーの電圧は $v = q/C$ です。

ここにさらに微小電荷 $dq$ を運ぶのに必要な仕事は、

$$dW = v\,dq = \frac{q}{C}\,dq$$

電荷を $0$ から $Q$ まで蓄えるのに必要な全仕事(=蓄えられるエネルギー)は、

$$U = \int_0^Q \frac{q}{C}\,dq = \frac{1}{C}\left[\frac{q^2}{2}\right]_0^Q = \frac{Q^2}{2C}$$

$Q = CV$ を代入すると、

$$U = \frac{(CV)^2}{2C} = \frac{1}{2}CV^2$$

📐 コンデンサーの静電エネルギー

$$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV$$

※ $U$:静電エネルギー [J]、$C$:電気容量 [F]、$V$:極板間の電位差 [V]、$Q$:蓄えられた電荷 [C]
💡 ここが本質:½ は「平均電圧」の意味

$U = \frac{1}{2}QV$ の $\frac{1}{2}$ は、充電中の電圧が $0$ から $V$ まで一様に増加することに由来します。

平均電圧は $\bar{V} = V/2$ ですから、$U = Q \times \bar{V} = Q \times V/2 = \frac{1}{2}QV$ となります。

これは力学でバネの弾性エネルギー $U = \frac{1}{2}kx^2$ に $\frac{1}{2}$ がつくのと同じ理由です。力(電圧)が変位(電荷)に比例して増加するとき、エネルギーには $\frac{1}{2}$ がつきます。

⚠️ 落とし穴:$U = QV$ としてしまう

✕ 誤:$U = QV$(½ を忘れる)

○ 正:$U = \frac{1}{2}QV$

$QV$ は電池がした仕事の総量(=電池が供給したエネルギー)です。 そのうち半分 $\frac{1}{2}QV$ がコンデンサーに蓄えられ、残りの半分は充電過程で回路の抵抗で熱として散逸します。

23つの等価な表現

静電エネルギーは $Q = CV$ を用いて3通りに表すことができます。 状況に応じて最も計算しやすい形を選びましょう。

表現 公式 使いどころ
$C$ と $V$ が分かっているとき $U = \dfrac{1}{2}CV^2$ 電池接続中($V$ 一定)の問題
$Q$ と $C$ が分かっているとき $U = \dfrac{Q^2}{2C}$ 電池切断後($Q$ 一定)の問題
$Q$ と $V$ が分かっているとき $U = \dfrac{1}{2}QV$ $Q$ と $V$ の両方が既知の場合
💡 ここが本質:「何が一定か」で公式を選ぶ

入試で最もよく問われるのは、「条件を変えたときにエネルギーがどう変化するか」です。

電池接続中($V$ 一定)→ $U = \frac{1}{2}CV^2$ を使い、$C$ の変化から $U$ の変化を求める

電池切断後($Q$ 一定)→ $U = Q^2/(2C)$ を使い、$C$ の変化から $U$ の変化を求める

この判断が瞬時にできれば、コンデンサーの問題の大半は解けます。

⚠️ 落とし穴:$V$ 一定なのに $U = Q^2/(2C)$ を使う

✕ 誤:電池接続中に $C$ を2倍にしたとき、$U = Q^2/(2C)$ で「$U$ は半分になる」と誤答する

○ 正:電池接続中は $V$ 一定。$U = \frac{1}{2}CV^2$ より、$C$ が2倍なら $U$ も2倍になる

$Q^2/(2C)$ の式を使うと、$Q$ も変化していることを見落としがちです。一定の量を含む式を選びましょう。

3エネルギーの使い分け ─ 何が一定かで選ぶ

具体的な問題で「電池接続」と「電池切断」でエネルギーがどう変わるかを比較しましょう。

例題:極板間の距離を2倍にする

電気容量 $C$ のコンデンサーを電圧 $V$ で充電した後に操作を行う場合を考えます。 距離を2倍にすると $C' = C/2$ になります。

場合A:電池接続中($V$ 一定)

  • $U = \frac{1}{2}CV^2$ → $U' = \frac{1}{2} \cdot \frac{C}{2} \cdot V^2 = \frac{U}{2}$
  • エネルギーは半分に減少する

場合B:電池切断後($Q$ 一定)

  • $U = \frac{Q^2}{2C}$ → $U' = \frac{Q^2}{2 \cdot C/2} = \frac{Q^2}{C} = 2U$
  • エネルギーは2倍に増加する
⚠️ 落とし穴:同じ操作なのにエネルギーの変化が逆

同じ「距離を2倍にする」操作でも、電池の接続状態によってエネルギーの変化が正反対です。

✕ 誤:距離を2倍にすればいつでもエネルギーは半分になる

○ 正:電池接続中はエネルギー半分、電池切断後はエネルギー2倍

問題文の「電池をつないだまま」「電池を外してから」を見落とさないようにしましょう。

🔬 深掘り:増えたエネルギーはどこから来るのか

電池切断後に極板間の距離を広げるとエネルギーが増加します。このエネルギーはどこから来たのでしょうか。

正極板と負極板は互いに引き合っています。極板間の距離を広げるには、この引力に逆らって外力で仕事をする必要があります。 この外力がした仕事がエネルギーの増加分に対応しています。

逆に、電池接続中に距離を広げると、電荷が電池に戻っていく(放電する)ことでエネルギーが減少します。

4エネルギー保存と散逸

コンデンサーの充放電では、エネルギー保存則が非常に重要です。 特に、2つのコンデンサーの間で電荷を移動させる問題は入試頻出です。

充電時のエネルギー散逸

電池の起電力 $V$ で容量 $C$ のコンデンサーを充電するとき、

  • 電池がした仕事:$W = QV = CV^2$
  • コンデンサーに蓄えられたエネルギー:$U = \frac{1}{2}CV^2$
  • 抵抗で散逸した熱:$Q_\text{heat} = W - U = \frac{1}{2}CV^2$

つまり、電池のエネルギーの半分はコンデンサーに蓄えられ、半分は熱として失われます。 これは回路の抵抗値によりません(抵抗が大きいと充電に時間がかかりますが、散逸するエネルギーの総量は同じです)。

コンデンサー間の電荷移動

充電済みのコンデンサー $C_1$(電圧 $V_0$)と、充電されていないコンデンサー $C_2$ を接続すると、 電荷が $C_1$ から $C_2$ へ移動します。 電荷保存則より $Q_1' + Q_2' = C_1 V_0$ であり、電圧が等しくなったとき平衡に達します。

このとき、接続前のエネルギーの合計と接続後のエネルギーの合計を比較すると、 エネルギーが必ず減少します。減少分は導線の抵抗で熱として散逸します。

💡 ここが本質:コンデンサー間の電荷移動では必ずエネルギーが失われる

2つのコンデンサーの間で電荷を移動させると、電荷は保存されるがエネルギーは保存されない

散逸するエネルギーは導線の抵抗値によらず、初期状態と最終状態だけで決まります。 抵抗がゼロの理想導線であっても、電磁波の放出などでエネルギーが失われます。

5この章を俯瞰する

静電エネルギーは、コンデンサー回路のエネルギー収支を考える上で欠かせない概念です。

つながりマップ

  • ← E-3-2 電気容量:$C$ の値が分かれば $U = \frac{1}{2}CV^2$ でエネルギーを定量化できる。
  • ← E-3-3 直列・並列接続:合成容量を用いて回路全体のエネルギーを計算する。
  • → E-3-5 誘電体:誘電体の挿入で $C$ が変わると、$U$ がどう変化するかを考える。
  • → E-3-6 充放電とスイッチ切替:エネルギー保存と散逸が中心テーマになる。
  • ← バネの弾性エネルギー:$U = \frac{1}{2}kx^2$ との類似性。$k \leftrightarrow C$、$x \leftrightarrow V$ の対応。

📋まとめ

  • 静電エネルギー:$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV$
  • $\frac{1}{2}$ がつくのは、充電中に電圧が $0$ から $V$ まで一様に増加するため
  • 電池接続中($V$ 一定)は $U = \frac{1}{2}CV^2$、電池切断後($Q$ 一定)は $U = Q^2/(2C)$ を使う
  • 充電時に電池がした仕事の半分がコンデンサーに蓄えられ、残り半分は熱として散逸
  • コンデンサー間の電荷移動では、電荷は保存されるがエネルギーは必ず減少する

確認テスト

Q1. 電気容量 $10\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $20\,\text{V}$ の電圧をかけたとき、蓄えられる静電エネルギーを求めてください。

▶ クリックして解答を表示$U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 10 \times 10^{-6} \times 20^2 = 2.0 \times 10^{-3}\,\text{J} = 2.0\,\text{mJ}$

Q2. 静電エネルギーの公式に $\frac{1}{2}$ がつく理由を簡潔に説明してください。

▶ クリックして解答を表示充電中にコンデンサーの電圧が $0$ から $V$ まで一様に増加するため、平均電圧が $V/2$ になる。したがって $U = Q \times V/2 = \frac{1}{2}QV$。

Q3. 電池を外した後に $C$ を2倍にすると、静電エネルギーはどう変化しますか。

▶ クリックして解答を表示電池切断後は $Q$ 一定。$U = Q^2/(2C)$ より、$C$ が2倍になると $U$ は半分になる。

Q4. 電池(起電力 $V$)でコンデンサー(容量 $C$)を充電したとき、電池がした仕事と蓄えられたエネルギーの関係を述べてください。

▶ クリックして解答を表示電池がした仕事は $QV = CV^2$、蓄えられたエネルギーは $\frac{1}{2}CV^2$。仕事の半分がコンデンサーに蓄えられ、残りの半分 $\frac{1}{2}CV^2$ は抵抗で熱として散逸する。

8入試問題演習

静電エネルギーに関する理解を入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-4-1 A 基礎 エネルギー計算計算

$5.0\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに $200\,\text{V}$ の電圧をかけて十分に充電した。次の問いに答えよ。

(1) 蓄えられた電荷を求めよ。

(2) 蓄えられた静電エネルギーを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $Q = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{C} = 1.0\,\text{mC}$

(2) $U = 0.10\,\text{J} = 100\,\text{mJ}$

解説

(1) $Q = CV = 5.0 \times 10^{-6} \times 200 = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{C}$

(2) $U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 5.0 \times 10^{-6} \times 200^2 = 0.10\,\text{J}$

B 発展レベル

3-4-2 B 発展 条件変化論述

電気容量 $C$ のコンデンサーに起電力 $V$ の電池をつないで十分に充電した後、電池を外し、極板間の距離を半分にした。

(1) 距離を半分にした後の電気容量を $C$ を用いて表せ。

(2) 距離を半分にした後の極板間の電位差を求めよ。

(3) 距離を半分にする前後の静電エネルギーの比を求めよ。

(4) エネルギーの減少分はどこへ行ったか説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $C' = 2C$

(2) $V' = V/2$

(3) $U'/U = 1/2$(エネルギーは半分に減少)

(4) 極板を近づける際に、正負の極板が引き合う力(クーロン力)が仕事をし、その運動エネルギーが最終的に熱として散逸した。

解説

(1) $C = \varepsilon S/d$ で $d$ が半分 → $C' = 2C$

(2) 電池切断後なので $Q$ 一定:$V' = Q/C' = CV/(2C) = V/2$

(3) $U = Q^2/(2C)$、$U' = Q^2/(2 \cdot 2C) = Q^2/(4C) = U/2$

(4) 正負の極板は引き合っているので、距離を縮めると引力が正の仕事をする。この仕事が極板の運動エネルギーに変換され、最終的には衝突や抵抗で熱に変わる。

採点ポイント
  • 電池切断後は $Q$ 一定であることを明記する(2点)
  • $C' = 2C$、$V' = V/2$ を正しく求める(各2点)
  • エネルギーの比を正しく計算する(2点)
  • エネルギー減少の物理的理由を述べる(2点)

C 応用レベル

3-4-3 C 応用 電荷移動エネルギー散逸

電気容量 $C$ のコンデンサーを起電力 $V$ の電池で充電した後、電池を外し、充電されていない同じ容量 $C$ のコンデンサーに接続した。十分に時間が経った後について答えよ。

(1) 各コンデンサーの電荷と電位差を求めよ。

(2) 接続前後の静電エネルギーの合計をそれぞれ求め、減少したエネルギーの割合を求めよ。

(3) 失われたエネルギーの行方を説明せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 各コンデンサー:電荷 $CV/2$、電位差 $V/2$

(2) 接続前 $\frac{1}{2}CV^2$、接続後 $\frac{1}{4}CV^2$。減少割合は $50\%$

(3) 導線の抵抗(有限の場合はジュール熱、理想的な場合は電磁波放射)として散逸した。

解説

電荷保存:$Q_1 + Q_2 = CV$(初期電荷)

平衡状態では電位差が等しい:$V_1 = V_2$。同じ容量 $C$ なので $Q_1 = Q_2 = CV/2$

(1) 各コンデンサー:$Q = CV/2$、$V' = Q/C = V/2$

(2) 接続前:$U_i = \frac{1}{2}CV^2$

接続後:$U_f = 2 \times \frac{1}{2}C(V/2)^2 = 2 \times \frac{1}{2}C \times \frac{V^2}{4} = \frac{1}{4}CV^2$

減少分:$\Delta U = \frac{1}{2}CV^2 - \frac{1}{4}CV^2 = \frac{1}{4}CV^2$。割合は $50\%$。

採点ポイント
  • 電荷保存則を正しく立式する(3点)
  • 平衡条件(電位差が等しい)を用いる(2点)
  • 前後のエネルギーを正しく計算する(3点)
  • エネルギー散逸の物理的説明(2点)