入試で最も差がつくのがスイッチ切替の問題です。スイッチを切り替えると、電荷はどこへ行くのか。電圧はどう変わるのか。
カギを握るのは電荷保存則とキルヒホッフの電圧則の2つの法則です。
この記事では、典型的なパターンを体系的に整理し、確実に解けるようになりましょう。
コンデンサーのスイッチ切替問題は、次の3ステップで解きます。
ステップ1:切替前の各コンデンサーの電荷・電圧を求める
ステップ2:保存則・条件を立てる
(a) 電荷保存則:孤立した導体部分の電荷の総和は変化しない
(b) キルヒホッフの電圧則:閉回路を一周したとき電位差の合計は $0$
ステップ3:連立方程式を解く
スイッチ切替問題の核心は、どの部分の電荷が保存されるかを正しく特定することです。
外部回路から孤立した導体部分(スイッチが切れている部分で囲まれた導体)の電荷の総和は、切替の前後で変わりません。
電池が接続されている部分では電荷が出入りできるので、電荷保存ではなく電圧条件(電池の起電力)を使います。
電荷保存則は、孤立した導体部分に対して成り立ちます。 直列接続された2つのコンデンサーの中間の極板をつなぐ導体部分は典型的な例です。
たとえば、コンデンサー $C_1$ の負極板とコンデンサー $C_2$ の正極板がつながっている場合、 この中間部分全体の電荷の合計($-Q_1 + Q_2$)は、スイッチ切替の前後で一定です。
✕ 誤:回路全体で電荷が保存される → すべてのコンデンサーの電荷の和が一定
○ 正:電荷保存は「孤立した導体部分」ごとに適用する
電池が接続されている部分では電荷が出入りするので、電荷保存は成り立ちません。 孤立した部分を正しく見つけることが重要です。
最も基本的なパターンを確認しましょう。 容量 $C_1$ のコンデンサーを電圧 $V_0$ で充電し、電池を外して容量 $C_2$(電荷なし)のコンデンサーに接続します。
初期状態:$C_1$ には $Q_0 = C_1 V_0$、$C_2$ には $Q = 0$
電荷保存:$Q_1 + Q_2 = C_1 V_0$
電圧条件:平衡後は電位差が等しい $V_1 = V_2$、すなわち $Q_1/C_1 = Q_2/C_2$
これら2式を連立して解くと、
$$Q_1 = \frac{C_1^2 V_0}{C_1 + C_2}, \quad Q_2 = \frac{C_1 C_2 V_0}{C_1 + C_2}$$
$$V_1 = V_2 = \frac{C_1 V_0}{C_1 + C_2}$$
✕ 誤:とにかく $Q_1 + Q_2 = Q_0$ とする
○ 正:正極板どうし・負極板どうしを接続するか、逆向きに接続するかで式が変わる
逆向き($C_1$ の正極板と $C_2$ の負極板を接続)の場合、電荷保存は $Q_1 - Q_2 = Q_0$ のようになります。 回路図をよく見て、各極板の符号を正しく追いましょう。
接続前のエネルギー:$U_i = \frac{1}{2}C_1 V_0^2$
接続後のエネルギー:$U_f = \frac{1}{2}(C_1 + C_2)\left(\frac{C_1 V_0}{C_1 + C_2}\right)^2 = \frac{C_1^2 V_0^2}{2(C_1 + C_2)}$
$U_f < U_i$ であり、差分 $\Delta U = U_i - U_f = \frac{C_1 C_2 V_0^2}{2(C_1 + C_2)}$ が熱として散逸します。
特に $C_1 = C_2 = C$ のとき、$\Delta U = \frac{1}{4}CV_0^2 = \frac{U_i}{2}$ で、初期エネルギーの半分が失われます。
スイッチの切替ではなく、極板間の条件(距離や誘電体)を変更する問題も、同じフレームワークで解けます。
入試問題では、操作の順序が極めて重要です。
「充電 → 電池を外す → 距離を変える」なら $Q$ 一定。
「充電 → 電池をつないだまま → 距離を変える」なら $V$ 一定。
問題文を読む際に、「いつ電池を外すか」のタイミングに線を引く習慣をつけましょう。
複数のコンデンサーが直列や並列に接続されている回路で、スイッチを切り替えて接続を変更する問題を考えます。
2つのコンデンサー $C_1 = C_2 = C$ を直列に接続して電圧 $2V$ で充電した後、 電池を外し、スイッチを切り替えて並列に接続する場合を考えましょう。
直列充電時:各コンデンサーの電荷は $Q_0 = C \cdot V = CV$(直列なので電荷は等しい)。各コンデンサーの電圧は $V$。
並列接続後:正極板どうしを接続した場合、
この場合は電荷も電圧も変わりません。しかし、逆向きに接続すると結果は大きく異なります。
複数のコンデンサーが接続されている場合、孤立した導体部分が複数存在することがあります。
✕ 誤:全体の電荷保存だけで式を立てる
○ 正:各孤立部分ごとに電荷保存の式を立てる
回路図で「外部から電荷が入れない部分」を色分けして見つけると、正しく式を立てられます。
閉回路を一周するとき、電位の上昇と下降の合計はゼロになります。
コンデンサー $C$ を正極板から負極板に向かって通過すると電位は $V = Q/C$ だけ下降します。
電池を負極から正極に向かって通過すると電位は起電力 $E$ だけ上昇します。
これらを閉回路に沿って足し合わせてゼロとおけば、必要な方程式が得られます。
スイッチ切替の問題は、コンデンサーの知識を総合的に問う最も重要なテーマです。
Q1. コンデンサーのスイッチ切替問題で最初に確認すべき2つの保存則は何ですか。
Q2. $C = 4\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを $100\,\text{V}$ で充電し、電池を外して $C' = 6\,\mu\text{F}$ の空のコンデンサーに接続した。平衡後の電圧はいくらですか。
Q3. 「電池を外してから距離を変える」場合と「電池をつないだまま距離を変える」場合で、一定に保たれる量はそれぞれ何ですか。
Q4. 2つのコンデンサーの間で電荷を移動させたとき、エネルギーの合計はどうなりますか。
充放電とスイッチ切替の理解を入試形式で確認しましょう。
$10\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを $50\,\text{V}$ で充電した後、電池を外し、充電されていない $10\,\mu\text{F}$ のコンデンサーに接続した。十分に時間が経った後について答えよ。
(1) 各コンデンサーの電荷と電位差を求めよ。
(2) 接続前後でエネルギーはいくら減少したか。
(1) 各コンデンサー:電荷 $250\,\mu\text{C}$、電位差 $25\,\text{V}$
(2) $\Delta U = 6.25\,\text{mJ}$
初期電荷:$Q_0 = 10 \times 10^{-6} \times 50 = 500\,\mu\text{C}$
(1) 容量が等しいので電荷は等分:$Q_1 = Q_2 = 250\,\mu\text{C}$、$V = 250/10 = 25\,\text{V}$
(2) $U_i = \frac{1}{2} \times 10 \times 10^{-6} \times 50^2 = 12.5\,\text{mJ}$
$U_f = 2 \times \frac{1}{2} \times 10 \times 10^{-6} \times 25^2 = 6.25\,\text{mJ}$
$\Delta U = 12.5 - 6.25 = 6.25\,\text{mJ}$
$C_1 = 2\,\mu\text{F}$ と $C_2 = 4\,\mu\text{F}$ のコンデンサーを直列に接続し、$60\,\text{V}$ の電池で充電した後、電池を外した。その後、$C_2$ の両端を導線で接続した($C_2$ を短絡した)。十分に時間が経った後について答えよ。
(1) 短絡前の各コンデンサーの電荷と電圧を求めよ。
(2) 短絡後の $C_1$ の電荷と電圧を求めよ。
(1) 各コンデンサー:$Q = 80\,\mu\text{C}$、$V_1 = 40\,\text{V}$、$V_2 = 20\,\text{V}$
(2) $Q_1 = 80\,\mu\text{C}$、$V_1 = 40\,\text{V}$
(1) 直列の合成容量:$C = \dfrac{2 \times 4}{2 + 4} = \dfrac{4}{3}\,\mu\text{F}$
$Q = CV = \dfrac{4}{3} \times 60 = 80\,\mu\text{C}$
$V_1 = Q/C_1 = 80/2 = 40\,\text{V}$、$V_2 = Q/C_2 = 80/4 = 20\,\text{V}$
(2) $C_2$ を短絡すると、$C_2$ の電圧はゼロになるが、$C_1$ の電荷は $C_1$ の極板にあるため変化しない($C_2$ の短絡は $C_1$ の孤立部分の電荷に影響しない)。
よって $Q_1 = 80\,\mu\text{C}$、$V_1 = 40\,\text{V}$ のまま。
$C_1 = 3\,\mu\text{F}$、$C_2 = 6\,\mu\text{F}$ のコンデンサーをそれぞれ $30\,\text{V}$、$60\,\text{V}$ で個別に充電した後、電池を外し、正極板どうしを接続し、負極板どうしを接続した。十分に時間が経った後について答えよ。
(1) 接続後の共通電圧を求めよ。
(2) 各コンデンサーの電荷を求めよ。
(3) 接続前後で散逸したエネルギーを求めよ。
(1) $50\,\text{V}$
(2) $Q_1 = 150\,\mu\text{C}$、$Q_2 = 300\,\mu\text{C}$
(3) $\Delta U = 0.60\,\text{mJ}$
初期電荷:$Q_{10} = C_1 \times 30 = 90\,\mu\text{C}$、$Q_{20} = C_2 \times 60 = 360\,\mu\text{C}$
正極板どうしを接続するので電荷保存:$Q_1 + Q_2 = 90 + 360 = 450\,\mu\text{C}$
(1) 平衡後は電圧が等しい:$V = \dfrac{Q_1 + Q_2}{C_1 + C_2} = \dfrac{450}{3 + 6} = 50\,\text{V}$
(2) $Q_1 = C_1 V = 3 \times 50 = 150\,\mu\text{C}$、$Q_2 = C_2 V = 6 \times 50 = 300\,\mu\text{C}$
(3) $U_i = \frac{1}{2} \times 3 \times 30^2 + \frac{1}{2} \times 6 \times 60^2 = 1350 + 10800 = 12150\,\mu\text{J} = 12.15\,\text{mJ}$
$U_f = \frac{1}{2}(3 + 6) \times 50^2 = 11250\,\mu\text{J} = 11.25\,\text{mJ}$ ($\frac{1}{2} \times 9 \times 2500$)
$\Delta U = 12.15 - 11.25 = 0.90\,\text{mJ}$
(注:$U_i$ の再計算 $= \frac{1}{2} \times 3 \times 10^{-6} \times 900 + \frac{1}{2} \times 6 \times 10^{-6} \times 3600 = 1.35 + 10.80 = 12.15\,\text{mJ}$)
$\Delta U = 12.15 - 11.25 = 0.90\,\text{mJ}$