「1.5 V」と書かれた乾電池に豆電球をつなぐと、実際に電球にかかる電圧は 1.5 V より少し低くなります。
なぜでしょうか?
その原因は、電池の内部にある小さな抵抗──内部抵抗です。
電流が流れると内部抵抗で電圧が「食われ」、端子に現れる電圧(端子電圧)は起電力より小さくなります。
理想的な電池は、常に一定の起電力 $E$ を供給します。 しかし現実の電池には、電解液やイオンの移動に伴う抵抗が存在します。 これを内部抵抗 $r$と呼びます。
内部抵抗は電池の「中」にある抵抗なので、外から直接見ることはできません。 しかし、その効果は端子電圧の低下として明確に現れます。
実際の電池は、起電力 $E$ の理想電源と内部抵抗 $r$が直列に接続されたものとしてモデル化できます。
このモデルを使えば、キルヒホッフの法則をそのまま適用できます。 内部抵抗は「電池の中にある普通の抵抗」として扱うだけです。
起電力 $E$、内部抵抗 $r$ の電池に外部抵抗 $R$ を接続し、電流 $I$ が流れているとします。
放電時(電流を供給するとき)
$$V = E - Ir$$
充電時(電流を受け取るとき)
$$V = E + Ir$$
キルヒホッフの第二法則を閉回路に適用します。
$$E = Ir + IR$$
端子電圧は外部抵抗の両端の電圧なので $V = IR$ です。よって、
$$V = IR = E - Ir$$
また、電流は $I = \dfrac{E}{R + r}$ なので、
$$V = E - \frac{Er}{R + r} = \frac{ER}{R + r}$$
✕ 誤:「1.5 V の電池だから、つねに 1.5 V が得られる」
○ 正:端子電圧は $V = E - Ir$ で、電流が流れるほど低下する
端子電圧が起電力と等しいのは、$I = 0$(開放状態)のときだけです。
| 状態 | 電流 | 端子電圧 |
|---|---|---|
| 開放(何もつながない) | $I = 0$ | $V = E$ |
| 外部抵抗 $R$ を接続 | $I = \dfrac{E}{R+r}$ | $V = E - Ir = \dfrac{ER}{R+r}$ |
| 短絡($R = 0$) | $I = \dfrac{E}{r}$ | $V = 0$ |
✕ 誤:短絡しても起電力は $E$ だから端子電圧も $E$
○ 正:短絡時は $R = 0$ なので $V = IR = 0$。起電力はすべて内部抵抗で消費される
端子電圧 $V$ と電流 $I$ の関係をグラフにすると、$V = E - Ir$ は右下がりの直線になります。
実験で $V$ と $I$ を測定し、グラフにプロットすると直線が得られます。 この直線の$V$ 切片が起電力 $E$、傾きの絶対値が内部抵抗 $r$です。
これは入試で非常によく出題されるパターンです。グラフから $E$ と $r$ を読み取れるようにしましょう。
外部抵抗 $R$ を変えながら電圧計で端子電圧 $V$ を、電流計で電流 $I$ を測定します。
得られた $(I, V)$ のデータ点を最小二乗法でフィッティングすると、 $V = E - Ir$ の $E$ と $r$ が精度よく求まります。
外部抵抗 $R$ で消費される電力 $P$ は、
$$P = I^2 R = \left(\frac{E}{R+r}\right)^2 R = \frac{E^2 R}{(R+r)^2}$$
$P$ が最大になる条件を求めると、$R = r$ のとき $P$ は最大値 $\dfrac{E^2}{4r}$ をとります。
$P = \dfrac{E^2 R}{(R+r)^2}$ を $R$ で微分して 0 とおくか、あるいは相加平均・相乗平均の関係を使います。
$(R + r)^2 = R^2 + 2Rr + r^2$ を使って、
$$\frac{(R+r)^2}{R} = R + 2r + \frac{r^2}{R} \geq 2r + 2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}} = 2r + 2r = 4r$$
等号成立条件は $R = \dfrac{r^2}{R}$、すなわち $R = r$ です。
このとき $P_{\max} = \dfrac{E^2}{4r}$
外部抵抗で消費される電力が最大になるのは
$$R = r \quad \text{(外部抵抗 = 内部抵抗)}$$
のとき。最大電力は
$$P_{\max} = \frac{E^2}{4r}$$
$R = r$ のとき電力は最大ですが、エネルギー効率は $50\%$ です。 電池のエネルギーの半分は内部抵抗で熱として失われます。
効率を上げたければ $R \gg r$ にすればよいですが、このとき電力は小さくなります。 「最大電力」と「高効率」はトレードオフの関係にあります。
内部抵抗は回路問題全体に影響する重要な概念です。
Q1. 起電力 $1.5\,\text{V}$、内部抵抗 $0.5\,\Omega$ の電池から $1\,\text{A}$ 流れているとき、端子電圧はいくらですか。
Q2. 端子電圧が起電力と等しくなるのは、どのような場合ですか。
Q3. V-I グラフの傾きの絶対値は何を表しますか。
Q4. 外部抵抗での消費電力を最大にするには、$R$ をいくらにすればよいですか。
電池の内部抵抗に関する入試形式の問題を解きましょう。
起電力 $E = 6.0\,\text{V}$、内部抵抗 $r = 1.0\,\Omega$ の電池に外部抵抗 $R = 5.0\,\Omega$ を接続した。
(1) 回路を流れる電流 $I$ を求めよ。
(2) 端子電圧 $V$ を求めよ。
(1) $I = 1.0\,\text{A}$
(2) $V = 5.0\,\text{V}$
(1) $I = \dfrac{E}{R + r} = \dfrac{6.0}{5.0 + 1.0} = 1.0\,\text{A}$
(2) $V = E - Ir = 6.0 - 1.0 \times 1.0 = 5.0\,\text{V}$
ある電池の端子電圧 $V$ と電流 $I$ の関係を測定したところ、$I = 0.5\,\text{A}$ のとき $V = 2.8\,\text{V}$、$I = 1.5\,\text{A}$ のとき $V = 2.4\,\text{V}$ であった。
(1) この電池の起電力 $E$ を求めよ。
(2) 内部抵抗 $r$ を求めよ。
(3) 短絡電流を求めよ。
(1) $E = 3.0\,\text{V}$
(2) $r = 0.4\,\Omega$
(3) $I_{\text{短絡}} = 7.5\,\text{A}$
$V = E - Ir$ の直線関係を利用する。
(2) 傾き $= -r = \dfrac{2.4 - 2.8}{1.5 - 0.5} = \dfrac{-0.4}{1.0} = -0.4$ → $r = 0.4\,\Omega$
(1) $2.8 = E - 0.5 \times 0.4 = E - 0.2$ → $E = 3.0\,\text{V}$
(3) $I_{\text{短絡}} = \dfrac{E}{r} = \dfrac{3.0}{0.4} = 7.5\,\text{A}$
起電力 $E = 12\,\text{V}$、内部抵抗 $r = 3\,\Omega$ の電池に可変抵抗 $R$ を接続した。
(1) $R$ で消費される電力 $P$ を $R$ の関数として表せ。
(2) $P$ が最大になる $R$ の値を求め、そのときの最大電力を計算せよ。
(3) $R = r$ のときの電池全体の効率を求めよ。
(1) $P = \dfrac{144R}{(R+3)^2}$ [W]
(2) $R = 3\,\Omega$ のとき $P_{\max} = 12\,\text{W}$
(3) 効率 $50\%$
(1) $I = \dfrac{E}{R+r} = \dfrac{12}{R+3}$ より、$P = I^2 R = \dfrac{144R}{(R+3)^2}$
(2) 相加平均・相乗平均の不等式より $R = r = 3\,\Omega$ のとき最大。
$P_{\max} = \dfrac{144 \times 3}{(3+3)^2} = \dfrac{432}{36} = 12\,\text{W}$
(3) 電池の総出力 $P_{\text{total}} = EI = 12 \times 2 = 24\,\text{W}$
効率 $= \dfrac{P}{P_{\text{total}}} = \dfrac{12}{24} = 0.50 = 50\%$