第23章で学んだキルヒホッフの法則、内部抵抗、ホイートストンブリッジ、メートルブリッジ、
電位降下法、非線形素子の知識を総合的に組み合わせた演習問題です。
大学入試では複数の概念を融合した出題が多く、個々の知識を「使いこなす力」が問われます。
入試の直流回路問題に取り組む際、次のステップを順番に確認することで、 見落としなく解答できます。
Step 1 ─ 回路の構造を把握する
直列・並列・ブリッジなど、回路のトポロジーを見極めます。
Step 2 ─ 電流の向きを仮定する
分岐がある場合は各枝に電流変数($I_1, I_2, \ldots$)を置きます。
Step 3 ─ キルヒホッフの法則で立式する
第一法則(節点)と第二法則(閉路)から連立方程式を作ります。
Step 4 ─ 特殊条件を確認する
ブリッジ平衡条件、内部抵抗の有無、非線形素子の有無を確認します。
Step 5 ─ 答えの吟味をする
電流の正負、電力の符号、単位の整合性をチェックします。
| 回路の特徴 | 最適な解法 | 参照 |
|---|---|---|
| 直列・並列のみ | 合成抵抗 → オームの法則 | E-4-1, E-4-2 |
| 2電池・多ループ | キルヒホッフの連立方程式 | E-4-3 |
| 電池の内部抵抗あり | $V = E - Ir$ で端子電圧を求める | E-4-4 |
| 4辺のブリッジ構造 | ホイートストンブリッジの平衡条件 | E-4-5 |
| 一様な抵抗線を使う測定 | メートルブリッジの比例式 | E-4-6 |
| 起電力の精密測定 | 電位降下法(ポテンショメーター) | E-4-7 |
| ダイオード・電球を含む | V-I 特性グラフ(負荷線法) | E-4-8 |
✕ 誤:内部抵抗を無視して計算し、端子電圧と起電力を同一視する
◯ 正:「内部抵抗 $r$」と書かれたら必ず $V = E - Ir$ を使う。 問題文に「内部抵抗は無視できる」と明記されている場合のみ $V = E$ とする。
大学入試で出題頻度の高い、複数テーマを融合した出題パターンを整理します。
内部抵抗をもつ複数の電池が接続された回路は、最頻出の融合テーマです。
起電力 $E_1$(内部抵抗 $r_1$)と $E_2$(内部抵抗 $r_2$)が外部抵抗 $R$ に接続されている場合:
並列接続のときの端子電圧 $V$:
$$V = \frac{E_1 r_2 + E_2 r_1}{r_1 + r_2}$$
(外部抵抗 $R \to \infty$ すなわち開放時。$R$ が有限の場合は $V = \dfrac{\dfrac{E_1}{r_1} + \dfrac{E_2}{r_2}}{\dfrac{1}{r_1} + \dfrac{1}{r_2} + \dfrac{1}{R}}$ )
ホイートストンブリッジに内部抵抗のある電池を接続した場合、 平衡条件 $R_1 R_4 = R_2 R_3$ は内部抵抗に依存しません。 これは平衡時に検流計に電流が流れず、電池から見た回路全体の電流分布だけで平衡が決まるためです。
「ブリッジ平衡条件に内部抵抗は影響しない」ことを問う問題が頻出します。 理由を説明させる記述問題も出るので、「平衡時は検流計の電流がゼロ → ブリッジ部分だけで電位差の条件が閉じる」と答えられるようにしましょう。
実験問題では、接触抵抗(導線とクリップの接続部分の抵抗)が測定値に与える影響を問われることがあります。 接触抵抗が標準抵抗 $R_s$ と同じ辺に直列に入ると、 見かけの $R_s$ が大きくなり、測定値 $R_x$ が小さく出てしまいます。
ポテンショメーターを使って未知電池の起電力と内部抵抗の両方を求める問題があります。
1. まず未知電池 $E_x$ を開放(無負荷)でポテンショメーターに接続し、 平衡長 $l_0$ を求めます。このとき $E_x = k l_0$($k$:単位長さあたりの電位降下)。
2. 次に未知電池に既知の外部抵抗 $R$ を接続し、 再びポテンショメーターで端子電圧 $V$ を測定して平衡長 $l_1$ を求めます。$V = k l_1$。
3. $V = E_x - I r = E_x \dfrac{R}{R + r}$ より:
$$r = R \left( \frac{l_0}{l_1} - 1 \right) = R \cdot \frac{l_0 - l_1}{l_1}$$
電球やダイオードを含む回路でキルヒホッフの法則を適用する場合、 オームの法則が成り立たないため、V-I 特性グラフと負荷線の交点から解を求めます。
✕ 誤:電球の抵抗を一定とみなして連立方程式を立てる
◯ 正:キルヒホッフの第二法則から負荷線の式 $V = E - IR$ を導き、 V-I 特性曲線との交点をグラフ上で読み取る
Q1. 起電力 $E = 6\,\text{V}$、内部抵抗 $r = 2\,\Omega$ の電池に外部抵抗 $R = 4\,\Omega$ を接続した。端子電圧はいくらか。
Q2. ホイートストンブリッジで $R_1 = 100\,\Omega$、$R_2 = 200\,\Omega$、$R_3 = 150\,\Omega$ のとき、平衡条件を満たす $R_4$ を求めよ。
Q3. メートルブリッジで既知抵抗 $R_s = 30\,\Omega$ を接続し、平衡点が左端から $40\,\text{cm}$ の位置であった。未知抵抗 $R_x$ を求めよ。
Q4. ポテンショメーターで標準電池 $E_s = 1.5\,\text{V}$ のとき平衡長が $75\,\text{cm}$、未知電池のとき平衡長が $60\,\text{cm}$ であった。未知電池の起電力 $E_x$ を求めよ。
Q5. 非線形素子の V-I 特性グラフにおいて、回路の電圧方程式 $V = E - IR$ をグラフ上に描いた直線を何と呼ぶか。
起電力 $E_1 = 12\,\text{V}$(内部抵抗 $r_1 = 1\,\Omega$)の電池と 起電力 $E_2 = 6\,\text{V}$(内部抵抗 $r_2 = 2\,\Omega$)の電池が 外部抵抗 $R = 3\,\Omega$ に対して直列に接続されている(同じ向きに起電力を生じる接続)。
(1) 回路に流れる電流 $I$ を求めよ。
(2) 外部抵抗 $R$ の両端の電圧 $V_R$ を求めよ。
(3) 電池 $E_2$ の端子電圧 $V_2$ を求めよ。
(1) $I = 3\,\text{A}$
(2) $V_R = 9\,\text{V}$
(3) $V_2 = 0\,\text{V}$(端子電圧はゼロではなく、実質的にこの電池は起電力を生じている)→ 正しくは下記参照
(1) 直列接続なので起電力は $E_1 + E_2 = 12 + 6 = 18\,\text{V}$、 内部抵抗の合計は $r_1 + r_2 = 1 + 2 = 3\,\Omega$。
$$I = \frac{E_1 + E_2}{R + r_1 + r_2} = \frac{18}{3 + 3} = 3\,\text{A}$$
(2) $V_R = IR = 3 \times 3 = 9\,\text{V}$
(3) 電池 $E_2$ の端子電圧は、放電中なので:
$$V_2 = E_2 - Ir_2 = 6 - 3 \times 2 = 0\,\text{V}$$
端子電圧がゼロになるということは、$E_2$ の起電力がすべて自身の内部抵抗での電圧降下に使われてしまい、 外部への電圧供給がゼロであることを意味します。
メートルブリッジを用いて未知抵抗 $R_x$ を測定する実験を行った。 標準抵抗 $R_s = 50\,\Omega$ を使用し、平衡点は抵抗線の左端から $l_1 = 40\,\text{cm}$ の位置であった。抵抗線の全長は $100\,\text{cm}$ とする。
(1) 未知抵抗 $R_x$ を求めよ。
(2) 使用した電池の内部抵抗が $r = 1\,\Omega$ であるとき、この内部抵抗は 測定値 $R_x$ に影響するか。理由とともに答えよ。
(3) 実際の実験では、接続部分に接触抵抗 $R_c = 0.5\,\Omega$ が $R_s$ 側に直列に入っていたとする。 真の $R_x$ に比べて測定値はどのようにずれるか答えよ。
(1) $R_x = \dfrac{100}{3}\,\Omega \approx 33.3\,\Omega$
(2) 影響しない。平衡時は検流計に電流が流れないため、電池の内部抵抗はブリッジの平衡条件に関与しない。
(3) 測定値は真の値よりも小さくなる。
(1) メートルブリッジの平衡条件:
$$\frac{R_x}{R_s} = \frac{l_1}{l_2} = \frac{l_1}{100 - l_1}$$
$$R_x = R_s \cdot \frac{l_1}{100 - l_1} = 50 \times \frac{40}{60} = \frac{100}{3} \approx 33.3\,\Omega$$
(2) ホイートストンブリッジ(メートルブリッジ)の平衡条件は $R_1 R_4 = R_2 R_3$ で決まります。 平衡時は検流計に電流が流れないので、電池から流れ出す電流は ブリッジの上辺と下辺にそれぞれ分かれますが、 平衡条件は各辺の抵抗比だけで決まります。 電池の内部抵抗 $r$ は回路全体の電流を変化させますが、 平衡点の位置には影響しません。
(3) $R_s$ 側に接触抵抗 $R_c$ が入ると、実効的に $R_s' = R_s + R_c = 50.5\,\Omega$ になります。 平衡条件から求まる値は:
$$R_x' = R_s' \cdot \frac{l_1}{l_2} = 50.5 \times \frac{40}{60} \approx 33.7\,\Omega$$
しかし、これは接触抵抗を含む見かけの $R_s'$ を使って計算した値です。 実験者は $R_s = 50\,\Omega$ と思って計算するので:
平衡点は接触抵抗なしの場合と異なる位置にずれます。 $R_s$ 側の実効抵抗が大きくなるので、$R_x$ 側の平衡長 $l_1$ が短くなり、 $R_x = R_s \cdot \dfrac{l_1'}{100 - l_1'}$ の計算結果が 真の値よりも小さく出ます。
ポテンショメーターを用いて未知電池の起電力と内部抵抗を測定する実験を行った。 一様な抵抗線(全長 $L = 100\,\text{cm}$)に補助電池(起電力十分大、内部抵抗無視)から 一定電流を流している。標準電池の起電力は $E_s = 1.50\,\text{V}$ である。
(1) 標準電池を接続したとき、平衡長が $l_s = 75.0\,\text{cm}$ であった。 抵抗線の単位長さあたりの電位降下 $k$($\text{V/cm}$)を求めよ。
(2) 未知電池を開放(無負荷)で接続したとき、平衡長が $l_0 = 60.0\,\text{cm}$ であった。 未知電池の起電力 $E_x$ を求めよ。
(3) 未知電池に $R = 10\,\Omega$ の外部抵抗を接続した状態で ポテンショメーターに接続したところ、平衡長が $l_1 = 48.0\,\text{cm}$ であった。 未知電池の内部抵抗 $r$ を求めよ。
(4) この実験で電圧計を使わずポテンショメーターを用いる利点を簡潔に述べよ。
(1) $k = 0.020\,\text{V/cm}$
(2) $E_x = 1.20\,\text{V}$
(3) $r = 2.5\,\Omega$
(4) ポテンショメーターは平衡時に被測定電池から電流を取り出さないため、 内部抵抗による電圧降下がなく、起電力を正確に測定できる。
(1) 標準電池で平衡が成り立つとき:$E_s = k \cdot l_s$
$$k = \frac{E_s}{l_s} = \frac{1.50}{75.0} = 0.020\,\text{V/cm}$$
(2) 未知電池を開放(電流ゼロ)で接続したとき、端子電圧=起電力なので:
$$E_x = k \cdot l_0 = 0.020 \times 60.0 = 1.20\,\text{V}$$
(3) 外部抵抗 $R$ を接続したとき、未知電池には電流 $I = \dfrac{E_x}{R + r}$ が流れ、 端子電圧は $V = E_x - Ir = E_x \cdot \dfrac{R}{R + r}$ となります。
ポテンショメーターの平衡条件より $V = k \cdot l_1$:
$$E_x \cdot \frac{R}{R + r} = k \cdot l_1$$
$E_x = k \cdot l_0$ を代入:
$$k \cdot l_0 \cdot \frac{R}{R + r} = k \cdot l_1$$
$$\frac{l_0 \cdot R}{R + r} = l_1$$
$$R + r = \frac{l_0 \cdot R}{l_1}$$
$$r = R \left( \frac{l_0}{l_1} - 1 \right) = R \cdot \frac{l_0 - l_1}{l_1}$$
$$r = 10 \times \frac{60.0 - 48.0}{48.0} = 10 \times \frac{12.0}{48.0} = 10 \times 0.25 = 2.5\,\Omega$$
(4) 電圧計は内部抵抗が有限であるため、接続すると回路から電流が流れ、 被測定電池の内部抵抗での電圧降下が生じて、測定値は起電力より小さくなります。 ポテンショメーターは零位法(平衡時に被測定回路から電流を取り出さない方法)であるため、 $V = E$(端子電圧=起電力)の状態で測定でき、正確な起電力が得られます。