抵抗・コイル・コンデンサーの3素子を直列に接続すると、交流回路の集大成ともいえる振る舞いが現れます。
コイルとコンデンサーのリアクタンスが打ち消し合う特別な周波数では、電流が最大になる ── これが共振です。
ラジオの選局も、この共振現象を利用しています。
抵抗 $R$、自己インダクタンス $L$ のコイル、電気容量 $C$ のコンデンサーを直列に接続し、交流電圧を加えます。 直列回路では同じ電流 $i$ が全素子を流れますが、各素子の電圧は位相がずれています。
抵抗の電圧は電流と同位相、コイルの電圧は電流より $\dfrac{\pi}{2}$ 進み、コンデンサーの電圧は電流より $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れます。 これらを単純に足し算するのではなく、ベクトル的に合成する必要があります。
$$Z = \sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2} = \sqrt{R^2 + \left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)^2}$$
電流を基準にとると、各素子の電圧の実効値は $V_R = I_e R$、$V_L = I_e X_L$、$V_C = I_e X_C$。
$V_R$ は電流と同位相、$V_L$ は $\dfrac{\pi}{2}$ 進み、$V_C$ は $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れます。
$V_L$ と $V_C$ は互いに逆向きなので、差 $|V_L - V_C| = I_e|X_L - X_C|$ が実質的なリアクタンス成分です。
$V_R$ とリアクタンス成分は直交するので、ピタゴラスの定理より、
$$V_e = I_e\sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2} = I_e Z$$
✕ 誤:$V = V_R + V_L + V_C$(単純な足し算)
○ 正:$V = \sqrt{V_R^2 + (V_L - V_C)^2}$(位相を考慮したベクトル合成)
各素子の電圧は位相が異なるため、同時刻の瞬時値を足す場合を除き、実効値を単純に足してはいけません。
電流 $i = I_0\sin\omega t$ を基準にとったとき、各電圧は次のようになります。
電源電圧と電流の間の位相差 $\phi$ は、
$$\tan\phi = \frac{X_L - X_C}{R} = \frac{\omega L - \dfrac{1}{\omega C}}{R}$$
コイルの電圧とコンデンサーの電圧は位相が正反対($\dfrac{\pi}{2}$ 進みと $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れ)なので、互いに打ち消し合います。
インピーダンスに現れるのは差 $|X_L - X_C|$ です。この差がゼロになるとき、回路は純粋な抵抗回路のように振る舞い、電流が最大になります。
$X_L = X_C$ となる周波数で、インピーダンスは最小値 $Z = R$ をとり、電流は最大になります。 これが共振(共鳴)です。
$X_L = X_C$ すなわち $\omega L = \dfrac{1}{\omega C}$ より、
$$\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}} \quad \Longleftrightarrow \quad f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$
✕ 誤:共振時はコイルとコンデンサーの電圧がゼロになる
○ 正:$V_L$ と $V_C$ はそれぞれ大きな値を取りうるが、位相が逆なので合成するとゼロになる。個々の電圧は電源電圧より大きくなることもある
共振時に $V_L = V_C = I_e X_L = I_e X_C$ であり、これが $V_e$ を超えることもあります(電圧の共振増幅)。
共振時、コイルとコンデンサーの間で電磁エネルギーが行き来します。コイルの磁場エネルギーが最大のときコンデンサーの電場エネルギーはゼロ、その逆も然りです。
このエネルギーの往復が電源の周波数とぴったり一致するとき、電源は抵抗で消費される分だけエネルギーを供給すればよく、最も効率よく電流が流れるのです。
AMラジオの選局ダイヤルは、内部のコンデンサーの容量 $C$ を変えることで共振周波数 $f_0 = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ を変化させています。
アンテナが受信するさまざまな周波数の電波のうち、共振周波数に近い周波数だけが大きな電流を生じ、その局の放送だけが選択的に増幅されます。
RLC直列回路の平均消費電力は、抵抗分のみで決まります。
$$\overline{P} = I_e^2 R = V_e I_e \cos\phi$$
力率 $\cos\phi$ は「電源が供給するエネルギーのうち、実際に消費される割合」を表します。 共振時は $\phi = 0$、$\cos\phi = 1$ で、電源のエネルギーが100%消費に使われます。
✕ 誤:$\overline{P} = V_e I_e$(常に)
○ 正:$\overline{P} = V_e I_e \cos\phi = I_e^2 R$。$V_e I_e$ は皮相電力であり、力率をかけないと実際の消費電力にならない
ただし共振時($\cos\phi = 1$)や純抵抗回路では $\overline{P} = V_e I_e$ が成り立ちます。
RLC直列回路は交流回路の集大成です。ここまでの知識がすべて統合されます。
Q1. インピーダンスの公式を書き、各記号の意味を説明してください。
Q2. 共振周波数を求める公式を書いてください。
Q3. 共振時のインピーダンスと位相差はそれぞれいくらですか。
Q4. 力率とは何か、定義を述べてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
$R = 30\,\Omega$、$L = \dfrac{0.4}{\pi}\,\text{H}$、$C = \dfrac{1}{4000\pi}\,\text{F}$ の RLC 直列回路に、実効値 $100\,\text{V}$、周波数 $50\,\text{Hz}$ の交流電源を接続した。次の問いに答えよ。
(1) $X_L$ と $X_C$ を求めよ。
(2) インピーダンス $Z$ を求めよ。
(3) 電流の実効値を求めよ。
(1) $X_L = 40\,\Omega$、$X_C = 40\,\Omega$
(2) $Z = 30\,\Omega$
(3) $I_e \approx 3.33\,\text{A}$
$\omega = 2\pi \times 50 = 100\pi\,\text{rad/s}$
(1) $X_L = \omega L = 100\pi \times \dfrac{0.4}{\pi} = 40\,\Omega$
$X_C = \dfrac{1}{\omega C} = \dfrac{1}{100\pi \times \dfrac{1}{4000\pi}} = \dfrac{4000\pi}{100\pi} = 40\,\Omega$
(2) $X_L = X_C$ なので共振状態。$Z = \sqrt{30^2 + (40 - 40)^2} = 30\,\Omega$
(3) $I_e = \dfrac{V_e}{Z} = \dfrac{100}{30} \approx 3.33\,\text{A}$
$R = 50\,\Omega$、$L = 0.10\,\text{H}$、$C = 10\,\mu\text{F}$ の RLC 直列回路がある。次の問いに答えよ。
(1) 共振周波数 $f_0$ を求めよ。
(2) 共振時に実効値 $50\,\text{V}$ の交流電源を接続したとき、電流の実効値を求めよ。
(3) 共振時のコイルとコンデンサーそれぞれの電圧の実効値を求めよ。
(4) (3) の結果について、電源電圧との大小関係を論じよ。
(1) $f_0 \approx 159\,\text{Hz}$
(2) $I_e = 1.0\,\text{A}$
(3) $V_L = V_C = 100\,\text{V}$
(4) $V_L = V_C = 100\,\text{V}$ は電源電圧 $50\,\text{V}$ の2倍であり、電源電圧を超えている。
(1) $f_0 = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{0.10 \times 10 \times 10^{-6}}} = \dfrac{1}{2\pi \times 10^{-3}} = \dfrac{1000}{2\pi} \approx 159\,\text{Hz}$
(2) 共振時 $Z = R = 50\,\Omega$ より $I_e = \dfrac{50}{50} = 1.0\,\text{A}$
(3) $\omega_0 = 2\pi f_0 = \dfrac{1}{\sqrt{LC}} = 1000\,\text{rad/s}$
$X_L = \omega_0 L = 1000 \times 0.10 = 100\,\Omega$。$V_L = I_e X_L = 1.0 \times 100 = 100\,\text{V}$
$V_C = I_e X_C = I_e \times \dfrac{1}{\omega_0 C} = 1.0 \times 100 = 100\,\text{V}$
(4) 共振時は $V_L$ と $V_C$ が位相逆転で打ち消し合うため、電源は $V_R = 50\,\text{V}$ だけ供給すればよい。しかし個別に見ると $V_L = V_C = 100\,\text{V}$ で電源電圧を超えている。これが共振による電圧増幅。
$R = 100\,\Omega$、$L = \dfrac{1}{\pi}\,\text{H}$、$C = \dfrac{1}{4000\pi}\,\text{F}$ の RLC 直列回路に実効値 $100\,\text{V}$ の交流電源を接続する。周波数を変えて以下の問いに答えよ。
(1) $f = 50\,\text{Hz}$ のとき、$X_L$、$X_C$、$Z$、$I_e$ を求めよ。
(2) 共振周波数 $f_0$ を求めよ。
(3) 共振時の電流の実効値と、$f = 50\,\text{Hz}$ のときの電流の比を求めよ。
(1) $X_L = 100\,\Omega$、$X_C = 40\,\Omega$、$Z \approx 117\,\Omega$、$I_e \approx 0.855\,\text{A}$
(2) $f_0 \approx 31.8\,\text{Hz}$
(3) 共振時 $I_{e0} = 1.0\,\text{A}$、比 $\dfrac{I_{e0}}{I_e} \approx 1.17$
(1) $\omega = 100\pi$。$X_L = 100\pi \times \dfrac{1}{\pi} = 100\,\Omega$。$X_C = \dfrac{1}{100\pi \times \dfrac{1}{4000\pi}} = 40\,\Omega$
$Z = \sqrt{100^2 + (100 - 40)^2} = \sqrt{10000 + 3600} = \sqrt{13600} \approx 117\,\Omega$
$I_e = \dfrac{100}{117} \approx 0.855\,\text{A}$
(2) $f_0 = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{\dfrac{1}{\pi} \times \dfrac{1}{4000\pi}}} = \dfrac{1}{2\pi \times \dfrac{1}{20\pi}} = \dfrac{20\pi}{2\pi} = 10\,\text{Hz}$
(計算を確認)$\sqrt{LC} = \sqrt{\dfrac{1}{4000\pi^2}} = \dfrac{1}{20\pi\sqrt{10}}$、$f_0 = \dfrac{20\pi\sqrt{10}}{2\pi} = 10\sqrt{10} \approx 31.6\,\text{Hz}$
(3) 共振時 $I_{e0} = \dfrac{V_e}{R} = \dfrac{100}{100} = 1.0\,\text{A}$、$\dfrac{I_{e0}}{I_e} = \dfrac{1.0}{0.855} \approx 1.17$