変化する電場が磁場を生み、変化する磁場が電場を生む ── この連鎖が空間を伝わっていくのが電磁波です。
マクスウェルが理論的に予言し、ヘルツが実験で証明したこの波は、真空中を光速 $c$ で伝わります。
そう、光も電磁波の一種なのです。
マクスウェルは、ファラデーの電磁誘導の法則とアンペールの法則を統一的にまとめ、さらに変位電流の概念を導入しました。 その結果、電場と磁場の変動が互いを生み出しながら空間を伝搬する波 ── 電磁波 ── の存在を理論的に予言したのです。
コイル $L$ とコンデンサー $C$ からなる振動回路では、電場のエネルギー(コンデンサー)と磁場のエネルギー(コイル)が交互に入れ替わります。 この振動の周波数は $f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ です。
振動回路に接続されたアンテナから、この振動と同じ周波数の電磁波が放射されます。 これがラジオやテレビの送信の基本原理です。
変動する電場が磁場を生み、その変動する磁場がさらに電場を生む ── この連鎖反応が次々と空間に広がっていくのが電磁波です。
電磁波の伝搬には媒質が不要です。真空中でも伝わるため、太陽の光(電磁波)は宇宙空間を横切って地球に届きます。
速度:$$c = f\lambda = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$$
真空中の光速:$$c = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}}$$
✕ 誤:電磁波は音波のような縦波である
○ 正:電磁波は横波。電場と磁場が進行方向に垂直に振動する
音波は媒質の疎密波(縦波)ですが、電磁波は電場・磁場の振動(横波)です。偏光現象が起こるのは横波だからこそです。
マクスウェルは1865年に理論的に電磁波の存在を予言し、その速度が光速に一致することから「光は電磁波の一種である」と結論づけました。
1888年にヘルツが火花放電を利用して電磁波の発生と検出に成功し、マクスウェルの理論を実験的に証明しました。 ヘルツの実験は、電磁波が反射・屈折・干渉・偏光などの波の性質をもつことも示しました。
電磁波は波長(周波数)によって分類されます。すべて同じ物理現象ですが、波長によって性質や用途が大きく異なります。
| 種類 | 波長の目安 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|
| 電波 | $1\,\text{mm}$ 以上 | 通信(ラジオ、テレビ、携帯電話、Wi-Fi) |
| マイクロ波 | $1\,\text{mm}$ 〜 $30\,\text{cm}$ | 電子レンジ、レーダー、衛星通信 |
| 赤外線 | $0.7\,\mu\text{m}$ 〜 $1\,\text{mm}$ | 熱放射、リモコン、暗視カメラ |
| 可視光 | $380$ 〜 $770\,\text{nm}$ | 人間の目で見える光。赤〜紫 |
| 紫外線 | $10$ 〜 $380\,\text{nm}$ | 殺菌、日焼け、蛍光 |
| X線 | $0.01$ 〜 $10\,\text{nm}$ | 医療画像(レントゲン)、結晶構造解析 |
| ガンマ線 | $0.01\,\text{nm}$ 以下 | 原子核反応、がん治療 |
電波も光もX線もガンマ線も、すべて電場と磁場の振動が伝搬する電磁波です。 違いは波長(周波数)だけであり、すべて真空中を光速 $c$ で伝わります。
波長が短い(周波数が高い)ほど1光子あたりのエネルギー $E = hf$ が大きくなり、物質への影響が強くなります。
✕ 誤:赤外線やX線は光とは別のもの
○ 正:赤外線もX線も電磁波であり、可視光と物理的に同じ本質をもつ。人間の目が感知できる波長範囲を「可視光」と呼んでいるだけ
電磁波は電磁気学の最終到達点であり、光学への橋渡しでもあります。
Q1. 電磁波は縦波ですか、横波ですか。理由とともに答えてください。
Q2. 周波数 $6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$ の電磁波の波長を求めてください。
Q3. 電磁波が真空中を伝搬できる理由を簡潔に述べてください。
Q4. 電磁波のスペクトルにおいて、波長が短い順に3つ挙げてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
次の各電磁波について、波長または周波数を求めよ。光速を $c = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$ とする。
(1) 周波数 $1.0 \times 10^{6}\,\text{Hz}$(AMラジオ)の波長
(2) 波長 $500\,\text{nm}$(緑色光)の周波数
(3) 波長 $0.010\,\text{nm}$(X線)の周波数
(1) $\lambda = 300\,\text{m}$
(2) $f = 6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$
(3) $f = 3.0 \times 10^{19}\,\text{Hz}$
(1) $\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{1.0 \times 10^6} = 300\,\text{m}$
(2) $f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{500 \times 10^{-9}} = 6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$
(3) $f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{0.010 \times 10^{-9}} = 3.0 \times 10^{19}\,\text{Hz}$
$L = 1.0\,\text{mH}$、$C = 1.0\,\text{nF}$ の LC 振動回路から発生する電磁波について、次の問いに答えよ。
(1) 振動の周波数を求めよ。
(2) 発生する電磁波の波長を求めよ。
(3) この電磁波はスペクトルのどの領域に属するか。
(1) $f \approx 1.6 \times 10^5\,\text{Hz} = 160\,\text{kHz}$
(2) $\lambda \approx 1900\,\text{m}$
(3) 電波(中波・AMラジオの帯域)
(1) $f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{1.0 \times 10^{-3} \times 1.0 \times 10^{-9}}} = \dfrac{1}{2\pi \times 10^{-6}} = \dfrac{10^6}{2\pi} \approx 1.6 \times 10^5\,\text{Hz}$
(2) $\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{1.6 \times 10^5} \approx 1900\,\text{m}$
(3) 波長が約 $1900\,\text{m}$ なので電波の領域。中波(MF帯)に属し、AMラジオ放送に使われる帯域。
電磁波に関する次の問いに答えよ。
(1) 電磁波が横波であることを示す実験的証拠を1つ挙げよ。
(2) マクスウェルが「光は電磁波である」と結論した理論的根拠を述べよ。
(3) FM ラジオ(周波数 $80\,\text{MHz}$)の電波の波長と、可視光(波長 $550\,\text{nm}$)の周波数をそれぞれ求め、両者のエネルギーの比を光子のエネルギー $E = hf$ を用いて求めよ。ただし計算結果を有効数字2桁で示せ。
(1) 偏光板を通すと特定方向の振動だけが透過する(偏光現象)
(2) 電磁波の速度を理論的に計算すると $c = \dfrac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}} \approx 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$ となり、当時測定されていた光速と一致したから
(3) FM電波の波長 $\lambda = 3.75\,\text{m}$、可視光の周波数 $f = 5.45 \times 10^{14}\,\text{Hz}$。エネルギーの比は約 $1.5 \times 10^{-7}$
(1) 偏光は横波に特有の現象。縦波では偏光は起こらない。偏光板を通過した光が特定方向にのみ振動することで横波と確認できる。
(2) マクスウェルの方程式から導かれる波動方程式の伝搬速度は $c = \dfrac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}$ であり、$\varepsilon_0$ と $\mu_0$ の測定値を代入すると当時測定されていた光速と一致した。
(3) FM電波:$\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{80 \times 10^6} = 3.75\,\text{m}$
可視光:$f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{550 \times 10^{-9}} = 5.45 \times 10^{14}\,\text{Hz}$
エネルギーの比:$\dfrac{E_{\text{FM}}}{E_{\text{光}}} = \dfrac{f_{\text{FM}}}{f_{\text{光}}} = \dfrac{80 \times 10^6}{5.45 \times 10^{14}} \approx 1.5 \times 10^{-7}$