第26章 交流と電磁波

電磁波の性質
─ 光も電磁波

変化する電場が磁場を生み、変化する磁場が電場を生む ── この連鎖が空間を伝わっていくのが電磁波です。
マクスウェルが理論的に予言し、ヘルツが実験で証明したこの波は、真空中を光速 $c$ で伝わります。
そう、光も電磁波の一種なのです。

1電磁波の発生 ─ 変動する電場と磁場

マクスウェルは、ファラデーの電磁誘導の法則とアンペールの法則を統一的にまとめ、さらに変位電流の概念を導入しました。 その結果、電場と磁場の変動が互いを生み出しながら空間を伝搬する波 ── 電磁波 ── の存在を理論的に予言したのです。

LC振動回路と電磁波

コイル $L$ とコンデンサー $C$ からなる振動回路では、電場のエネルギー(コンデンサー)と磁場のエネルギー(コイル)が交互に入れ替わります。 この振動の周波数は $f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ です。

振動回路に接続されたアンテナから、この振動と同じ周波数の電磁波が放射されます。 これがラジオやテレビの送信の基本原理です。

💡 ここが本質:電磁波は「電場と磁場のリレー」

変動する電場が磁場を生み、その変動する磁場がさらに電場を生む ── この連鎖反応が次々と空間に広がっていくのが電磁波です。

電磁波の伝搬には媒質が不要です。真空中でも伝わるため、太陽の光(電磁波)は宇宙空間を横切って地球に届きます。

2電磁波の基本的性質

📐 電磁波の基本公式

速度:$$c = f\lambda = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$$

真空中の光速:$$c = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}}$$

※ $c$:光速、$f$:周波数、$\lambda$:波長、$\varepsilon_0$:真空の誘電率、$\mu_0$:真空の透磁率

電磁波の特徴

  • 横波である:電場と磁場の振動方向が進行方向と垂直
  • 電場と磁場は互いに垂直で、どちらも進行方向に垂直
  • 真空中を伝搬できる(媒質不要)
  • 真空中での速さは周波数によらず一定($c = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$)
  • 反射・屈折・干渉・回折などの波の性質をすべてもつ
⚠️ 落とし穴:電磁波は縦波だと思う

✕ 誤:電磁波は音波のような縦波である

○ 正:電磁波は横波。電場と磁場が進行方向に垂直に振動する

音波は媒質の疎密波(縦波)ですが、電磁波は電場・磁場の振動(横波)です。偏光現象が起こるのは横波だからこそです。

🔬 深掘り:マクスウェルの予言とヘルツの実験

マクスウェルは1865年に理論的に電磁波の存在を予言し、その速度が光速に一致することから「光は電磁波の一種である」と結論づけました。

1888年にヘルツが火花放電を利用して電磁波の発生と検出に成功し、マクスウェルの理論を実験的に証明しました。 ヘルツの実験は、電磁波が反射・屈折・干渉・偏光などの波の性質をもつことも示しました。

3電磁波のスペクトル

電磁波は波長(周波数)によって分類されます。すべて同じ物理現象ですが、波長によって性質や用途が大きく異なります。

種類 波長の目安 主な用途・特徴
電波 $1\,\text{mm}$ 以上 通信(ラジオ、テレビ、携帯電話、Wi-Fi)
マイクロ波 $1\,\text{mm}$ 〜 $30\,\text{cm}$ 電子レンジ、レーダー、衛星通信
赤外線 $0.7\,\mu\text{m}$ 〜 $1\,\text{mm}$ 熱放射、リモコン、暗視カメラ
可視光 $380$ 〜 $770\,\text{nm}$ 人間の目で見える光。赤〜紫
紫外線 $10$ 〜 $380\,\text{nm}$ 殺菌、日焼け、蛍光
X線 $0.01$ 〜 $10\,\text{nm}$ 医療画像(レントゲン)、結晶構造解析
ガンマ線 $0.01\,\text{nm}$ 以下 原子核反応、がん治療
💡 ここが本質:すべて「同じ電磁波」、違うのは波長だけ

電波も光もX線もガンマ線も、すべて電場と磁場の振動が伝搬する電磁波です。 違いは波長(周波数)だけであり、すべて真空中を光速 $c$ で伝わります。

波長が短い(周波数が高い)ほど1光子あたりのエネルギー $E = hf$ が大きくなり、物質への影響が強くなります。

⚠️ 落とし穴:可視光以外の電磁波を「光ではない」と思う

✕ 誤:赤外線やX線は光とは別のもの

○ 正:赤外線もX線も電磁波であり、可視光と物理的に同じ本質をもつ。人間の目が感知できる波長範囲を「可視光」と呼んでいるだけ

4この章を俯瞰する

電磁波は電磁気学の最終到達点であり、光学への橋渡しでもあります。

つながりマップ

  • ← 電磁誘導・マクスウェルの方程式:電磁波の理論的基盤。変動する電場と磁場の相互作用。
  • ← E-7-6 RLC回路・LC振動:LC振動回路の振動数が電磁波の周波数を決める。
  • → 光の波動性:電磁波としての光の反射・屈折・干渉・回折。
  • → 量子論:電磁波のエネルギーが $E = hf$ で量子化される(光子の概念)。

📋まとめ

  • 電磁波は変動する電場と磁場が互いを生み出しながら伝搬する横波
  • 真空中の速さは光速 $c = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$。$c = f\lambda$
  • 電場・磁場・進行方向は互いに垂直
  • 真空中でも伝搬可能(媒質不要
  • 電波〜ガンマ線まで、すべて同じ電磁波。違いは波長(周波数)だけ
  • 光も電磁波の一種。可視光は波長 $380$ 〜 $770\,\text{nm}$ の範囲
  • LC振動回路の振動数 $f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ が電磁波の発生・受信に関わる

確認テスト

Q1. 電磁波は縦波ですか、横波ですか。理由とともに答えてください。

▶ クリックして解答を表示横波。電場と磁場の振動方向が進行方向に垂直であるため。偏光現象が起こることがその証拠。

Q2. 周波数 $6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$ の電磁波の波長を求めてください。

▶ クリックして解答を表示$\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{6.0 \times 10^{14}} = 5.0 \times 10^{-7}\,\text{m} = 500\,\text{nm}$。これは緑色の可視光。

Q3. 電磁波が真空中を伝搬できる理由を簡潔に述べてください。

▶ クリックして解答を表示変動する電場が磁場を生み、変動する磁場が電場を生むという連鎖により、媒質がなくても電場と磁場の振動が空間を伝搬するから。

Q4. 電磁波のスペクトルにおいて、波長が短い順に3つ挙げてください。

▶ クリックして解答を表示ガンマ線 → X線 → 紫外線(→ 可視光 → 赤外線 → マイクロ波 → 電波)

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

7-8-1 A 基礎 電磁波計算

次の各電磁波について、波長または周波数を求めよ。光速を $c = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$ とする。

(1) 周波数 $1.0 \times 10^{6}\,\text{Hz}$(AMラジオ)の波長

(2) 波長 $500\,\text{nm}$(緑色光)の周波数

(3) 波長 $0.010\,\text{nm}$(X線)の周波数

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\lambda = 300\,\text{m}$

(2) $f = 6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$

(3) $f = 3.0 \times 10^{19}\,\text{Hz}$

解説

(1) $\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{1.0 \times 10^6} = 300\,\text{m}$

(2) $f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{500 \times 10^{-9}} = 6.0 \times 10^{14}\,\text{Hz}$

(3) $f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{0.010 \times 10^{-9}} = 3.0 \times 10^{19}\,\text{Hz}$

B 発展レベル

7-8-2 B 発展 LC回路と電磁波計算

$L = 1.0\,\text{mH}$、$C = 1.0\,\text{nF}$ の LC 振動回路から発生する電磁波について、次の問いに答えよ。

(1) 振動の周波数を求めよ。

(2) 発生する電磁波の波長を求めよ。

(3) この電磁波はスペクトルのどの領域に属するか。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $f \approx 1.6 \times 10^5\,\text{Hz} = 160\,\text{kHz}$

(2) $\lambda \approx 1900\,\text{m}$

(3) 電波(中波・AMラジオの帯域)

解説

(1) $f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{1.0 \times 10^{-3} \times 1.0 \times 10^{-9}}} = \dfrac{1}{2\pi \times 10^{-6}} = \dfrac{10^6}{2\pi} \approx 1.6 \times 10^5\,\text{Hz}$

(2) $\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{1.6 \times 10^5} \approx 1900\,\text{m}$

(3) 波長が約 $1900\,\text{m}$ なので電波の領域。中波(MF帯)に属し、AMラジオ放送に使われる帯域。

採点ポイント
  • LC振動の周波数公式を正しく適用する(3点)
  • $c = f\lambda$ から波長を正しく求める(3点)
  • 電磁波スペクトルの分類を正しく行う(2点)

C 応用レベル

7-8-3 C 応用 電磁波の性質論述

電磁波に関する次の問いに答えよ。

(1) 電磁波が横波であることを示す実験的証拠を1つ挙げよ。

(2) マクスウェルが「光は電磁波である」と結論した理論的根拠を述べよ。

(3) FM ラジオ(周波数 $80\,\text{MHz}$)の電波の波長と、可視光(波長 $550\,\text{nm}$)の周波数をそれぞれ求め、両者のエネルギーの比を光子のエネルギー $E = hf$ を用いて求めよ。ただし計算結果を有効数字2桁で示せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 偏光板を通すと特定方向の振動だけが透過する(偏光現象)

(2) 電磁波の速度を理論的に計算すると $c = \dfrac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}} \approx 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}$ となり、当時測定されていた光速と一致したから

(3) FM電波の波長 $\lambda = 3.75\,\text{m}$、可視光の周波数 $f = 5.45 \times 10^{14}\,\text{Hz}$。エネルギーの比は約 $1.5 \times 10^{-7}$

解説

(1) 偏光は横波に特有の現象。縦波では偏光は起こらない。偏光板を通過した光が特定方向にのみ振動することで横波と確認できる。

(2) マクスウェルの方程式から導かれる波動方程式の伝搬速度は $c = \dfrac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}$ であり、$\varepsilon_0$ と $\mu_0$ の測定値を代入すると当時測定されていた光速と一致した。

(3) FM電波:$\lambda = \dfrac{c}{f} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{80 \times 10^6} = 3.75\,\text{m}$

可視光:$f = \dfrac{c}{\lambda} = \dfrac{3.0 \times 10^8}{550 \times 10^{-9}} = 5.45 \times 10^{14}\,\text{Hz}$

エネルギーの比:$\dfrac{E_{\text{FM}}}{E_{\text{光}}} = \dfrac{f_{\text{FM}}}{f_{\text{光}}} = \dfrac{80 \times 10^6}{5.45 \times 10^{14}} \approx 1.5 \times 10^{-7}$

採点ポイント
  • 偏光現象を横波の根拠として挙げる(2点)
  • マクスウェルの理論的根拠を正しく述べる(3点)
  • 波長・周波数の計算(各2点)
  • エネルギー比を正しく求める(3点)