第5章 平面内の運動(物理)

放物運動 総合演習

第5章の総まとめです。水平投射斜方投射相対速度を横断する問題に取り組み、平面内の運動の全体像を確認しましょう。
A基礎、B発展、C応用の計6問を通して、公式の使い分けと座標設定の判断力を鍛えます。

1第5章の重要公式の整理

第5章で扱った3つのテーマの公式を整理します。

📐 水平投射(M-5-4)

高さ $h$ の地点から水平方向に初速度 $v_0$ で投射。

$$x = v_0 t, \quad y = \frac{1}{2}gt^2$$

$$\text{落下時間}\ T = \sqrt{\frac{2h}{g}}, \quad \text{水平到達距離}\ L = v_0\sqrt{\frac{2h}{g}}$$

📐 斜方投射(M-5-5)

地面から仰角 $\theta$、初速度 $v_0$ で投射。

$$H = \frac{v_0^2\sin^2\theta}{2g}, \quad T = \frac{2v_0\sin\theta}{g}, \quad R = \frac{v_0^2\sin 2\theta}{g}$$

📐 相対速度(M-5-2, M-5-3)

B から見た A の相対速度:

$$\vec{v}_{AB} = \vec{v}_A - \vec{v}_B$$

一直線上では $v_{AB} = v_A - v_B$。平面内ではベクトルの引き算。

💡 ここが本質:すべて「独立な2方向の運動の組み合わせ」

水平投射、斜方投射、斜面への放物運動——形は違いますが、すべて2方向の独立な運動を組み合わせたものです。

問題を解く手順は常に同じです:(1) 座標を設定、(2) 各方向の初速度と加速度を書き出す、(3) 位置・速度の式を立てる、(4) 条件を代入して解く。

2解法の選び方フローチャート

放物運動の問題に出会ったとき、以下の順序で方針を決めましょう。

Step 1:投射の種類を見極める

  • 初速度が水平 → 水平投射
  • 初速度が斜め上 → 斜方投射
  • 斜面から投射 → 斜面への放物運動(斜面座標)

Step 2:座標軸を選ぶ

  • 水平面に着地 → 水平・鉛直座標
  • 斜面に着地 → 斜面座標が有利
  • 特定の点を通過するか → 軌跡の方程式も検討

Step 3:何を求めるか

  • 時間 → $x(t)$, $y(t)$ の式を使う
  • 位置だけ → 軌跡の方程式も有効
  • 速さだけ → エネルギー保存が早い場合あり
🔬 深掘り:相対速度と放物運動の融合

「同時に投げ出された2つの物体が衝突する」「動いている台車から見た放物運動」など、相対速度と放物運動が融合する問題があります。

このとき、重力は両方の物体に同じようにはたらくので、相対加速度は $0$ になります。つまり相対運動は等速直線運動です。

この事実は問題を劇的に簡単にすることがあります。

3よくあるミスの総点検

第5章全体でよくあるミスをまとめて点検しましょう。

⚠️ 落とし穴 1:座標の正の向きを途中で変える

最初に設定した座標の向きは最後まで変えないでください。

✕ 誤:上昇時は上を正、下降時は下を正にする

○ 正:最初に決めた向きで統一し、加速度や速度の符号で向きを表す

⚠️ 落とし穴 2:水平投射の初速度の向き

水平投射では初速度の鉛直成分は $0$ です。

✕ 誤:$v_{0y} = v_0$ として計算する

○ 正:水平投射では $v_{0x} = v_0$, $v_{0y} = 0$

⚠️ 落とし穴 3:飛距離の公式の適用範囲

$R = \dfrac{v_0^2\sin 2\theta}{g}$ は投射点と着地点が同じ高さの場合のみ有効です。

✕ 誤:崖からの斜方投射に飛距離公式を使う

○ 正:高さが異なる場合は $y(t) = -h$ として着地時刻を求め直す

⚠️ 落とし穴 4:相対速度の引き算の順序

✕ 誤:B から見た A の速度を $\vec{v}_B - \vec{v}_A$ と書く

○ 正:B から見た A → $\vec{v}_{AB} = \vec{v}_A - \vec{v}_B$(「見られる方」-「見る方」)

4この章を俯瞰する

第5章の各テーマの関連を確認し、次章以降への橋渡しをします。

つながりマップ

  • M-5-1 速度の合成M-5-4 水平投射:速度を水平・鉛直に分解する考え方はすべての放物運動の基盤。
  • M-5-2, M-5-3 相対速度:同時に投射された2物体の問題で相対速度が威力を発揮。相対加速度=0で等速直線運動になる。
  • M-5-5 斜方投射M-5-6 斜面への放物運動:座標の取り方が変わるだけで本質は同じ。
  • → 第4章 仕事とエネルギー:放物運動の速さはエネルギー保存でも求められる。時間が不要なときに便利。
  • → 第8章 円運動:放物運動の頂点での速度が円運動の条件に結びつく応用問題がある。

📋まとめ

  • 放物運動はすべて「2方向の独立な運動の組み合わせ」で理解できる
  • 水平投射は $\theta = 0$ の斜方投射。斜面への放物運動は座標軸が違うだけ
  • 解法の手順:座標設定 → 初速度・加速度の分解 → 位置・速度の式 → 条件代入
  • 飛距離公式 $R = v_0^2\sin 2\theta / g$ は同じ高さに着地する場合のみ
  • 相対運動では重力が相殺され、相対運動は等速直線運動になる
  • 座標軸は「着地条件が最も単純になる」ように選ぶ

確認テスト

Q1. 水平投射と斜方投射の違いは何ですか。共通点は何ですか。

▶ クリックして解答を表示違い:初速度の鉛直成分が $0$ か否か。共通点:水平方向は等速運動、鉛直方向は等加速度運動で、2方向が独立している。

Q2. 同時に投射された2つの物体の相対運動はどのような運動になりますか。理由も述べてください。

▶ クリックして解答を表示等速直線運動になる。重力加速度 $g$ は両物体に等しくはたらくため、相対加速度は $0$ となるから。

Q3. 斜面への放物運動で、斜面座標を使う最大の利点を一言で述べてください。

▶ クリックして解答を表示斜面への衝突条件が $Y = 0$ と書けること。

Q4. 放物運動の速さだけを求めたいとき、時刻 $t$ を経由しない方法は何ですか。

▶ クリックして解答を表示力学的エネルギー保存則を使う方法。$\dfrac{1}{2}mv_0^2 = \dfrac{1}{2}mv^2 + mgh$ から $v$ が求まる。

7入試問題演習

水平投射、斜方投射、相対速度を横断する6問に取り組みましょう。

A 基礎レベル

5-7-1 A 基礎 水平投射計算

高さ $h = 44.1\,\text{m}$ の崖の上から、水平方向に初速度 $v_0 = 15\,\text{m/s}$ で小球を投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。

(1) 地面に到達するまでの時間を求めよ。

(2) 崖の下端から着地点までの水平距離を求めよ。

(3) 着地直前の速さを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $T = 3.0\,\text{s}$

(2) $L = 45\,\text{m}$

(3) $v \approx 32.2\,\text{m/s}$

解説

(1) $h = \dfrac{1}{2}gT^2$ より $T = \sqrt{\dfrac{2h}{g}} = \sqrt{\dfrac{2 \times 44.1}{9.8}} = \sqrt{9} = 3.0\,\text{s}$

(2) $L = v_0 T = 15 \times 3.0 = 45\,\text{m}$

(3) $v_x = v_0 = 15\,\text{m/s}$, $v_y = gT = 9.8 \times 3.0 = 29.4\,\text{m/s}$

$v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2} = \sqrt{225 + 864.36} \approx \sqrt{1089.4} \approx 33.0\,\text{m/s}$

エネルギー保存で検算:$v = \sqrt{v_0^2 + 2gh} = \sqrt{225 + 864.36} \approx 33.0\,\text{m/s}$ → 一致。

5-7-2 A 基礎 斜方投射計算

地面から仰角 $60°$、初速度 $v_0 = 19.6\,\text{m/s}$ で小球を投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。

(1) 最高点の高さを求めよ。

(2) 滞空時間を求めよ。

(3) 飛距離を求めよ。

(4) 仰角 $30°$ で同じ初速度で投射した場合の飛距離と比較せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $H = 14.7\,\text{m}$

(2) $T \approx 3.46\,\text{s}$

(3) $R \approx 33.9\,\text{m}$

(4) $30°$ の場合も飛距離は同じ $33.9\,\text{m}$

解説

(1) $H = \dfrac{v_0^2\sin^2 60°}{2g} = \dfrac{19.6^2 \times \frac{3}{4}}{2 \times 9.8} = \dfrac{288.12}{19.6} = 14.7\,\text{m}$

(2) $T = \dfrac{2v_0\sin 60°}{g} = \dfrac{2 \times 19.6 \times \frac{\sqrt{3}}{2}}{9.8} = \dfrac{19.6\sqrt{3}}{9.8} = 2\sqrt{3} \approx 3.46\,\text{s}$

(3) $R = \dfrac{v_0^2\sin 120°}{g} = \dfrac{19.6^2 \times \frac{\sqrt{3}}{2}}{9.8} \approx 33.9\,\text{m}$

(4) $\sin 2 \times 30° = \sin 60° = \sin 120° = \sin 2 \times 60°$ なので飛距離は等しい(補角の関係)。

B 発展レベル

5-7-3 B 発展 相対速度放物運動論述

地面上の同じ地点から、小球Aを仰角 $45°$、初速度 $v_0$ で投射すると同時に、小球Bを仰角 $60°$、初速度 $v_0$ で投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ とする。

(1) Aから見たBの相対速度の水平成分と鉛直成分を求めよ。

(2) Aから見たBの相対運動はどのような運動か説明せよ。

(3) 投射後、AとBの間の距離が最初に $0$ になる時刻を求めよ(ただし $t = 0$ は除く)。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 水平成分:$v_0\left(\cos 60° - \cos 45°\right) = v_0\left(\dfrac{1}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$、鉛直成分:$v_0\left(\sin 60° - \sin 45°\right) = v_0\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$

(2) 等速直線運動

(3) 同じ地点から投射しているため、投射直後は距離 $0$。その後は離れ続けるので $t = 0$ 以外で距離 $0$ にはならない(衝突しない)。

解説

(1) Aから見たBの相対速度 $\vec{v}_{BA} = \vec{v}_B - \vec{v}_A$

水平成分:$v_0\cos 60° - v_0\cos 45° = v_0\left(\dfrac{1}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) \approx -0.207v_0$

鉛直成分:$v_0\sin 60° - v_0\sin 45° = v_0\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) \approx 0.159v_0$

(2) 重力加速度は両方の小球に等しくはたらくため、相対加速度は $\vec{a}_{BA} = \vec{g} - \vec{g} = \vec{0}$。よってAから見たBは等速直線運動をする。

(3) 同じ地点から投射されたので初期の相対位置は $\vec{0}$。相対速度が $\vec{0}$ でない等速直線運動なので、$t > 0$ で相対位置が $\vec{0}$ に戻ることはない。2つの小球は $t > 0$ では衝突しない。

採点ポイント
  • 相対速度の各成分を正しく求める(各2点)
  • 相対加速度 $= 0$ の説明(3点)
  • (3) の論理的な説明(3点)
5-7-4 B 発展 水平投射2段階計算

高さ $H = 80\,\text{m}$ のビルの屋上から水平に初速度 $v_0 = 10\,\text{m/s}$ で小球を投射した。ビルから水平距離 $d = 30\,\text{m}$ の位置に高さ $h = 35\,\text{m}$ の建物がある。$g = 10\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。

(1) 小球は建物の上を越えるか、それとも建物に衝突するか。理由とともに答えよ。

(2) 小球が地面に到達する点の水平距離を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 建物に衝突する

(2) 着地せず建物に衝突するため、水平距離 $30\,\text{m}$ の建物側面に当たる

解説

(1) 小球が $x = d = 30\,\text{m}$ に達する時刻:$t_d = \dfrac{d}{v_0} = \dfrac{30}{10} = 3.0\,\text{s}$

そのときの鉛直方向の落下距離:$y = \dfrac{1}{2}gt_d^2 = \dfrac{1}{2} \times 10 \times 9 = 45\,\text{m}$

ビルの屋上からの高さ:$H - y = 80 - 45 = 35\,\text{m}$

建物の高さが $h = 35\,\text{m}$ なので、小球はちょうど建物の上端に到達する。実際には $35 \leq 35$ なので、ぎりぎり上端に衝突する。

(2) 上端にちょうど到達するため、建物上端の角に衝突する。水平距離は $30\,\text{m}$、地面からの高さは $35\,\text{m}$。

もし建物がなければ、着地時刻は $T = \sqrt{\dfrac{2H}{g}} = \sqrt{\dfrac{160}{10}} = 4.0\,\text{s}$、水平距離は $v_0 T = 40\,\text{m}$ である。

採点ポイント
  • $x = d$ での高さを正しく計算する(3点)
  • 建物の高さとの比較(2点)
  • 衝突の判断と根拠(3点)
  • 建物がない場合の着地距離(2点)

C 応用レベル

5-7-5 C 応用 斜面放物運動計算

傾角 $45°$ の斜面の下端 O から、斜面に対して角度 $\beta$ で初速度 $v_0 = 10\,\text{m/s}$ で小球を投射する。$g = 10\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。

(1) 斜面上の到達距離 $L$ を投射角 $\beta$ の関数として表せ。

(2) $L$ を最大にする $\beta$ の値を求めよ。

(3) $L$ の最大値を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $L = \dfrac{2v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g\cos^2 45°} = \dfrac{4v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g}$

(2) $\beta = 22.5°$

(3) $L_{\max} = \dfrac{2v_0^2}{g(1 + \sin 45°)} \approx 5.86\,\text{m}$

解説

(1) 斜面座標の公式 $L = \dfrac{2v_0^2\sin\beta\cos(\alpha + \beta)}{g\cos^2\alpha}$ に $\alpha = 45°$ を代入。

$\cos^2 45° = \dfrac{1}{2}$ より $L = \dfrac{4v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g}$

(2) 積→和の公式:$\sin\beta\cos(45° + \beta) = \dfrac{1}{2}[\sin(2\beta + 45°) + \sin(-45°)]$

$= \dfrac{1}{2}[\sin(2\beta + 45°) - \sin 45°]$

$\sin(2\beta + 45°) = 1$ のとき最大。$2\beta + 45° = 90°$ より $\beta = 22.5°$

(3) $\sin\beta\cos(45° + \beta)$ の最大値は $\dfrac{1}{2}(1 - \sin 45°) = \dfrac{1}{2}\left(1 - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) = \dfrac{2 - \sqrt{2}}{4}$

$L_{\max} = \dfrac{4 \times 100}{10} \times \dfrac{2 - \sqrt{2}}{4} = 10(2 - \sqrt{2}) = 10(2 - 1.414) \approx 5.86\,\text{m}$

採点ポイント
  • 斜面座標の公式を正しく立てる(2点)
  • 積→和の公式の適用(3点)
  • 最大条件の導出(3点)
  • 最大値の計算(2点)
5-7-6 C 応用 相対速度衝突論述

水平な地面上の点Aから仰角 $45°$、初速度 $v_0$ で小球Pを投射すると同時に、Aから水平距離 $d$、高さ $h$ の点Bから小球Qを初速度 $u$ で投射して、PとQが空中で衝突するようにしたい。$g$ は既知とする。

(1) Pから見たQの運動はどのような運動になるか。理由を述べよ。

(2) PとQが衝突するためには、QをBからどの向きに投射すればよいか。

(3) 衝突までの時間と $u$ の関係を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 等速直線運動

(2) BからAの方向(Pに向かう方向)

(3) $t = \dfrac{\sqrt{d^2 + h^2}}{u + \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{d}{\sqrt{d^2+h^2}} - \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{h}{\sqrt{d^2+h^2}}}$

解説

(1) 重力はP、Qの両方に同じ加速度 $g$ を与える。Pから見たQの相対加速度は $\vec{g} - \vec{g} = \vec{0}$。よってPから見たQの運動は等速直線運動

(2) Pから見たQが等速直線運動をするとき、PとQが衝突するためには、QがPの方向に(つまりBからAの方向に)まっすぐ近づいてくる必要がある。

ただし、ここでの「Pの方向」はPから見たQの初期位置の方向ではなく、Pから見た相対速度がPに向かう方向であることに注意。Pから見てQの初期位置はBにあり($t = 0$ のとき $P = A$, $Q = B$)、QはBからAの方向に向かって等速直線運動すれば衝突する。

(3) Pから見たQの初期相対位置の大きさは $\sqrt{d^2 + h^2}$。Pに向かう相対速度の大きさが $v_{\text{rel}}$ のとき、衝突時刻は $t = \dfrac{\sqrt{d^2 + h^2}}{v_{\text{rel}}}$。

$v_{\text{rel}}$ は Q の速度と P の速度の差のうち、BA 方向の成分であり、$u$ と P の初速度の BA 方向射影の和になる。

採点ポイント
  • 相対加速度 $= 0$ の説明(3点)
  • 等速直線運動の結論(2点)
  • 衝突のための投射方向の根拠(3点)
  • 衝突時刻の表現(2点)