第5章の総まとめです。水平投射、斜方投射、相対速度を横断する問題に取り組み、平面内の運動の全体像を確認しましょう。
A基礎、B発展、C応用の計6問を通して、公式の使い分けと座標設定の判断力を鍛えます。
第5章で扱った3つのテーマの公式を整理します。
高さ $h$ の地点から水平方向に初速度 $v_0$ で投射。
$$x = v_0 t, \quad y = \frac{1}{2}gt^2$$
$$\text{落下時間}\ T = \sqrt{\frac{2h}{g}}, \quad \text{水平到達距離}\ L = v_0\sqrt{\frac{2h}{g}}$$
地面から仰角 $\theta$、初速度 $v_0$ で投射。
$$H = \frac{v_0^2\sin^2\theta}{2g}, \quad T = \frac{2v_0\sin\theta}{g}, \quad R = \frac{v_0^2\sin 2\theta}{g}$$
B から見た A の相対速度:
$$\vec{v}_{AB} = \vec{v}_A - \vec{v}_B$$
一直線上では $v_{AB} = v_A - v_B$。平面内ではベクトルの引き算。
水平投射、斜方投射、斜面への放物運動——形は違いますが、すべて2方向の独立な運動を組み合わせたものです。
問題を解く手順は常に同じです:(1) 座標を設定、(2) 各方向の初速度と加速度を書き出す、(3) 位置・速度の式を立てる、(4) 条件を代入して解く。
放物運動の問題に出会ったとき、以下の順序で方針を決めましょう。
「同時に投げ出された2つの物体が衝突する」「動いている台車から見た放物運動」など、相対速度と放物運動が融合する問題があります。
このとき、重力は両方の物体に同じようにはたらくので、相対加速度は $0$ になります。つまり相対運動は等速直線運動です。
この事実は問題を劇的に簡単にすることがあります。
第5章全体でよくあるミスをまとめて点検しましょう。
最初に設定した座標の向きは最後まで変えないでください。
✕ 誤:上昇時は上を正、下降時は下を正にする
○ 正:最初に決めた向きで統一し、加速度や速度の符号で向きを表す
水平投射では初速度の鉛直成分は $0$ です。
✕ 誤:$v_{0y} = v_0$ として計算する
○ 正:水平投射では $v_{0x} = v_0$, $v_{0y} = 0$
$R = \dfrac{v_0^2\sin 2\theta}{g}$ は投射点と着地点が同じ高さの場合のみ有効です。
✕ 誤:崖からの斜方投射に飛距離公式を使う
○ 正:高さが異なる場合は $y(t) = -h$ として着地時刻を求め直す
✕ 誤:B から見た A の速度を $\vec{v}_B - \vec{v}_A$ と書く
○ 正:B から見た A → $\vec{v}_{AB} = \vec{v}_A - \vec{v}_B$(「見られる方」-「見る方」)
第5章の各テーマの関連を確認し、次章以降への橋渡しをします。
Q1. 水平投射と斜方投射の違いは何ですか。共通点は何ですか。
Q2. 同時に投射された2つの物体の相対運動はどのような運動になりますか。理由も述べてください。
Q3. 斜面への放物運動で、斜面座標を使う最大の利点を一言で述べてください。
Q4. 放物運動の速さだけを求めたいとき、時刻 $t$ を経由しない方法は何ですか。
水平投射、斜方投射、相対速度を横断する6問に取り組みましょう。
高さ $h = 44.1\,\text{m}$ の崖の上から、水平方向に初速度 $v_0 = 15\,\text{m/s}$ で小球を投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。
(1) 地面に到達するまでの時間を求めよ。
(2) 崖の下端から着地点までの水平距離を求めよ。
(3) 着地直前の速さを求めよ。
(1) $T = 3.0\,\text{s}$
(2) $L = 45\,\text{m}$
(3) $v \approx 32.2\,\text{m/s}$
(1) $h = \dfrac{1}{2}gT^2$ より $T = \sqrt{\dfrac{2h}{g}} = \sqrt{\dfrac{2 \times 44.1}{9.8}} = \sqrt{9} = 3.0\,\text{s}$
(2) $L = v_0 T = 15 \times 3.0 = 45\,\text{m}$
(3) $v_x = v_0 = 15\,\text{m/s}$, $v_y = gT = 9.8 \times 3.0 = 29.4\,\text{m/s}$
$v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2} = \sqrt{225 + 864.36} \approx \sqrt{1089.4} \approx 33.0\,\text{m/s}$
エネルギー保存で検算:$v = \sqrt{v_0^2 + 2gh} = \sqrt{225 + 864.36} \approx 33.0\,\text{m/s}$ → 一致。
地面から仰角 $60°$、初速度 $v_0 = 19.6\,\text{m/s}$ で小球を投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。
(1) 最高点の高さを求めよ。
(2) 滞空時間を求めよ。
(3) 飛距離を求めよ。
(4) 仰角 $30°$ で同じ初速度で投射した場合の飛距離と比較せよ。
(1) $H = 14.7\,\text{m}$
(2) $T \approx 3.46\,\text{s}$
(3) $R \approx 33.9\,\text{m}$
(4) $30°$ の場合も飛距離は同じ $33.9\,\text{m}$
(1) $H = \dfrac{v_0^2\sin^2 60°}{2g} = \dfrac{19.6^2 \times \frac{3}{4}}{2 \times 9.8} = \dfrac{288.12}{19.6} = 14.7\,\text{m}$
(2) $T = \dfrac{2v_0\sin 60°}{g} = \dfrac{2 \times 19.6 \times \frac{\sqrt{3}}{2}}{9.8} = \dfrac{19.6\sqrt{3}}{9.8} = 2\sqrt{3} \approx 3.46\,\text{s}$
(3) $R = \dfrac{v_0^2\sin 120°}{g} = \dfrac{19.6^2 \times \frac{\sqrt{3}}{2}}{9.8} \approx 33.9\,\text{m}$
(4) $\sin 2 \times 30° = \sin 60° = \sin 120° = \sin 2 \times 60°$ なので飛距離は等しい(補角の関係)。
地面上の同じ地点から、小球Aを仰角 $45°$、初速度 $v_0$ で投射すると同時に、小球Bを仰角 $60°$、初速度 $v_0$ で投射した。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ とする。
(1) Aから見たBの相対速度の水平成分と鉛直成分を求めよ。
(2) Aから見たBの相対運動はどのような運動か説明せよ。
(3) 投射後、AとBの間の距離が最初に $0$ になる時刻を求めよ(ただし $t = 0$ は除く)。
(1) 水平成分:$v_0\left(\cos 60° - \cos 45°\right) = v_0\left(\dfrac{1}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$、鉛直成分:$v_0\left(\sin 60° - \sin 45°\right) = v_0\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$
(2) 等速直線運動
(3) 同じ地点から投射しているため、投射直後は距離 $0$。その後は離れ続けるので $t = 0$ 以外で距離 $0$ にはならない(衝突しない)。
(1) Aから見たBの相対速度 $\vec{v}_{BA} = \vec{v}_B - \vec{v}_A$
水平成分:$v_0\cos 60° - v_0\cos 45° = v_0\left(\dfrac{1}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) \approx -0.207v_0$
鉛直成分:$v_0\sin 60° - v_0\sin 45° = v_0\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2} - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) \approx 0.159v_0$
(2) 重力加速度は両方の小球に等しくはたらくため、相対加速度は $\vec{a}_{BA} = \vec{g} - \vec{g} = \vec{0}$。よってAから見たBは等速直線運動をする。
(3) 同じ地点から投射されたので初期の相対位置は $\vec{0}$。相対速度が $\vec{0}$ でない等速直線運動なので、$t > 0$ で相対位置が $\vec{0}$ に戻ることはない。2つの小球は $t > 0$ では衝突しない。
高さ $H = 80\,\text{m}$ のビルの屋上から水平に初速度 $v_0 = 10\,\text{m/s}$ で小球を投射した。ビルから水平距離 $d = 30\,\text{m}$ の位置に高さ $h = 35\,\text{m}$ の建物がある。$g = 10\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。
(1) 小球は建物の上を越えるか、それとも建物に衝突するか。理由とともに答えよ。
(2) 小球が地面に到達する点の水平距離を求めよ。
(1) 建物に衝突する
(2) 着地せず建物に衝突するため、水平距離 $30\,\text{m}$ の建物側面に当たる
(1) 小球が $x = d = 30\,\text{m}$ に達する時刻:$t_d = \dfrac{d}{v_0} = \dfrac{30}{10} = 3.0\,\text{s}$
そのときの鉛直方向の落下距離:$y = \dfrac{1}{2}gt_d^2 = \dfrac{1}{2} \times 10 \times 9 = 45\,\text{m}$
ビルの屋上からの高さ:$H - y = 80 - 45 = 35\,\text{m}$
建物の高さが $h = 35\,\text{m}$ なので、小球はちょうど建物の上端に到達する。実際には $35 \leq 35$ なので、ぎりぎり上端に衝突する。
(2) 上端にちょうど到達するため、建物上端の角に衝突する。水平距離は $30\,\text{m}$、地面からの高さは $35\,\text{m}$。
もし建物がなければ、着地時刻は $T = \sqrt{\dfrac{2H}{g}} = \sqrt{\dfrac{160}{10}} = 4.0\,\text{s}$、水平距離は $v_0 T = 40\,\text{m}$ である。
傾角 $45°$ の斜面の下端 O から、斜面に対して角度 $\beta$ で初速度 $v_0 = 10\,\text{m/s}$ で小球を投射する。$g = 10\,\text{m/s}^2$ として、次の問いに答えよ。
(1) 斜面上の到達距離 $L$ を投射角 $\beta$ の関数として表せ。
(2) $L$ を最大にする $\beta$ の値を求めよ。
(3) $L$ の最大値を求めよ。
(1) $L = \dfrac{2v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g\cos^2 45°} = \dfrac{4v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g}$
(2) $\beta = 22.5°$
(3) $L_{\max} = \dfrac{2v_0^2}{g(1 + \sin 45°)} \approx 5.86\,\text{m}$
(1) 斜面座標の公式 $L = \dfrac{2v_0^2\sin\beta\cos(\alpha + \beta)}{g\cos^2\alpha}$ に $\alpha = 45°$ を代入。
$\cos^2 45° = \dfrac{1}{2}$ より $L = \dfrac{4v_0^2\sin\beta\cos(45° + \beta)}{g}$
(2) 積→和の公式:$\sin\beta\cos(45° + \beta) = \dfrac{1}{2}[\sin(2\beta + 45°) + \sin(-45°)]$
$= \dfrac{1}{2}[\sin(2\beta + 45°) - \sin 45°]$
$\sin(2\beta + 45°) = 1$ のとき最大。$2\beta + 45° = 90°$ より $\beta = 22.5°$
(3) $\sin\beta\cos(45° + \beta)$ の最大値は $\dfrac{1}{2}(1 - \sin 45°) = \dfrac{1}{2}\left(1 - \dfrac{\sqrt{2}}{2}\right) = \dfrac{2 - \sqrt{2}}{4}$
$L_{\max} = \dfrac{4 \times 100}{10} \times \dfrac{2 - \sqrt{2}}{4} = 10(2 - \sqrt{2}) = 10(2 - 1.414) \approx 5.86\,\text{m}$
水平な地面上の点Aから仰角 $45°$、初速度 $v_0$ で小球Pを投射すると同時に、Aから水平距離 $d$、高さ $h$ の点Bから小球Qを初速度 $u$ で投射して、PとQが空中で衝突するようにしたい。$g$ は既知とする。
(1) Pから見たQの運動はどのような運動になるか。理由を述べよ。
(2) PとQが衝突するためには、QをBからどの向きに投射すればよいか。
(3) 衝突までの時間と $u$ の関係を求めよ。
(1) 等速直線運動
(2) BからAの方向(Pに向かう方向)
(3) $t = \dfrac{\sqrt{d^2 + h^2}}{u + \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{d}{\sqrt{d^2+h^2}} - \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{h}{\sqrt{d^2+h^2}}}$
(1) 重力はP、Qの両方に同じ加速度 $g$ を与える。Pから見たQの相対加速度は $\vec{g} - \vec{g} = \vec{0}$。よってPから見たQの運動は等速直線運動。
(2) Pから見たQが等速直線運動をするとき、PとQが衝突するためには、QがPの方向に(つまりBからAの方向に)まっすぐ近づいてくる必要がある。
ただし、ここでの「Pの方向」はPから見たQの初期位置の方向ではなく、Pから見た相対速度がPに向かう方向であることに注意。Pから見てQの初期位置はBにあり($t = 0$ のとき $P = A$, $Q = B$)、QはBからAの方向に向かって等速直線運動すれば衝突する。
(3) Pから見たQの初期相対位置の大きさは $\sqrt{d^2 + h^2}$。Pに向かう相対速度の大きさが $v_{\text{rel}}$ のとき、衝突時刻は $t = \dfrac{\sqrt{d^2 + h^2}}{v_{\text{rel}}}$。
$v_{\text{rel}}$ は Q の速度と P の速度の差のうち、BA 方向の成分であり、$u$ と P の初速度の BA 方向射影の和になる。