第7章 運動量の保存

運動量 総合演習
─ 第7章の総まとめ

第7章で学んだ力積と運動量運動量保存則弾性衝突・非弾性衝突壁・床との衝突2次元の衝突分裂と合体重心の運動を横断する総合問題に挑戦しましょう。
A(基礎)2問、B(発展)2問、C(応用)2問の計6問です。

1第7章の重要公式一覧

📐 力積と運動量

$$\vec{F}\,\Delta t = m\vec{v}' - m\vec{v} = \Delta\vec{p}$$

力積 = 運動量の変化
📐 運動量保存則

$$m_1\vec{v}_1 + m_2\vec{v}_2 = m_1\vec{v}_1' + m_2\vec{v}_2'$$

外力がゼロ(または無視できる)とき成立
📐 反発係数

$$e = -\frac{v_1' - v_2'}{v_1 - v_2}$$

$e = 1$:弾性衝突、$0 < e < 1$:非弾性衝突、$e = 0$:完全非弾性衝突
📐 重心

$$x_G = \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2}, \quad v_G = \frac{m_1 v_1 + m_2 v_2}{m_1 + m_2}$$

重心の運動方程式:$M\vec{a}_G = \vec{F}_{\text{ext}}$
💡 問題を解く前に:どの保存則が使えるか判断しよう

運動量の問題では、次の判断が重要です。

1. 運動量保存が使えるか → 外力がゼロまたは無視できる場合に使える

2. エネルギー保存も使えるか → 弾性衝突のとき使える。非弾性衝突では使えない

3. 反発係数が与えられているか → 非弾性衝突の場合、運動量保存と反発係数で解く

2問題を解くための戦略

衝突問題の解法フローチャート

  1. 系を決める:何と何の衝突か。外力は無視できるか。
  2. 衝突の種類を判断:弾性($e=1$)、非弾性($0 < e < 1$)、完全非弾性($e=0$)
  3. 使える式を列挙:運動量保存(常に使える)、エネルギー保存(弾性のみ)、反発係数
  4. 未知数を数え、足りない条件がないか確認
  5. 連立方程式を解く
⚠️ 総合問題でよくある間違い

1. 衝突の瞬間にエネルギー保存を使ってしまう(非弾性衝突のとき)

2. 壁衝突で速さ全体に反発係数をかける(垂直成分のみ)

3. 分裂で「エネルギーが増えるはずがない」と思い込む

4. 2次元衝突で1方向の運動量保存しか立てない

対策:問題を読んだら、まず「衝突の種類」と「使える保存則」を紙に書き出しましょう。

🔬 解法の使い分け一覧

完全非弾性衝突:運動量保存 1式で解ける(速度が1つだけなので)

弾性衝突:運動量保存 + エネルギー保存(または反発係数 $e=1$)

一般の非弾性衝突:運動量保存 + 反発係数の式

壁・床衝突:反発係数のみ(垂直成分に適用)

分裂:運動量保存。エネルギーは保存しない(増加する)

3この章を俯瞰する

第7章全体のつながりを最終確認しましょう。

つながりマップ

  • M-7-1 力積と運動量:すべての基礎。$\vec{F}\Delta t = \Delta\vec{p}$ が出発点。
  • M-7-2 運動量と運動エネルギー:2つの物理量の違いと使い分け。
  • M-7-3 運動量保存則:本章の中心定理。外力ゼロで系の運動量は一定。
  • M-7-4 弾性衝突:運動量保存 + エネルギー保存で完全に解ける衝突。
  • M-7-5 非弾性衝突:エネルギーが失われる衝突。反発係数で特徴づける。
  • M-7-6 壁・床との衝突:垂直成分のみ反発する。放物運動との融合問題が頻出。
  • M-7-7 平面上の衝突:ベクトルとしての運動量保存。等質量弾性衝突の直交定理。
  • M-7-8 分裂と合体:衝突の逆過程。エネルギーは増加する。
  • M-7-9 重心の運動:運動量保存の幾何学的表現。内力では重心は変わらない。

📋まとめ

  • 運動量保存則はあらゆる衝突・分裂で成り立つ最強の法則
  • 弾性衝突では運動エネルギーも保存、非弾性衝突では反発係数を使う
  • 壁衝突では垂直成分のみ反発、平行成分は不変
  • 2次元衝突では$x, y$ 各成分で運動量保存を立てる
  • 分裂では内部エネルギーが運動エネルギーに変わる(エネルギー増加)
  • 重心は外力だけで運動が決まり、内力の影響を受けない

確認テスト

Q1. 非弾性衝突で保存されるのは、運動量とエネルギーのどちらですか(あるいは両方)。

▶ クリックして解答を表示運動量のみ。運動エネルギーは一部が熱・変形・音に変わるため保存されない。

Q2. 壁に斜めに当たったボールで、反発係数が影響するのはどの成分ですか。

▶ クリックして解答を表示壁面に垂直な速度成分のみ。平行成分は変化しない。

Q3. 同じ質量の球が弾性衝突(一方が静止)したとき、衝突後の2球の速度ベクトルの関係は何ですか。

▶ クリックして解答を表示直交する(90度をなす)。直交定理。

Q4. 静止した物体が分裂するとき、運動エネルギーの合計は増えますか、減りますか。

▶ クリックして解答を表示増える。内部エネルギー(化学エネルギー、弾性エネルギーなど)が運動エネルギーに変換されるため。

8入試問題演習

第7章の内容を横断する総合問題です。A基礎×2、B発展×2、C応用×2の計6問。

A 基礎レベル

7-10-1 A 基礎 力積反発係数計算

質量 $0.15\,\text{kg}$ のボールが速さ $20\,\text{m/s}$ で壁に垂直に当たり、速さ $12\,\text{m/s}$ で跳ね返った。

(1) 反発係数を求めよ。

(2) 壁からボールが受けた力積の大きさを求めよ。

(3) 接触時間が $0.020\,\text{s}$ のとき、ボールが壁から受けた平均の力の大きさを求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $e = 0.60$

(2) $4.8\,\text{N}\cdot\text{s}$

(3) $240\,\text{N}$

解説

(1) $e = \dfrac{v'}{v} = \dfrac{12}{20} = 0.60$

(2) 壁に向かう方向を正とする。入射速度 $+20\,\text{m/s}$、反射速度 $-12\,\text{m/s}$

力積 $= m(v' - v) = 0.15 \times (-12 - 20) = -4.8\,\text{N}\cdot\text{s}$

壁からの力積の大きさは $4.8\,\text{N}\cdot\text{s}$

(3) $F = \dfrac{|\text{力積}|}{t} = \dfrac{4.8}{0.020} = 240\,\text{N}$

7-10-2 A 基礎 完全非弾性エネルギー損失計算

なめらかな水平面上で、質量 $m$ の物体 A が速度 $v$ で右に、質量 $2m$ の物体 B が速度 $\dfrac{v}{2}$ で左に進み、正面衝突して一体となった。

(1) 衝突後の速度を求めよ。

(2) 失われた運動エネルギーの、衝突前の全運動エネルギーに対する割合を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $V = 0$(静止)

(2) $100\%$

解説

(1) 右を正とする。運動量保存:

$mv + 2m \times \left(-\dfrac{v}{2}\right) = (m + 2m)\,V$

$mv - mv = 3mV$ → $V = 0$

(2) $K_{\text{前}} = \dfrac{1}{2}mv^2 + \dfrac{1}{2} \cdot 2m \cdot \left(\dfrac{v}{2}\right)^2 = \dfrac{mv^2}{2} + \dfrac{mv^2}{4} = \dfrac{3mv^2}{4}$

$K_{\text{後}} = 0$

損失率 $= \dfrac{K_{\text{前}} - K_{\text{後}}}{K_{\text{前}}} = \dfrac{3mv^2/4}{3mv^2/4} = 1 = 100\%$

2物体の運動量が等しく逆向きの場合、完全非弾性衝突で全エネルギーが失われる。

B 発展レベル

7-10-3 B 発展 衝突+放物運動融合

高さ $h$ のテーブルの端から、質量 $m$ の球 A を水平に速さ $v_0$ で発射した。床の上に質量 $M$ の球 B が静止している。A は B に正面衝突し(弾性衝突、$e = 1$)、B は水平に飛び出した。$g$ を重力加速度とする。

(1) A が床に達するまでの落下時間 $t$ を求めよ。

(2) 衝突直前の A の速さを求めよ。

(3) 衝突直後の A, B の速度を求めよ(水平成分のみ考える。$m = M$ とする)。

(4) $m = M$ のとき、B が床に沿って飛ぶ距離を求めよ(B は床上で滑らかに動くとする)。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $t = \sqrt{\dfrac{2h}{g}}$

(2) $\sqrt{v_0^2 + 2gh}$

(3) $m = M$ のとき:A の水平速度 $= 0$、B の水平速度 $= v_0$

(4) B は等速で $v_0$ で滑るので、距離は問題の追加条件(時間や摩擦の条件)に依存する。

解説

(1) 鉛直方向の自由落下:$h = \dfrac{1}{2}gt^2$ → $t = \sqrt{\dfrac{2h}{g}}$

(2) 着地時の速度:水平 $v_0$、鉛直 $gt = \sqrt{2gh}$

速さ $= \sqrt{v_0^2 + 2gh}$

(3) 衝突は水平方向のみ考える(瞬間的な衝突で鉛直成分は変わらない)。

$m = M$ の弾性衝突では速度が入れ替わる:A の水平速度 → $0$、B の水平速度 → $v_0$

(4) B はなめらかな床上を速さ $v_0$ で水平に進む。B は床上なので、水平方向に等速運動する(摩擦なしの場合)。

採点ポイント
  • 落下時間の計算(2点)
  • 着地速度の計算(2点)
  • 等質量弾性衝突での速度交換の適用(3点)
  • 衝突後の運動の記述(3点)
7-10-4 B 発展 分裂+衝突計算

なめらかな水平面上で、静止している質量 $4m$ の物体が爆発して質量 $m$ の破片 A と質量 $3m$ の破片 B に分裂した。A は速さ $6v$ で右に飛んだ。その後、B は壁に衝突し、反発係数 $e = 0.50$ で跳ね返った。

(1) 分裂直後の B の速度を求めよ。

(2) 壁で跳ね返った後の B の速度を求めよ。

(3) 跳ね返った B がやがて A に追いつくことはあるか。理由とともに答えよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $v_B = -2v$(左向きに $2v$)

(2) $v_B' = v$(右向き)

(3) 追いつかない

解説

(1) 運動量保存:$0 = m \times 6v + 3m \times v_B$

$v_B = -2v$(左向き)

(2) 壁に垂直に衝突するので、$v_B' = e \times |v_B| = 0.50 \times 2v = v$(右向き)

(3) A は $6v$ で右に進み、B は壁で跳ね返った後 $v$ で右に進む。A の方が速いので、B は A に追いつかない。

(B が壁に向かっている間に A はさらに遠くに行っているので、壁から跳ね返った後も A との距離は開き続ける。)

採点ポイント
  • 分裂の運動量保存(3点)
  • 壁衝突の反発係数の適用(3点)
  • 追いつくかどうかの判断と理由(4点)

C 応用レベル

7-10-5 C 応用 弾道振り子+斜面融合

なめらかな水平面上に質量 $M$ の木片が置かれている。質量 $m$ の弾丸を水平に速さ $v_0$ で木片に撃ち込み、一体となった(完全非弾性衝突)。一体となった物体は水平面上を滑り、角度 $\theta$ のなめらかな斜面を高さ $h$ まで上った。$g$ を重力加速度とする。

(1) 衝突直後の一体の速度 $V$ を求めよ。

(2) $V$ を $g$, $h$ で表せ。

(3) 弾丸の初速度 $v_0$ を $m$, $M$, $g$, $h$ で表せ。

(4) 衝突で失われたエネルギー $\Delta K$ を $m$, $M$, $g$, $h$ で表せ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $V = \dfrac{mv_0}{m+M}$

(2) $V = \sqrt{2gh}$

(3) $v_0 = \dfrac{m+M}{m}\sqrt{2gh}$

(4) $\Delta K = \dfrac{M(m+M)gh}{m}$

解説

(1) 運動量保存:$mv_0 = (m+M)V$ → $V = \dfrac{mv_0}{m+M}$

(2) 斜面を上る過程でエネルギー保存(滑らかな面):

$\dfrac{1}{2}(m+M)V^2 = (m+M)gh$ → $V = \sqrt{2gh}$

(3) (1)と(2)を等置:$\dfrac{mv_0}{m+M} = \sqrt{2gh}$ → $v_0 = \dfrac{m+M}{m}\sqrt{2gh}$

(4) $K_{\text{前}} = \dfrac{1}{2}mv_0^2 = \dfrac{1}{2}m\left(\dfrac{m+M}{m}\right)^2 \cdot 2gh = \dfrac{(m+M)^2 gh}{m}$

$K_{\text{後}} = (m+M)gh$(斜面で高さ $h$ まで上ったエネルギー)

$\Delta K = \dfrac{(m+M)^2 gh}{m} - (m+M)gh = (m+M)gh\left(\dfrac{m+M}{m} - 1\right) = \dfrac{M(m+M)gh}{m}$

採点ポイント
  • 衝突で運動量保存を正しく使う(2点)
  • 斜面でエネルギー保存を正しく使う(2点)
  • $v_0$ の導出(2点)
  • $\Delta K$ の計算(3点)
  • 衝突ではエネルギー非保存、斜面ではエネルギー保存の使い分け(1点)
7-10-6 C 応用 重心+2次元分裂融合

水平面上の原点 O から、質量 $2m$ の砲弾を速さ $v_0$、仰角 $60°$ で打ち上げた。砲弾は最高点で質量 $m$ の破片 A と質量 $m$ の破片 B に分裂した。A は水平方向(発射方向と同じ向き)に速さ $v_0$ で飛んだ。$g$ を重力加速度とする。

(1) 最高点の高さ $H$ と、原点からの水平距離 $d$ を求めよ。

(2) 分裂直後の B の速度ベクトル(水平・鉛直成分)を求めよ。

(3) 分裂しなかった場合の砲弾の落下地点(原点からの水平距離)を求めよ。

(4) 重心の考え方を利用して、A と B の落下地点(原点からの水平距離)をそれぞれ求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $H = \dfrac{3v_0^2}{8g}$、$d = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$

(2) 水平成分 $0$、鉛直成分 $0$(静止)

(3) $\dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g}$

(4) A:$d + v_0 \cdot \sqrt{\dfrac{3v_0^2}{4g^2}} = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g} + \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g} = \dfrac{3\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$、B:$\dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$

解説

(1) 最高点の高さ:$H = \dfrac{v_0^2\sin^2 60°}{2g} = \dfrac{v_0^2 \cdot 3/4}{2g} = \dfrac{3v_0^2}{8g}$

水平距離:$d = v_0\cos 60° \times \dfrac{v_0\sin 60°}{g} = \dfrac{v_0}{2} \times \dfrac{\sqrt{3}\,v_0}{2g} = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$

(2) 最高点では砲弾の速度は水平成分のみ:$v_x = v_0\cos 60° = \dfrac{v_0}{2}$

運動量保存(水平):$2m \cdot \dfrac{v_0}{2} = m \cdot v_0 + m \cdot v_{Bx}$ → $v_{Bx} = 0$

運動量保存(鉛直):$0 = 0 + m \cdot v_{By}$ → $v_{By} = 0$

B は分裂直後に静止する。

(3) 分裂なしの飛距離:$R = \dfrac{v_0^2\sin 120°}{g} = \dfrac{v_0^2 \cdot \sqrt{3}/2}{g} = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g}$

(4) 重心の落下位置 $= R = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g}$

B は最高点(水平距離 $d$)で静止して自由落下するので、真下に落ちる:$x_B = d = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$

重心の条件:$\dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g} = \dfrac{m \cdot x_A + m \cdot x_B}{2m} = \dfrac{x_A + x_B}{2}$

$x_A = 2 \times \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{2g} - \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g} = \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{g} - \dfrac{\sqrt{3}\,v_0^2}{4g} = \dfrac{3\sqrt{3}\,v_0^2}{4g}$

採点ポイント
  • 最高点の高さと水平距離(2点)
  • 分裂の運動量保存(水平・鉛直)(3点)
  • 分裂なしの飛距離の計算(2点)
  • 重心の位置条件を用いた A の落下地点の計算(3点)