子どものころ、紐の先におもりをつけてぐるぐる回した経験はありませんか。
手が感じる「引っ張られる感覚」は、あなたが物体に向心力を与えている証拠です。
もっとも基本的な円運動の問題を通じて、力の図の描き方と立式の作法を身につけましょう。
滑らかな水平面上で、質量 $m$ の小球を長さ $r$ の軽いひもでつなぎ、等速円運動させます。 この問題は円運動の最も基本的な設定です。
小球にはたらく力は次の3つです。
鉛直方向は重力と垂直抗力が釣り合っています。 水平方向には張力だけがはたらき、これが向心力の役割を果たします。
鉛直方向が完全に釣り合うため、水平方向の力だけを考えればよいのです。 張力 $T$ の全部が向心力になるという、最もシンプルな構造です。
この単純な場合を完璧に理解してから、次の円すい振り子(ひもが斜め)に進みましょう。
水平面内の円運動でも、物体には重力と垂直抗力がはたらいています。
✕ 誤:力の図に張力しか描かない
○ 正:重力・垂直抗力・張力の3力を描き、鉛直方向の釣り合いを確認する
「水平方向だけ考えればいい」のは結果であって、最初から力を省略してはいけません。
中心方向を正として、円運動の運動方程式を立てます。
鉛直方向(釣り合い):$$N = mg$$
水平方向(中心方向):$$T = m\frac{v^2}{r} = mr\omega^2$$
質量 $m = 0.50\,\text{kg}$、ひもの長さ $r = 0.80\,\text{m}$、角速度 $\omega = 5.0\,\text{rad/s}$ の場合を計算してみましょう。
張力は $T = mr\omega^2 = 0.50 \times 0.80 \times 5.0^2 = 0.50 \times 0.80 \times 25 = 10\,\text{N}$ です。
速さは $v = r\omega = 0.80 \times 5.0 = 4.0\,\text{m/s}$ です。 検算として $T = m\frac{v^2}{r} = 0.50 \times \frac{16}{0.80} = 10\,\text{N}$ で一致します。
$v$ が与えられているなら $F = m\frac{v^2}{r}$ が便利です。 $\omega$ や周期 $T_{\text{周期}}$ が与えられているなら $F = mr\omega^2$ が便利です。
いずれも $v = r\omega$ で行き来できるので、両方使えるようにしておきましょう。
円運動の問題では、周期も張力もよく $T$ と書かれます。
✕ 誤:$T = m\frac{v^2}{r}$ の $T$ を周期だと思って代入する
○ 正:文脈から周期か張力かを判断する。混乱するなら記号を変える(例:周期を $T_0$ にする)
ひもには耐えられる張力の上限(破断張力)があります。 回転を速くしすぎると、必要な向心力がひもの強度を超えてしまいます。
ひもの破断張力を $T_{\max}$ とすると、ひもが切れない条件は次のようになります。
$$mr\omega^2 \leq T_{\max}$$
角速度の上限は、
$$\omega_{\max} = \sqrt{\frac{T_{\max}}{mr}}$$
速さの上限は、
$$v_{\max} = \sqrt{\frac{rT_{\max}}{m}}$$
向心力の式 $T = m\frac{v^2}{r}$ で $T = T_{\max}$ とおくと、
$$T_{\max} = m\frac{v_{\max}^2}{r}$$
$v_{\max}$ について解くと、
$$v_{\max}^2 = \frac{rT_{\max}}{m}$$
$$v_{\max} = \sqrt{\frac{rT_{\max}}{m}}$$
$T = mr\omega^2$ から明らかなように、角速度が増えると張力は増えます。
✕ 誤:速く回すとひもがたるんで張力が減る
○ 正:速く回すほど必要な向心力が増え、張力は大きくなる
面に摩擦がある場合、ひもなしでも円運動が可能です。 たとえば、回転するターンテーブルの上に置いた物体を考えましょう。
テーブルと一緒に回転する物体にはたらく水平方向の力は、静止摩擦力だけです。 この摩擦力が向心力の役割を果たします。
$$f = mr\omega^2$$
最大静止摩擦力 $\mu mg$ を超えると物体はテーブル上を滑り出します。 滑り出さない条件は、
$$mr\omega^2 \leq \mu mg \quad \Longrightarrow \quad r \leq \frac{\mu g}{\omega^2}$$
つまり、中心から遠いほど必要な向心力が大きくなるので、 外側に置いた物体ほど滑り出しやすいのです。
ターンテーブルの回転を徐々に速くすると、外側の物体から順に滑り出します。 これは $r$ が大きいほど必要な向心力 $mr\omega^2$ が大きくなるからです。
また、同じ位置でも質量が大きい物体のほうが最大静止摩擦力 $\mu mg$ も大きいため、 質量の違いだけでは滑り出しやすさは変わりません($m$ が約分されるため)。
水平面上の円運動は、力の分解が不要な最もシンプルな場合です。 次の記事では、ひもが斜めに張られる円すい振り子に進みます。
Q1. 滑らかな水平面上でひもにつけた物体が等速円運動するとき、向心力の正体は何ですか。
Q2. 質量 $0.30\,\text{kg}$、半径 $0.60\,\text{m}$、速さ $4.0\,\text{m/s}$ で円運動する物体のひもの張力を求めてください。
Q3. 回転を速くすると、ひもの張力は大きくなりますか、小さくなりますか。理由も述べてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
滑らかな水平面上で、質量 $0.40\,\text{kg}$ の小球を長さ $1.0\,\text{m}$ の軽いひもで等速円運動させる。周期が $0.50\,\text{s}$ のとき、ひもの張力を求めよ。
$T \approx 63\,\text{N}$
$\omega = \frac{2\pi}{0.50} = 4\pi\,\text{rad/s}$
$T = mr\omega^2 = 0.40 \times 1.0 \times (4\pi)^2 = 0.40 \times 16\pi^2 = 6.4\pi^2 \approx 63\,\text{N}$
質量 $0.20\,\text{kg}$ の物体を長さ $0.50\,\text{m}$ の軽いひもで滑らかな水平面上で回転させる。ひもが耐えられる最大の張力が $50\,\text{N}$ であるとき、次の問いに答えよ。
(1) ひもが切れない最大の速さを求めよ。
(2) ひもが切れない最大の角速度を求めよ。
(1) $v_{\max} \approx 11\,\text{m/s}$
(2) $\omega_{\max} \approx 22\,\text{rad/s}$
(1) $v_{\max} = \sqrt{\frac{rT_{\max}}{m}} = \sqrt{\frac{0.50 \times 50}{0.20}} = \sqrt{125} \approx 11\,\text{m/s}$
(2) $\omega_{\max} = \sqrt{\frac{T_{\max}}{mr}} = \sqrt{\frac{50}{0.20 \times 0.50}} = \sqrt{500} \approx 22\,\text{rad/s}$
水平な回転テーブルの上に、中心から $r = 0.30\,\text{m}$ の位置に質量 $m = 0.10\,\text{kg}$ の小物体を置く。テーブルと物体の間の静止摩擦係数を $\mu = 0.50$、重力加速度を $g = 9.8\,\text{m/s}^2$ とする。テーブルの回転を徐々に速くしていくとき、物体が滑り始める角速度 $\omega_0$ を求めよ。
$\omega_0 \approx 4.0\,\text{rad/s}$
物体がテーブルと一緒に回るとき、静止摩擦力が向心力になる。
滑り始める条件は $mr\omega^2 = \mu mg$
$m$ は両辺から消えて $r\omega^2 = \mu g$
$\omega_0 = \sqrt{\frac{\mu g}{r}} = \sqrt{\frac{0.50 \times 9.8}{0.30}} = \sqrt{16.3} \approx 4.0\,\text{rad/s}$
注目すべきは、質量 $m$ が結果に含まれないことです。滑り始めの角速度は質量によらず、摩擦係数と位置だけで決まります。