ボイルの法則、シャルルの法則、理想気体の状態方程式──公式は覚えたけれど、問題が解けない。
気体の法則の問題には「定番の装置設定」があります。密閉容器、ピストン付きシリンダー、連結容器──
それぞれの圧力の決め方を理解すれば、どんな問題もパターンに帰着できます。
気体の問題を解くカギは、気体の圧力がどう決まるかを正しく把握することです。 装置の種類によって圧力の決まり方が異なります。
| 装置の種類 | 体積 | 圧力 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 密閉容器(剛体) | 一定 | 変化する | 状態方程式から圧力を求める |
| ピストン付き容器 | 変化する | 力のつりあいで決まる | ピストンの力のつりあいの式が必要 |
| 開放容器 | 変化する | 大気圧で一定 | 最も単純なケース |
$$PV = nRT$$
気体の問題は $P$、$V$、$T$ の3変数のうち、何が固定されていて、何が変化するかを最初に把握することが最重要です。
密閉容器なら $V$ 一定、ピストンなら $P$ が力のつりあいで決定、温度一定なら $T$ 固定──条件を整理してから公式に代入しましょう。
体積が変わらない剛体容器に気体が封入されている場合、温度を変えると圧力が変化します。
体積 $V$ が一定のとき、$\dfrac{P_1}{T_1} = \dfrac{P_2}{T_2}$(シャルルの法則の圧力版)が成り立ちます。
$27\,\text{°C}$($300\,\text{K}$)で $1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ の気体を、$127\,\text{°C}$($400\,\text{K}$)に加熱する。
$V$ 一定なので:$\dfrac{P_1}{T_1} = \dfrac{P_2}{T_2}$
$$P_2 = P_1 \times \frac{T_2}{T_1} = 1.0 \times 10^5 \times \frac{400}{300} \approx 1.33 \times 10^5\,\text{Pa}$$
気体の法則では必ず絶対温度(K)を使います。
✕ 誤:$P_2 = 1.0 \times 10^5 \times \dfrac{127}{27}$(摂氏のまま代入)
○ 正:$P_2 = 1.0 \times 10^5 \times \dfrac{400}{300}$(273 を足して K に変換)
$T\,[\text{K}] = t\,[\text{°C}] + 273$ を忘れずに!
自動車のタイヤは走行中に温度が上がるため、内部の空気圧も上昇します。これは密閉容器の典型例です。タイヤが破裂する事故は、高温で圧力が許容範囲を超えることで起こります。
ピストン付きシリンダーでは、ピストンが自由に動くため体積が変化します。 気体の圧力は、ピストンの力のつりあいで決まります。
ピストンの質量を $m$、断面積を $S$、大気圧を $P_0$ とすると、
気体が下にある場合(ピストンが上にのっている):
$$P = P_0 + \frac{mg}{S}$$
気体が上にある場合(ピストンが下から支えている):
$$P = P_0 - \frac{mg}{S}$$
断面積 $S = 10\,\text{cm}^2 = 10 \times 10^{-4}\,\text{m}^2$ のシリンダーに、質量 $m = 2.0\,\text{kg}$ のピストンがのっている。大気圧 $P_0 = 1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$、$g = 9.8\,\text{m/s}^2$。
気体の圧力:$P = P_0 + \dfrac{mg}{S} = 1.0 \times 10^5 + \dfrac{2.0 \times 9.8}{10 \times 10^{-4}} = 1.0 \times 10^5 + 1.96 \times 10^4$
$$P \approx 1.2 \times 10^5\,\text{Pa}$$
ピストンが自由に動くので、加熱しても圧力はこの値のまま一定。体積だけが増加します。
摩擦のないピストンが自由に動けるとき、気体の圧力はピストンの力のつりあいで一意に決まり、温度が変わっても圧力は変わりません。
温度変化によって変わるのは体積のみ。これを理解していれば、ピストン問題は定圧変化として扱えます。
鉛直シリンダーでは、ピストンの重力が気体の圧力に影響します。
✕ 誤:ピストンが自由に動くから $P = P_0$(大気圧そのまま)
○ 正:ピストンの重さ分だけ圧力が変わる。$P = P_0 + mg/S$ または $P = P_0 - mg/S$
水平シリンダーのときだけ $P = P_0$ です。「鉛直か水平か」を必ず確認しましょう。
2つの容器がコックやバルブで連結されている問題や、気球のように外圧と内圧が等しい問題は、気体の物質量の保存がカギです。
体積 $V_A$ の容器A(圧力 $P_A$、温度 $T_A$)と体積 $V_B$ の容器B(圧力 $P_B$、温度 $T_B$)をコックで連結する場合:
温度が等しい場合、物質量の保存 $n_A + n_B = n_{\text{total}}$ より:
$$\frac{P_A V_A}{RT} + \frac{P_B V_B}{RT} = \frac{P(V_A + V_B)}{RT}$$
$$\therefore P = \frac{P_A V_A + P_B V_B}{V_A + V_B}$$
気球内の気体は外気圧と等しい圧力を持ちます(気球の膜は柔らかいため)。温度を上げると体積が膨張し、密度が下がって浮力が得られます。
気球内の空気を加熱すると、$PV = nRT$ で $P$ 一定(外気圧)のまま $T$ が上がるため $V$ が増加します。しかし気球は開口部があるので、膨張した分の空気が外に出て内部の空気の質量が減少します。結果として気球内の空気の密度が外気より小さくなり、浮力で上昇します。
気体の法則の典型問題は、装置ごとのパターンを整理することが攻略のカギです。
Q1. 密閉容器(体積一定)で気体を加熱すると、圧力はどう変化しますか。理由とともに答えてください。
Q2. 鉛直シリンダーで気体の上にピストンがのっている場合、気体の圧力の式を書いてください。
Q3. 気体の法則で温度に摂氏(°C)を使ってはいけない理由を説明してください。
Q4. 2つの容器をコックで連結する問題で保存される量は何ですか。
気体の法則の典型問題を入試形式で確認しましょう。
体積一定の密閉容器に、$27\,\text{°C}$ で $2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ の気体が入っている。この気体を $327\,\text{°C}$ に加熱すると圧力はいくらになるか。
$P_2 = 4.0 \times 10^5\,\text{Pa}$
$T_1 = 27 + 273 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 327 + 273 = 600\,\text{K}$
$V$ 一定なので:$P_2 = P_1 \times \dfrac{T_2}{T_1} = 2.0 \times 10^5 \times \dfrac{600}{300} = 4.0 \times 10^5\,\text{Pa}$
断面積 $S = 20\,\text{cm}^2$ の鉛直シリンダーに、質量 $m = 5.0\,\text{kg}$ のピストンがのっている。大気圧 $P_0 = 1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$、$g = 10\,\text{m/s}^2$ とする。
(1) 気体の圧力を求めよ。
(2) $27\,\text{°C}$ で体積が $200\,\text{cm}^3$ のとき、$127\,\text{°C}$ に加熱すると体積はいくらになるか。
(1) $P = 1.25 \times 10^5\,\text{Pa}$
(2) $V_2 \approx 267\,\text{cm}^3$
(1) $P = P_0 + \dfrac{mg}{S} = 1.0 \times 10^5 + \dfrac{5.0 \times 10}{20 \times 10^{-4}} = 1.0 \times 10^5 + 2.5 \times 10^4 = 1.25 \times 10^5\,\text{Pa}$
(2) ピストンは自由に動くので圧力は一定。$T_1 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 400\,\text{K}$
$\dfrac{V_1}{T_1} = \dfrac{V_2}{T_2}$ → $V_2 = 200 \times \dfrac{400}{300} = \dfrac{800}{3} \approx 267\,\text{cm}^3$
体積 $V_A = 2.0\,\text{L}$ の容器Aに $3.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ の気体、体積 $V_B = 3.0\,\text{L}$ の容器Bに $1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ の気体がそれぞれ同温度 $T$ で入っている。コックを開いて気体を混合した後の圧力を求めよ。温度は変わらないものとする。
$P = 1.8 \times 10^5\,\text{Pa}$
温度一定なので、物質量保存から:
$$P = \frac{P_A V_A + P_B V_B}{V_A + V_B} = \frac{3.0 \times 10^5 \times 2.0 + 1.0 \times 10^5 \times 3.0}{2.0 + 3.0}$$
$$= \frac{6.0 \times 10^5 + 3.0 \times 10^5}{5.0} = \frac{9.0 \times 10^5}{5.0} = 1.8 \times 10^5\,\text{Pa}$$