第14章 気体の状態変化

p-Vグラフと状態変化
─ グラフの読み方

p-Vグラフ(圧力-体積グラフ)は、気体の状態変化を視覚化する最強のツールです。
各状態変化がどのような曲線で表されるか、そして曲線と体積軸に挟まれた面積が仕事を表すことを理解すれば、複雑な問題も見通しよく解けます。

1p-Vグラフの基本

p-Vグラフとは、横軸に体積 $V$、縦軸に圧力 $p$ をとったグラフです。気体の状態は p-V グラフ上の1点として表されます。

状態方程式 $pV = nRT$ より、同じ温度の状態は $pV = \text{一定}$ の双曲線(等温線)上にあります。右上にある等温線ほど高温です。

💡 ここが本質:p-Vグラフは「状態の地図」

p-Vグラフ上の各点は気体の「状態」($p$, $V$, $T$ のセット)に対応します。状態変化はこの地図上の経路として描かれます。

グラフ上で右上に移動するほど $pV$ が大きくなるので温度が高く、左下に移動するほど温度が低くなります。

2各状態変化の曲線

状態変化 一定の量 p-Vグラフ上の形 法則
定積変化 $V = \text{一定}$ 縦の直線 $p/T = \text{一定}$
定圧変化 $p = \text{一定}$ 横の直線 $V/T = \text{一定}$
等温変化 $T = \text{一定}$ 双曲線(反比例) $pV = \text{一定}$
断熱変化 $Q = 0$ 等温線より急な曲線 $pV^\gamma = \text{一定}$
⚠️ 落とし穴:等温線と断熱線の区別

✕ 誤:等温変化と断熱変化のグラフは同じ形

○ 正:断熱線の方が等温線より急勾配。同じ体積変化に対して圧力変化が大きい

断熱膨張では温度低下も加わるため、圧力がより大きく下がるのが理由です。

温度の読み取り方

p-Vグラフ上で温度を直接読むことはできませんが、$pV = nRT$ より $pV$ の積が大きいほど温度が高いと判断できます。

等温線を何本か書き入れれば、ある状態がどの温度に対応するかがわかります。

3面積 = 仕事

📐 p-Vグラフの面積と仕事

p-Vグラフで曲線と体積軸($V$ 軸)に挟まれた面積が、気体が外部にした仕事 $W$ に等しい。

$$W = \int_{V_1}^{V_2} p\,dV = \text{(p-Vグラフの面積)}$$

膨張($V_1 \to V_2$、右に進む):面積は正($W > 0$)
圧縮($V_2 \to V_1$、左に進む):面積は負($W < 0$)
💡 ここが本質:「面積 = 仕事」を使いこなす

この関係は気体の状態変化すべてに適用できる万能のルールです。

定圧変化:長方形の面積 $= p\Delta V$

等温変化:双曲線の下の面積

定積変化:面積ゼロ($W = 0$)

閉じた経路(サイクル):囲まれた面積 = 1サイクルの正味の仕事

🔬 深掘り:なぜ面積が仕事になるのか

仕事は $W = F \cdot \Delta x$ です。ピストンの断面積 $S$ を使うと、$F = pS$ かつ $\Delta V = S\Delta x$ なので、

$W = pS \cdot \Delta x = p \cdot S\Delta x = p \cdot \Delta V$

圧力が変化する場合は微小量の和(積分)になりますが、グラフ上では面積として視覚化できます。

4グラフから読み取る情報

p-Vグラフからは仕事以外にも多くの情報を読み取ることができます。

温度の高低

$T = pV/(nR)$ なので、グラフ上で $pV$ の積が大きい点ほど温度が高い。右上ほど高温、左下ほど低温です。

変化の種類の判別

  • 縦線 → 定積変化
  • 横線 → 定圧変化
  • $pV = \text{一定}$ の双曲線 → 等温変化
  • 等温線より急な曲線 → 断熱変化
  • 原点を通る直線 → $p \propto V$、つまり $T \propto V^2$ の変化
⚠️ 落とし穴:面積の「符号」を忘れる

✕ 誤:グラフの面積を常に正として仕事を求める

○ 正:右に進む(膨張)なら $W > 0$、左に進む(圧縮)なら $W < 0$

サイクル問題では、時計回りなら正味の仕事は正、反時計回りなら負です。

5この章を俯瞰する

p-Vグラフは熱力学の入試問題の「共通言語」です。グラフを読み解く力が、熱力学の得点を大きく左右します。

つながりマップ

  • ← T-4-2〜T-4-5 各状態変化:各変化のp-Vグラフ上の形を総整理。
  • ← T-4-1 熱力学第一法則:面積(仕事)と組み合わせて $Q$、$\Delta U$ を求める。
  • → T-4-8 熱サイクル:閉曲線の面積が1サイクルの正味の仕事。
  • → T-4-9 熱機関:カルノーサイクルのp-Vグラフが登場。

📋まとめ

  • p-Vグラフ:横軸 $V$、縦軸 $p$。状態変化は曲線で表される
  • 定積=縦線、定圧=横線、等温=双曲線、断熱=等温より急な曲線
  • 面積 = 仕事:曲線と $V$ 軸に挟まれた面積が気体のした仕事
  • 膨張(右へ)で $W > 0$、圧縮(左へ)で $W < 0$
  • 温度は $pV/(nR)$ で判断。右上ほど高温
  • サイクルの正味の仕事 = 閉曲線で囲まれた面積

確認テスト

Q1. p-Vグラフ上で定積変化、定圧変化はそれぞれどのような形で表されますか。

▶ クリックして解答を表示定積変化は縦の直線($V$ 一定)、定圧変化は横の直線($p$ 一定)です。

Q2. p-Vグラフで「曲線と体積軸に挟まれた面積」は何を表しますか。

▶ クリックして解答を表示気体が外部にした仕事 $W$ を表します。

Q3. 同じ初期状態から体積を2倍にするとき、等温変化と断熱変化ではどちらの最終圧力が高いですか。

▶ クリックして解答を表示等温変化の方が高い。断熱変化では温度低下も圧力を下げるため、等温線より下に来ます。

Q4. p-Vグラフ上で、ある状態の温度を比較するにはどうすればよいですか。

▶ クリックして解答を表示$T = pV/(nR)$ なので、$pV$ の積が大きい点ほど温度が高い。等温線を描けば温度を視覚的に判断できます。

8入試問題演習

p-Vグラフの読み取りを入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-7-1 A 基礎 p-Vグラフ仕事

理想気体を圧力 $2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ 一定のもとで、体積 $1.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3$ から $3.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3$ まで膨張させた。p-Vグラフの面積から気体がした仕事を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$W = 400\,\text{J}$

解説

定圧変化なのでp-Vグラフは横線。面積は長方形。

$W = p\Delta V = 2.0 \times 10^5 \times (3.0 - 1.0) \times 10^{-3} = 2.0 \times 10^5 \times 2.0 \times 10^{-3} = 400\,\text{J}$

B 発展レベル

4-7-2 B 発展 温度比較グラフ読み取り

理想気体がp-Vグラフ上で状態A($p_0$, $V_0$)→ 状態B($2p_0$, $V_0$)→ 状態C($2p_0$, $2V_0$)と変化した。

(1) A→Bは何変化か。B→Cは何変化か。

(2) A, B, Cの温度を $T_A$ として表せ。

(3) A→B→C全体で気体がした仕事を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) A→B:定積変化、B→C:定圧変化

(2) $T_B = 2T_A$、$T_C = 4T_A$

(3) $W = 2p_0V_0$

解説

(1) A→Bは体積一定($V_0$)なので定積変化。B→Cは圧力一定($2p_0$)なので定圧変化。

(2) $pV = nRT$ より $T \propto pV$。$T_A \propto p_0V_0$、$T_B \propto 2p_0V_0 = 2T_A$、$T_C \propto 2p_0 \cdot 2V_0 = 4p_0V_0 = 4T_A$

(3) A→B:定積変化で $W_1 = 0$。B→C:定圧変化で $W_2 = 2p_0(2V_0 - V_0) = 2p_0V_0$。合計 $W = 2p_0V_0$

採点ポイント
  • 変化の種類の判別(各2点)
  • 温度の比較(3点)
  • 仕事の計算(3点)

C 応用レベル

4-7-3 C 応用 p-Vグラフ第一法則

単原子分子理想気体 $n\,\text{mol}$ が状態A($p_0$, $V_0$, $T_0$)から、直線的に状態B($2p_0$, $2V_0$)に変化した。$R$ と $T_0$ を用いて以下を求めよ。

(1) 状態Bの温度

(2) A→Bで気体がした仕事 $W$

(3) 内部エネルギーの変化 $\Delta U$

(4) 気体が吸収した熱量 $Q$

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $4T_0$

(2) $W = \frac{3}{2}nRT_0$

(3) $\Delta U = \frac{9}{2}nRT_0$

(4) $Q = 6nRT_0$

解説

(1) $T_B = p_B V_B/(nR) = 2p_0 \cdot 2V_0/(nR) = 4p_0V_0/(nR)$。$T_0 = p_0V_0/(nR)$ なので $T_B = 4T_0$。

(2) 直線A→Bの下の面積(台形):$W = \frac{1}{2}(p_0 + 2p_0)(2V_0 - V_0) = \frac{3}{2}p_0V_0 = \frac{3}{2}nRT_0$

(3) $\Delta U = nC_v\Delta T = \frac{3}{2}nR(4T_0 - T_0) = \frac{9}{2}nRT_0$

(4) $Q = \Delta U + W = \frac{9}{2}nRT_0 + \frac{3}{2}nRT_0 = 6nRT_0$

採点ポイント
  • 温度の計算(2点)
  • 台形の面積計算(3点)
  • $\Delta U$ の計算(3点)
  • 第一法則の適用(2点)