p-Vグラフ(圧力-体積グラフ)は、気体の状態変化を視覚化する最強のツールです。
各状態変化がどのような曲線で表されるか、そして曲線と体積軸に挟まれた面積が仕事を表すことを理解すれば、複雑な問題も見通しよく解けます。
p-Vグラフとは、横軸に体積 $V$、縦軸に圧力 $p$ をとったグラフです。気体の状態は p-V グラフ上の1点として表されます。
状態方程式 $pV = nRT$ より、同じ温度の状態は $pV = \text{一定}$ の双曲線(等温線)上にあります。右上にある等温線ほど高温です。
p-Vグラフ上の各点は気体の「状態」($p$, $V$, $T$ のセット)に対応します。状態変化はこの地図上の経路として描かれます。
グラフ上で右上に移動するほど $pV$ が大きくなるので温度が高く、左下に移動するほど温度が低くなります。
| 状態変化 | 一定の量 | p-Vグラフ上の形 | 法則 |
|---|---|---|---|
| 定積変化 | $V = \text{一定}$ | 縦の直線 | $p/T = \text{一定}$ |
| 定圧変化 | $p = \text{一定}$ | 横の直線 | $V/T = \text{一定}$ |
| 等温変化 | $T = \text{一定}$ | 双曲線(反比例) | $pV = \text{一定}$ |
| 断熱変化 | $Q = 0$ | 等温線より急な曲線 | $pV^\gamma = \text{一定}$ |
✕ 誤:等温変化と断熱変化のグラフは同じ形
○ 正:断熱線の方が等温線より急勾配。同じ体積変化に対して圧力変化が大きい
断熱膨張では温度低下も加わるため、圧力がより大きく下がるのが理由です。
p-Vグラフ上で温度を直接読むことはできませんが、$pV = nRT$ より $pV$ の積が大きいほど温度が高いと判断できます。
等温線を何本か書き入れれば、ある状態がどの温度に対応するかがわかります。
p-Vグラフで曲線と体積軸($V$ 軸)に挟まれた面積が、気体が外部にした仕事 $W$ に等しい。
$$W = \int_{V_1}^{V_2} p\,dV = \text{(p-Vグラフの面積)}$$
この関係は気体の状態変化すべてに適用できる万能のルールです。
定圧変化:長方形の面積 $= p\Delta V$
等温変化:双曲線の下の面積
定積変化:面積ゼロ($W = 0$)
閉じた経路(サイクル):囲まれた面積 = 1サイクルの正味の仕事
仕事は $W = F \cdot \Delta x$ です。ピストンの断面積 $S$ を使うと、$F = pS$ かつ $\Delta V = S\Delta x$ なので、
$W = pS \cdot \Delta x = p \cdot S\Delta x = p \cdot \Delta V$
圧力が変化する場合は微小量の和(積分)になりますが、グラフ上では面積として視覚化できます。
p-Vグラフからは仕事以外にも多くの情報を読み取ることができます。
$T = pV/(nR)$ なので、グラフ上で $pV$ の積が大きい点ほど温度が高い。右上ほど高温、左下ほど低温です。
✕ 誤:グラフの面積を常に正として仕事を求める
○ 正:右に進む(膨張)なら $W > 0$、左に進む(圧縮)なら $W < 0$
サイクル問題では、時計回りなら正味の仕事は正、反時計回りなら負です。
p-Vグラフは熱力学の入試問題の「共通言語」です。グラフを読み解く力が、熱力学の得点を大きく左右します。
Q1. p-Vグラフ上で定積変化、定圧変化はそれぞれどのような形で表されますか。
Q2. p-Vグラフで「曲線と体積軸に挟まれた面積」は何を表しますか。
Q3. 同じ初期状態から体積を2倍にするとき、等温変化と断熱変化ではどちらの最終圧力が高いですか。
Q4. p-Vグラフ上で、ある状態の温度を比較するにはどうすればよいですか。
p-Vグラフの読み取りを入試形式で確認しましょう。
理想気体を圧力 $2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ 一定のもとで、体積 $1.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3$ から $3.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3$ まで膨張させた。p-Vグラフの面積から気体がした仕事を求めよ。
$W = 400\,\text{J}$
定圧変化なのでp-Vグラフは横線。面積は長方形。
$W = p\Delta V = 2.0 \times 10^5 \times (3.0 - 1.0) \times 10^{-3} = 2.0 \times 10^5 \times 2.0 \times 10^{-3} = 400\,\text{J}$
理想気体がp-Vグラフ上で状態A($p_0$, $V_0$)→ 状態B($2p_0$, $V_0$)→ 状態C($2p_0$, $2V_0$)と変化した。
(1) A→Bは何変化か。B→Cは何変化か。
(2) A, B, Cの温度を $T_A$ として表せ。
(3) A→B→C全体で気体がした仕事を求めよ。
(1) A→B:定積変化、B→C:定圧変化
(2) $T_B = 2T_A$、$T_C = 4T_A$
(3) $W = 2p_0V_0$
(1) A→Bは体積一定($V_0$)なので定積変化。B→Cは圧力一定($2p_0$)なので定圧変化。
(2) $pV = nRT$ より $T \propto pV$。$T_A \propto p_0V_0$、$T_B \propto 2p_0V_0 = 2T_A$、$T_C \propto 2p_0 \cdot 2V_0 = 4p_0V_0 = 4T_A$
(3) A→B:定積変化で $W_1 = 0$。B→C:定圧変化で $W_2 = 2p_0(2V_0 - V_0) = 2p_0V_0$。合計 $W = 2p_0V_0$
単原子分子理想気体 $n\,\text{mol}$ が状態A($p_0$, $V_0$, $T_0$)から、直線的に状態B($2p_0$, $2V_0$)に変化した。$R$ と $T_0$ を用いて以下を求めよ。
(1) 状態Bの温度
(2) A→Bで気体がした仕事 $W$
(3) 内部エネルギーの変化 $\Delta U$
(4) 気体が吸収した熱量 $Q$
(1) $4T_0$
(2) $W = \frac{3}{2}nRT_0$
(3) $\Delta U = \frac{9}{2}nRT_0$
(4) $Q = 6nRT_0$
(1) $T_B = p_B V_B/(nR) = 2p_0 \cdot 2V_0/(nR) = 4p_0V_0/(nR)$。$T_0 = p_0V_0/(nR)$ なので $T_B = 4T_0$。
(2) 直線A→Bの下の面積(台形):$W = \frac{1}{2}(p_0 + 2p_0)(2V_0 - V_0) = \frac{3}{2}p_0V_0 = \frac{3}{2}nRT_0$
(3) $\Delta U = nC_v\Delta T = \frac{3}{2}nR(4T_0 - T_0) = \frac{9}{2}nRT_0$
(4) $Q = \Delta U + W = \frac{9}{2}nRT_0 + \frac{3}{2}nRT_0 = 6nRT_0$