波は媒質の振動が伝わる現象ですが、振動の方向と波の進行方向の関係によって、大きく2種類に分類されます。
ロープを振ったときの波と、ばねを押したときの波は、見た目も性質も異なります。
ここでは横波と縦波の違いを明確にし、それぞれの特徴を理解しましょう。
横波とは、媒質の振動方向が波の進行方向に垂直な波です。 ロープの一端を上下に振ると、波は横に進んでいきますが、ロープの各点は上下に振動しています。このときの波が横波です。
媒質の振動方向と波の進行方向が垂直である波
横波では、波形がそのまま目に見える形で現れます。 山(最も高い点)と谷(最も低い点)が交互に並び、波長 $\lambda$ や振幅 $A$ を直接読み取ることができます。
横波は媒質が進行方向と垂直にずれることで伝わります。このとき、ずれを元に戻す力(せん断応力)が必要です。
固体はせん断に対して復元力を持つため横波が伝わりますが、液体・気体はせん断に対して復元力を持たないため、横波は固体中でしか伝わりません(電磁波は媒質不要なので例外)。
縦波とは、媒質の振動方向が波の進行方向に平行な波です。 ばねの一端を押したり引いたりすると、密な部分と疎な部分が波として伝わっていきます。このときの波が縦波です。
媒質の振動方向と波の進行方向が平行である波
縦波では、媒質が密に集まっている部分を密、まばらになっている部分を疎と呼びます。 密と疎が交互に並んで進行するため、縦波は疎密波とも呼ばれます。
縦波を横波表示したとき、密や疎が山や谷に対応すると考えがちですが、これは誤りです。
✕ 誤:密=山、疎=谷
○ 正:密=変位が0で正から負に変わる点、疎=変位が0で負から正に変わる点
正しい対応関係はセクション3で詳しく説明します。
空気中で音が伝わるとき、空気分子は波の進行方向に前後に振動します。分子が押し合って密になった部分が隣に圧力を伝え、その隣が密になる…という連鎖で波が進みます。
空気はせん断応力に対する復元力を持たないため、横方向の振動は伝えられません。だから音波は縦波なのです。
縦波はそのままでは波形を描きにくいため、各媒質点の変位を進行方向と垂直に描くことで、横波のように表示する方法があります。これを縦波の横波表示といいます。
波の進行方向を右とするとき、各媒質点の変位(つりあいの位置からのずれ)を次のように変換します。
密:横波表示で変位が $0$ を正→負に横切る点(右下がりの部分)
疎:横波表示で変位が $0$ を負→正に横切る点(右上がりの部分)
ある点で変位が正→負に変わるとき、その点より左の粒子は右にずれ、右の粒子は左にずれています。
つまり左右から粒子が寄り集まっているので、その点は密になります。
逆に、変位が負→正に変わる点では、左の粒子は左へ、右の粒子は右へずれているので、粒子が離れ合い、疎になります。
横波表示はあくまで「各点の変位を上下に描き直した」だけです。実際の縦波の粒子は進行方向に振動しています。
グラフの山・谷は変位が最大の点であり、密や疎ではありません。密・疎は変位が $0$ の特定の点です。この区別を明確にしましょう。
横波と縦波の違いを、具体例を通じて整理しましょう。
| 分類 | 具体例 | 媒質 | 伝わる条件 |
|---|---|---|---|
| 横波 | ロープの波 | ロープ | 張力が必要 |
| 横波 | 地震の S 波 | 固体(地殻) | 固体中のみ |
| 横波 | 光(電磁波) | 不要(真空可) | どこでも伝わる |
| 縦波 | 音波 | 気体・液体・固体 | 媒質が必要 |
| 縦波 | ばねの疎密波 | ばね | 弾性が必要 |
| 縦波 | 地震の P 波 | 固体・液体 | 広く伝わる |
地震ではP波(Primary)とS波(Secondary)の両方が発生します。
✕ 誤:地震波はすべて同じ種類
○ 正:P波は縦波で速い(先に到達)、S波は横波で遅い(後から到達)
P波は固体・液体を伝わりますが、S波は固体中のみ伝わります。地球の外核が液体であることは、S波が外核を通過しないことからわかりました。
水面波は一見横波に見えますが、実は横波と縦波の複合です。水面の各点は円運動(楕円運動)をしています。
上下の振動(横波的)と前後の振動(縦波的)が同時に起きているのです。高校物理では水面波を横波として扱うことが多いですが、厳密には複合波であることを知っておきましょう。
横波と縦波の分類は、波の性質を理解するための基礎です。
Q1. 横波と縦波の違いを、振動方向と進行方向の関係で説明してください。
Q2. 音波は横波・縦波のどちらですか。その理由も答えてください。
Q3. 縦波の横波表示で、「密」はどのような位置に対応しますか。
Q4. 地震のP波とS波について、波の種類と速さの大小を答えてください。
横波と縦波に関する入試形式の問題で理解を確認しましょう。
次の波を横波と縦波に分類せよ。
(1) ギターの弦の振動
(2) 空気中を伝わる音
(3) 光(電磁波)
(4) 地震の P 波
(1) 横波 (2) 縦波 (3) 横波 (4) 縦波
(1) 弦は進行方向と垂直に振動するため横波。
(2) 空気分子が波の進行方向に振動するため縦波。
(3) 電磁波は電場・磁場が進行方向に垂直に振動するため横波。
(4) P波は媒質が進行方向に振動する縦波。Primary(最初に到達する)の意味。
右向きに進む縦波の横波表示が与えられている。変位が正の最大値をとる点を A、変位が $0$ で右下がりに横切る点を B、変位が負の最大値をとる点を C とする。
(1) 密になっている点はどこか。
(2) 疎になっている点はどこか。
(1) B(密) (2) Bの半波長先の変位0の点(疎)
(1) 点Bでは変位が正→負に変わる。Bより左の粒子は右にずれ、Bより右の粒子は左にずれているので、粒子が集まって密になる。
(2) 疎は変位が負→正に変わる点。Bから半波長だけ進んだ変位 $0$ の点で、粒子が左右に離れ合っている。
点A(変位最大)は最も右にずれた点であり、密でも疎でもない。
右向きに進む縦波の横波表示において、ある瞬間に変位が正の最大値をとる点 P がある。この瞬間の点 P の速度の向き(右・左・速度0のいずれか)を答えよ。
速度 $0$
変位が最大値をとる点は、振動の折り返し点です。振動が最も右にずれた瞬間であり、これから左に戻り始めます。
折り返し点では瞬間的に速度は $0$ です。これは単振動の端点と同じ考え方です。
横波表示の「山の頂点」は変位最大=折り返し点=速度0 と覚えましょう。
右向きに進む縦波の横波表示が $y = A\sin\left(\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ で与えられている。$x = \dfrac{\lambda}{4}$ と $x = \dfrac{3\lambda}{4}$ のそれぞれが密・疎のどちらに対応するか答えよ。
$x = \dfrac{\lambda}{4}$:密ではない(変位最大の点)
$x = \dfrac{\lambda}{2}$:密
$x = \dfrac{3\lambda}{4}$:密ではない(変位最小の点)
$y = A\sin\left(\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ について考える。
$x = \dfrac{\lambda}{4}$ では $y = A$(正の最大)であり、密でも疎でもない。
$x = \dfrac{3\lambda}{4}$ では $y = -A$(負の最大)であり、密でも疎でもない。
密は $y = 0$ かつ傾き($\dfrac{dy}{dx}$)が負の点。$x = \dfrac{\lambda}{2}$ では $y = 0$ かつ $\dfrac{dy}{dx} < 0$ なので密。$x = 0$(および $\lambda$)では $y = 0$ かつ $\dfrac{dy}{dx} > 0$ なので疎。
地震のP波は固体・液体の両方を伝わるが、S波は固体中のみ伝わる。この性質を利用して、地球の外核が液体であることがどのように推定されたか、100字以内で説明せよ。
地震波の観測により、S波(横波)が地球の外核を通過できないことがわかった。横波は固体中でしか伝わらないため、外核は液体であると推定された。一方P波(縦波)は外核を通過する。
S波は横波であり、せん断応力に対する復元力が必要なため固体中でしか伝わりません。
地震波観測で、ある角度範囲にS波が到達しない「シャドーゾーン」が見つかり、S波が外核を通過できないことが判明しました。
P波(縦波)は外核を通過するが屈折するため、P波にもシャドーゾーンがあります(ただし完全に遮断されるわけではない)。
右向きに進む縦波があり、ある瞬間の横波表示が下図のように与えられている(1波長分の正弦波)。波長を $\lambda$、振幅を $A$ とする。
(1) この瞬間に最も密になっている位置の $x$ 座標を答えよ。
(2) $x = 0$ の点の、この瞬間の速度の向きを答えよ。
(3) この波が $\dfrac{T}{4}$($T$は周期)だけ時間が経過した後の横波表示の概形を描け。
(1) $x = \dfrac{\lambda}{2}$
(2) 右向き
(3) 正弦波が右に $\dfrac{\lambda}{4}$ だけ移動した形
(1) 横波表示で $y$ が正→負に変わる点(傾きが負の $y = 0$ の点)が密。$y = A\sin\left(\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ なら $x = \dfrac{\lambda}{2}$ が該当する。
(2) 波は右に進む。$x = 0$ は $y = 0$ かつ傾き正(疎の点)。波が右に進むと、この点は次の瞬間に正の変位を持つので、この点の速度は右向き(正)。
(3) 右向きに進む波なので、$\dfrac{T}{4}$ 後には $v \times \dfrac{T}{4} = \dfrac{\lambda}{4}$ だけ右に移動した正弦波になる。