波がどのくらいの速さで進むのか。これは波を定量的に扱ううえで最も基本的な関係式です。
振動数(周波数)$f$、波長 $\lambda$、周期 $T$ という量がどう結びつくのかを理解し、
$v = f\lambda$ を自在に使いこなせるようにしましょう。
波の速さとは、波形(山や谷のパターン)が単位時間あたりに進む距離です。 個々の媒質点が移動する速さ(振動の速さ)とは全く異なるので注意しましょう。
✕ 誤:波の速さ=媒質が動く速さ
○ 正:波の速さ=波形(パターン)が伝わる速さ
スタジアムのウェーブを想像してください。観客(媒質)は立ったり座ったりするだけですが、波のパターンはスタジアムを高速で一周します。波の速さと媒質の速さは別物です。
波の速さは通常 $v$(velocity)で表し、単位は $\text{m/s}$ です。
波は1周期 $T$ の間に1波長 $\lambda$ だけ進みます。これが $v = f\lambda$ の出発点です。
波形は1周期 $T$ の間に1波長 $\lambda$ だけ進むから、
$$v = \frac{\lambda}{T}$$
振動数(周波数)$f$ は周期の逆数なので $f = \dfrac{1}{T}$、すなわち $T = \dfrac{1}{f}$ を代入すると、
$$v = \frac{\lambda}{1/f} = f\lambda$$
$$v = f\lambda = \frac{\lambda}{T}$$
この式は物理法則ではなく、波長・振動数・速さの定義から自動的に出てくる関係です。
「1秒間に $f$ 回振動し、1回の振動で $\lambda$ だけ進む。だから1秒間に $f\lambda$ 進む」──これだけです。横波でも縦波でも、水面波でも音波でも光でも、すべての波に成り立ちます。
$v = f\lambda$ は常に成り立ちますが、波の速さ $v$ を実際に決めているのは何でしょうか。
波の速さは媒質の性質(弾性率、密度など)で決まり、振動数や振幅には依存しません。
✕ 誤:振動数を2倍にすると波の速さも2倍になる
○ 正:波の速さは媒質で決まるため変わらない。振動数が2倍になると波長が半分になる
$v = f\lambda$ で $v$ が一定なら、$f$ が増えれば $\lambda$ は減ります。速さは振動数に依存しません(分散のある特殊な場合を除く)。
波が媒質の境界を通過するとき、振動数 $f$ は変わらず、波の速さ $v$ と波長 $\lambda$ が変わります。 これは波の屈折の原因にもなります。
境界で振動数が変わらない理由は直感的です。境界面の1点は、入射波に押されて振動しています。その振動がそのまま透過波の振動源になるので、振動数は同じです。
$v_1 = f\lambda_1$、$v_2 = f\lambda_2$ から、$\dfrac{v_1}{v_2} = \dfrac{\lambda_1}{\lambda_2}$ が成り立ちます。
空気中の音速は近似的に次の式で表されます。
$v \approx 331.5 + 0.6\,t \quad [\text{m/s}]$
$t$ は摂氏温度 [$°\text{C}$] です。$15\,°\text{C}$ で $v \approx 340\,\text{m/s}$、$0\,°\text{C}$ で $v \approx 331.5\,\text{m/s}$ です。
入試では「音速 $340\,\text{m/s}$」と与えられることが多いですが、温度から求めさせる問題もあります。
$v = f\lambda$ を使った典型的な計算例を確認しましょう。
振動数 $f = 440\,\text{Hz}$、波長 $\lambda = 0.773\,\text{m}$ の音波の速さは、
$$v = f\lambda = 440 \times 0.773 = 340\,\text{m/s}$$
速さ $v = 340\,\text{m/s}$、振動数 $f = 680\,\text{Hz}$ の音波の波長は、
$$\lambda = \frac{v}{f} = \frac{340}{680} = 0.50\,\text{m}$$
周期 $T = 0.0025\,\text{s}$、波長 $\lambda = 0.85\,\text{m}$ の波の速さは、
$$v = \frac{\lambda}{T} = \frac{0.85}{0.0025} = 340\,\text{m/s}$$
$v = f\lambda$ の単位を確認しましょう。$[\text{Hz}] \times [\text{m}] = [\text{s}^{-1}] \times [\text{m}] = [\text{m/s}]$
計算結果の単位が $\text{m/s}$ になっているか確認する習慣をつけると、桁違いや単位の変換ミスを防げます。
$v = f\lambda$ は波のすべての分野で使われる最重要公式の一つです。
Q1. 波の速さの公式を、振動数 $f$ と波長 $\lambda$ を用いて書いてください。
Q2. 振動数 $500\,\text{Hz}$、波長 $0.68\,\text{m}$ の音波の速さを求めてください。
Q3. 波が異なる媒質に入ったとき、変わらない量は $v$、$f$、$\lambda$ のうちどれですか。
Q4. 波の速さは振動数によらず一定です。振動数を2倍にすると波長はどうなりますか。
波の速さに関する入試形式の問題で理解を確認しましょう。
振動数 $200\,\text{Hz}$、波長 $1.7\,\text{m}$ の音波がある。
(1) この音波の速さを求めよ。
(2) この音波の周期を求めよ。
(1) $v = 340\,\text{m/s}$
(2) $T = 5.0 \times 10^{-3}\,\text{s}$
(1) $v = f\lambda = 200 \times 1.7 = 340\,\text{m/s}$
(2) $T = \dfrac{1}{f} = \dfrac{1}{200} = 0.0050\,\text{s} = 5.0 \times 10^{-3}\,\text{s}$
空気中の音速を $340\,\text{m/s}$ とする。人間の可聴域は $20\,\text{Hz}$ から $20000\,\text{Hz}$ である。この振動数範囲に対応する波長の範囲を求めよ。
$0.017\,\text{m}$ から $17\,\text{m}$
$f = 20\,\text{Hz}$ のとき:$\lambda = \dfrac{v}{f} = \dfrac{340}{20} = 17\,\text{m}$
$f = 20000\,\text{Hz}$ のとき:$\lambda = \dfrac{340}{20000} = 0.017\,\text{m}$
低い音ほど波長が長く、高い音ほど波長が短い。
振動数 $440\,\text{Hz}$ の音叉を空気中で鳴らしたところ、音速が $340\,\text{m/s}$ の空気中での波長は $\lambda_1$ であった。同じ音叉を水中で鳴らしたとき(水中の音速 $1500\,\text{m/s}$)、波長 $\lambda_2$ を求めよ。また $\dfrac{\lambda_2}{\lambda_1}$ を求めよ。
$\lambda_1 \approx 0.773\,\text{m}$、$\lambda_2 \approx 3.41\,\text{m}$、$\dfrac{\lambda_2}{\lambda_1} \approx 4.4$
振動数は音源(音叉)で決まるため、媒質が変わっても $f = 440\,\text{Hz}$ のまま。
$\lambda_1 = \dfrac{v_1}{f} = \dfrac{340}{440} \approx 0.773\,\text{m}$
$\lambda_2 = \dfrac{v_2}{f} = \dfrac{1500}{440} \approx 3.41\,\text{m}$
$\dfrac{\lambda_2}{\lambda_1} = \dfrac{v_2}{v_1} = \dfrac{1500}{340} \approx 4.4$
長さ $1.2\,\text{m}$、質量 $3.0 \times 10^{-3}\,\text{kg}$ の弦に $48\,\text{N}$ の張力をかけた。弦を伝わる波の速さを求めよ。
$v \approx 139\,\text{m/s}$
線密度 $\rho = \dfrac{m}{L} = \dfrac{3.0 \times 10^{-3}}{1.2} = 2.5 \times 10^{-3}\,\text{kg/m}$
$v = \sqrt{\dfrac{S}{\rho}} = \sqrt{\dfrac{48}{2.5 \times 10^{-3}}} = \sqrt{19200} \approx 139\,\text{m/s}$
張力が大きいほど、線密度が小さいほど、波は速く伝わる。
振動数 $f$ の音叉を鳴らし、温度 $t_1 = 15\,°\text{C}$ の空気中で波長を測定したところ $\lambda_1 = 0.80\,\text{m}$ であった。温度を $t_2 = 35\,°\text{C}$ に上げたとき、波長 $\lambda_2$ を求めよ。音速は $v = 331.5 + 0.6\,t$($t$ は摂氏温度)で与えられるとする。
$\lambda_2 \approx 0.835\,\text{m}$
$v_1 = 331.5 + 0.6 \times 15 = 340.5\,\text{m/s}$
$v_2 = 331.5 + 0.6 \times 35 = 352.5\,\text{m/s}$
振動数 $f$ は音叉が決めるので温度によらず一定。$f = \dfrac{v_1}{\lambda_1} = \dfrac{340.5}{0.80} = 425.6\,\text{Hz}$
$\lambda_2 = \dfrac{v_2}{f} = \dfrac{352.5}{425.6} \approx 0.828\,\text{m}$
あるいは $\dfrac{\lambda_2}{\lambda_1} = \dfrac{v_2}{v_1}$ から $\lambda_2 = 0.80 \times \dfrac{352.5}{340.5} \approx 0.828\,\text{m}$
長さ $L$ の弦に張力 $S$ をかけて振動させたとき、基本振動の振動数は $f_1 = \dfrac{1}{2L}\sqrt{\dfrac{S}{\rho}}$ で表される($\rho$ は線密度)。張力を4倍にすると基本振動数は何倍になるか。また、弦の長さを半分にすると何倍になるか。
張力4倍:振動数は $2$ 倍。長さ半分:振動数は $2$ 倍。
$f_1 = \dfrac{1}{2L}\sqrt{\dfrac{S}{\rho}}$ において、
張力を4倍($S \to 4S$)にすると:$f_1' = \dfrac{1}{2L}\sqrt{\dfrac{4S}{\rho}} = 2 \cdot \dfrac{1}{2L}\sqrt{\dfrac{S}{\rho}} = 2f_1$
長さを半分($L \to \dfrac{L}{2}$)にすると:$f_1' = \dfrac{1}{2 \cdot L/2}\sqrt{\dfrac{S}{\rho}} = \dfrac{1}{L}\sqrt{\dfrac{S}{\rho}} = 2f_1$
ギターで弦を押さえて短くすると音が高くなり、ペグを回して張力を上げても音が高くなるのは、この関係による。