ドップラー効果の全パターンを横断的に演習します。音源が動く場合、観測者が動く場合、両方が動く場合、壁での反射 ── これらを正しく使い分ける力が入試では問われます。
公式を丸暗記するのではなく、各状況で「誰が音源か」「誰が観測者か」「近づくのか遠ざかるのか」を判断する力を鍛えましょう。
ドップラー効果の統一公式は次の1本です。
$$f' = f \cdot \frac{V + v_o}{V - v_s}$$
$f$:音源の振動数、$f'$:観測者が聞く振動数、$V$:音速
$v_s$:音源の速さ、$v_o$:観測者の速さ
この公式1本さえ正しく使えれば、すべてのドップラー効果の問題に対応できます。特殊ケースは次の通りです。
| 状況 | 公式 | 条件 |
|---|---|---|
| 音源のみ移動 | $f' = f \cdot \dfrac{V}{V - v_s}$ | $v_o = 0$ |
| 観測者のみ移動 | $f' = f \cdot \dfrac{V + v_o}{V}$ | $v_s = 0$ |
| 両方移動 | $f' = f \cdot \dfrac{V + v_o}{V - v_s}$ | 一般形 |
| 壁での反射 | 2段階で統一公式を適用 | 壁=観測者→音源 |
ドップラー効果の問題を解くとき、次の手順を守りましょう。
計算結果の妥当性は「近づけば振動数が高くなり、遠ざかれば低くなる」で即座に確認できます。
この直感的チェックを必ず行うことで、符号ミスを防げます。
ドップラー効果で最も多い失点は符号の間違いです。次のルールを覚えておきましょう。
教科書や参考書によって符号の取り方が異なります。混乱しないための最も確実な方法は次の通りです。
✕ 誤:「分母は引く、分子は足す」と機械的に暗記する
○ 正:「近づくと高くなる」から分子が大きく・分母が小さくなる符号を選ぶ
風速 $w$ がある場合は、音速 $V$ を $V \pm w$ に置き換えます(風の向きに応じて)。
このとき、$V$ を $V + w$(追い風)や $V - w$(向かい風)に置き換えるのは分子・分母の $V$ の両方です。
風は媒質全体を動かすので、$v_o$ や $v_s$ には影響しません。
入試で出題されるドップラー効果の問題は、次の5つのパターンに分類できます。
| パターン | キーワード | ポイント |
|---|---|---|
| ①音源のみ移動 | 救急車、サイレン | 波長が変化する |
| ②観測者のみ移動 | 走る人、移動する車内 | 波長は変わらない |
| ③両方移動 | すれ違い、追いかけ | 統一公式をそのまま使う |
| ④壁での反射 | 壁、ビル、崖 | 2段階に分けて解く |
| ⑤うなり | うなりの回数 | 振動数差 $= |f_1 - f_2|$ |
問題を読んだら、まず上の5パターンのどれに該当するかを判断しましょう。
パターンが分かれば、何を求めればよいかが明確になり、計算ミスも減ります。
特に壁の反射(パターン④)は、必ず2段階に分けることを忘れないでください。
この総合演習は、W-3-7 から W-3-10 までのドップラー効果の全パターンを統合した仕上げの位置づけです。
Q1. ドップラー効果の統一公式を書いてください。各記号の意味も添えてください。
Q2. 音源が動く場合と観測者が動く場合で、物理的に何が違いますか。
Q3. 壁での反射を含む問題では、壁をどのように扱いますか。
Q4. 計算結果の妥当性を確認する方法を述べてください。
ドップラー効果の全パターンを入試形式で演習します。A基礎 2問、B発展 2問、C応用 2問の計6問です。
振動数 $f = 800\,\text{Hz}$ のサイレンを鳴らす救急車が、静止している観測者に向かって速さ $v_s = 30\,\text{m/s}$ で走っている。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 観測者が聞く音の振動数を求めよ。
(2) 救急車が観測者を通り過ぎて遠ざかるとき、観測者が聞く音の振動数を求めよ。
(1) $f' \approx 877\,\text{Hz}$
(2) $f'' \approx 735\,\text{Hz}$
(1) 音源が近づく場合($v_s > 0$、$v_o = 0$):
$$f' = f \cdot \frac{V}{V - v_s} = 800 \times \frac{340}{340 - 30} = 800 \times \frac{340}{310} \approx 877\,\text{Hz}$$
(2) 音源が遠ざかる場合($v_s < 0$ → 分母に $+v_s$):
$$f'' = f \cdot \frac{V}{V + v_s} = 800 \times \frac{340}{340 + 30} = 800 \times \frac{340}{370} \approx 735\,\text{Hz}$$
近づくと高く、遠ざかると低くなることが確認できます。
静止した音源が振動数 $f = 500\,\text{Hz}$ の音を出している。観測者が速さ $v_o = 15\,\text{m/s}$ で音源に向かって走っている。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ とするとき、観測者が聞く音の振動数を求めよ。
$f' \approx 522\,\text{Hz}$
観測者が音源に近づく場合($v_o > 0$、$v_s = 0$):
$$f' = f \cdot \frac{V + v_o}{V} = 500 \times \frac{340 + 15}{340} = 500 \times \frac{355}{340} \approx 522\,\text{Hz}$$
音源は静止しているので波長は変化せず、観測者が単位時間に多くの波を受け取るため振動数が高くなります。
直線道路上を、振動数 $f = 600\,\text{Hz}$ のサイレンを鳴らすパトカーが速さ $v_s = 25\,\text{m/s}$ で北向きに走っている。対向車に乗った観測者は速さ $v_o = 20\,\text{m/s}$ で南向きに走っている。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 両者が近づいているとき、観測者が聞く音の振動数を求めよ。
(2) すれ違った後、両者が遠ざかっているとき、観測者が聞く音の振動数を求めよ。
(3) すれ違いの前後で振動数がどれだけ変化するか求めよ。
(1) $f_1 \approx 686\,\text{Hz}$
(2) $f_2 \approx 526\,\text{Hz}$
(3) $\Delta f \approx 160\,\text{Hz}$
(1) 近づくとき:音源は観測者に近づく($v_s = 25$)、観測者も音源に近づく($v_o = 20$)
$$f_1 = f \cdot \frac{V + v_o}{V - v_s} = 600 \times \frac{340 + 20}{340 - 25} = 600 \times \frac{360}{315} \approx 686\,\text{Hz}$$
(2) 遠ざかるとき:音源は観測者から遠ざかる($v_s \to -25$)、観測者も音源から遠ざかる($v_o \to -20$)
$$f_2 = f \cdot \frac{V - v_o}{V + v_s} = 600 \times \frac{340 - 20}{340 + 25} = 600 \times \frac{320}{365} \approx 526\,\text{Hz}$$
(3) $\Delta f = f_1 - f_2 \approx 686 - 526 = 160\,\text{Hz}$
すれ違いの瞬間に音が急に低くなることが数値でも確認できます。
振動数 $f = 440\,\text{Hz}$ の音源を持った人が、静止した壁に向かって速さ $v_s = 5.0\,\text{m/s}$ で歩いている。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 壁が受け取る音の振動数を求めよ。
(2) 壁で反射して自分(音源)に戻ってくる音の振動数を求めよ。
(3) 直接音と反射音によるうなりの振動数を求めよ。
(1) $f_w \approx 446.6\,\text{Hz}$
(2) $f' \approx 453.1\,\text{Hz}$
(3) うなりの振動数 $\approx 13\,\text{Hz}$
(1) 第1段階:音源($v_s = 5.0$)→ 壁(静止した観測者)
$$f_w = f \cdot \frac{V}{V - v_s} = 440 \times \frac{340}{340 - 5.0} = 440 \times \frac{340}{335} \approx 446.6\,\text{Hz}$$
(2) 第2段階:壁(静止した音源、$f_w \approx 446.6$)→ 音源自身(壁に速さ $5.0$ で近づく観測者)
$$f' = f_w \cdot \frac{V + v_o}{V} = 446.6 \times \frac{340 + 5.0}{340} = 446.6 \times \frac{345}{340} \approx 453.1\,\text{Hz}$$
別解として $f' = f \cdot \dfrac{V + v_s}{V - v_s} = 440 \times \dfrac{345}{335} \approx 453.1\,\text{Hz}$
(3) 音源自身が直接聞く音は $f = 440\,\text{Hz}$。
うなりの振動数 $= f' - f \approx 453.1 - 440 = 13.1 \approx 13\,\text{Hz}$
直線上に音源 S、観測者 O、壁 W がこの順に並んでいる。音源は振動数 $f = 680\,\text{Hz}$ の音を出しながら、壁に向かって速さ $v_s = 20\,\text{m/s}$ で移動している。観測者は音源と壁の間にいて、壁に向かって速さ $v_o = 10\,\text{m/s}$ で移動している。壁は静止している。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 観測者が直接聞く音の振動数 $f_1$ を求めよ。
(2) 壁が受け取る音の振動数 $f_w$ を求めよ。
(3) 壁で反射した音を観測者が聞く振動数 $f_2$ を求めよ。
(4) 直接音と反射音のうなりの振動数を求めよ。
(1) $f_1 \approx 701\,\text{Hz}$
(2) $f_w = 722.5\,\text{Hz}$
(3) $f_2 \approx 744\,\text{Hz}$
(4) うなりの振動数 $\approx 43\,\text{Hz}$
(1) 直接音:音源 S → 観測者 O(両者とも壁に向かって同じ方向に移動)
音源 S は壁に向かって $v_s = 20\,\text{m/s}$ で移動し、観測者 O も壁に向かって $v_o = 10\,\text{m/s}$ で移動している。両者は同じ方向に動いているが、音源の方が速いので近づいている。
音源から観測者への向き(壁の方向)を正にとると、音源は観測者に近づき($v_s > 0$)、観測者は音源から遠ざかる($v_o < 0$)。
$$f_1 = f \cdot \frac{V - v_o}{V - v_s} = 680 \times \frac{340 - 10}{340 - 20} = 680 \times \frac{330}{320} = 701.25\,\text{Hz}$$
(2) 第1段階:音源 S → 壁 W(静止した観測者)
$$f_w = f \cdot \frac{V}{V - v_s} = 680 \times \frac{340}{320} = 722.5\,\text{Hz}$$
(3) 第2段階:壁 W(静止した音源、$f_w = 722.5\,\text{Hz}$)→ 観測者 O
反射音は壁から観測者に向かって進む。観測者は壁に向かって速さ $10\,\text{m/s}$ で動いているので、壁(反射音の音源)に近づく観測者です。
$$f_2 = f_w \cdot \frac{V + v_o}{V} = 722.5 \times \frac{340 + 10}{340} = 722.5 \times \frac{350}{340} \approx 743.9\,\text{Hz}$$
(4) $|f_2 - f_1| = |743.9 - 701.3| \approx 42.6 \approx 43\,\text{Hz}$
直接音は約 $701\,\text{Hz}$、反射音は約 $744\,\text{Hz}$ と異なるため、毎秒約 $43$ 回のうなりが生じます。
直線上で音源と観測者が向かい合って走っている。音源は振動数 $f = 500\,\text{Hz}$ の音を出し、速さ $v_s$ で観測者に向かって移動している。観測者は速さ $v_o = 12\,\text{m/s}$ で音源に向かって移動している。観測者が聞いた音の振動数は $f' = 560\,\text{Hz}$ であった。音速を $V = 340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。
(1) 音源の速さ $v_s$ を求めよ。
(2) 音源の前方(観測者側)の波長 $\lambda'$ を求めよ。
(3) 両者がすれ違った後、観測者が聞く音の振動数を求めよ。
(1) $v_s = \dfrac{180}{7} \approx 25.7\,\text{m/s}$
(2) $\lambda' = \dfrac{22}{35} \approx 0.629\,\text{m}$
(3) $f'' \approx 448\,\text{Hz}$
(1) 統一公式に代入:
$$f' = f \cdot \frac{V + v_o}{V - v_s}$$
$$560 = 500 \times \frac{340 + 12}{V - v_s} = 500 \times \frac{352}{V - v_s}$$
$$V - v_s = 500 \times \frac{352}{560} = \frac{176000}{560} \approx 314.3$$
$$v_s = 340 - 314.3 \approx 25.7\,\text{m/s}$$
正確には $V - v_s = \dfrac{500 \times 352}{560} = \dfrac{176000}{560} = \dfrac{2200}{7} \approx 314.3$
$v_s = 340 - \dfrac{2200}{7} = \dfrac{2380 - 2200}{7} = \dfrac{180}{7} \approx 25.7\,\text{m/s}$
(2) 音源前方の波長:
$$\lambda' = \frac{V - v_s}{f} = \frac{314.3}{500} \approx 0.629\,\text{m}$$
正確には $\lambda' = \dfrac{2200/7}{500} = \dfrac{2200}{3500} = \dfrac{22}{35} \approx 0.629\,\text{m}$
(3) すれ違った後:音源は遠ざかり、観測者も遠ざかる
$$f'' = f \cdot \frac{V - v_o}{V + v_s} = 500 \times \frac{340 - 12}{340 + 180/7} = 500 \times \frac{328}{(2380 + 180)/7} = 500 \times \frac{328 \times 7}{2560}$$
$$= 500 \times \frac{2296}{2560} \approx 448.4\,\text{Hz}$$
近づくとき $560\,\text{Hz}$、遠ざかるとき約 $448\,\text{Hz}$。原振動数 $500\,\text{Hz}$ を挟んで高低が切り替わることが確認できます。