第17章 波の伝わり方

波の干渉
─ 水面波の強め合い・弱め合い

2つの波源から出た波が出会うと、ある場所では振動が大きくなり、別の場所では振動が消えてしまいます。
この干渉現象は波の重ね合わせの原理の直接的な帰結であり、経路差と波長の関係で理解できます。

1干渉とは

2つ以上の波が重なり合ったとき、場所によって振動が強まったり弱まったりする現象を干渉(interference)と呼びます。

干渉が安定して観察されるためには、2つの波源が同じ振動数一定の位相関係を保っている(コヒーレントである)必要があります。 このような2つの波源をコヒーレント波源と呼びます。

📐 干渉の基本原理

重ね合わせの原理より、点 P での変位は2つの波の変位の和:

$$y_P = y_1 + y_2$$

強め合い:2つの波が同位相で到達 → 振幅が最大

弱め合い:2つの波が逆位相で到達 → 振幅が最小(同振幅なら0)

💡 ここが本質:干渉の鍵は「位相差」

ある点に2つの波が到達するとき、その点で強め合うか弱め合うかは、2つの波の位相差で決まります。

位相差が $0$(同位相)なら強め合い、$\pi$(逆位相)なら弱め合い。位相差は経路差(2つの波源からの距離の差)から計算できます。

2経路差と干渉条件

2つの同位相の波源 $\text{S}_1$、$\text{S}_2$ から同じ波長 $\lambda$ の波が出ています。 観測点 P までの距離をそれぞれ $d_1$、$d_2$ とすると、経路差(path difference)は $|d_1 - d_2|$ です。

📐 干渉条件(同位相の波源)

強め合いの条件(同位相で到達):

$$|d_1 - d_2| = n\lambda \quad (n = 0, 1, 2, 3, \ldots)$$

弱め合いの条件(逆位相で到達):

$$|d_1 - d_2| = \left(n + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (n = 0, 1, 2, 3, \ldots)$$

※ $d_1$, $d_2$ はそれぞれ波源 $\text{S}_1$, $\text{S}_2$ から点 P までの距離。経路差が波長の整数倍なら強め合い、半整数倍なら弱め合い。
▷ 経路差と位相差の関係

波源からの距離が $d$ のとき、位相は $\dfrac{2\pi d}{\lambda}$ だけ進みます。

2つの波源からの位相差は

$$\Delta\phi = \frac{2\pi}{\lambda}|d_1 - d_2|$$

$\Delta\phi = 2n\pi$($n$は整数)のとき同位相 → 強め合い → $|d_1 - d_2| = n\lambda$

$\Delta\phi = (2n+1)\pi$ のとき逆位相 → 弱め合い → $|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$

⚠️ 落とし穴:逆位相の波源の場合

2つの波源が逆位相で振動している場合、干渉条件は逆になります。

✕ 誤:いつでも経路差 $= n\lambda$ で強め合い

○ 正:逆位相の波源なら経路差 $= n\lambda$ で弱め合い、経路差 $= (n+1/2)\lambda$ で強め合い

波源の位相関係を必ず確認してから干渉条件を適用しましょう。

3水面波の干渉パターン

同位相で同じ振動数の2つの波源を水面に置くと、美しい干渉パターンが現れます。

強め合いの線(腹線)

経路差 $|d_1 - d_2| = n\lambda$ を満たす点の集合は、2つの波源を焦点とする双曲線になります。 この双曲線上では常に波が強め合い、振動が激しくなります。これを腹線と呼びます。

弱め合いの線(節線)

経路差 $|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$ を満たす点の集合も双曲線です。 この線上では波が弱め合い、振動がほぼゼロになります。これを節線と呼びます。

腹線と節線は交互に現れ、2つの波源の中点を通る垂直二等分線上(経路差 $= 0$)は最も強い腹線です。

💡 ここが本質:干渉パターンは「経路差の等高線」

干渉パターンを理解するコツは、空間内の各点での経路差を「地図の等高線」のようにイメージすることです。

経路差 $= 0, \lambda, 2\lambda, \ldots$ の等高線(双曲線)が腹線、経路差 $= \lambda/2, 3\lambda/2, \ldots$ の等高線が節線です。

🔬 深掘り:腹線・節線の本数

2つの波源間の距離を $L$ とすると、経路差の最大値は $L$ です。したがって強め合いの条件 $|d_1 - d_2| = n\lambda$ を満たす $n$ の最大値は $n_{\max}$($n_{\max}\lambda \leq L$ を満たす最大整数)です。

腹線の本数は $2n_{\max} + 1$ 本($n = 0, \pm 1, \ldots, \pm n_{\max}$)、節線の本数は $2n_{\max}$ 本(腹線の間に1本ずつ)になります。

4干渉条件の応用

干渉の問題を解く手順

  1. 2つの波源の位相関係を確認する(同位相か逆位相か)
  2. 観測点 P から各波源までの距離 $d_1$, $d_2$ を求める
  3. 経路差 $|d_1 - d_2|$ を計算する
  4. 干渉条件に当てはめて、強め合いか弱め合いかを判定する

典型例:2波源間の節線の本数

同位相の2つの波源が距離 $L = 5\lambda$ 離れているとき、節線は何本あるか考えます。

弱め合いの条件 $|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$ で $|d_1 - d_2| \leq L = 5\lambda$ を満たすのは $n = 0, 1, 2, 3, 4$ の5通り。 正負の方向にそれぞれあるので、節線は $5 \times 2 = 10$ 本です。

⚠️ 落とし穴:節線の本数を数え間違える

節線の本数を求めるとき、2つの波源の「両側」にも節線が伸びることを忘れがちです。

✕ 誤:$n = 0, 1, 2, \ldots$ の片側だけ数える

○ 正:経路差が正の場合と負の場合の両方を数える(対称性より2倍になることが多い)

ただし、2波源の中点を通る線($n = 0$ の腹線)は1本であることに注意しましょう。

🔬 深掘り:ヤングの実験との関係

水面波の干渉の原理は、光のヤングの二重スリット実験と全く同じです。ヤングの実験では、2つのスリットが2つのコヒーレント波源に対応し、スクリーン上に明暗の縞(干渉縞)が現れます。

水面波の干渉実験は、ヤングの実験を目に見える形で再現したものと言えます。

5この章を俯瞰する

波の干渉は重ね合わせの原理の最も劇的な表れであり、波動物理学の核心です。

つながりマップ

  • ← W-3-5 波の回折:スリットで回折した波が干渉する。回折と干渉はセットで現れることが多い。
  • ← 重ね合わせの原理:干渉は重ね合わせの原理の直接的な帰結。
  • → W-3-7 ドップラー効果:ドップラー効果は波源の移動による波長の変化であり、干渉とは別の波の現象。
  • → ヤングの実験(光学):光の干渉は水面波の干渉と同じ原理。$d\sin\theta = n\lambda$ の式で明線位置を求める。

📋まとめ

  • 干渉:2つ以上の波が重なり、場所により強め合い・弱め合いが生じる現象
  • 強め合いの条件(同位相波源):$|d_1 - d_2| = n\lambda$
  • 弱め合いの条件(同位相波源):$|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$
  • 逆位相の波源では強め合い・弱め合いの条件がになる
  • 干渉パターンの腹線・節線は双曲線状に現れる
  • 干渉の鍵は経路差。経路差と波長の比で強め合い・弱め合いが決まる

確認テスト

Q1. 同位相の2波源による干渉で、強め合いが起こる経路差の条件を述べてください。

▶ クリックして解答を表示$|d_1 - d_2| = n\lambda$($n = 0, 1, 2, \ldots$)。経路差が波長の整数倍のとき強め合う。

Q2. 弱め合いが起こる経路差の条件を述べてください。

▶ クリックして解答を表示$|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$($n = 0, 1, 2, \ldots$)。経路差が波長の半整数倍のとき弱め合う。

Q3. 2波源が逆位相で振動しているとき、強め合いの条件はどうなりますか。

▶ クリックして解答を表示逆位相の波源では条件が逆になる。強め合い:$|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$、弱め合い:$|d_1 - d_2| = n\lambda$。

Q4. 干渉パターンにおける腹線・節線はどのような形状をしていますか。

▶ クリックして解答を表示2つの波源を焦点とする双曲線。経路差が一定の点の集合が双曲線になるため。

8入試問題演習

波の干渉を入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-6-1 A 基礎 干渉条件判定

同位相の2つの波源 $\text{S}_1$, $\text{S}_2$ から波長 $\lambda = 2.0\,\text{cm}$ の水面波が出ている。点 P は $\text{S}_1$ から $8.0\,\text{cm}$、$\text{S}_2$ から $5.0\,\text{cm}$ の位置にある。点 P は強め合いの点か弱め合いの点か。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

弱め合いの点

解説

経路差 $|d_1 - d_2| = |8.0 - 5.0| = 3.0\,\text{cm}$

$\dfrac{3.0}{2.0} = 1.5 = 1 + \dfrac{1}{2}$

経路差が $\lambda$ の半整数倍($n = 1$ のとき $(1 + 1/2)\lambda = 3.0\,\text{cm}$)なので弱め合いの点です。

3-6-2 A 基礎 節線の本数計算

同位相の2つの波源が $L = 4.0\lambda$ 離れている。2波源の間に引かれる節線は何本あるか。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$8$ 本

解説

弱め合いの条件:$|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda$

$|d_1 - d_2| \leq L = 4.0\lambda$ を満たすのは、$(n+1/2)\lambda \leq 4.0\lambda$ → $n \leq 3.5$ → $n = 0, 1, 2, 3$

片側4本、対称性より両側で $4 \times 2 = 8$ 本。

B 発展レベル

3-6-3 B 発展 逆位相計算

逆位相の2つの波源 $\text{S}_1$, $\text{S}_2$ から波長 $\lambda = 4.0\,\text{cm}$ の水面波が出ている。$\text{S}_1\text{S}_2 = 12\,\text{cm}$ である。$\text{S}_1$ と $\text{S}_2$ の垂直二等分線上の点は、強め合いの点か弱め合いの点か。また、2波源間の腹線(強め合いの線)は何本あるか。

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解答

垂直二等分線上:弱め合いの点。腹線:6本。

解説

逆位相の波源では、経路差 $= n\lambda$ で弱め合い、経路差 $= (n + 1/2)\lambda$ で強め合いになります。

垂直二等分線上では経路差 $= 0 = 0 \cdot \lambda$($n = 0$)→ 弱め合い。

強め合いの条件:$|d_1 - d_2| = (n + 1/2)\lambda \leq 12\,\text{cm}$

$(n + 1/2) \times 4.0 \leq 12$ → $n + 1/2 \leq 3$ → $n \leq 2.5$ → $n = 0, 1, 2$

片側3本、両側で $3 \times 2 = 6$ 本。

採点ポイント
  • 逆位相で干渉条件が逆転することを理解している(3点)
  • 垂直二等分線上が弱め合いと判定(2点)
  • 腹線の本数を正しく求める(3点)

C 応用レベル

3-6-4 C 応用 干渉座標計算

同位相の2つの波源 $\text{S}_1$(座標 $(-3.0, 0)$)と $\text{S}_2$(座標 $(3.0, 0)$)から波長 $\lambda = 2.0\,\text{cm}$ の水面波が出ている。$y$ 軸上($x = 0$)で $y > 0$ の範囲にある節点(弱め合いの点)のうち、最も原点に近いものの $y$ 座標を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$y$ 軸上($x = 0$)では経路差 $= 0$ なので節点は存在しない。$y$ 軸上はすべて腹線(強め合い)。

解説

$y$ 軸上の点 $(0, y)$ について、

$d_1 = \sqrt{(-3.0)^2 + y^2} = \sqrt{9.0 + y^2}$

$d_2 = \sqrt{3.0^2 + y^2} = \sqrt{9.0 + y^2}$

$d_1 = d_2$ なので経路差 $= 0$ → 常に強め合い。

$y$ 軸は2波源の垂直二等分線であり、同位相波源の場合は最大の腹線です。節点は $y$ 軸上には存在しません。

節点を見つけるには $y$ 軸からずれた位置を探す必要があります。

採点ポイント
  • 垂直二等分線上の経路差が0であることに気づく(3点)
  • 同位相波源で経路差0は強め合いと判断する(3点)
  • $y$ 軸上に節点がないことを正しく結論する(2点)