遊園地の「チェーンフライヤー」に乗ったことはありますか。
回転が速くなるほど鎖が開き、座席は外側へと広がっていきます。
ひもが斜めに張られた状態で物体が水平に回る ─ これが円すい振り子です。
張力を分解し、二方向の式を連立させる手法を身につけましょう。
天井の一点からひもで小球をつるし、小球を水平面内で回転させます。 ひもは鉛直方向から角度 $\theta$ だけ傾き、小球の軌跡は水平な円になります。 ひもが描く面は円すい(コーン)の側面なので、円すい振り子と呼ばれます。
小球にはたらく力は2つだけです。
水平面上の円運動(M-8-3)と違い、垂直抗力はありません。 張力が斜めなので、鉛直成分と水平成分に分解する必要があります。
張力 $T$ を分解すると、鉛直成分 $T\cos\theta$ と水平成分 $T\sin\theta$ になります。
鉛直成分が重力と釣り合い、水平成分が向心力の役割を果たします。 この2つの式を連立することで、張力や角度を求められます。
角度 $\theta$ を鉛直方向から測るか水平方向から測るかで $\sin$ と $\cos$ が入れ替わります。
✕ 誤:鉛直からの角度 $\theta$ に対して鉛直成分を $T\sin\theta$ とする
○ 正:鉛直からの角度 $\theta$ に対して鉛直成分は $T\cos\theta$、水平成分は $T\sin\theta$
「鉛直から $\theta$ 傾いた → 鉛直成分に $\cos\theta$」と覚えましょう。
ひもの長さを $l$、鉛直からの角度を $\theta$ とします。 円の半径は $r = l\sin\theta$ です。
鉛直方向(釣り合い):$$T\cos\theta = mg \quad \cdots (1)$$
水平方向(向心方向):$$T\sin\theta = m\frac{v^2}{r} = mr\omega^2 \quad \cdots (2)$$
(2) を (1) で割ると、$T$ が消えます。
$$\frac{T\sin\theta}{T\cos\theta} = \frac{mr\omega^2}{mg}$$
$$\tan\theta = \frac{r\omega^2}{g}$$
$r = l\sin\theta$ を代入すると、
$$\tan\theta = \frac{l\sin\theta \cdot \omega^2}{g}$$
$\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}$ を使って整理すると、
$$\frac{1}{\cos\theta} = \frac{l\omega^2}{g} \quad \Longrightarrow \quad \cos\theta = \frac{g}{l\omega^2}$$
2式を割り算すると張力 $T$ が消去され、$\tan\theta$ と $\omega$ の関係式が得られます。 この「割り算テクニック」は円すい振り子の定番手法です。
$\cos\theta = \frac{g}{l\omega^2}$ から、回転が速い($\omega$ が大きい)ほど $\cos\theta$ が小さくなり、$\theta$ が大きくなることがわかります。 つまり速く回すほどひもは開くのです。
$\cos\theta = \frac{g}{l\omega^2}$ に $\omega = \frac{2\pi}{T_{\text{周期}}}$ を代入します。
$$\cos\theta = \frac{gT_{\text{周期}}^2}{4\pi^2 l}$$
周期について解くと、
$$T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}}$$
$$T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}}$$
この式から、周期は質量に依存しないことがわかります。 また、$\theta \to 0$ のとき $\cos\theta \to 1$ となり、 単振り子の周期 $T = 2\pi\sqrt{\frac{l}{g}}$ に近づきます。
式に $m$ が含まれていないことを確認してください。
✕ 誤:重い物体ほど周期が長くなる
○ 正:周期はひもの長さと角度だけで決まり、質量によらない
(1) より $T = \frac{mg}{\cos\theta}$ です。 $\theta$ が大きいほど(ひもが開くほど)$\cos\theta$ が小さくなり、 張力は大きくなります。
円すい振り子では、ひもが斜めなので張力は重力より大きくなります。
✕ 誤:$T = mg$
○ 正:$T = \frac{mg}{\cos\theta} > mg$($\theta > 0$ のとき)
$\cos\theta = \frac{g}{l\omega^2}$ で $\theta = 90°$ にするには $\cos 90° = 0$ 、 つまり $\omega \to \infty$ が必要です。
無限大の角速度は実現できないので、ひもが水平になることはありません。 どれだけ速く回しても、必ず少しは下がった状態になります。
円すい振り子の問題では、与えられる量に応じて解き方が変わります。 パターンを整理しましょう。
最もよく出るパターンです。 $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}}$ で周期を、 $T = \frac{mg}{\cos\theta}$ で張力を求めます。
$\cos\theta = \frac{g}{l\omega^2}$ から角度を求めます。 $\omega$ が十分大きければ(速く回せば)$\theta$ は大きくなります。
(1) と (2) のどちらをどちらで割るかは、何を消したいかで決めます。 張力 $T$ を消したいなら割り算。$\theta$ を消して $T$ を求めたいなら (1) を使う。
このように2式の連立をどう処理するかが、円すい振り子問題の核心です。
円すい振り子の周期 $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}}$ で、 $\theta$ が十分小さければ $\cos\theta \approx 1$ となり、 単振り子の周期 $T = 2\pi\sqrt{\frac{l}{g}}$ と一致します。
実は、微小振動の単振り子は「ひもがほぼ鉛直の円すい振り子」と見なせるのです。 この対応関係は、振動と回転が深いところでつながっていることを示しています。
Q1. 円すい振り子で、張力の水平成分は何の役割を果たしますか。
Q2. 鉛直方向の角度 $\theta$ が $60°$、ひもの長さが $1.0\,\text{m}$ のとき、張力は重力の何倍ですか。
Q3. 回転を速くすると角度 $\theta$ はどうなりますか。理由も述べてください。
Q4. 円すい振り子の周期は質量に依存しますか。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
長さ $l = 1.0\,\text{m}$ のひもに質量 $m = 0.50\,\text{kg}$ の小球をつけて円すい振り子を作った。ひもが鉛直方向と $\theta = 30°$ の角度をなすとき、次の問いに答えよ。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ とする。
(1) ひもの張力を求めよ。
(2) 小球の回転の周期を求めよ。
(1) $T \approx 5.7\,\text{N}$
(2) $T_{\text{周期}} \approx 1.9\,\text{s}$
(1) $T = \frac{mg}{\cos\theta} = \frac{0.50 \times 9.8}{\cos 30°} = \frac{4.9}{0.866} \approx 5.7\,\text{N}$
(2) $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}} = 2\pi\sqrt{\frac{1.0 \times 0.866}{9.8}} = 2\pi\sqrt{0.0884} = 2\pi \times 0.297 \approx 1.9\,\text{s}$
長さ $0.50\,\text{m}$ のひもに小球をつけて円すい振り子を作り、角速度 $\omega = 5.0\,\text{rad/s}$ で回転させた。ひもが鉛直となす角度 $\theta$ を求めよ。$g = 9.8\,\text{m/s}^2$ とする。
$\theta \approx 51°$
$\cos\theta = \frac{g}{l\omega^2} = \frac{9.8}{0.50 \times 25} = \frac{9.8}{12.5} = 0.784$
$\theta = \cos^{-1}(0.784) \approx 38°$... としたいところですが、正確に計算すると $\cos^{-1}(0.784) \approx 38°$ です。
(計算を確認すると $\cos 38° \approx 0.788$ で近い値になります)
$\theta \approx 38°$
長さ $l$ のひもに質量 $m$ の小球をつけた円すい振り子において、ひもが鉛直となす角度を $\theta$ とする。小球の描く円の中心から、ひもの固定点までの鉛直距離を $h$ とするとき、次の問いに答えよ。
(1) $h$ を $l$ と $\theta$ で表せ。
(2) 円すい振り子の周期を $h$ と $g$ のみで表せ。
(3) (2)の結果から、周期が $\theta$ にも $l$ にもよらないように見えることについて、なぜそうならないのか説明せよ。
(1) $h = l\cos\theta$
(2) $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{h}{g}}$
(3) 下記解説参照
(1) ひもの固定点から小球の高さまでの鉛直距離は $h = l\cos\theta$。
(2) 周期の公式 $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}}$ に $l\cos\theta = h$ を代入すると $T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{h}{g}}$。
(3) $h = l\cos\theta$ なので、$h$ は $l$ と $\theta$ に依存している。$l$ や $\theta$ を変えれば $h$ も変わるため、周期は結局 $l$ と $\theta$ に依存する。$h$ でまとめて書いただけで独立になったわけではない。