夏の暑い日、放置した風船がいつの間にかふくらんでいたことはありませんか。
気体は温めると膨張し、冷やすと収縮します。
圧力を一定に保ったとき、体積と絶対温度の間には驚くほど単純な比例関係が成り立ちます。
この関係を発見したのが、フランスの科学者ジャック・シャルルです。
気体を温めると、分子の運動が激しくなります。 分子がより速く動き、容器の壁を強く押すようになります。 圧力を一定に保つためには、体積が大きくならなければなりません。
逆に、気体を冷やすと分子の運動が穏やかになります。 壁を押す力が弱まるため、圧力を一定に保つには体積が小さくなります。 このように、圧力一定のもとでは温度と体積は同じ方向に変化します。
実験で、圧力一定のもとセルシウス温度 $t\,[^\circ\text{C}]$ と体積 $V$ の関係を調べると、 $V$ は $t$ に対して直線的に増加します。 この直線を外挿すると、$t = -273\,^\circ\text{C}$ 付近で体積がゼロになることがわかります。
しかし、実際にはその前に気体は液化してしまいます。 体積がゼロになるというのは、あくまで数学的な外挿の結果です。 ただし、この $-273\,^\circ\text{C}$ という値には深い物理的意味があります。
シャルルの法則では絶対温度を使わなければなりません。
✕ 誤:「$20\,^\circ\text{C}$ を $40\,^\circ\text{C}$ にしたから体積は2倍」
○ 正:$293\,\text{K}$ を $313\,\text{K}$ にしたので、体積は $\dfrac{313}{293} \approx 1.07$ 倍
セルシウス温度での比は意味をもちません。必ず絶対温度に換算してから計算してください。
1787年、フランスの科学者シャルルは次の法則を発見しました。 圧力を一定に保ったとき、気体の体積は絶対温度に比例するという法則です。
圧力一定のとき、一定量の気体について、
$$\frac{V}{T} = \text{一定}$$
すなわち、状態1と状態2の関係として、
$$\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}$$
「絶対温度が2倍になれば体積も2倍になる」と覚えましょう。 正比例の関係であり、グラフは原点を通る直線です。
セルシウス温度にはゼロの基準が「水の凝固点」という恣意的な値です。 $0\,^\circ\text{C}$ は分子運動がゼロになる点ではありません。
一方、絶対温度 $T$ [K]のゼロは、分子の熱運動が止まる理論的な下限です。 だから $V \propto T$ という比例関係が成り立つのです。
セルシウス温度 $t$ と絶対温度 $T$ の関係は $T = t + 273$ です。
気体分子の平均運動エネルギーは絶対温度に比例します。
$$\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T$$
温度が上がると分子の速さが増し、壁への衝撃が大きくなります。 圧力を一定に保つには、体積を大きくして衝突頻度を下げる必要があります。
定量的に考えると、温度が $T$ から $2T$ に倍増すると分子の運動エネルギーも2倍です。 圧力一定を保つために体積も2倍になります。つまり $V \propto T$ です。
横軸に絶対温度 $T$、縦軸に体積 $V$ を取ると、シャルルの法則のグラフは原点を通る直線になります。
圧力が異なれば直線の傾きが変わります。 圧力が低いほど傾きが大きく、圧力が高いほど傾きが小さくなります。
V-T図の横軸が絶対温度 [K] であれば、直線は原点を通ります。
✕ 誤:横軸をセルシウス温度にして「原点を通る直線」と描く
○ 正:横軸がセルシウス温度の場合、直線は $-273\,^\circ\text{C}$ を通る
軸の単位をよく確認しましょう。
シャルルの法則から導かれる重要な概念が絶対零度です。 体積がゼロになる温度、すなわち $-273.15\,^\circ\text{C}$ を絶対温度の基準としました。
絶対温度 $T$ の単位はケルビン(K)です。 セルシウス温度 $t\,[^\circ\text{C}]$ との関係は以下のとおりです。
$$T\,[\text{K}] = t\,[^\circ\text{C}] + 273$$
よく使う換算値を覚えておくと便利です。
| セルシウス温度 | 絶対温度 | 備考 |
|---|---|---|
| $-273\,^\circ\text{C}$ | $0\,\text{K}$ | 絶対零度 |
| $0\,^\circ\text{C}$ | $273\,\text{K}$ | 水の凝固点 |
| $27\,^\circ\text{C}$ | $300\,\text{K}$ | 計算しやすい値として頻出 |
| $100\,^\circ\text{C}$ | $373\,\text{K}$ | 水の沸点 |
入試問題では「$27\,^\circ\text{C}$」がよく登場します。 これは $300\,\text{K}$ というきりのよい値になるからです。
同様に「$127\,^\circ\text{C} = 400\,\text{K}$」「$-73\,^\circ\text{C} = 200\,\text{K}$」なども頻出です。 問題を解く際には、まず絶対温度に換算する癖をつけましょう。
温度差 $\Delta T$ については、ケルビンとセルシウスで同じ値になります。
✕ 誤:「温度差 $10\,^\circ\text{C}$ を $10 + 273 = 283\,\text{K}$ の差」とする
○ 正:温度差 $10\,^\circ\text{C}$ はそのまま $10\,\text{K}$ の差
温度の「値」には $+273$ が必要ですが、温度の「差」には不要です。
熱力学第三法則によれば、有限回の操作で絶対零度に到達することはできません。 これは「到達不能の原理」とも呼ばれます。
現在の技術では、レーザー冷却などを使ってナノケルビン($10^{-9}\,\text{K}$)の極低温が実現されています。 しかし、ちょうど $0\,\text{K}$ には原理的に到達できません。
シャルルの法則を使う問題では $\dfrac{V_1}{T_1} = \dfrac{V_2}{T_2}$ に代入します。 温度を絶対温度に換算するステップを忘れないことが最大のポイントです。
圧力一定で、$27\,^\circ\text{C}$ のとき体積 $V_1 = 6.0\,\text{L}$ の気体を $127\,^\circ\text{C}$ に加熱します。 $T_1 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 400\,\text{K}$ なので、
$\dfrac{6.0}{300} = \dfrac{V_2}{400}$ より $V_2 = \dfrac{6.0 \times 400}{300} = 8.0\,\text{L}$ です。
圧力一定で、体積が $3.0\,\text{L}$ から $4.5\,\text{L}$ に増加しました。 初めの温度が $27\,^\circ\text{C}$($= 300\,\text{K}$)のとき、最終温度を求めます。
$\dfrac{3.0}{300} = \dfrac{4.5}{T_2}$ より $T_2 = \dfrac{4.5 \times 300}{3.0} = 450\,\text{K}$、 すなわち $177\,^\circ\text{C}$ です。
シャルルの法則は「圧力一定」が条件です。 ピストン付き容器でピストンがなめらかに動く場合、気体の圧力は常に外圧と等しくなります。 この場合、圧力一定が自動的に満たされます。
一方、容器が固い壁で密閉されている場合は体積が一定であり、圧力一定ではありません。 この場合はシャルルの法則ではなく、別の法則を使う必要があります。
固い容器に密閉された気体を加熱しても、体積は変わりません。
✕ 誤:固い容器で「温度を上げたから体積も増える」
○ 正:固い容器では体積一定。変わるのは圧力(ゲイ=リュサックの法則)
「圧力一定」と「体積一定」のどちらかを問題文から判断しましょう。
体積一定のとき、気体の圧力は絶対温度に比例します。 $\dfrac{p}{T} = \text{一定}$ がゲイ=リュサックの法則です。
固い密閉容器を加熱する問題では、この法則を使います。 ボイルの法則・シャルルの法則と合わせて、ボイル・シャルルの法則に統合されます。
シャルルの法則はボイルの法則と対をなす重要な法則です。 2つの法則を組み合わせることで、温度・圧力・体積の3変数を同時に扱えるようになります。
Q1. $27\,^\circ\text{C}$ を絶対温度に換算してください。
Q2. 圧力一定で、$300\,\text{K}$ のとき体積 $6.0\,\text{L}$ の気体を $600\,\text{K}$ に加熱したときの体積を求めてください。
Q3. シャルルの法則が成り立つ条件を2つ答えてください。
Q4. V-T図(横軸:絶対温度)でシャルルの法則を表すグラフの特徴を答えてください。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
圧力一定で、$27\,^\circ\text{C}$ のとき体積が $4.0\,\text{L}$ の気体がある。この気体を $127\,^\circ\text{C}$ に加熱したときの体積を求めよ。
$\dfrac{16}{3} \approx 5.3\,\text{L}$
方針:セルシウス温度を絶対温度に換算してからシャルルの法則を適用する。
$T_1 = 27 + 273 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 127 + 273 = 400\,\text{K}$
$\dfrac{V_1}{T_1} = \dfrac{V_2}{T_2}$ より、$V_2 = 4.0 \times \dfrac{400}{300} = \dfrac{16}{3} \approx 5.3\,\text{L}$
なめらかに動くピストンで密閉されたシリンダー内の気体が、$27\,^\circ\text{C}$ で体積 $600\,\text{cm}^3$ であった。大気圧は一定とし、この気体をゆっくり加熱したところ、体積が $800\,\text{cm}^3$ になった。次の問いに答えよ。
(1) このとき使われた気体の法則名を答えよ。
(2) 加熱後の気体の温度を求めよ。
(1) シャルルの法則
(2) $400\,\text{K}$($127\,^\circ\text{C}$)
方針:ピストンがなめらかに動くので、気体の圧力は常に大気圧に等しく一定。よってシャルルの法則を使う。
(1) 圧力一定の条件下で温度と体積の関係を扱うので、シャルルの法則。
(2) $T_1 = 300\,\text{K}$。$\dfrac{V_1}{T_1} = \dfrac{V_2}{T_2}$ より、
$T_2 = T_1 \times \dfrac{V_2}{V_1} = 300 \times \dfrac{800}{600} = 400\,\text{K} = 127\,^\circ\text{C}$
容積が変化しない密閉容器に気体が入っている。$27\,^\circ\text{C}$ のとき圧力は $1.0 \times 10^5\,\text{Pa}$ であった。この気体を $327\,^\circ\text{C}$ に加熱したとき、圧力はいくらになるか。また、この問題にシャルルの法則は使えるか、理由を含めて答えよ。
圧力:$2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$
シャルルの法則は使えない。理由:体積一定であり圧力一定ではないため。
方針:体積一定の条件なので、ゲイ=リュサックの法則 $\dfrac{p}{T} = \text{一定}$ を使う。
$T_1 = 300\,\text{K}$、$T_2 = 600\,\text{K}$
$\dfrac{p_1}{T_1} = \dfrac{p_2}{T_2}$ より、$p_2 = 1.0 \times 10^5 \times \dfrac{600}{300} = 2.0 \times 10^5\,\text{Pa}$
シャルルの法則は「圧力一定」が条件であり、体積一定で圧力が変化するこの問題には適用できない。体積一定の場合はゲイ=リュサックの法則(またはボイル・シャルルの法則で $V$ を一定として処理)を使う。