第15章 波の性質

y-tグラフとy-xグラフ
─ 2種類のグラフの読み分け

波を扱う問題では、2種類のグラフが頻出します。
1つは特定の位置での変位の時間変化(y-tグラフ)、もう1つはある瞬間の波形の空間分布(y-xグラフ)です。
見た目は似ていますが、読み取れる情報は全く異なります。混同せずに使い分けましょう。

1y-tグラフ ─ 1点の時間変化

y-tグラフは、媒質の特定の1点(例えば原点 $x = 0$)の変位 $y$ を縦軸に、時刻 $t$ を横軸にとったグラフです。

📐 y-tグラフから読み取れる量

振幅 $A$:グラフの最大値(山の高さ)

周期 $T$:波形が1回繰り返すのにかかる時間(横軸の1サイクル分)

振動数 $f$:$f = \dfrac{1}{T}$

※ y-tグラフからは波長 $\lambda$ は直接読み取れない。波の速さ $v$ がわかれば $\lambda = vT$ で求められる。

y-tグラフは、ある1点がどのように振動しているかを記録したものです。 ビデオカメラで1つの媒質点だけを追跡して録画し、その動きをグラフにしたイメージです。

💡 ここが本質:y-tグラフは「時計」が横軸

横軸が時間なので、山から山の間隔は周期 $T$です。波長ではありません。

グラフの形が正弦波なら、その点は単振動していることがわかります。

2y-xグラフ ─ ある瞬間の波形

y-xグラフは、ある瞬間(例えば $t = 0$)における各位置 $x$ での変位 $y$ を描いたグラフです。 いわば波の「スナップショット(写真)」です。

📐 y-xグラフから読み取れる量

振幅 $A$:グラフの最大値(山の高さ)

波長 $\lambda$:山から次の山(または谷から次の谷)の間隔

※ y-xグラフからは周期 $T$ は直接読み取れない。波の速さ $v$ がわかれば $T = \dfrac{\lambda}{v}$ で求められる。

y-xグラフは、カメラのシャッターを一瞬だけ切って、その瞬間の波形全体を写し取ったイメージです。

32つのグラフの決定的な違い

y-tグラフy-xグラフ
横軸時刻 $t$位置 $x$
縦軸変位 $y$変位 $y$
意味1点の時間変化ある瞬間の波形
読み取れる量$A$、$T$、$f$$A$、$\lambda$
読み取れない量$\lambda$($v$ が必要)$T$($v$ が必要)
イメージビデオ録画スナップショット
⚠️ 落とし穴:y-tグラフの山の間隔を波長と読む

y-tグラフとy-xグラフは見た目が似ているため、混同しやすいです。

✕ 誤:y-tグラフの山の間隔 → 波長 $\lambda$

○ 正:y-tグラフの山の間隔 → 周期 $T$

まず横軸の物理量を確認する習慣をつけましょう。横軸が $t$ なら周期、横軸が $x$ なら波長です。

💡 ここが本質:2つのグラフ+速さで完全な情報が得られる

y-tグラフから $T$ と $A$ が、y-xグラフから $\lambda$ と $A$ が読み取れます。

どちらか一方のグラフだけでは $v$ を決定できませんが、$v = f\lambda = \dfrac{\lambda}{T}$ を使えば、一方のグラフ+速さ $v$ から他方の情報を全て求められます。

4グラフから波の進行方向を読み取る

入試で頻出なのが、y-xグラフから波の進行方向を判定する問題です。

方法:少し後の波形を考える

ある瞬間のy-xグラフが与えられたとき、各点の速度の向き(上か下か)がわかれば、波の進行方向がわかります。

📐 y-xグラフから進行方向を判定する方法

ある点(例えば $y = 0$ を上向きに横切る点)で、その点の速度の向きが与えられたとき、

波形全体をわずかに移動させて、その点が指定された方向に動くかチェックする。

※ y-xグラフを右にずらすと右向き進行、左にずらすと左向き進行。ずらした結果、注目点の変位が速度の向きと一致する方向が正しい。
🔬 深掘り:「正弦波が右に進む」とはどういうことか

波が右に進むとは、y-xグラフの波形が時間とともに右にずれていくことです。

具体的に言えば、ある点の山が次の瞬間には少し右の位置に移ります。その結果、山の左側の点は上向きに、山の右側の点は下向きに変位が変化します。

この「波形を少し進行方向にずらす」というイメージが、進行方向判定の基本です。

⚠️ 落とし穴:y-xグラフの傾きと速度を混同する

y-xグラフの傾き $\dfrac{\partial y}{\partial x}$ は波形の形状を表すものであり、媒質点の速度ではありません。

✕ 誤:y-xグラフで傾きが正の点は上向きに動いている

○ 正:媒質点の速度は $\dfrac{\partial y}{\partial t}$ であり、y-tグラフの傾きから読み取る

ただし進行方向がわかっている場合は、y-xグラフから各点の速度の向きを推定できます(波形のずれを考える方法)。

5この章を俯瞰する

2種類のグラフの読み分けは、波動分野のほぼすべての問題で必要になります。

つながりマップ

  • ← W-1-2 波の基本量:$A$、$T$、$f$、$\lambda$ の定義があって初めてグラフから読み取れる。
  • ← W-1-4 波の速さ:$v = f\lambda$ を使って、一方のグラフからもう一方の情報を導く。
  • → W-1-6 重ね合わせの原理:y-xグラフ上で波を足し合わせる。
  • → W-1-7 定常波:y-xグラフで腹と節のパターンを確認する。
  • → W-3-1 正弦波の式:$y(x,t)$ の式と2種類のグラフの関係を数式で結ぶ。

📋まとめ

  • y-tグラフ:横軸は時刻 $t$。1点の振動を記録。読み取れるのは $A$、$T$、$f$
  • y-xグラフ:横軸は位置 $x$。ある瞬間の波形。読み取れるのは $A$、$\lambda$
  • 2つのグラフは見た目は似ているが横軸が異なるので注意
  • 一方のグラフ+速さ $v$ があれば、もう一方の情報をすべて求められる
  • y-xグラフから進行方向を判定するには「波形を少しずらす」方法が有効
  • まず横軸を確認する習慣をつけることが最重要

確認テスト

Q1. y-tグラフの横軸は何ですか。山の間隔から読み取れる物理量は何ですか。

▶ クリックして解答を表示横軸は時刻 $t$。山の間隔から読み取れるのは周期 $T$。

Q2. y-xグラフから直接読み取れない量は何ですか。

▶ クリックして解答を表示周期 $T$(および振動数 $f$)は直接読み取れない。波の速さ $v$ を使って $T = \lambda / v$ で求める。

Q3. y-tグラフから周期 $T = 0.02\,\text{s}$ が読み取れ、波の速さが $v = 340\,\text{m/s}$ のとき、波長はいくらですか。

▶ クリックして解答を表示$\lambda = vT = 340 \times 0.02 = 6.8\,\text{m}$

Q4. y-xグラフで波の進行方向を判定する基本的な方法を説明してください。

▶ クリックして解答を表示波形を進行方向に少しだけずらしたとき、注目する点の変位がその速度の向きと一致するかを確認する方法。波形を右にずらして矛盾しなければ右向き進行。

8入試問題演習

y-tグラフとy-xグラフの読み取りを入試形式で確認しましょう。

A 基礎レベル

1-5-1 A 基礎 グラフ読み取り計算

ある波のy-tグラフにおいて、振幅は $0.10\,\text{m}$、山から次の山までの時間間隔は $0.50\,\text{s}$ であった。

(1) 周期 $T$ と振動数 $f$ を求めよ。

(2) 波の速さが $2.0\,\text{m/s}$ のとき、波長 $\lambda$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $T = 0.50\,\text{s}$、$f = 2.0\,\text{Hz}$

(2) $\lambda = 1.0\,\text{m}$

解説

(1) y-tグラフの山の間隔は周期 $T = 0.50\,\text{s}$。$f = \dfrac{1}{T} = \dfrac{1}{0.50} = 2.0\,\text{Hz}$

(2) $\lambda = \dfrac{v}{f} = \dfrac{2.0}{2.0} = 1.0\,\text{m}$(または $\lambda = vT = 2.0 \times 0.50 = 1.0\,\text{m}$)

1-5-2 A 基礎 y-xグラフ読み取り

ある瞬間のy-xグラフにおいて、振幅は $0.20\,\text{m}$、波長は $4.0\,\text{m}$ であった。波の速さが $8.0\,\text{m/s}$ のとき、周期 $T$ と振動数 $f$ を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

$T = 0.50\,\text{s}$、$f = 2.0\,\text{Hz}$

解説

$T = \dfrac{\lambda}{v} = \dfrac{4.0}{8.0} = 0.50\,\text{s}$

$f = \dfrac{1}{T} = 2.0\,\text{Hz}$

y-xグラフから波長を読み、速さとの関係で周期を求める典型パターン。

B 発展レベル

1-5-3 B 発展 進行方向判定

ある瞬間のy-xグラフが $y = A\sin\left(\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ で与えられている。$x = 0$ の点がこの瞬間に正の方向(上向き)に動いているとき、波の進行方向は正の $x$ 方向か、負の $x$ 方向か答えよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

負の $x$ 方向(左向き)

解説

$x = 0$ では $y = 0$ で、$x$ が増える方向に $y$ は正。

波が右に進むとすると、少し後にはグラフが右にずれ、$x = 0$ での $y$ は負になる。しかし問題では上向き(正方向)に動くとされているので矛盾。

波が左に進むとすると、少し後にはグラフが左にずれ、$x = 0$ での $y$ は正になる。これは「上向きに動く」と一致。

よって波は負の $x$ 方向(左向き)に進む。

採点ポイント
  • 波形をずらす方法の適用(3点)
  • 正しい進行方向の判定(3点)
  • 論理的な説明(4点)
1-5-4 B 発展 2つのグラフ総合

原点 $x = 0$ のy-tグラフから $A = 0.050\,\text{m}$、$T = 0.40\,\text{s}$ が読み取れた。また、同じ波の $t = 0$ でのy-xグラフから $\lambda = 2.0\,\text{m}$ が読み取れた。

(1) 波の速さ $v$ を求めよ。

(2) 振動数 $f$ を求めよ。

(3) $v$、$f$、$\lambda$ の関係式が成り立っていることを確認せよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $v = 5.0\,\text{m/s}$

(2) $f = 2.5\,\text{Hz}$

(3) $f\lambda = 2.5 \times 2.0 = 5.0 = v$ ✓

解説

(1) $v = \dfrac{\lambda}{T} = \dfrac{2.0}{0.40} = 5.0\,\text{m/s}$

(2) $f = \dfrac{1}{T} = \dfrac{1}{0.40} = 2.5\,\text{Hz}$

(3) $v = f\lambda = 2.5 \times 2.0 = 5.0\,\text{m/s}$。(1)の結果と一致するので確認完了。

採点ポイント
  • $v = \lambda / T$ の適用(3点)
  • $f = 1/T$ の計算(2点)
  • $v = f\lambda$ の確認(3点)

C 応用レベル

1-5-5 C 応用 縦波グラフ判定

右向きに進む縦波の $t = 0$ におけるy-xグラフ(横波表示)が与えられ、$y = A\sin\left(\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ である。$x = \dfrac{\lambda}{4}$ の点について、

(1) この瞬間の変位の向きを答えよ。

(2) この瞬間の速度の向きを答えよ。

(3) この点は密・疎のどちらに近いか、理由とともに答えよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 右向き(正の変位)

(2) 速度 $0$(折り返し点)

(3) 密でも疎でもない(変位最大の点)

解説

(1) $x = \dfrac{\lambda}{4}$ では $y = A > 0$。横波表示で正の変位は右向きの変位を意味する。

(2) $y = A$(最大変位)なので振動の折り返し点。瞬間的に速度は $0$。

(3) 密は変位0で正→負に変わる点、疎は負→正に変わる点。$x = \dfrac{\lambda}{4}$ は変位最大なので密でも疎でもない。

採点ポイント
  • (1) 横波表示の正の変位=右向きの理解(3点)
  • (2) 変位最大で速度0の判定(3点)
  • (3) 密・疎の正しい理解(4点)
1-5-6 C 応用 波形の描画作図

速さ $v = 4.0\,\text{m/s}$ で正の $x$ 方向に進む波がある。$t = 0$ でのy-xグラフが $y = 0.10\sin\left(\dfrac{\pi}{2}x\right)$ [$\text{m}$] で表される。

(1) 波長 $\lambda$ と振動数 $f$ を求めよ。

(2) $t = 0.50\,\text{s}$ 後のy-xグラフの式を求めよ。

(3) $x = 0$ のy-tグラフの概形を $0 \leq t \leq 2.0\,\text{s}$ の範囲で描け。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) $\lambda = 4.0\,\text{m}$、$f = 1.0\,\text{Hz}$

(2) $y = 0.10\sin\left(\dfrac{\pi}{2}(x - 2.0)\right)$ [$\text{m}$]

(3) $y = -0.10\sin(2\pi t)$ の正弦波

解説

(1) $\dfrac{2\pi}{\lambda} = \dfrac{\pi}{2}$ より $\lambda = 4.0\,\text{m}$。$f = \dfrac{v}{\lambda} = \dfrac{4.0}{4.0} = 1.0\,\text{Hz}$

(2) $t = 0.50\,\text{s}$ で波は $vt = 4.0 \times 0.50 = 2.0\,\text{m}$ 右に進む。$x$ を $x - 2.0$ に置き換えて $y = 0.10\sin\left(\dfrac{\pi}{2}(x - 2.0)\right)$

(3) $x = 0$ のy-tグラフは $y(0, t) = 0.10\sin\left(\dfrac{\pi}{2}(0 - vt)\right) = 0.10\sin(-2\pi t) = -0.10\sin(2\pi t)$。周期 $T = 1.0\,\text{s}$ の正弦波で、$t = 0$ で $y = 0$ から負の方向に出発する。

採点ポイント
  • (1) $\lambda$ と $f$ の計算(各2点)
  • (2) 波形の移動量と式の変換(4点)
  • (3) y-tグラフの式と概形(4点)