第16章 音

気柱の共鳴(開管)
─ 両端が腹

管の両端が開いている開管では、両端が定常波のになります。
管の長さと波長の関係を理解すれば、共鳴する振動数を系統的に求めることができます。
開管はすべての整数倍の倍音をもつ点が、閉管との決定的な違いです。

1気柱の共鳴とは

管の中に空気の柱(気柱)があるとき、管の端付近で音を発生させると、特定の振動数のときに気柱が大きく振動し、音が著しく強まります。この現象を気柱の共鳴(きちゅうのきょうめい)といいます。

管の中では音波(縦波)が往復し、入射波と反射波が重なり合って定常波が形成されます。定常波がうまく形成される条件を満たす振動数のとき、共鳴が起こるのです。

共鳴の仕組み

管の開口端では空気が自由に振動できるため、変位の(圧力の節)が生じます。一方、管が閉じている端では空気が動けないため、変位の(圧力の腹)が生じます。

本質:気柱の共鳴の条件

管の境界条件(開口端→腹、閉口端→節)に合う定常波が管内に形成されるとき、共鳴が起こる。管の長さが定常波のちょうど整数個分の「単位」に一致する必要がある。

弦の振動では両端が固定端(節)でしたが、気柱では開口端が腹、閉口端が節と、境界条件が弦とは異なることに注意しましょう。

2開管の境界条件と定常波

開管とは両端が開いた管のことです。フルートやリコーダーの管がこれに近い構造です。

両端が腹になる

開管では両端とも空気が自由に振動できるため、両端が変位の腹になります。腹と腹の間には必ず1つの節があるため、定常波の最も単純な形は管の中央に1つ節がある状態です。

開管における定常波の条件を整理しましょう。腹から次の腹までの距離は $\dfrac{\lambda}{2}$ です。したがって、管の長さ $L$ に入る「腹→腹」の単位の数を $n$ とすると:

$$L = n \cdot \frac{\lambda}{2} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$
開管の共鳴条件

$$L = \frac{n\lambda}{2} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$

$L$:管の長さ、$\lambda$:波長、$n$:正の整数(倍振動の次数)

定常波の振動モード

次数 $n$管内の節の数管内の定常波波長 $\lambda_n$
1(基本振動)1腹─節─腹$2L$
2(2倍振動)2腹─節─腹─節─腹$L$
3(3倍振動)3腹─節─腹─節─腹─節─腹$\dfrac{2L}{3}$
$n$$n$$\dfrac{2L}{n}$
注意:弦の振動との対応

弦の振動は両端が(固定端)、開管の気柱は両端が(自由端)です。しかし、共鳴条件の数式は同じ $L = \dfrac{n\lambda}{2}$ です。これは、節─節の間隔と腹─腹の間隔がどちらも $\dfrac{\lambda}{2}$ であることに由来します。

3開管の共鳴振動数

振動数の導出

共鳴条件 $L = \dfrac{n\lambda_n}{2}$ から波長を求めると:

$$\lambda_n = \frac{2L}{n}$$

$v = f\lambda$ の関係を使って振動数に変換すると:

開管の共鳴振動数

$$f_n = \frac{nv}{2L} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$

$v$:音速、$L$:管の長さ、$n$:正の整数

基本振動数と倍音

$n=1$ のとき基本振動数(第1倍音)が得られます:

$$f_1 = \frac{v}{2L}$$

これを使うと、第 $n$ 倍音は $f_n = nf_1$ と書けます。すなわち開管ではすべての整数倍の振動数で共鳴します。

本質:開管の倍音構成

開管では基本振動数 $f_1$ の 1倍、2倍、3倍、… すべての整数倍の振動数で共鳴する。これが開管の音色の豊かさの理由である。

導出:弦の振動との比較

弦:両端固定(節─節)→ $L = \dfrac{n\lambda}{2}$ → $f_n = \dfrac{nv}{2L}$(全整数倍)

開管:両端開放(腹─腹)→ $L = \dfrac{n\lambda}{2}$ → $f_n = \dfrac{nv}{2L}$(全整数倍)

閉管:一端閉じ(節─腹)→ $L = \dfrac{(2n-1)\lambda}{4}$ → $f_n = \dfrac{(2n-1)v}{4L}$(奇数倍のみ)

開管と弦は数式が同じだが、境界条件が異なる(腹 vs 節)。閉管のみ奇数倍音構成となる。

計算例

管の長さ $L = 0.50\,\text{m}$、音速 $v = 340\,\text{m/s}$ のとき:

  • 基本振動数:$f_1 = \dfrac{340}{2 \times 0.50} = 340\,\text{Hz}$
  • 第2倍音:$f_2 = 2 \times 340 = 680\,\text{Hz}$
  • 第3倍音:$f_3 = 3 \times 340 = 1020\,\text{Hz}$

4開口端補正

実際の管では、定常波の腹の位置は管の開口端のぴったり端ではなく、管端から少し外側にずれます。この補正量を開口端補正(かいこうたんほせい、end correction)といい、記号 $\Delta$ で表します。

なぜ補正が必要なのか

管の端では空気が急に広い空間に出るため、波の反射点が管端よりやや外側になります。そのため実効的な管の長さは、実際の管の長さ $L$ よりも少し長くなります。

開口端補正を含む共鳴条件(開管)

$$L + 2\Delta = \frac{n\lambda}{2} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$

$\Delta$:開口端補正(管の内径を $d$ とすると $\Delta \approx 0.6 \times \dfrac{d}{2} = 0.3d$)。開管は両端が開いているため、補正は $2\Delta$。

注意:開管は補正が2か所

誤:開管の補正 → $L + \Delta$(1か所だけ補正)

正:開管の補正 → $L + 2\Delta$(両端とも開口しているので2か所分)

閉管(一端閉じ)の場合は開口端が1か所なので $L + \Delta$ です。

開口端補正を含む振動数

補正を含めると:

$$f_n = \frac{nv}{2(L + 2\Delta)} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$

$\Delta$ が小さい場合は補正なしの式でも良い近似ですが、精密な計算や入試の記述問題では開口端補正の考慮が求められることがあります。

入試テクニック:開口端補正の求め方

実験問題では、共鳴する管の長さ $L_1$、$L_2$ から $\Delta$ を消去する手法がよく出ます。

基本振動:$L_1 + 2\Delta = \dfrac{\lambda}{2}$、第2倍振動:$L_2 + 2\Delta = \lambda$

引き算:$L_2 - L_1 = \dfrac{\lambda}{2}$ → $\lambda = 2(L_2 - L_1)$

これにより $\Delta$ を使わずに波長を求めることができます。

5この章を俯瞰する

気柱の共鳴(開管)は、波の分野の他の概念とどのようにつながるのでしょうか。

  • W-1-7 定常波 ─ 開管内の共鳴は入射波と反射波による定常波の形成そのものです。
  • W-1-8 波の反射 ─ 開口端での反射は自由端反射に対応し、腹が生じます。
  • W-2-2 弦の振動 ─ 弦と開管は $f_n = \dfrac{nv}{2L}$ という同じ形の式をもちますが、境界条件が異なります。
  • W-2-4 閉管の共鳴 ─ 閉管では奇数倍音のみ。開管と閉管の比較は入試頻出です。
  • W-2-5 共鳴の典型問題 ─ 共鳴管実験で開口端補正 $\Delta$ を求める問題に直結します。
まとめ
  • 開管は両端が腹の定常波を形成する。共鳴条件は $L = \dfrac{n\lambda}{2}$($n = 1, 2, 3, \ldots$)。
  • 共鳴振動数は $f_n = \dfrac{nv}{2L}$ で、すべての整数倍の倍音をもつ。
  • 弦の振動と開管の共鳴は、境界条件は異なるが数式は同一の形。
  • 実際の管では開口端補正 $\Delta$ が必要。開管は両端開口のため補正は $2\Delta$。
  • 共鳴管実験では、2つの共鳴点の差から $\Delta$ を消去して波長を求める手法が定番。

確認テスト

Q1. 開管における定常波の両端の状態は?

▶ クリックして解答を表示 両端とも変位のになる。開口端では空気が自由に振動できるため。

Q2. 長さ $L$ の開管の基本振動数を求めよ。音速を $v$ とする。

▶ クリックして解答を表示 $f_1 = \dfrac{v}{2L}$。基本振動では $n = 1$ なので $L = \dfrac{\lambda}{2}$ → $\lambda = 2L$ → $f_1 = \dfrac{v}{2L}$。

Q3. 開管で共鳴する振動数は基本振動数の何倍か?(閉管との違いを含めて答えよ)

▶ クリックして解答を表示 開管は基本振動数のすべての整数倍(1倍、2倍、3倍、…)。閉管は奇数倍のみ(1倍、3倍、5倍、…)。

Q4. 開管に開口端補正 $\Delta$ を考慮したとき、基本振動の波長はいくらか。

▶ クリックして解答を表示 $\lambda = 2(L + 2\Delta)$。開管は両端に補正が入るため、実効的な管の長さが $L + 2\Delta$ となる。

入試問題演習

A 基礎レベル

2-3-1 A 基礎 開管共鳴振動数

長さ $0.85\,\text{m}$ の開管がある。音速を $340\,\text{m/s}$ として、次の問いに答えよ。ただし、開口端補正は無視してよい。

(1) 基本振動の波長と振動数を求めよ。

(2) 第3倍音の振動数を求めよ。

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解答

(1) $\lambda_1 = 2L = 2 \times 0.85 = 1.70\,\text{m}$、$f_1 = \dfrac{340}{1.70} = 200\,\text{Hz}$

(2) $f_3 = 3f_1 = 3 \times 200 = 600\,\text{Hz}$

解説

開管の共鳴条件 $L = \dfrac{n\lambda}{2}$ に $n = 1$ を代入すると $\lambda_1 = 2L$。

$v = f\lambda$ より $f_1 = \dfrac{v}{\lambda_1} = \dfrac{v}{2L} = \dfrac{340}{2 \times 0.85} = 200\,\text{Hz}$。

第3倍音は $f_3 = 3f_1 = 600\,\text{Hz}$。開管ではすべての整数倍が共鳴するため、$n = 3$ がそのまま使えます。

採点ポイント
  • 基本振動の波長 $\lambda_1 = 2L$ を正しく適用(2点)
  • 振動数の計算が正確(2点)
  • 第3倍音 = 3倍を正しく使用(2点)
2-3-2 A 基礎 開管管の長さ

振動数 $680\,\text{Hz}$ の音さを開管の開口端付近で鳴らしたところ、基本振動で共鳴した。音速を $340\,\text{m/s}$ として、管の長さを求めよ。ただし、開口端補正は無視してよい。

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解答

$L = 0.25\,\text{m}$

解説

基本振動 $f_1 = \dfrac{v}{2L}$ より $L = \dfrac{v}{2f_1} = \dfrac{340}{2 \times 680} = 0.25\,\text{m}$。

採点ポイント
  • $f_1 = \dfrac{v}{2L}$ を正しく変形(3点)
  • 数値計算が正確(2点)

B 発展レベル

2-3-3 B 発展 開管倍音の特定

長さ $0.50\,\text{m}$ の開管に音速 $340\,\text{m/s}$ の空気を入れた。この開管で共鳴する振動数のうち、$1000\,\text{Hz}$ 以下のものをすべて求めよ。開口端補正は無視してよい。

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解答

$340\,\text{Hz}$、$680\,\text{Hz}$(2つ)

解説

$f_1 = \dfrac{v}{2L} = \dfrac{340}{2 \times 0.50} = 340\,\text{Hz}$

$f_n = nf_1 = 340n\,\text{Hz}$

$340n \leq 1000$ → $n \leq 2.94\ldots$ → $n = 1, 2$

よって $f_1 = 340\,\text{Hz}$、$f_2 = 680\,\text{Hz}$ の2つ。$f_3 = 1020\,\text{Hz}$ は超えるため不可。

採点ポイント
  • 基本振動数を正しく計算(2点)
  • $f_n = nf_1$ を使って条件 $f_n \leq 1000$ を立てている(3点)
  • すべての共鳴振動数を漏れなく列挙(2点)
2-3-4 B 発展 開口端補正計算

内径 $3.0\,\text{cm}$ の開管において、開口端補正を $\Delta = 0.3d$($d$ は管の内径)として計算する。管の長さが $L = 0.80\,\text{m}$、音速 $v = 340\,\text{m/s}$ のとき、次の問いに答えよ。

(1) 開口端補正 $\Delta$ を求めよ。

(2) 補正を含めた基本振動数を求めよ。

(3) 補正を無視した場合の基本振動数と比較し、何 $\%$ 異なるか求めよ。

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解答

(1) $\Delta = 0.3 \times 0.030 = 0.009\,\text{m} = 0.9\,\text{cm}$

(2) $f_1 = \dfrac{340}{2(0.80 + 2 \times 0.009)} = \dfrac{340}{2 \times 0.818} = \dfrac{340}{1.636} \approx 208\,\text{Hz}$

(3) 補正なし:$f_1' = \dfrac{340}{2 \times 0.80} = 212.5\,\text{Hz}$。差 $\approx 2.1\,\%$

解説

(1) $\Delta = 0.3d = 0.3 \times 0.030 = 0.009\,\text{m}$。

(2) 開管は両端開口なので実効長 $L_{\text{eff}} = L + 2\Delta = 0.80 + 0.018 = 0.818\,\text{m}$。

$f_1 = \dfrac{v}{2L_{\text{eff}}} = \dfrac{340}{1.636} \approx 208\,\text{Hz}$

(3) 差 $= \dfrac{212.5 - 208}{212.5} \times 100 \approx 2.1\,\%$。管の内径が小さいほど補正の影響は小さくなります。

採点ポイント
  • $\Delta$ の計算(2点)
  • 両端分 $2\Delta$ を正しく加えている(3点)
  • 比較の計算が正確(2点)

C 応用レベル

2-3-5 C 応用 開管温度変化

長さ $L = 0.50\,\text{m}$ の開管がある。気温が $15\,°\text{C}$ のとき基本振動で共鳴する振動数 $f_{15}$ と、気温が $35\,°\text{C}$ のとき基本振動で共鳴する振動数 $f_{35}$ を求め、その差を計算せよ。ただし、音速は $v = 331.5 + 0.6t\,(\text{m/s})$($t$ は気温 $°\text{C}$)で与えられ、管の膨張および開口端補正は無視してよい。

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解答

$f_{15} = 340.5\,\text{Hz}$、$f_{35} = 352.5\,\text{Hz}$、$f_{35} - f_{15} = 12.0\,\text{Hz}$

解説

$v_{15} = 331.5 + 0.6 \times 15 = 340.5\,\text{m/s}$

$v_{35} = 331.5 + 0.6 \times 35 = 352.5\,\text{m/s}$

$f_{15} = \dfrac{v_{15}}{2L} = \dfrac{340.5}{1.0} = 340.5\,\text{Hz}$

$f_{35} = \dfrac{v_{35}}{2L} = \dfrac{352.5}{1.0} = 352.5\,\text{Hz}$

差 $= 352.5 - 340.5 = 12.0\,\text{Hz}$。温度が上がると音速が増し、同じ管でも共鳴振動数が高くなります。

採点ポイント
  • 各温度での音速を正しく計算(2点×2)
  • 共鳴振動数の計算(2点×2)
  • 差の計算と物理的解釈(2点)
2-3-6 C 応用 開管論述

同じ長さの開管と弦(両端固定)がある。開管の音速を $V$、弦を伝わる横波の速さを $v$ とする。次の問いに答えよ。

(1) 開管と弦の基本振動数をそれぞれ求めよ。

(2) 両者の基本振動数が等しくなる条件を述べよ。

(3) その条件のもとで、開管の第3倍音と弦の第3倍音は一致するか、理由とともに述べよ。

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解答

(1) 開管:$f_{\text{開}} = \dfrac{V}{2L}$、弦:$f_{\text{弦}} = \dfrac{v}{2L}$

(2) $V = v$ のとき。すなわち管内の音速と弦を伝わる波の速さが等しければよい。

(3) 一致する。開管も弦も $f_n = \dfrac{nv}{2L}$ で全整数倍の倍音をもつため、基本振動数が等しければすべての倍音が一致する。

解説

(1) 両者とも $f = \dfrac{(\text{波の速さ})}{2L}$ の形。ただし波の速さが異なります。

(2) $\dfrac{V}{2L} = \dfrac{v}{2L}$ → $V = v$。

(3) 基本振動数が同じで、どちらも全整数倍の倍音構成をもつため、$n$ 倍音 $= n \times f_1$ はすべて一致します。これは開管(腹─腹)と弦(節─節)の境界条件は異なるものの、共鳴条件式 $L = \dfrac{n\lambda}{2}$ が同一であることに由来します。

採点ポイント
  • 基本振動数の公式を正しく適用(2点)
  • $V = v$ の条件を導出(3点)
  • 倍音構成の同一性を論理的に説明(3点)
  • 境界条件と式の関連を述べている(2点)