入試で頻出の「グラフが与えられて波の式を立てよ」という問題。
グラフの横軸が $t$ なのか $x$ なのか、進行方向はどちらか ── 正確に読み取れれば、あとは機械的に式を組み立てるだけです。
この記事では、$y$-$t$ グラフと $y$-$x$ グラフの読み取り方を徹底的に練習し、波の式を迷いなく書ける力を身につけます。
波の式を立てる問題は、料理のレシピのように決まった手順があります。 どんな問題でもこの手順に従えば、確実に正解にたどり着けます。
Step 1:グラフの種類を確認する($y$-$t$ か $y$-$x$ か)
Step 2:振幅 $A$、周期 $T$(または波長 $\lambda$)を読み取る
Step 3:$\omega$ と $k$ を計算する($\omega = \dfrac{2\pi}{T}$、$k = \dfrac{2\pi}{\lambda}$)
Step 4:符号と初期位相を決定する(進行方向と初期条件から)
Step 1 で判断を間違えると、以降のすべてが崩壊します。 横軸のラベルと単位を必ず確認してください。
Step 2 では、グラフから直接読み取れる量を確認します。 $y$-$t$ グラフなら振幅と周期が分かり、$y$-$x$ グラフなら振幅と波長が分かります。 もう一方の量(波の速さなど)は、問題文に与えられているはずです。
グラフが正の山から負の山まで(半サイクル分)しか描かれていない場合、そこから読み取れるのは半周期($T/2$)です。
✕ 誤:山から谷までの時間を周期として使う
○ 正:山から谷までの時間は $T/2$。周期はその2倍
同様に、$y$-$x$ グラフでは山から谷までの距離は $\lambda/2$ です。
$y$-$t$ グラフは、ある位置 $x_0$ に固定された媒質が、時刻とともにどのように振動するかを示します。 いわば、ある地点に立って波を眺めている観測者の記録です。
$y$-$t$ グラフだけでは波長は直接読み取れません。 波長を求めるには、別に与えられた波の速さ $v$ を使って $\lambda = vT$ と計算するか、 $y$-$x$ グラフが同時に与えられている必要があります。
たとえば、$y$-$t$ グラフで振幅が $0.05\,\text{m}$、周期が $0.40\,\text{s}$ と読み取れたとします。 波の速さが $v = 2.0\,\text{m/s}$ と問題文に書かれていれば、
と求まり、正の方向に進む波であれば $y = 0.05\sin(5\pi t - 2.5\pi x)$ [m] となります。
$y$-$t$ グラフが与えられたとき、そのグラフは「ある特定の位置 $x_0$」の情報です。 $x_0$ がいくらなのかを問題文から読み取ることが重要です。
多くの問題では $x_0 = 0$(原点)ですが、そうでない場合もあります。 原点以外の点の $y$-$t$ グラフが与えられた場合は、位相のずれに注意が必要です。
$y$-$x$ グラフは、ある時刻 $t_0$ における波の空間的な姿(スナップショット)を示します。 カメラで波を撮影した写真のようなものです。
$y$-$x$ グラフだけでは周期は直接読み取れません。 周期を求めるには、波の速さ $v$ から $T = \lambda/v$ と計算します。
グラフの形がsinカーブに見えると、つい横軸を $t$ だと思ってしまうことがあります。
✕ 誤:$y$-$x$ グラフを見て「周期は $0.8\,\text{m}$」→ 周期の単位は秒です
○ 正:$y$-$x$ グラフから読み取れるのは波長。「波長は $0.8\,\text{m}$」
横軸のラベルと単位を必ず確認する習慣をつけましょう。
$y$-$x$ グラフと進行方向の情報から、初期位相を含めた波の式が完成します。 進行方向の判定方法は次のセクションで詳しく扱います。
$y$-$x$ グラフが必ずしも $t = 0$ のスナップショットとは限りません。
✕ 誤:常に $t = 0$ を代入して式を立てる
○ 正:問題文で「$t = t_0$ のときの $y$-$x$ グラフ」と指定されていれば、$t = t_0$ を代入して位相を決める
「いつの」スナップショットかを必ず確認しましょう。
波の式を立てるうえで最も悩ましいのが、進行方向の判定です。 ここでは、$y$-$x$ グラフから進行方向を読み取る2つの方法を紹介します。
波が右($x$ 軸正方向)に進むなら、$y$-$x$ グラフの波形全体が右にスライドします。 逆に左に進むなら左にスライドします。 今のグラフを少し右にずらした形と、少し左にずらした形を頭の中で想像し、 各点の媒質の変位が「これから増えるのか減るのか」と一致する方が正しい進行方向です。
ある点での媒質の速度($y$ 方向の速度)がわかっている場合、進行方向を一意に決定できます。
$y$-$x$ グラフ上で、ある点が「次に $y$ の正の向きに動く」のか「負の向きに動く」のかが分かれば、進行方向が決まります。
右に進む波:$y$-$x$ グラフ上のある点の「次の動き」は、その点より少し右にある部分の変位と逆向き(波形が右にずれるから)
覚え方:進行方向側の隣の変位が正なら、今の点は次に負に動く。進行方向側の隣の変位が負なら、今の点は次に正に動く。
媒質は上下($y$ 方向)に振動し、波は水平($x$ 方向)に進みます。横波の場合、この2つの方向は垂直です。
✕ 誤:「媒質が上に動いているから、波は上に進む」
○ 正:「媒質は上下に振動し、波自体は $x$ 軸方向に進む」
媒質の運動方向と波の伝播方向は別の概念です。
進行方向が分かったら、$y = A\sin(\omega t \pm kx + \phi_0)$ の $\phi_0$ を決めます。 $t = 0$、$x = 0$ の値と、$t = 0$ での原点の速度の正負から $\phi_0$ を一意に特定します。
| $t = 0$, $x = 0$ での $y$ | 直後の $y$ の変化 | 初期位相 $\phi_0$ |
|---|---|---|
| $0$ | 正に増加 | $0$ |
| $0$ | 負に減少 | $\pi$ |
| $+A$(最大) | 減少 | $\dfrac{\pi}{2}$ |
| $-A$(最小) | 増加 | $-\dfrac{\pi}{2}$(= $\dfrac{3\pi}{2}$) |
正弦波 $y = A\sin(\omega t - kx)$ に対して、位置 $x$ を固定して $t$ で微分すると、媒質の速度が求まります。
$$v_y = \frac{\partial y}{\partial t} = A\omega\cos(\omega t - kx)$$
これを使えば、任意の時刻・位置での媒質の速度を直接計算できます。 $y$-$t$ グラフの傾きが媒質の速度であることと一致しています。
波の式を立てる技術は、波動のあらゆる分野で使われます。
Q1. $y$-$t$ グラフから直接読み取れる量を2つ答えてください。
Q2. $y$-$x$ グラフにおいて、山と谷の間の距離は何を表しますか。
Q3. 波の速さが $3.0\,\text{m/s}$、$y$-$t$ グラフから周期 $0.50\,\text{s}$ と読み取れたとき、波長を求めてください。
Q4. $t = 0$, $x = 0$ で $y = A$(最大変位)の波の初期位相 $\phi_0$ はいくらですか。
グラフから波の式を立てる力を、入試形式で確認しましょう。
原点における媒質の変位の時間変化が $y$-$t$ グラフで与えられ、振幅が $0.02\,\text{m}$、周期が $0.20\,\text{s}$ と読み取れた。波は $x$ 軸の正の向きに速さ $4.0\,\text{m/s}$ で進んでいる。$t = 0$ で原点の変位は $0$ で、直後に正の向きに動くとする。波の式を求めよ。
$y = 0.02\sin(10\pi t - \dfrac{5\pi}{2} x)$ [m]
$A = 0.02\,\text{m}$、$T = 0.20\,\text{s}$ より $\omega = \dfrac{2\pi}{0.20} = 10\pi\,\text{rad/s}$。
$\lambda = vT = 4.0 \times 0.20 = 0.80\,\text{m}$ より $k = \dfrac{2\pi}{0.80} = \dfrac{5\pi}{2}\,\text{rad/m}$。
$x$ 正方向に進むので $\omega t - kx$ の形。初期条件 $y(0,0) = 0$ かつ直後に正に変位 → $\phi_0 = 0$。
$y = 0.02\sin\!\left(10\pi t - \dfrac{5\pi}{2} x\right)$ [m]
$t = 0$ における波の $y$-$x$ グラフが与えられ、振幅 $0.03\,\text{m}$、波長 $1.2\,\text{m}$ と読み取れた。波は $x$ 軸の負の方向に速さ $6.0\,\text{m/s}$ で進んでいる。$t = 0$、$x = 0$ で $y = 0$ かつ、直後に $y$ が負に変位するとする。波の式を求めよ。
$y = 0.03\sin(10\pi t + \dfrac{5\pi}{3} x + \pi)$ [m]
方針:$x$ 負方向に進むので $\omega t + kx$ の形。初期位相を決める。
$\lambda = 1.2\,\text{m}$ より $k = \dfrac{2\pi}{1.2} = \dfrac{5\pi}{3}\,\text{rad/m}$。
$T = \dfrac{\lambda}{v} = \dfrac{1.2}{6.0} = 0.20\,\text{s}$ より $\omega = \dfrac{2\pi}{0.20} = 10\pi\,\text{rad/s}$。
$t = 0$, $x = 0$ で $y = 0$ → $\sin\phi_0 = 0$ → $\phi_0 = 0$ または $\pi$。
直後に $y$ が負に変位するには $\phi_0 = \pi$($\sin$ が減少する零点)。
$$y = 0.03\sin\!\left(10\pi t + \frac{5\pi}{3} x + \pi\right) \quad [\text{m}]$$
($= -0.03\sin\!\left(10\pi t + \dfrac{5\pi}{3}x\right)$ と書くこともできます。)
ある正弦波について、原点での $y$-$t$ グラフと $t = 0$ での $y$-$x$ グラフが与えられている。$y$-$t$ グラフから振幅 $A = 0.04\,\text{m}$、周期 $T = 0.50\,\text{s}$ と読み取れた。$y$-$x$ グラフから波長 $\lambda = 2.0\,\text{m}$ と読み取れた。$t = 0$、$x = 0$ で $y = 0.04\,\text{m}$(最大)であった。波の式を求めよ。
$y = 0.04\sin\!\left(4\pi t - \pi x + \dfrac{\pi}{2}\right)$ [m]
方針:2つのグラフから全パラメータを求め、初期位相を決定する。
$\omega = \dfrac{2\pi}{T} = \dfrac{2\pi}{0.50} = 4\pi\,\text{rad/s}$、$k = \dfrac{2\pi}{\lambda} = \dfrac{2\pi}{2.0} = \pi\,\text{rad/m}$
$v = \dfrac{\omega}{k} = \dfrac{4\pi}{\pi} = 4.0\,\text{m/s}$(検算:$v = f\lambda = 2.0 \times 2.0 = 4.0\,\text{m/s}$ ✓)
$t = 0$, $x = 0$ で $y = A = 0.04\,\text{m}$(最大) → $\sin\phi_0 = 1$ → $\phi_0 = \dfrac{\pi}{2}$
波の速さが正($v > 0$)なので $x$ 正方向に進行 → $\omega t - kx$ の形
$$y = 0.04\sin\!\left(4\pi t - \pi x + \frac{\pi}{2}\right) \quad [\text{m}]$$